寄生植物 アメリカネナシカズラの観察
ヒルガオ科ネナシカズラ属(Cuscuta属)で、北米原産の帰化植物という。
上の写真は何年か前に我孫子市で観たもので、セイタカアワダチソウやイネ科植物に絡んで寄生していた。
詳しく観察しよう。
寄生根を観る
このいぼは寄生根とは別物のようだが、単に絡んだ相手にがっちり食い込むためのものなのだろうか。
寄生根は張り付くときに形を変えるようだ。
以前に観察したツタ(ナツヅタ)の付着根と同じような動きだ。
図鑑の記載はどちらも正しかったようだ。
参考:秋葉原で “ツタ” を観察 ⇒
アメリカネナシカズラは、芽生えたときには根があり、そのあと寄生するようになると根は枯れてなくなるという。つまり、宿主に絡んだつるが宙に浮くような状態ということ。
葉 ?
おそらく何の役にも立っていないだろう。
花と果実を観る
雄しべが5個で、花冠から突き出る。
中心部に2個の花柱があるが、アメリカネナシカズラは、この花柱が離れてつく。
よく観ると、雄しべのつけ根のところに房状に細裂した鱗片がある。これがネナシカズラとの識別ポイントだという。
在来種のネナシカズラを、私は見たことがないのだが、記載によるネナシカズラとの識別点をまとめてみる。
ネナシカズラは、花序は総状になる。花冠が閉じぎみ。雄しべが花冠より突き出ることはない。2個の花柱は合着する。
寄生植物に寄生するゾウムシ
別の虫えいを切ってみた。
寄主植物をゾウムシが操る?
ところで、上の虫えいの断面の写真で、本来黄色のはずのアメリカネナシカズラが一部緑色になっている。
原因は、マダラケシツブゾウムシの寄生・虫えいの形成によって、葉緑体をほとんど喪失していたアメリカネナシカズラに葉緑体が増えているのだという。
それによって光合成をするようになり、栄養価が高くなっているというのだ。
マダラケシツブゾウムシがアメリカネナシカズラを操って、より良い食糧に改造している。
おどろくべき事実だ。
参考:News Release/働かない寄生植物が、働き者へと変化!?/富山大学・京都工芸繊維大学(PDF) ⇒
マダラケシツブゾウムシはどこから来たのか?
マダラケシツブゾウムシはアメリカネナシカズラとともに海を渡ってきたのかと思って調べてみたら、じつは在来のゾウムシだった。
体長2.2~2.4mmとごく小さなゾウムシで、もともとは同じなかまのマメダオシに虫えいを作って寄生していたのが、帰化種であるアメリカネナシカズラにも寄生するようになったという。
マメダオシは絶滅危惧種だそうである。もしもそのままマメダオシだけに寄生していたら、このゾウムシも絶滅の危機にさらされていただろう。
マダラケシツブゾウムシにとって、アメリカネナシカズラの帰化は、まさしく天の恵みのような存在だったのではないだろうか。
外来の寄生植物を迎え撃つ、まるでウルトラ警備隊のようなゾウムシ。得意技は寄生植物の改造!
みんなで応援しよう。
参考:SAYABANE N.S.No.30/マダラケシツブゾウムシの寄主植物の再検討(PDF) ⇒
余談ですが…
こうなると、マダラケシツブゾウムシの成虫が観たくなる。
虫えいを持ち帰り、ケースに入れてゾウムシが出てくるのを何日か待った。
おそらくマダラケシツブゾウムシに寄生していたのだろう。
もしかすると、“風が吹くと桶屋が儲かる”のように、アメリカネナシカズラとともにこの寄生蜂も増えているのかも。
マダラケシツブゾウムシの成虫を観るために再度虫えいを採取してこようと思ったら、寄主植物(コセンダングサ、ヨモギ)とともに枯れてしまっていた。コンクリートのすき間なので、晴天が続いて乾燥してしまったのだろう。残念。
種子は落ちていると思うので、来シーズンにもう一度チャレンジしたい。
コンクリートのすき間に生える雑草と、それに寄生する外来のつる植物、その寄生植物に寄生して操るゾウムシ、さらにはそのゾウムシに寄生する蜂…
生きものの世界は奥深く、おもしろい。そして何より困難に満ちている。
2025年10月3日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-10-03 22:59
| 植物と虫
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アカメガシワの観察 ③雄株のからまわり
実を結ぶための、繁殖のための一番だいじな時期なのだろう。
元気な姿を観るとうれしくなる。
一方の雄株はどうだろうか。
ほかの枝ではおそらく花序の柄を落としていると思われるが、こちらも先端付近から次々に新しい葉が出ている。
雄株は、開花して花粉を作ったあとは取り立ててやるべきことはないはずだ。
それで新葉を展開し、自身の成長にあてているのだろう。
雌株はすでに果実が熟して裂開しているので、この雄花はまったくのからまわりだ。
いまさら焦ってもしょうがないだろうに…
アカメガシワは、冬季以外は次々に新葉を展開するとされる。新緑のころに一斉に開葉するのに対し、順次開葉と言う。
私の観たところでは、雄株はそのとおり盛んに新葉展開を続けるが、雌株はそれほどのことはないようだ。
とくに、果実をつけた枝では早い時期に越冬芽をつくると思われる。
雄株のからまわりはいつまで続くのだろうか。
さて、ほかの雌雄異株はどうなのだろうか。
雄株がからまわりする例を2つ観察できた。
アオツヅラフジ
この年の観察では、雄花は11月8日まで開花していた。
● アオツヅラフジ -青春の葛藤- ⇒
エビヅル
アオツヅラフジもエビヅルもつる性の木本で、つるを伸ばしながら次々に花をつけるので、花期は長い。
とはいえ、雌株は適当なところで花をつけるのをやめて果実を充実させることに向かう。
だが、雄株はそのあとも休むことなく花序をつけ、雄花を開かせる。
働き者の雄株ではあるが、もう少し要領よく立ち回ればいいのに … と思う次第である。
2025年9月20日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-09-20 18:36
| 植物
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アカメガシワの観察 ②花から果実
雌と雄が個体ごとに別にある植物を雌雄異株(しゆういしゅ)という。雌雄異株か雌雄同株かは植物の種類によってほぼ決まっている。雌雄異株の草本は少ないが、木本ではかなり多くの種が雌雄異株である。
なお、上の写真では雌の木が明るい緑で雄の木が濃い緑だが、一般的にそのような色の違いということではない。
アカメガシワの雄花
多数の雄しべと、そのつけ根にあるのは反り返ったがく片だと思う。
じつに潔い雄花だ。
雄花は6月はじめから咲きはじめる。
雌花は雄花とほぼ同じ時期だが、少し遅れて咲くように思える。
アカメガシワの雌花
柱頭は3裂。
子房にはとげ状の突起があるが、一つ前の写真のように突起が見られないこともあった。
アカメガシワの果実
しぼんだ柱頭と、とげ状の突起はほぼそのまま残っている。
種子は鳥に好まれるが、栄養に乏しく、喰われてもそのまま排出される。
黒い種子は栄養豊富な果実に似ているので、鳥が勘違いして食べて運ぶ、ということらしい。
参考:自然観察大学/まるごと観察会(2024年第4回)レポート/黒い実のいろいろ ⇒
さて、雌株は花から果実へと育てる、たいせつな仕事がある。
この間、雄株は何をしているのか?
次回はその観察記録の予定。
2025年9月17日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-09-17 22:10
| 植物
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アカメガシワの観察 ①冬芽~葉の展開
アカメガシワは新葉が展開するときに赤味を帯びるので“赤芽”。
典型的なパイオニアプランツ(先駆的植物)だ。
① 冬芽~葉の展開② 花から果実③ 雄株のからまわり
今回は全3回の予定でご報告したい。
冬芽は裸芽
これらのような状態で冬を過ごす。
なお、芽鱗(がりん)に包まれた鱗芽(りんが)に対し、芽鱗がないものを裸芽(らが)という。
赤い新葉の正体
毛は葉の展開とともに疎らになり、落ちる。
花外蜜腺
アカメガシワは蜜腺で蟻を呼び、葉を喰う外敵からガードさせている、とされている。
なお、ウィキペディアには “葉の裏に腺点がある” とあるが、表面の誤り。
2025年9月15日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-09-15 12:30
| 植物
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観察録2025長野・夏-④
八ヶ岳の山麓と諏訪湖周辺で観たものを記録したい。
<ナンバンハコベ>
ハコベのなかま(ナデシコ科)だが、ナンバンという名前と違って在来種だという。
昔の人が花の形に驚いて“南蛮から来たハコベ”と勘違いしてしまったのかもしれない。
釣鐘のような半球形の大きながくに包まれて、花はうつむきがちに開く。
花弁は5枚で、それぞれ先の方が2裂するのはハコベと同じだが、中ほどで外に曲がる。
よく観ると花弁には長さ半分ほどの大きな鱗片がついて二重になっている。



雄しべは葯を落としている。もしかすると雄性先熟なのかもしれない。
子房は大きい。
写真の果実はまだ若いものだが、このあと黒く熟す。
長野では林縁や農道わきなどでナンバンハコベを見かけるが、ふだんの私の立ち回り先(関東の街中や公園など)では見たことはない。
<クサフジ>
ナヨクサフジは花の色が濃いめで赤味がかっていることが多い。
またナヨクサフジは花柄のつく位置が違っていて、花の尻が突き出すようになる。
参考:ナヨクサフジ
<ミズタマソウ>
長野のミズタマソウはきれいに見えるのは気のせいか?
<フキバッタの一種>
フキバッタは翅が小さいために移動距離が短いようで、地域によって種が細かく分かれているという。
<イヌゴマ>
<キツネノカミソリとカラスアゲハ>
薄暗い社寺の林床で、こんな写真しか撮れないがご容赦いただきたい。
以上で長野での観察記録は終了。
お付き合いいただきありがとうございました。
2025年9月9日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-09-09 18:15
| 植物と虫
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