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自然観察大学ブログ

新型コロナウイルスで思うこと

新型コロナウイルスの影響で、4月に予定されていた二つの観察会が飛ばされてしまった。
4月12日のテーマ別観察会「樹木の“形とくらし”観察」(都立水元公園)は延期
4月26日の定例野外観察会第1回(都立野川公園)は中止
参加を予定されていたみなさんには申し訳なく、まことに残念なことになってしまった。この状況がいつまで続くのか、困った問題である。
われわれのできることは感染の拡大を防ぐことなので、できるだけ慎重に行動したいものである。(私自身、すでに無症状の感染者である可能性がある)

この新型コロナウイルスの騒動で、思い浮かんだことがある。
ウイルス、細菌、菌はそれぞれ全く別のものではあるが、そのことは置いて以下に記させていただく。

「寄生菌は増えすぎた生物を抑制する役割を担っている」ということだ。
話の内容を抜粋すると、菌類は大きく3つに分けられ、それぞれ自然界で重要な役割がある。
①腐生菌:死んだ生物を分解し、土に戻す。
②共生菌:植物の根と菌根を形成し、互いに栄養を得る。
③寄生菌:動植物などに寄生し、悪影響を与える。
このうち③は“役割”とはいえないようにも思えるが、そうではない。
特定の生物種が増えすぎるのを抑制し全体のバランスを保つという、生物界全体あるいは地球規模で考えると非常に重要な役割なのである。

たとえば稲作は広大な水田にイネだけを高密度で育てる。これは自然界にとってはとんでもない異常な状態である。
そうなると“いもち病”などの病原菌が発生し、イネを枯らす。
(下の写真はいもち病に罹病した田んぼと、いもち病の病斑の一例。『防除HB/稲の病害虫と雑草』より転載)
新型コロナウイルスで思うこと_d0163696_16534706.jpg
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ウンカ類などの昆虫も発生する。
いわゆる農業害虫で、下の写真は高密度で稲株を吸汁するトビイロウンカ群と、その長翅型雌成虫。(『防除HB/稲の病害虫と雑草』より転載)
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ほかにも稲作では “もみ枯れ細菌病”などの細菌、さらには“縞葉枯病”といったウイルス病などもある。
これらはみな、稲田という異常な状態を抑制する自然界の調節作用とみなされる。

これと同じことが、今回の新型コロナウイルスにも当てはまるのではないだろうか。
そう考えると恐ろしくなる。

三つの蜜(密閉・密集・密接)の徹底回避とはまさにそのとおりで、閉鎖空間で高密度で濃厚接触をしないように心がけたいものである。
収束を願いつつ、近所で一人観察会か…

2020年4月3日、報告:自然観察大学 事務局O





# by sizenkansatu | 2020-04-03 17:00 | その他 | Comments(0)

メタセコイアの雌花が梢に集中してつくのはなぜ?

メタセコイアは天を突く槍の穂先のような樹形がカッコイイ。
メタセコイアの雌花が梢に集中してつくのはなぜ?_d0163696_18310735.jpg
秋に葉を落としてから早春にかけての間には褐色の紐状のものが簾のようにたくさん垂れさがっているのが目立つが、これは雄花序が連なった枝。
雄花序はふつう木の中部から上部の範囲に多く見られるが、最上部にはついていない。
(写真は2017年2月25日、千葉県柏市で撮影)

一方、ほとんどの球果は木の最上部に集中してついている。
雌花序は球果がついているあたりにあるはずなのだが、地上からでは遠すぎて、肉眼ではわからず、8倍の双眼鏡で見てもはっきりしない。
メタセコイアの雌花が梢に集中してつくのはなぜ?_d0163696_18311462.jpg
昨季の球果が点々と見える。その範囲より下側に雄花序の集団が見られる。
(写真は2017年3月3日に東京都八王子市で撮影)


つい先日、斜面の下に植えられた木を斜面の上の方から観察できる場所から超望遠の設定での撮影を試みたところ、何とかそれと分かる写真が撮れた。
未熟なツクシのような見かけが面白い。
撮影したのはすでに雄花が花粉をほとんど飛ばし切った時期だったので、雌花序というよりは若い球果といった方が適切かもしれない。
メタセコイアの雌花が梢に集中してつくのはなぜ?_d0163696_18312193.jpg
昨季の球果と雌花序(ないしは若い球果)。
(写真は2020年3月18日、東京都多摩市で撮影)

メタセコイアが雌花序を雄花序より高い位置に集中させているのはなぜだろう。すぐに思いつく理由は2つ。
風媒による自家受粉を起こりにくくさせられることと風散布でより遠くまで種子を飛ばすことができるということ。ただ、後者だけが理由なら雄花序が梢につかないことを説明できない。
雌雄同株の風媒花が自家受粉を避ける方法としては、雄花と雌花の位置をずらせるやり方の他に、両者の成熟時期をずらせる方法(多くの場合は雄性先熟)や生理的に拒絶するやり方(自家不和合)もある。複数の方法を併用している場合もあるだろう。メタセコイアについてはどうなのだろうか?

メタセコイアの雌花序については、このブログにも「メタセコイアの花から実」⇒ という事務局O氏のレポートがあり、そこには雄花序がついた枝の先端についた雌花序の写真がある。なお、同じ写真は、先ごろ発刊されたばかりの樹木博士入門(全農教)にも掲載されている。
この例では雌花序が雄花序の直下に隣接してついており、成熟期が同調していれば自家受粉が起こるはずだ。あえて自家受粉をさせて確実に子孫(クローン)を残す作戦なのか、あるいはメタセコイアが進化の過程であれこれと試行錯誤した名残、はたまた現在も試行錯誤を繰り返している証拠なのか、非常に興味深い。
このような位置につく雌花序は稀なようで、ぜひ見たいと探してみてはいるが、私自身はまだ見つけられていない。

2020年3月23日、報告:自然観察大学 講師 中安均

……………………………………………………

中安均先生へ
ご投稿ありがとうございました。たしかに、事務局Oの観察例(=『樹木博士入門』の雌花序の記載はまれな例かもしれません。中安先生の観察で、いろいろなことが納得できます。

みなさんへ
本件について観察できた方がおられましたら、事務局までご一報いただけるとありがたいです。いつでもお待ちしております。

2020年3月23日、自然観察大学 事務局O






# by sizenkansatu | 2020-03-23 18:36 | 植物 | Comments(0)

『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(3)

エゴノキの例

エゴノキのページを見てみよう。(p200-201、クリックで拡大表示)
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(3)_d0163696_17505434.jpg
左ページはエゴノキの基本情報で、右ページはエゴノキを取り巻く話題になっている。
本書は単なる樹木の図鑑ではなく、木と人間、木と動物の関わりにも注目しているのだ。

その右ページを上から順に見てみよう。

果実の石けん
自然観察大学の観察会で、川名興先生がエゴノキの果実で石けん水をつくってみせてくれた。
2008年 見沼田んぼでの第3回定例観察会レポート ⇒ 
本書にはそのときの写真が掲載されている。
エゴノキの石けんは古くから利用され別名が多いこと、また有毒の果皮を利用した魚採りの例などが川名節で紹介され、現場は大いに盛り上がったことを記憶している。
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(3)_d0163696_17510693.jpg
ところで、肖像権のからむ写真の掲載には、許可をいただくことが必須である。
写真の左の女性と、川名先生の後方の背の高い男性は、当時お二人ともTH大学理学部の学生で、仲良く熱心に観察しておられたので、私もよく覚えていた。女性はH.A.さん、男性はK.Tさんといった。
ご本人たちに承諾をいただこうと思ったのだが、10年以上も経っているのでメールがつながらない。
思い切ってH.A.さんの携帯に電話したところ、無事つながってご了解をいただけた。
ところがである。
念のためにお名前を確認すると、いまはH.A.さんではなく、K.A.さんだというのだ。
なんとの写真のK.T.さんと結婚し、現在子育てに奮闘中なのだそうである。
ちょうどこの電話のすこし前に、ご夫婦で自然観察大学に参加した当時のことを思い出し、子育てが一段落したらまた参加したいと話をしておられたのだとか。(いつでも大歓迎です!)
これは驚いた。自然観察大学の歴史をしみじみと感じた出来事であった。
※ 写真の中央でこちらを向いておられる男性に連絡が取れません。
お心当たりの方は、自然観察大学事務局/大野までご一報いただければ幸いです。


エゴノネコアシ
エゴノネコアシアブラムシの寄生による虫えいで、自然観察大学では何度か話題になっている。
前述の観察会レポートでは、果実の石けんに続いて掲載され、このときはエゴノネコアシアブラムシが中間寄主であるアシボソについているところが観察されていた。
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(3)_d0163696_17511425.jpg
エゴツルクビオトシブミとエゴヒゲナガゾウムシ
どちらもおもしろい生態・形態の昆虫だが、自然観察大学の観察会では時期がずれていて、残念ながら直接観察したことはない。しかしながら当ブログでは何度も取り上げている。
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(3)_d0163696_17512406.jpg
● エゴツルクビオトシブミ
オトシブミのゆりかご(揺籃)づくり その1 ⇒ 

●エゴヒゲナガゾウムシ
妖怪変化か? -ウシヅラヒゲナガゾウムシ- ⇒ 

どちらの昆虫もとても興味深く、何度もご登場いただいている。各記事の下部にある「タグ」を使って他の記事をご覧いただければありがたい。

エゴノキとヤマガラ
写真は自然観察大学で観察したときのものである。
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(3)_d0163696_17513977.jpg
みんなの見ている前でヤマガラがエゴノキの実を割って食べはじめ、このときも大いに盛り上がった。(撮影は唐沢学長)
そのときの興奮したようすは次に記されている。
2016年 野川公園での第3回定例観察会レポート ⇒ 
(ここから末尾の「第3回の報告」をクリック。面倒をおかけしてすみません)


結 論
といったようなわけで『樹木博士入門』と自然観察大学は深い関係にある。
自然観察大学で積み重ねてきた観察こそが、『樹木博士入門』の内容に厚みと彩りを加えていると思う。
ちなみに、前述のヤマガラのレポートのすぐ後にあるハイイロチョッキリは、本書にも紹介されている。(p107)
さらに申し上げると、ハイイロチョッキリのレポートの後には、ヒマラヤスギの雌花序(雌花穂ともいう)の発見と観察が課題であることが記されているが、そのあと解明されて『樹木博士入門』に掲載されている。(前回の記事の文末「ヒマラヤスギの花から実」を参照)

本書に関しては、唐沢学長をはじめ自然観察大学からさまざまな写真、種々の話題を提供させてもらっている。
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係は切っても切れないのだ。

2020年3月13日、報告:自然観察大学 事務局O





# by sizenkansatu | 2020-03-13 18:03 | その他 | Comments(0)

『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(2)

普通の図鑑とはココが違う(アカマツとクロマツの例)

たとえばアカマツとクロマツのページを見てみよう。(p76-77、クリックで拡大表示)
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(2)_d0163696_13062604.jpg
樹形、樹皮、葉、冬芽、花序(雄・雌)、球果と種子と図鑑としての基本的な情報をていねいに収めてある。
見分けるポイントを示した写真が、左右見開きでくらべられるようになっている。
たとえばクロマツの葉は硬く、先端が鋭くとがり、さわるとかなり痛い。
それにくらべてアカマツの方は柔らかめで先はやや鈍く、あまり痛くはない。
ほかにも樹皮や冬芽で明確に見分けられることが写真でわかるように示されている。
(雑種のような、どちらか悩ましいものもあるが…)

ここまででも立派な図鑑だと思うのだが、本書をつくる上で著者のみなさんが意識したのは
“観察の視点をもつ”
ことであった。
そのために、自然観察大学で取り上げてきたことを参考に、さまざまな話題を盛り込んでいるのである。

そんなわけで、アカマツとクロマツにはあと1ページあって、おすすめの観察ポイントや興味深い話題を掲載している。
ほかの図鑑と違うのはここなのである。(p78、クリックで拡大表示)
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(2)_d0163696_13064129.jpg

アカマツの花と球果(マツの3年分を観察する)

ページの上半分で、まずアカマツの雄花序と雌花序のつき方を観察する。
これが意外に勘違いされやすく、ふつうは雄花序と雌花序は別々の枝につく。
まれに一つのシュートに雄花序と雌花序がついている場合があるのだが、このまれな例を示してある教科書があるのだという。困ったものである。

さらに花序のついた枝をたどると、そのもとの方に1年経った松ぼっくり(一年前は花だった)と、さらにたどると花後2年経った松ぼっくりが観察できる。
つまり、開花時期に3年分の観察ができるということになる。
いずれも、自然観察大学では定番ともいうべき観察ポイントである。


マツの葉の断面と樹脂道を観察しよう 


さらに、驚くべきはこのページの下半分に掲載された葉の断面だ。
アカマツ、クロマツのように2葉のマツでは、その断面が半円形で、2つを合わせると円形になる。
そして3葉のダイオウマツ、5葉のゴヨウマツも、合わせたときにきれいな円形になるのだ。
これにより、もとは一つの葉で、それが2葉、3葉といった形に進化したのだと想像できる。

この写真を撮っているときに、ぷつぷつと断面から液体が滲み出てきた。
撮影を指導していただいた著者の方々にご報告すると、これは樹脂道から出てきた樹脂ということであった。
マツなどの針葉樹の葉は樹脂道というものがあり、それが種の判別ポイントなのだそうだが、顕微鏡でないとわからない。ところが、滲出した樹脂はルーペでも見ることができた。
思わぬところで樹脂道が表現できた、ということである。


アカマツの花と種子

ところで、アカマツの花はどんな花か。これまでに紹介した図鑑編のページには花序は掲載されていたが、花のアップはなかったではないか。
心配ご無用である。本書の第1章で、「マツの花と種子」のページ(p59)にちゃんと掲載されている。
『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(2)_d0163696_13064844.jpg
アカマツの雄花は葯のみ、雌花は鱗片に胚珠がつくのみである。
裸子植物の花は花弁も子房もない。被子植物とくらべると、花らしくない花だ。

『樹木博士入門』と自然観察大学の関係(2)_d0163696_13065601.jpg
アカマツの雌花序。
この写真は「ハンノキの花から果実」(2019年2月6日の記事)の再掲。
機能美の極限のような花は4月22日の撮影である。
季節になったらぜひ実物をルーペでとっくりとご覧いただきたい。


もう一つのおすすめ記事

アカマツとクロマツについては、飯島先生による講演でも紹介されているので、よろしければそちらもご覧いただきたい。
ヒマラヤスギの花から実(自然観察大学室内講習会レポート、PDF) ⇒ 
じつをいうと、「ヒマラヤスギの花から実」こそが、自然観察大学と最も深い、密接なかかわりがあるのであった。くわしくは上記のレポートをぜひ!

2020年3月12日、報告:自然観察大学 事務局O



# by sizenkansatu | 2020-03-12 13:13 | その他 | Comments(0)

樹木博士入門 正誤表

お詫びと訂正

完成したばかりの「樹木博士入門」ですが、誤りがありました。
自然観察大学として申し上げるべきことではないかもしれませんが、この場を借りて訂正させていただきます。
内容は以下のとおりです

全農教/観察と発見シリーズ 樹木博士入門 (2020年3月10日初版発行)

p71 下段の芽生えの写真説明
アカシデ ⇒ ムクノキ

p84 メタセコイアの花序の写真説明(1か所)
雄花序 ⇒ 雌花序

P177 ニワウルシの冬芽の写真
写真の誤り。次の写真に差替え
樹木博士入門 正誤表_d0163696_15374941.jpg
詳しくは次からPDFをご覧ください。


申し訳ありませんでした。
お詫びして訂正いたします。

ご指摘いただいたみなさまにはお礼を申し上げます。

2020年2月26日、報告:自然観察大学 事務局O





# by sizenkansatu | 2020-02-26 15:50 | その他 | Comments(0)

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