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自然観察大学ブログ

タグ:樹木博士入門 ( 30 ) タグの人気記事




ネムノキの昼寝(続報)

前回の報告に続いて、ネムノキの昼寝を観察した。
6月末、場所は我孫子市の谷津ミュージアム(岡発戸・都部谷津)。
自然観察大学の方はよくご存じの、谷津を横断するメインストリート(?)にあるネムノキである。立派な成木で、当日はちらほらと花が開き始めたところであった(4分咲き程度)。

まずは自然状態のネムノキの葉。(12:50)
ネムノキの昼寝(続報)_d0163696_17063761.jpg
強烈な日差しと暑さのためか、葉ははじめから少し閉じ気味だった。
これを両掌でやさしく挟んで、例によって“眠れ、眠れ”と呪文を唱える。

待つことしばし。
なかなか眠ってくれない。
天候によるものか、それとも樹齢によるものか…

10分ほどで、やっと小葉を閉じてきた。(13:01)
ネムノキの昼寝(続報)_d0163696_17064988.jpg
残念ながら、その後待っても変化はなかった。
前回のようにはっきり閉じないのは、何か理由があるのだろうか。

さて、眠った葉は起きるのかどうか、意外に早く約30分で目を覚ました。(13:28)
ネムノキの昼寝(続報)_d0163696_17065719.jpg

写真では少しわかりにくいが、よく比べてもらえば、わずかにな変化がお分かりいただけると思う。

2020年7月3日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-07-03 17:08 | 植物 | Comments(0)

ネムノキの昼寝

ネムノキは夜になると眠るように小葉を閉じることが知られている(就眠運動)。
そのことがネムノキの名前の由来であるという(眠の木)。
ところが、ネムノキが昼寝もする(昼間でも葉を閉じる)ことは、ご存じだろうか。

6月半ばのネムノキの葉。
ネムノキの昼寝_d0163696_17393372.jpg
これを両掌でそっと挟むようにやさしくさわると…
ネムノキの昼寝_d0163696_17394259.jpg
少しの間をおいて、みごとに眠っていた。

なお、さわる際に “あなたは眠くなる” とやさしく呪文を唱えると、催眠術師になったような気分が味わえる。

ちなみに、写真中央の眠った部分の全体が1枚の葉で、枝分かれした葉軸に多数の小葉がつく(2回羽状複葉)。この小葉一つずつが眠るように閉じたというわけだ。

オジギソウのように、見る間に閉じるという素早い動きではない。
1カット目を撮ったあと、2カット目はおよそ8分後であった。
この間、目をはなしていたので、実際にはもっと早かったのかもしれない。


私がネムノキを昼寝させた理由

じつはこれと同じような写真は「樹木博士入門」p162でも紹介している。
本書の制作途中で著者のみなさんから
“オジギソウと違ってネムノキの葉がさわると閉じるというのは聞いたことがない。でも写真を見るとたしかのにそのようだし、まあ掲載してもよいでしょう”
といったいう経過があった。
完全には信じていただけないようでちょっと悔しかったので、その後あちこちでネムノキの葉を眠らせようとチャレンジしていたのだが、このたびようやく成功した、という次第である。
このネムノキは高さ2mちょっとの若い木で、書籍掲載のものとほぼ同じであった。若い木は感受性が高いということかもしれない。
場所も書籍掲載の木のすぐ近くというか、もしかすると同じ個体かも?


みなさんへお願いと、残された課題


ほかのネムノキでも眠るか、ということは相変わらずの課題である。
みなさんの観察結果をお知らせいただければありがたい。
(やさしく呪文を唱えることが重要!)

眠りにつくまでの時間は?
いったん眠った葉は起床するのか?
起床する場合、その所要時間はどうか?
課題は尽きない。

2020年6月22日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-06-22 17:45 | 植物 | Comments(0)

ガクアジサイとアジサイ

ガクアジサイは今がまさに見ごろである。
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17095551.jpg
この写真は我らが川名興先生の撮られた千葉県の大房岬(たいぶさみさき)のガクアジサイである。
ガクアジサイは日本固有種で、本来は関東地方以西の海岸の崖や林縁に自生しているという。
「樹木博士入門」より ⇒

6/3の朝の情報番組の天気予報のコーナーで、今が見ごろのガクアジサイを紹介していた。
話題の中心は、ガクアジサイが初めて文書に掲載されるのは? 答は万葉集 …というクイズだった。
気になるのはついでに紹介された豆知識である。
人気気象予報士のY田氏いわく
「ガクアジサイは周りの方に“がく”があって、真ん中に花があります。それでガクアジサイと言います。」
という解説だったと思う。
(朝の雑用をしながら聞いていたので、もしも勘違いがあったらお許しを)

もう、上の解説の誤りに気づいた方も多いと思うが、正しくは次のようになる。
「ガクアジサイの花はたくさんの小さな花が集まってできている(花序)。その周りの方に“がく”だけの装飾花があり、真ん中に通常の花(両性花)がある。装飾花が額縁のようにあるのでガクアジサイと言われる」
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17100275.jpg
つまり全体が上のような形だ。花序の周りを囲む装飾花が目立つ。(写真は飯島和子先生の撮影)

裏側から見ると、一つの花序であることと全体の構造がわかる。
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17101497.jpg
中の小さい両性花は、拡大すると次のようになる。
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17102076.jpg
小さくて目立たないが、拡大すると美しい。

ところで、
栽培種のアジサイはすべが装飾花になるようにガクアジサイから改良されたという。
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17102734.jpg
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17103456.jpg
ふつう、アジサイは果実をつけることはない。

正直に白状すると、じつは私もガクアジサイに関して誤った知識を持っていた。
アジサイとガクアジサイの名前の印象から、
「もともとあったアジサイを改良して額縁をつけたようにしたのがガクアジサイ」
と思い込んでいた。事実とは真逆なのであった。

Y田氏の誤りをわざわざ記事にするのも大人げなかったが、私も含めて誤解しておられる方も多いのではないかと考え、この機会に記させていただいた次第である。


余談ですが…

額縁部分の装飾花だが、これが両性花となっていることも多い。
ガクアジサイとアジサイ_d0163696_17103981.jpg
さすが自然界、生物界である。柔軟というか、懐が深いというか…
さらにアジサイの仲間にはたくさんの園芸品種があるという。
みなさんのお近くのガクアジサイはいかがだろうか。

※ 写真をご提供いただいた川名興先生、飯島和子先生、ありがとうございました。

2020年6月3日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-06-03 17:17 | 植物 | Comments(0)

ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ

ナラメリンゴフシはコナラなどの冬芽にナラメリンゴタマバチが寄生してできる虫えい(虫こぶ、ゴール)である。この虫えいを私が初めて観たのは2016年のゴールデンウィーク(GW)のことで、当時このブログで紹介させていただいている。
「ナラメリンゴフシとシギゾウムシ」 ⇒ 
その後、ナラメリンゴフシがたくさんできるフィールドを見つけ、何度か観察したので、その報告をまとめさせていただく。


ナラメリンゴフシ

ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17453466.jpg
これがナラメリンゴフシ。
大きいものは直径4cmほどになり、リンゴに見まがうほど大きい。
陽の当たるところは赤くなり、日陰では黄白~淡緑色というのも、リンゴの果実と同じだ。

落下した虫えいを縦に割ってみた。見た目は硬そうだが意外に軟らかく、指で簡単に割れる。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17454141.jpg
中にはナラメリンゴタマバチの幼虫が放射状に並んでいる。
「日本原色虫えい図鑑」(湯川純一ほか、全農教) ⇒ に記されたとおりだ。

同書によるとナラメリンゴタマバチは1年に2回発生し、冬芽と根と、世代によって寄生部位を変えるという。
冬芽ではナラメリンゴフシ、根ではナラネタマフシという虫えい名で、この2つの写真が掲載されている。とても興味深い生態で、実態を観察・確認してみたいのだが、それは非常に難しい。
古くから知られた代表的な虫えいだそうだが、それらが同種の異世代による虫えいであることは、どうやって観察し解明したのだろう。そちらのほうも興味深い。

タマバチについては次のサイトで紹介されている。
TAMABACHI JOHO-KAN(タマバチ情報館) ⇒ 
詳しく、わかりやすくイラストを使って記されていて、ナラメリンゴタマバチの成虫写真()も掲載されている。
お時間のあるときにゆっくり見ていただきたい。

さて、ナラメリンゴタマバチはコナラの若い木を選んで虫えいをつくるようだ。
この観察地は、長野県のとある山城の跡で、2011年に観光目的で整備されている。
尾根筋の木々を伐採して登山道をつくり、そこにコナラやアカマツの実生が出てきたという状況。ナラメリンゴタマバチにとってはこれが理想郷であるらしく、いたるところ虫えいが見られた。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17454922.jpg
たわわに実った果実のようで、“林檎フシ”の命名どおりである。


コナラの立場で考えてみよう

上の写真で気になるのは樹形だ。全体が低く、灌木のような樹形になっている。
この形になる理由を考えてみよう。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17455797.jpg
ナラメリンゴフシは枝先にできることが多い。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17460514.jpg
こちらはまだ新葉の展開途中なので虫えいが枝先にできることがわかりやすい。
なお、別の年のGWの観察だが、この年は芽吹きが遅かった。
赤味のあるのが当年にできた虫えいで、茶褐色の虫えいは古いものである。

ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17461199.jpg
これは正常なコナラの冬芽である。
先端に頂芽があって、すぐ下に側芽(頂生側芽)がある。
頂芽に異常があったとき、つまりこの場合は虫えいができたときだが、それに代わって頂生側芽が伸びるということだ。(「樹木博士入門」p36)

ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17461996.jpg
上の写真はその状態を表している。
前年の頂芽に虫えいが形成され、代わりに頂生側芽が伸びている。
中ほどの側芽も虫えいが形成されたが、この場合代わるべき芽はないのでそのまま停止している。

結果として、樹形は次のような形になる。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17462598.jpg
株元から萌芽が見られ、全体が株立ちの灌木のようになっている。
本来のコナラであれば、太い主軸が立ち、そこから枝を広げるはずなのだが、まったく別の樹種であるかのように見える。

もう一つ気づいたことがある。
タマバエは若い木を選ぶことと関係があるかもしれないが、花をつけた木には虫えいは見あたらない。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17463218.jpg
虫えいができる木には花がなく、逆にいえば花をつけた木には虫えいはない。
花芽に虫えいが形成されたために開花できなかったということも考えられるが、どうもそうではなさそうである。
花をつけるのは成熟した木と考えると、当然のことなのかもしれない。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17463871.jpg
この木では前年の虫えいが見られたものの、新しい虫えいはなかった。
前年までは花をつけない若木だったものが、成長して花をつけるようになったので、虫えいが形成されなくなったのだろう。


ところで…


この日、ナラメリンゴフシにはたくさんのハチが群がっていた。
ナラメリンゴフシにかかわる観察(1) 虫えいとコナラ_d0163696_17464458.jpg
長い産卵管を持った寄生蜂はオナガコバチ。
画面下にはシギゾウムシも見える。

これらの昆虫については次回以降に続く。(全3回の予定)

2020年5月22日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-05-22 17:54 | 植物と虫 | Comments(0)

『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ

『樹木博士入門』の制作中の余話を報告させていただいている。
本書193ページのコラムに掲載されているが、ここではもう少し詳しい話をさせていただく。
(著者ではない事務局Oですが、コラムを何本か書かせていただいた)

2年前(2018年)の5月初めに、長野県でたらの芽採りをしたときのことである。
家人の実家(長野県)の裏山では、毎年ゴールデンウイークのころにたらの芽シーズンとなる。
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18234357.jpg
普通タラノキは林縁に生えるが、その明るいカラマツ林では林内のそこかしこにタラノキがあった。
私は狂喜し、袋いっぱいの収穫を得たところであった。

ふと背後に視線を感じ、振り返ると…
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18235828.jpg
大きな黒い動物がすぐ近くにいて驚いた。
よく見るとカモシカである。
カモシカはじっとこちらは見つめていた。
そういえば以前、家人はこの裏山の山道でカモシカ遭遇し、にらみ合いをしたと聞いたことがある。
(にらみ合いの勝敗は不明)

このカモシカは食料を横取りされて恨めしく思ったのだろうか。
この山にはタラノキ以外にも無数の新芽があるのだが、やはりたらの芽が一番なのか。
だとするとなかなか食通のカモシカである。
…そんなことを考えながら、カメラに収め、さらに近づこうとすると、カモシカはゆっくりと立ち去っていた。

すでに十分な量のたらの芽を得た私は、あとはカモシカに譲るつもりで引き上げることにしたのだが、その帰り道のことである。
先ほどと同じ個体と思われるカモシカが、山道をふさぐように待ち伏せしていた。
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18241122.jpg
にらまれても、せっかくのたらの芽を渡すつもりはない。
シャッターを切りながら少しずつ近づき、にらみ合うこと数分。

ついに道をあけてくれたカモシカ。
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18242092.jpg
なかなかあきらめられないようで、何度もこちらを振り返りながら立ち去っていた。


美味いものにはとげがある

たらの芽は山菜の王様といわれる。
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18243541.jpg
独特の風味と香りがあり、天ぷらにすると絶品である。

しかし、茎に硬く強力なとげがあり、収穫(?)を妨げる。
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18245894.jpg
このとげはやはり動物に食べられないように身を守る手段なのだろう。

さらに葉の軸に沿って多数の鋭いとげがあって、展葉するととげが大きく硬くなる。
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18250924.jpg
『樹木博士入門』余話 ③たらの芽とカモシカ_d0163696_18251832.jpg
カモシカにとっても、たらの芽を食べるのは、まだとげが小さく柔らかい芽吹きの季節に限られるようだ。

ところで、いまはスーパーなどでもパック詰めで売られているが、こちらは味も香りもあまり感じられない。
その違いは切断した茎を水耕栽培することによるものと思っていたのだが、どうもそれだけではないようである。
栽培されるタラノキは、とげのないメダラといわれる品種だという。
美味だからこそ、食べられないようにとげを発達させたのであって、味が落ちればとげは必要ないということなのだろうか。

2020年5月11日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-05-11 18:32 | 植物 | Comments(2)

樹木博士入門、新・雑草博士入門などの書籍購入について

文末に追記あり(2020年5月26日)

『樹木博士入門』はおかげさまで皆様からたいへんなご好評をいただいております。
樹木博士入門、新・雑草博士入門などの書籍購入について_d0163696_19482478.jpg

しかし、残念なことに新型コロナウイルスの影響による物流の低下のためか、Amazonでは購入しにくいようです。

本書はずっとAmazonで在庫切れ状態が続いていたのですが、ここにきてついにAmazonの取り扱い表示がなくなってしまいました。
5月7日19時現在は 10,490円より と表示されています。※本来は定価3,190円(税込)

同じシリーズの『新・雑草博士入門』も同様です。
こちらは 8,900円より と表示されています。※本来は定価2,530円(税込)

現在いずれの書籍も書店での取り扱いがあり、取り寄せていただくことは可能です。
(残念ながら都市部の大型書店は休業中のようです)

新型コロナウイルスの一日も早い収束、そして物流の回復が望まれますが、
お急ぎの場合は下記出版社へ直接ご注文いただくことをおすすめします。
FAXで申込みいただけば、書籍と請求書・振替用紙を同封してお送りします。
1週間程度でお手元に届きます。
ただしその場合、定価プラス送料500円が必要となります。
(購入額の合計が1万円以上の場合は無料)

……………………………………………………
書籍購入申込先 (出版社)
全国農村教育協会
FAX:03-3833-1665
電話:03-3833-1821
……………………………………………………

Eメールの場合、事務局/大野あてに申し込みいただけば、こちらから転送いたします。

以上、臨時のご連絡をさせていただきました。ご了承ください。

……………………………………………………
2020年5月26日追記
先週末ころから、Amazonの在庫・物流の状況が改善されているようです。
在庫は短時間で売り切れてしまうようですが、すぐに補充されるはずです。
……………………………………………………

2020年5月7日、報告:自然観察大学 事務局O





by sizenkansatu | 2020-05-07 19:52 | その他 | Comments(0)

『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷

不思議なムクロジの実

ムクロジは果実を数珠に利用されたり、“無患子”の名前もあってか、社寺に植栽されていることが多い。
その果実は不思議な、そして独特の形をしている。




『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16290018.jpg

『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16290702.jpg
  
へたのようなものがあり、熟すと飴色になって切るとやや軟質でべっとりと粘りがある。
この果皮の中に黒い核果(種子に見えるもの)があり、振るとからからと鳴る。

不思議なのは “へた”のような部分である。
じつは『樹木博士入門』の取材を進める中で、I瀬先生から
「ムクロジの果実はどうしてあんな形になっているんでしょうね。この経過がわかると面白いかもしれませんね。」
という疑問が提示された。
チームで花から果実までが継続観察され、解明された。その成果は紙面で次のように示されている。
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16291260.jpg
3室に分かれた子房のうち1室だけが成熟し、ほかの2室は成長せずに“へた”のようになることがわかったのである。


きっかけは豊川稲荷のナギの観察

話はムクロジからそれてしまうのだが、ナギの話をさせていただこう。
家人に連れられて豊川稲荷を訪れたときのこと。
境内に大きなナギの木があった。
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16291807.jpg
ナギはイヌマキなどと同じマキ科で、見かけによらず針葉樹とされる。

『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16301762.jpg
近寄ってみると、ひときわ幅広の葉をもつ。
ちょっと見にはツユクサの葉を厚くぽってりさせた感じだ。
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16302724.jpg
 
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16303603.jpg
 樹皮も針葉樹らしくないのだが、実(種子)はイヌマキに似た雰囲気がある。ただ、イヌマキでみられる花托はない。
ナギはこの本への掲載はないのだが、念のためひととおり撮っておいたのが、上の写真である。(実は別に撮影)


植物好きのAさんが登場

撮影中に背後から「ずいぶん熱心ですね」と声をかけられた。人懐こい笑顔の、かなりご高齢の男性である。仮にAさんと呼ばせていただく。
Aさんは豊川稲荷の近所にお住まいで、境内を歩くのを日課とし、植物が好きで日々の移り変わりをたのしんでおられる由。
ひとしきり挨拶をかわしたあと、Aさんがポケットからムクロジの果実を取り出した。

A:あなたに好いものをあげよう。
事務局O(以下単にO):ほう、ムクロジですね。中の黒い玉を羽根つきとか、数珠(じゅず)にするんですよね。
観察取材をしていたムクロジなので、待ってましたとばかりに即答させていただいた。
私の意外な知識に驚いたようすのAさん。
私は茶目っ気を出して、さらにたたみかける。
O:漢字で“無患子”と書くのでお守り代わりにしたり、昔は石けんのように洗濯に利用されていたそうです。
A:これは驚いた。古い話をよくご存じですねぇ。
O:私は、こう見えてけっこう年をとっているんです。今年で115歳になります。
そう答えると、Aさんは目を見開き、息が止まってしまった。私はあわてて、
O:じょ、冗談です。すみません。本当はまだ60歳です(当時)
Aさんは息を吹き返し、にっこり笑って、
A:ふぅ。あまり驚かさないでくださいよ。息が止まりましたよ。
そういいながら、またポケットに手を入れた。
A:あなたは面白いね。植物好きのあなたにもう一つ好いものをあげよう。
小さなビニール袋にきれいに個包装された枯葉が差し出された。
私はすぐにヤマコウバシの葉だろうとわかったのだが、今度は知らないふりをした。
A:これはヤマコウバシという木の葉で、枯れた後も翌年の春まで落ちないから受験のお守りにされています。
ありがたく頂戴したのだが、じつは我々は、あるきっかけでヤマコウバシにも注目していたのである。(人が悪い事務局O)


ヤマコウバシの葉

春が近づいても落ちないヤマコウバシの葉。
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16304637.jpg
3月半ばの撮影で、すでに冬芽がかなり膨らんできている。
チーム樹木博士が注目していたのは葉が千切れたようになる現象である。
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16305585.jpg
これまたI瀬先生の疑問には発端なのだが、こちらは今でも謎のままである。
※参考「自然観察大学トピックス/ヤマコウバシの不思議(2題)岩瀬徹 ⇒ 

Aさんにいただいたムクロジの果実

話をムクロジに戻そう。
これがAさんにいただいたムクロジである。
『樹木博士入門』余話 ②ムクロジと豊川稲荷_d0163696_16310534.jpg
私と家人のそれぞれにいただいたものだが、いずれも成長の止まった子房もきれいに残っている。
「樹木博士入門」に掲載させていただいたのは、Aさんにいただいたこのムクロジであった。
Aさんありがとうございました。

このあとさらにAさんのご自宅にお誘いいただいた。
Aさんの家には、ムクロジの果実やヤマコウバシの葉のような、たくさんのプレゼントが用意してあるので、それを見ながら植物談義をしよう、ということなのである。
帰りの電車の時間があるので、丁重にお断りしてしまったのだが、思えば残念なことであった。せめてお名前をうかがっておけば、お礼に本をお贈りできたのに…

2020年5月1日、報告:自然観察大学 事務局O




by sizenkansatu | 2020-05-01 16:44 | 植物 | Comments(0)

樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(番外編)

前回までの「樹木の“形とくらし”ひとり観察会」の報告に関して、『樹木博士入門』の著者である小幡和男先生が検証をしてくれたので、ここにまとめさせていただく。


イスノキの雄花と雌花

レポート(1) で花序の雄花と雌花の位置関係について疑問が出たが、小幡先生の観察結果を教えていただいた。
“どれを観ても一番下だけが雄花で、下から二個目からはすべて二又の柱頭が見られる” ということであった。
以下に小幡先生から送信いただいた写真を掲載する。(4月22日撮影)
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(番外編)_d0163696_12414769.jpg
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(番外編)_d0163696_12415464.jpg
雄雌のはっきりわかる、すばらしい写真をお送りいただいた。
小幡先生、ありがとうございました。


ムクロジの冬芽(主芽と副芽)

レポート(2) のムクロジの冬芽で、主芽と副芽について疑問が出たが、これも小幡先生に検証いただいた。
“複数の冬芽を観察した結果、いずれも2つ並んだ冬芽のうち、上の芽だけが展開し、下(葉痕に近い冬芽)は動かない” ということであった。
お送りいただいた写真を掲載しよう。(同じく4月22日に撮影)
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(番外編)_d0163696_12420198.jpg
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(番外編)_d0163696_12420837.jpg
“ほかの図鑑で「主芽のすぐ上に副芽がつく」という表記があるのは誤りであろう” との由。
なるほど、これですっきりした。

小幡先生の観察は茨城県自然博物館であるが、それにしても、私の「ひとり観察会」のあと、一週間で冬芽からこれだけ伸びるとは驚きである。

水元公園での「ひとり観察会」のつもりが、茨城県自然博物館との「リモート観察会」になったようで、うれしい限りである。
小幡先生、ありがとうございました。

2020年4月24日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-04-24 12:47 | 植物 | Comments(0)

樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)

前回に続き「樹木の“形とくらし”ひとり観察会」の報告をさせていただく。
タイトルの後の(p○)は『樹木博士入門』の掲載ページなので、この本をお持ちの方は紙面を見ながら記事をご覧いただけるとありがたい。
(記事に誤りなどがあった場合はご容赦いただき、ご指摘お願いします)


シロダモの新葉展開と果実(p26,137)

この時期に目立つのはシロダモの新葉の展開である。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_17580535.jpg
“ウサギの耳”といわれるように、たくさんの毛でおおわれ、遠目にもわかりやすい。
よく観ると、つけ根に何かついているものがあった。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_17581609.jpg
緑色の球体は若い果実である。
前年の初冬に開花したもので、このあと今年の初冬に赤く熟すのだろう。
この時期に若い果実をつけているというのは当たり前のことかもしれないが、思わぬ発見にうれしくなってしまった。


モミジバスズカケノキの花(p140)

モミジバスズカケノキは数多く植栽されていて、このなかまをまとめてプラタナスといわれる。
秋から冬に毛毬のような果実が目立つが、花が小さいうえにほとんどが高所にあり、観察がむずかしい。
水元公園には、この花を目の高さで観察できるところがある。

この日見つけた雄花。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_17582433.jpg
上の写真は2つとも雄花序である。

まず右側の雄花序を見てみよう。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_17583229.jpg
全体が締まっていて、花粉を出すことはない。いわゆる“つぼみ” の状態である。

次に、もう一つの雄花序を観よう。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_17583856.jpg
こちらはすでに終わった花で、もう花粉を飛ばすことはない。
なお、このなかまはごく小さな花が多数集まった花序で、この写真を見ると、一つずつの雄花には雄しべがあるだけということがよくわかる。

さて、開花中の雄花序はこれ。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_17584881.jpg
見た目はあまり変わらないが、成熟したような色になっていた。
花序の下半分に花粉がついていて、指先でチョンと突くとたしかに花粉を出していたが、写真ではわかりにくい。(画像クリックで拡大)
私の観察では、花序の先の方から順に熟して花粉を飛ばすように思われた。

ところで、残念ながらここでは雌花が見つからなかった。
一年前の同じ場所で観た雌花がこれ。(画像クリックで拡大)
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(3)_d0163696_18044623.jpg
赤い柱頭が目立ち、なかなかフォトジェニックである。
このまま毛毬のような果実になるのであろうと想像がつきやすい。

以上、4/12の「ひとり観察会」のご報告でした。
予定された観察会は新型コロナウイルスの渦中で延期となり、現状ではいつになるか不明です。
決まりしだい自然観察大学メールマガジンでご案内しますので、興味のある方はぜひメール会員にご登録ください。(問い合わせ、入会 ⇒ 
収束を祈りつつ、みんなで自粛をしましょう。

2020年4月22日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-04-22 18:09 | 植物 | Comments(0)

樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)

前回に続き「樹木の“形とくらし”ひとり観察会」の報告をさせていただく。
タイトルの後の(p○)は『樹木博士入門』の掲載ページなので、この本をお持ちの方は紙面を見ながら記事をご覧いただけるとありがたい。
(記事に誤りなどがあった場合はご容赦いただき、ご指摘お願いします)


トチノキの冬芽の展開(p36,229)

ちょうどトチノキが葉を広げはじめていた。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16490325.jpg
大きな天狗の団扇のような葉になる。
つけ根を包むようについているのは芽鱗である。

ちなみに冬芽はこれ(2月に撮影)。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16491469.jpg
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16492336.jpg
上が頂芽で下は側芽。頂芽が大きく、側芽は小さい。
どちらも一つの冬芽からあっという間に複数の大きな葉が出てくる。うまくできているものだと感心させられる。

トチノキで注目したいことが枝の途中にある。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16493082.jpg
写真中央の細かなしわがあるところは、冬芽の芽鱗の落ちた痕、つまり芽鱗痕だ。
冬芽は一年に一度だけできるので、この芽鱗痕をたどることによって、何年にもわたって茎が伸びてきた、その歴史を知ることができる。
長くなるので、詳しくは『樹木博士入門』p36をご覧いただきたい。
なお、三角のおにぎりのような形のところは葉の落ちた痕(葉痕)である。念のため。

トチノキの別の枝先。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16494005.jpg
こちらではもう花序を出していた。
冬芽の中には、あの盛大な花序がすでに準備されていたということだ。


ハナミズキの花(p33,191)

樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16494871.jpg
青空に映えるハナミズキの花。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16495797.jpg
花といってもこれはまだつぼみである。
開花は次のとおり。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16500530.jpg
ご存知の方が多いと思うが念のために申し上げておこう。
花びらのような白い大きな部分は、花弁ではなく花序を包む総苞片である。


ヤマグワとマグワを見分ける(p122)

水元公園ではヤマグワとマグワが混在している。両種を見分けるのはなかなか難しい。
『樹木博士入門』ではいくつかの見分けるポイントが挙げられているが、この日は“雌しべの花柱で見分ける” ことが実践できた。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16501994.jpg
上はヤマグワの雌花序。
花柱は長くY字形となる。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16502607.jpg
こちらはマグワの雌花序。
花柱は短くV字形となる。
このように雌花、花柱が新鮮な時は識別しやすいが、花柱が萎れると見分けるのが難しくなってしまう。今回はラーッキーであった。

ところで、ヤマグワもマグワも雌雄異株とされるが、ここで観たマグワの雌株には雄花序がついていた。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16503442.jpg
両サイドが雌花序で、真ん中は雄花序である。
ヤマグワにはまれにこのような例が観られるらしく、ネットで次のような記事があった。
なお、後者は同じ水元公園での観察記録である。


ムクロジの冬芽の展開(p175)

ムクロジの冬芽がちょうど開きはじめだった。
ムクロジは何かと観察ポイントが多く、『樹木博士入門』では冬芽の掲載がなかったが、この機会に観察しておこう。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16504569.jpg
頂芽から葉が出てきたところ。
すでに、あの巨大な複葉の片りんがうかがえて、感慨深い。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16505316.jpg
こちらの側芽はふくらんできたところだが、側芽と葉痕の間に、副芽らしきものかある。

芽吹き前の冬芽を探して見つけたのがこれ。
樹木の“形とくらし”ひとり観察会レポート(2)_d0163696_16505904.jpg
大きな葉痕の先(写真の右側)に2個の冬芽がある。
隠芽のように見えるが、枯れてしまった冬芽なのかもしれない。
左の小さいのが副芽で右の大きいのが主芽のように観えるが、ネットの情報によると小さいのが主芽で大きいほうが副芽らしい。

いずれにしても、カエデ類とは全く異なる冬芽である。
葉も花も冬芽も、何もかもこれだけ違っているのに、同じムクロジ科に分類されるとは…
DNAはどうなっているのだろうか。

2020年4月20日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2020-04-20 16:57 | 植物 | Comments(0)

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