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自然観察大学ブログ

アカメガシワの観察 ②花から果実

アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21571208.jpg
写真は花期のアカメガシワで、ちょっとわかりにくいが、手前が雌花の咲く雌の木、奥は雄花の咲く雄の木。(6月半ばに撮影)

雌と雄が個体ごとに別にある植物を雌雄異株(しゆういしゅ)という。雌雄異株か雌雄同株かは植物の種類によってほぼ決まっている。雌雄異株の草本は少ないが、木本ではかなり多くの種が雌雄異株である。
なお、上の写真では雌の木が明るい緑で雄の木が濃い緑だが、一般的にそのような色の違いということではない。


アカメガシワの雄花
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21572324.jpg
雄花の花序は大きくて遠目にもわかりやすい。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21573183.jpg
球状のポンポンのようなのが雄花。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21573935.jpg
ほとんど雄しべだけのシンプルな花だが、ちゃんと虫が来る。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21574803.jpg
これが一つの雄花。
多数の雄しべと、そのつけ根にあるのは反り返ったがく片だと思う。
じつに潔い雄花だ。


雄花は6月はじめから咲きはじめる。
雌花は雄花とほぼ同じ時期だが、少し遅れて咲くように思える。


アカメガシワの雌花
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21575698.jpg
雌花序は雄花序よりも小さめ。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21580440.jpg
こちらも、ほとんど雌しべだけの潔い花。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21581292.jpg
雌花は黄色っぽいのがふつうだが、赤味を帯びるものもある。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21582418.jpg
これが一つの雌花。
柱頭は3裂。
子房にはとげ状の突起があるが、一つ前の写真のように突起が見られないこともあった。


アカメガシワの果実
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21583474.jpg
1か月ほど経った若い果実。(7月半ば)
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21584017.jpg
子房がぷっくりと膨れている。
しぼんだ柱頭と、とげ状の突起はほぼそのまま残っている。

果実が熟すのは8月末ごろ。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21585311.jpg
真っ黒な種子が目立つ。
アカメガシワの観察 ②花から果実_d0163696_21590178.jpg
果実はふつう3つに裂開し、中に3個の種子がある。

種子は鳥に好まれるが、栄養に乏しく、喰われてもそのまま排出される。
黒い種子は栄養豊富な果実に似ているので、鳥が勘違いして食べて運ぶ、ということらしい。
参考:自然観察大学/まるごと観察会(2024年第4回)レポート/黒い実のいろいろ  

さて、雌株は花から果実へと育てる、たいせつな仕事がある。
この間、雄株は何をしているのか?
次回はその観察記録の予定。

2025年9月17日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2025-09-17 22:10 | 植物 | Comments(0)

アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開

アカメガシワは新葉が展開するときに赤味を帯びるので“赤芽”。
葉はカシワ(柏)の葉と同様に炊事に利用するので“炊(かし)ぐ葉”が名前の由来だという。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12162237.jpg
種子が鳥に好まれ、運ばれて、芽を出し、あちこちで目立つ。
典型的なパイオニアプランツ(先駆的植物)だ。

① 冬芽~葉の展開
② 花から果実
③ 雄株のからまわり

今回は全3回の予定でご報告したい。


冬芽は裸芽
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12163066.jpg
葉を小さくした形のものが折り重なっていて、よく観ると葉脈まである。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12163711.jpg
少し伸びて、葉らしくなってきたものもある。
これらのような状態で冬を過ごす。

アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12164496.jpg
春には大きくなってそのまま葉になる。(葉にならずに落ちるものもある)

なお、芽鱗(がりん)に包まれた鱗芽(りんが)に対し、芽鱗がないものを裸芽(らが)という。


赤い新葉の正体
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12165194.jpg
展開途中の葉が赤い植物は多数あるが、アカメガシワの鮮やかな赤は他とはちょっと違う。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12165913.jpg
赤い葉をこするとはがれて緑が出てくる。
赤いのは、葉面にびっしり並ぶ毛であった。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12170653.jpg
放射状の毛は星状毛と呼ぶ。
毛は葉の展開とともに疎らになり、落ちる。

新緑のころ。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12171284.jpg
逆光気味に観ると、鮮やかな赤と緑が美しい。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12274964.jpg

展開しきった葉はこんな感じ。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12172671.jpg
葉の形は変化があって、ばらばら。そこがまた好い。


花外蜜腺
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12231017.jpg
葉身のつけ根に2個の蜜腺がある。
アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開_d0163696_12232085.jpg
蟻が来ているのをよく見かける。(写真はアミメアリ)

アカメガシワは蜜腺で蟻を呼び、葉を喰う外敵からガードさせている、とされている。

なお、ウィキペディアには “葉の裏に腺点がある” とあるが、表面の誤り。

2025年9月15日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2025-09-15 12:30 | 植物 | Comments(4)

観察録2025長野・夏-④

八ヶ岳の山麓と諏訪湖周辺で観たものを記録したい。

<ナンバンハコベ>
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18033400.jpg
はじめて観るとぎょっとするような花の形。
ハコベのなかま(ナデシコ科)だが、ナンバンという名前と違って在来種だという。
昔の人が花の形に驚いて“南蛮から来たハコベ”と勘違いしてしまったのかもしれない。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18034728.jpg
釣鐘のような半球形の大きながくに包まれて、花はうつむきがちに開く。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18035481.jpg
花弁は5枚で、それぞれ先の方が2裂するのはハコベと同じだが、中ほどで外に曲がる。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18040429.jpg
よく観ると花弁には長さ半分ほどの大きな鱗片がついて二重になっている。
雄しべは、花弁の間につく5本と、その鱗片につく5本の計10本だ。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18041336.jpg
雌しべの柱頭は3本。
雄しべは葯を落としている。もしかすると雄性先熟なのかもしれない。
子房は大きい。

その子房が膨らんで果実になる。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18042279.jpg
果実のとき、がくは反り返って丸くなる。
写真の果実はまだ若いものだが、このあと黒く熟す。

長野では林縁や農道わきなどでナンバンハコベを見かけるが、ふだんの私の立ち回り先(関東の街中や公園など)では見たことはない。

<クサフジ>
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18042928.jpg
名前はフジに似た草ということで草藤だろう。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18043687.jpg
花期は長く、初夏から夏の終わりごろまで続くという。

都市部で見られるナヨクサフジと似ているが、クサフジの花の色は淡い青紫系が多い。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18044294.jpg
見分けるポイントは花のつき方で、クサフジの花は柄が花の後端につく。

ナヨクサフジは花の色が濃いめで赤味がかっていることが多い。
またナヨクサフジは花柄のつく位置が違っていて、花の尻が突き出すようになる。

参考:ナヨクサフジ
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18045329.jpg

<ミズタマソウ>
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18045985.jpg
見かけると、つい撮りたくなる好きな植物。
長野のミズタマソウはきれいに見えるのは気のせいか?

<フキバッタの一種>
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18050880.jpg
種名は不明。
フキバッタは翅が小さいために移動距離が短いようで、地域によって種が細かく分かれているという。

<イヌゴマ>
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18051670.jpg
これも観ると撮りたくなる植物。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18052383.jpg
陽なたのものは暑さあるいは乾燥のためか萎れ気味だった。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18052975.jpg
イヌゴマはシソ科で茎が四角形。稜に沿って下向きの刺毛が並ぶ。

<キツネノカミソリとカラスアゲハ>
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18053650.jpg
キツネノカミソリを撮っていたら、カラスアゲハがやってきた。
カラスアゲハか、それともミヤマカラスアゲハか。悩ましいが前者とした。
観察録2025長野・夏-④_d0163696_18054357.jpg
花の奥の蜜を吸うためだろう、花に頭を突っ込んでいた。さしものアゲハの長い口吻も届きにくいのだろう。
薄暗い社寺の林床で、こんな写真しか撮れないがご容赦いただきたい。

以上で長野での観察記録は終了。
お付き合いいただきありがとうございました。

2025年9月9日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2025-09-09 18:15 | 植物と虫 | Comments(2)

観察録2025長野・夏-③

入笠山へ登った次の日、北八ヶ岳の白駒池を目指したのだが、残念ながら人出が多くて断念。
そのかわりに麦草峠付近の草原を見てきた。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22223340.jpg
麦草峠の標高は2110mという。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22224181.jpg
天気は最高、気持ちのよい草原が広がる。
黄色がアキノキリンソウ、白っぽいのはゴマナ、小さなピンク色はハクサンフウロだ。

<アキノキリンソウ>
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かつては身近な里山にふつうにあったそうだが、いまは山野に行くとどうにか観られる。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22232362.jpg
頭状花の構造はセイタカアワダチソウに似ている。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22232979.jpg
それもそのはずで、どちらもキク科アキノキリンソウ属(Solidago属)。
アキノキリンソウは別名アワダチソウとも呼ばれるという。果実が泡立つようだという呼び名だが、おそらくこれがセイタカアワダチソウの名前の由来なのだろうか。

参考:続・セイタカアワダチソウの花を観る ‐開花の順序‐  

<ゴマナ>
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22233772.jpg
ゴマナはシオンのなかま(Aster属)。
それにしても、どうして名前がゴマナなのだろう。ネットで調べると、葉がゴマに似ているというのが由来らしいが、いまひとつピンとこない。(そもそもゴマの葉をしっかり観たことがない)
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22234310.jpg
花は昆虫に人気があるようで、いろいろな訪花昆虫が観られた。

※ 種名が違っていたら申し訳ありません。ご指摘・ご教示いただけるとありがたいです

<ツヤケシハナカミキリ>
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体表に細かな凹凸がびっしりあるのでつや消しになっている。
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花粉が付きやすく、送粉昆虫としての貢献度は高いだろう。

<ヤツボシハナカミキリ>
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名前は上翅の斑紋が8個あるので八つ星だと思うが、星と体色には変化が多いそうだ。
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ハナカミキリ類はどれも小型で軽く、よく飛翔する。

<マルガタハナカミキリ>
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名前の“マルガタ”は丸っこい体形に由来するのだろうか。
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この日いちばん数多く、いろいろな花で見られたハナカミキリだ。

<カラカネハナカミキリ>
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金属光沢があるので“カラカネ”だと思う。
写真のような渋い金銅色から鮮やかな金緑色まで変化に富むという。

<ハクサンフウロ>
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ハクサンフウロはもう終盤にさしかかっているのだろう。花のほかに多数の果実もついている。
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雄しべ期の花(↑)と雌しべ期の花(↓)。
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参考:ゲンノショウコとフウロソウのなかま  

<シュロソウ>
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枯れているように見えるが、これでも開花中。
周囲に遮るものがなく、アキアカネのお気に入りの場所になる。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22253226.jpg
何ものにも似ていないと思ったら、それもそのはずシュロソウ科シュロソウ属とされている。
早くも果実になっているものもあった。
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あとになって名前の由来を調べると、葉のつけ根にシュロのような毛があるのだという。
撮った写真を注目してみると、葉はほとんど見えない。
1カットだけわずかに写っているのがあった。
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↑ の写真の下から1/3ほどのところに葉がある。これを拡大してみよう。
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う~む。残念ながらシュロのような毛は見えない。

<マルバダケブキ>
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丸い葉がフキに似ているという名前。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22262267.jpg
群生地のようすはまるでフキのようだ。
花は虫に人気がある。
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クジャクチョウのほかに、2種の蛾が吸蜜している。

<クジャクチョウ>
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鮮やかな色と紋様で孔雀のようだという名前だろう。
ほとんど花が終わったようなアザミから、盛んに吸蜜していた。
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翅の裏(↑)は地味だが、開いたときの目玉模様で外敵を脅すと考えられている。
ただ、クジャクチョウは吸蜜中に翅を開いていることが多く、ときどき閉じる程度なので、脅しの効果は疑問だ。

<ギンボシヒョウモン?>
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22265010.jpg
アザミを吸蜜しているが、ぐるぐる回りながら、うまいぐあいに翅の裏を見せてくれた。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22265610.jpg
撮っているときはウラギンヒョウモンと思っていたが、ネットで調べると斑紋からギンボシヒョウモンのようだ。
(間違っていたらすみません)

<ハナイカリ>
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はじめて観た植物。リンドウ科ハナイカリ属。
花の形が碇(いかり)のようだという名前らしい。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22271072.jpg
四方に広がる尖った部分は距(きょ)
花の後方から距の間を伸び出している緑色の部分はがく。
花弁はあまり開かないこのままの状態らしい。
奥まった距に蜜を溜めているとすると、昆虫にとってはたいへんに扱いづらい花だ。
花を切って内部を確認したいところだが、この場所に2株しかないようなので、観たい欲望をこらえた。

<ネバリノギラン>
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22271955.jpg
これまたはじめて観た植物。キンコウカ科ソクシンラン属というが、科名属名も初耳。
葉は見当たらなかったのだが、本来は株もとに根生葉を広げるという。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22272563.jpg
花はこれ。花弁はほとんど開かないという。
全体、触るとねばつく。
切って観たい欲望がもりもりと湧いてくるが、一株しかないので必死にこらえた。(無念じゃ)

麦草峠付近から見た入笠山。
観察録2025長野・夏-③_d0163696_22273376.jpg
黄緑色のうねりの部分は富士見パノラマリゾートだ。

次回は麓と諏訪湖周辺の観察記録の予定。
長野編は、あと一回お付き合いいただきたい。

2025年9月6日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2025-09-06 22:47 | 植物と虫 | Comments(2)

観察録2025長野・夏-②

入笠山の花畑

入笠湿原を抜けると、大斜面に花畑が広がる。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21314313.jpg
花畑も湿原も、鹿除けの柵で保護されている。
景観を損なうが、これは致し方ないだろう。むしろ適切な対応に感謝したい。
(花畑の全景を撮るのを失念していた。反省。)

<コバギボウシ>
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よく似たオオバギボウシよりも小さく、花は濃いめの紫色系。
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公園や人家で栽培されたギボウシ類を見かけるが、やはり本物は好い。(気のせいか?)

<シモツケソウ>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21320653.jpg
この花畑では数は少なかったものの、みごとな株があった。
シモツケソウの名前の由来は、下野の国(栃木県)に多いためというものと、木本のシモツケに似ているからというものがあった。本当のところはどうなのだろうか。

<ヤナギラン>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21321404.jpg
高層湿原や草原でよく目立つ。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21322201.jpg
名前は葉がヤナギに似ていて、花はランのようだということだそうだが、はたしてどうだろうか。
花は花序の下から上に向けて順に咲く。
個々の花は 雄しべの時期 → 雌しべの時期 と変化する雄性先熟。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21322966.jpg
写真(↑)の下の花が先輩にあたり、雌しべが熟して柱頭が開いた状態。
その上の花は後輩、雄しべの時期で、まだ雌しべは見えていない。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21323612.jpg
こちら(↑)の写真では、下の花は雌しべが長く伸び出しているが、上の花では雄しべの奥の方に短い雌しべらしきものが観えている。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21324473.jpg
こちら(↑)は上の花は雌しべの柱頭が開いた時期。右下の花はそれより少し先輩で、開いた柱頭が反り返っている。

悩ましい問題がある。
花序の下にあるのが雌しべ期で、上方の花が雄しべ期とすると、上から落ちた花粉で下の花が受粉することにな巣。雌雄異熟は自家受粉を避けるためのしくみとされるが、ヤナギランの場合は自家受粉しやすいことになってしまう。

ヤナギランを喰っている大きな芋虫がいた。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21325198.jpg
イブキスズメの幼虫と思われる。

<キキョウ>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21325771.jpg
野生のキキョウを観ることは、身近ではまずないだろう。
つぼみにとまったアキアカネ(?)と並んで記念写真。
栽培物よりも色鮮やかなように思えるのは、やはり気のせいだろうか。
なお、キキョウも雌雄異熟の典型として知られる。
参考:植物の雌と雄を観る-1  

<マツムシソウ>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21330794.jpg
これもこの季節の草原の主役の一つ。
写真の黒いシルエットの蝶はクジャクチョウ。虫にも人気が高い。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21331453.jpg
上の写真(↑)は中央付近の管状花はまだつぼみ。
マツムシソウはスイカズラ科とされるが、頭状花は周囲に唇形花のような舌状花、中心部は管状花という構造で、まるでキク科のようだ。
こちらの写真(↓)は中心まで全部が開花した状態。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21332222.jpg
ただし、よく観ると中心部の管状花は雄しべだけが見える雄しべ期で、外側の管状花は雌しべが伸び出した雌しべ期だ。これまた雄性先熟ということになる。

こうしてみると、山の植物には雌雄異熟のものが多いような気がする。
厳しい自然の中で生き抜くために身につけた性質なのだろうか。
…などと勝手なことを想像している。誰か、そんな集計をしていただけなものだろうか。

<ワレモコウ>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21332932.jpg
これも大好きな花なのだが、何度も観ているので詳しい観察はパスしよう。

ゆっくり観察して写真を撮っていたので、同行者からはずいぶん遅れてしまった。
スピードアップしなければ!

<ウラギンヒョウモン(?)>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21333750.jpg
タテハチョウのなかまは、私には種の識別が難しい。
撮った写真をあとでネットで調べてウラギンヒョウモンとしたが、どうだろうか。
花はノハラアザミと見たが、これも識別は難しい。

<オオウラギンヒョウモン(?)>
<オオウラギンスジヒョウモン>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21334459.jpg

翅を広げてくれるのはありがたいが、表面では種名がわからないと思っていたら…
別の蝶がちょっかいを出したときに翅の裏側を見せてくれた。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21335175.jpg
オオウラギンヒョウモンだと思う。<訂正:オオウラギンスジヒョウモンでした>
タテハチョウ類の識別には翅裏の紋様が重要だ。

<ヒメキマダラヒカゲ>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21335855.jpg
サトキマダラヒカゲはよく観るが、この蝶ははじめて。
山地性で幼虫は笹類の葉を食べて育つという。


山頂へ

花畑を抜けると、樹林を進むコースになる。山頂まではあと一息。
樹林ではサルオガセが目立つ。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21340681.jpg
サルオガセは湿った森の木につく地衣類。木々に寄生しているのではなく、着生して自身で光合成をする。
この一帯が、霧に包まれて湿りがちであるということだ。

じつはこの日も、ほとんど霧というか雲の中で、視界はほぼゼロという状態であった。
それが、ゴンドラを降りて湿原に出て花畑までのわずかな間だけ青空が見えるという神がかりの天候であった。(私の日ごろの行いのおかげか?)

いよいよ入笠山の山頂。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21341489.jpg
山頂は広場になっているが、その直下まで樹林におおわれる。
入笠山は南アルプスの最北端に当たるが、アルプスの山々とはかなり様相が異なり、生物にも人にも優しい山である。

山頂付近こそ陽射しがあったものの、残念ながら周りの景色はほとんど見えない。
天気が良ければ八ヶ岳やアルプスの山々、富士山まで360度のパノラマが広がるはずであった。

わずかに垣間見えたとなりの山。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21342253.jpg
南アルプスの甲斐駒ヶ岳と、その右手前は鋸岳と思われる。

眼下には諏訪湖が観えた。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21342820.jpg
ちなみに諏訪湖は標高759m、入笠山は標高1955mである。


<ミヤマハンミョウ>
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21343796.jpg
頂上の広場で一休みしてあんぱんを食べているときに、足もとに動く虫を発見した。
こんなところにハンミョウがいるとは驚いた。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21344509.jpg
あとで調べて、ミヤマハンミョウと判断した。
元気に動き回って、獲物を探している。
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21345377.jpg
ほどなく見つけたのは徘徊性のクモ。
半分干からびた死骸のようなクモだが、くわえて放さない。じっと止まって咀嚼している。

山頂のこの場所は、餌が少ないだろう。こんなところで暮らしているとは驚きである。
さらにハンミョウ類の幼虫は地面に穴を掘って暮らし、付近を通りがかった虫を捕らえて喰う。山頂付近は、冬の間はずっと氷と雪の世界に閉ざされるはずなのに…
それともこのハンミョウはどこか別の場所から移動してきたのだろうか。


さて、下山はほぼ同じ道。
通常は往復2時間ほどの行程を、5時間近くかかってしまった。
また来てみたい、たのしい観察であった。


おまけ
観察録2025長野・夏-②_d0163696_21350110.jpg
山を下りたトイレの入り口の床にいたキベリタテハ。
用を済ませてでてくると、キタテハは同じ場所でまだじっとしていた。
ちょうど一年前にも長野県の山のトイレでキベリタテハを観ている。
● 観察録2024長野・夏-①  
シックな装いは喪服の貴婦人などに例えられるが、やはりトイレがお好きなようだ。

2025年8月30日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2025-08-30 21:47 | 植物と虫 | Comments(4)

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