自然観察大学ブログ

ハクウンボクの冬芽

寒い。
今日(1月25日)は日本列島が寒気におおわれた。
都心でも-4℃と記録的な寒さだそうである。
さすが“大寒”まっただなか、“水沢腹堅”である。
『季節の生きもの観察手帖』( )を見ると、1月25日の欄に次のように記されている。

● 気温-41℃を記録 1902年 北海道旭川市 気象庁 ★観測史上国内最低気温

… 100年前も、やはり今日という日は寒かったのだ。
さすが、二十四節気・七十二候、先人の慧眼にはおそれいるばかりである。


さて本題。
昨年の暮れの観察である。(いつも月おくれですみません)
ハクウンボクの木に、落ちずに頑張っている葉が散見された。
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一見すると、どうということのない枯葉だが、葉のつけ根の部分が少し膨らんでいるのが見て取れるだろうか。
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葉柄のつけ根を拡大してみよう。
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冬芽である。

ハクウンボクは葉柄の中に冬芽を作る。
いわゆる“葉柄内芽(ようへいないが)”で、プラタナスと同じやり方だ。
夏にはすでに葉柄の中に冬芽を用意しているのを確認している。

葉柄で包むことで冬芽を守るのだと思うが、冬に向かうころに落ちてしまうのだから、寒さ除けではないのだろう。

こちらはすでに落葉した冬芽。
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フリースのような綿毛にくるまって、寒さ対策は万全、といったところなのだろう。
葉が落ちた痕(葉痕)が、冬芽のつけ根の部分にぐるりと取り巻いて見える。
この日の観察では、ほとんどが落葉してこのような状態であった。

ちなみに、花の時期のハクウンボクも紹介しておこう。
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こちらは昨年5月5日の撮影。
ちなみに、冬芽を見たのと同じ木で、場所は千葉県柏市の柏の葉公園である。
多数の花をつけたようすが白雲のように見えるのでハクウンボクだそうだが、いかがだろうか。

ハクウンボクはエゴノキのなかまで、果実もエゴノキによく似ている。
昨年のこの木の観察では、果実に虫がかじったあとが散見された。
もしかしてエゴヒゲナガゾウムシ()の産卵痕か、と考えたのだが確認できていない。
今後の課題である。

2018年1月25日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2018-01-25 18:40 | 植物 | Comments(0)

ラクウショウとメタセコイアをくらべる(続)

紅葉と実(球果)

メタセコイアが鮮やかに紅葉していた。
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上の写真は12月9日の水元公園のもの。
紅葉、黄葉、といえばカエデやイチョウに代表されるが、針葉樹の紅葉も素晴らしい。
滋賀県のメタセコイア並木の紅葉はすごい人気のようだが、水元公園もみごとなものであった。

次はラクウショウの紅葉。
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この写真は10月末の柏の葉公園のもの。
夕刻の光に鮮やかに浮かびあがっていた。
どちらかというとラクウショウのほうが色鮮やかな気がする。

水元公園ではメタセコイアとラクウショウが数多く植栽されていて、くらべて観察しやすい。


実(球果)をくらべよう

これはメタセコイアの球果。
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遠くのものを望遠(600mm相当)で撮っているので、画質はご容赦いただきたい。

じつは、広い水元公園内で球果を確認できたメタセコイアはたった一本であった。そして貴重なこの木にも球果の数は少ない。
(すべてを見たわけではないし、高所で見えないものも多いだろうが…)

ラクウショウはどうか。
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遠目にも、枝先にたくさんの球果が確認できる。(クリックで拡大可能)

私の観察しているのは水元公園、柏の葉公園だが、メタセコイアの球果が確認できるのはそれぞれ1株ずつに過ぎない。
かたやラクウショウは、どの木も多数の球果をつけている。これは大きな違いだ。

なお、このブログで次の記録を見てない方は、先にご覧いただけるとありがたい。
●ラクウショウとメタセコイアをくらべる
 http://sizenkan.exblog.jp/25484953/ 
●メタセコイアの花から実
 http://sizenkan.exblog.jp/24231640/ 
次は落ちていたメタセコイアの球果。
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10月末、遅い台風によって、たくさんの若い球果が落ちてしまった。
貴重な球果が残念なことになってしまったものだ。
(柏の葉公園のメタセコイアの樹冠下で採集)

規則正しく並んだ鱗片に沿って裂開する。
手で割ってみたのがこれ。
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鱗片の間に、翼のある平たい種子があった。

次はラクウショウ。12月はじめの成熟した球果。
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不規則な割れ目はいかにも気まぐれなラクウショウらしい。
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成熟した球果は、手でふれるとすぐにバラバラになる。
不整形のピラミッドのような、濃い褐色のかけらが種子だろう。
メタセコイアとは全く異なる。


花をくらべる

気になるのは来年開花するはずのつぼみである。
今の季節、メタセコイアでは多くの株で多数のつぼみが確認できるが、ラクウショウはつぼみがまったく見られないのだ。

今年のはじめに観察した雌花の違いを確認しておこう。
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上がメタセコイアで、下はラクウショウ。
それぞれの雌花を拡大してみよう。
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上のメタセコイアは穂の先端に雌花がある。
下のラクウショウは雄花の穂とは異なる枝に雌花をつけている(すでに若い球果)。


メタセコイアのつぼみ


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12月のいまの季節、ほとんどのメタセコイアはすでに多数のつぼみをつけている。

次の写真は9月初めのもの。
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ここから葉が落ちて、一つ前のような穂になる。
ずいぶん早くから開花準備を進めるものだ。

※ 7月ころからつぼみらしいものを見たが、そこから新葉が芽吹いてきたものもあった。


ラクウショウのつぼみ~花の謎

問題はラクウショウである。
現時点ではつぼみらしいものは確認できていないのだ。

これは10月末に見たラクウショウ。
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枝先についた芽は、果たしてこのあと花になるのか、どんなふうに成長・変化していくのか…
このときはワクワク・ドキドキしたものだ。

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こちらは12月初めの芽。(別の枝)
残念ながら、変化はない。
ラクウショウは、どこがどうなって、花を咲かせるのか。

じつは、昨年の2月に自然観察大学のI島先生とメタセコイアの花を観察したときにも、並行してラクウショウの花を探していた。
ところが結局見つからず、気づかぬままにいつの間にか結実していたという次第である。
2人そろって、情けない話である。
たくさんの球果をつけるということは、花もそれだけ多くなければいけないのだが…

メタセコイア、ラクウショウともに、近代に緑化目的で持ち込まれた樹種である。
導入種は植物図鑑では軽んじられることも多いようで、そもそもいにしえの植物図鑑には掲載されてない。
謎の多い植物である。


追 記

ここまでの報告をまとめたあとで、別の場所(さいたま市 見沼グリーンセンター)で、鈴なりになったメタセコイアの球果を発見した。
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また、ラクウショウのつぼみも見つけることができた。(見沼自然公園)
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しかし、それらの詳しい報告を追加するとなると、また投稿が先送りされてしまう。いつまでたってもきりがない。
ただでさえ、めったに更新されないこのブログである。
今回は中途半端な内容ではあるが、欲張らずにここまででアップさせていただくことにした。
ご容赦いただきたい。


植物生態学部S子さんへ(事務連絡)
以前このブログに投稿いただいていたS子さんの連絡先がわからなくなりました。
事務局OのPC故障によりアドレス帳が紛失したためです。
S子さんにお願いしたいことがあります。一度事務局へご連絡いただければありがたいです。
急ぎませんので、いつでもお待ちしております。

2017年12月20日、報告:自然観察大学 事務局O
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# by sizenkansatu | 2017-12-20 13:03 | 植物 | Comments(0)

漆掻きを体験

9月なかばに、自然観察大学講師の川名先生とともに、茨城県大子町の漆生産の現場を見てきた。
自然観察とは話がそれるが、ご容赦いただきたい。
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これが漆畑。ウルシが等間隔で植えられている。
樹幹に付けられた黒い傷が“漆掻き”の溝で、これを“辺”という。
下枝が落とされて真っ直ぐになっているのは、多数の辺をつけて効率よく漆を採取するためだ。

畑は山深い中にあって、イノシシも普通に生活しているようなところだ。
放っておくとすぐに、奥に見える藪のようになってしまう由。
管理はたいへんなことと想像できる。

漆には強いアレルギーの人が多く、人家の近くに畑を作ると問題になるらしい。山深いところに畑を作るのは、そのことと関係があるのかもしれない。

案内いただいた漆掻き職人のO.K.さんに話を伺った。
同じウルシの木では4日ごとに辺をつけ漆液を収穫するそうである。
辺の深さ、位置ぎめなど木の生理・生態を知り尽くし、効率よく採取していることが分かった。
(詳しくは別の機会に紹介します)

さて、私も漆掻きを経験させていただいた。
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これが私の掻いた“辺”である。
“掻き鎌”という独特の形状をした鋭利な刃物で掘ると、見る間に漆液がにじみ出してくる。
これが本物の樹脂である。

本来は溢れる前にへらで掻き集めるのだが、このときは撮影用に溢れさせてしまった。
貴重な漆液なのに、申し訳ないことである。

漆掻きの道具も紹介しよう。
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手前から
・漆液を採る“掻きべら”
・樹皮に溝を掘るU字型の刃の“掻き鎌”
・へらで採った漆液を集める“漆桶”(ホオノキの樹皮を丸めて作る)

昭和の末期にはこの大子町で年間1トンを生産していたものが、現在ではわずかに200キロほどになってしまったそうだ。少しさかのぼって昭和30年代には2トンだったというのだから、短期間に激減している。安価な海外産の輸入漆液におされているためだ。

海外では天然ゴムのように受け皿を設置しておいて漆液を集めるという。その理由もあってか、海外産は不純物が混じるなどで、収穫した漆液の品質に大きな違いが出るらしい。
大子の漆は、透明度と光沢で作家の方々の間でも高い評価を得ておられるそうだ。

日本の漆は12000年前(1200年前ではない!)から利用されていることが分かっているらしい。なんと縄文時代である。絶やさずに受け継いでいただきたいものだ。


余談ですが…

じつは川名先生は見かけによらず(失礼!)漆に強いアレルギーがあって、畑ではヤッケに眼鏡・手袋・マスクと完全防備であった。そのおかげでなんとか無事に取材を遂行できた。
一方私は、ついうっかり素手で漆液にふれてしまったのだが、幸いなことに何も無かった。(本来はデリケートな肌のはずです)


大子町では11月11日に「うるしフェスタ2017」が実施される。
お近くの方、興味のある方にお勧めしたい。

NPO法人麗潤館(今回取材でお世話になった団体)のHP
⇒ http://reijunkan.com/ 

同HP内の「うるしフェスタ2017」の案内直通(チラシPDFが閲覧できます)
⇒ http://reijunkan.com/info/1043.html 

2017年10月6日、報告:自然観察大学 事務局O
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# by sizenkansatu | 2017-10-06 12:56 | その他 | Comments(0)

ラクウショウとメタセコイアをくらべる

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これは6月のラクウショウ。
メタセコイアに似るが、何となく葉や枝がバラバラでアバウトな印象だ。
ラクウショウには呼吸根というものがある。上の写真で画面右下に、根が地面から突き出ているのがお分かりだろうか。
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ラクウショウが池の端や湿地で生活できるのは、呼吸根によるものだという。
メタセコイアには呼吸根はない。これが一番の違いだ。

葉を比べてみよう。
まずはラクウショウの葉。
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一枚ずつ互い違いになっている。(互生)

次はメタセコイアの葉。
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2枚の葉が向かい合わせについている。(対生)

注目したいのは、ラクウショウの場合はきっちりとした互生ではなく、何となくランダムな並び方をしていることだ。このアバウトさが、樹形にも表れているのではないだろうか。(1枚目の写真)

ちなみに、どちらも細長い小さな葉がたくさん並んでいるのであって、複葉ではない。
それがよくわかるのが次の写真。
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早くも葉腋に芽を付けたメタセコイアがあった。(7月初め)
葉のつけ根から芽が出るのであって、複葉の小葉のつけ根であれば芽をつけることはない。


話がそれますが…

上の写真では、葉は対生でほぼ同一平面上に並ぶ。これを2列対生という。
葉の付け根の部分(葉柄のようなものか?)が葉鞘のように枝をくるんでいるのだが、よく見るとこれが節ごとにねじれて角度を調節しているのが分かる。

比較として、以前に報告したメタセコイアの若い実の写真をもう一度見てみよう。
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この葉も対生だが、節ごとに90度ずつ角度が変わっている。これを十字対生という。

メタセコイアの葉は本来は十字対生だが、一つ前の写真つまり普通の葉では、節ごとにねじることで2列対生になっていると思われた。


実(球果)を比べる

さて、かんじんの「花から実」を比べてみよう。
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上はラクウショウで、画面上方の緑色の部分がごく若い実。(4月撮影)
その両側に何本も垂れ下がるのが、雄花の穂だ。(すでに花は終わっている)
少し拡大してみよう。
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雌花は雄花の穂の付け根にあるように見えるが、枝先に雌花がつき、その少し上(元のほう)から雄花の穂が垂れる。

メタセコイアでは雄花の穂の先に雌花があったので、これは大きな違いだ。
比較のためにメタセコイアの花を再掲しておこう。
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それぞれの先端にある、緑色の小さいのが雌花である。

※ 詳しくは「メタセコイアの花から実」をご覧いただきたい
 ⇒ http://sizenkan.exblog.jp/24231640/

これが実になるとどうか。
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左がメタセコイアで、右がラクウショウ。(6月撮影)
大きさが違うのは分かるが、もう一つ注目したいのは枝先だ。
左のメタセコイアは枝先に実がついて、そこで成長を止めている。それに対し、ラクウショウは実の脇から新しい枝を伸ばしている。


実の比較で分かるそれぞれの性格

もう一つ。面白い話を聞いたので紹介しよう。
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上がラクウショウの実で、下がメタセコイアの実。(比較しやすいように大きさを合わせて表示)

見るからに感じが違うのだが、その理由が面白い。
● ラクウショウは葉が互生でしかもアバウト。その延長なので実はサッカーボール的になる。
● メタセコイアは葉がきっちりした対生なので、実はバレーボール的になる。
ということなのだ。花や実は枝葉(シュート)の変化したものであるという証拠が、実の比較から見えてくる。

たいへんに面白い視点だと思うのだが、この話は茨城のO幡先生からうかがった。
O幡先生、ありがとうございました。

2017年8月30日、報告:自然観察大学 事務局O

その後に続編を掲載しています。よろしければ次をご覧ください。
→ http://sizenkan.exblog.jp/26251266/ 

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# by sizenkansatu | 2017-08-30 17:09 | 植物 | Comments(0)

マダニの観察

何かと話題になるマダニ。
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8月半ばのこの日、わたしは近所の霊園で野外観察をしていたのだが、昼過ぎに雨が降り出したので早めに切り上げた。帰宅後に着替えてごろごろしていると、私の膝の上にいるマダニを発見した。それを捕まえて紙の上に置いたのがこの写真だ。体長は3mm弱。

服について連れ帰ったマダニが、何かのときに足に乗り移ったのだと考えられる。
マダニは皮膚の薄くて柔らかい、股の間や首すじなどに移動して吸血するのだという。間一髪のところで気が付いてよかった。
ホッとしたところで、自然観察大学らしく「形とくらし」を考えてみよう。

調べるうちに、マダニの驚くべきことがいろいろと分かってきた。今回は文字が多いが我慢してお付き合いいただければありがたい。


マダニには頭が無い?

まずは前から観てみよう。
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驚くべきことに、マダニには頭部が無いそうである。
昆虫の場合は頭部・胸部・腹部に分かれ、クモ類では頭胸部・腹部に分かれている。
マダニも一見するとクモ類と同じように見えるのだが、実は頭胸部にあたるところは「顎体部」という。

上の写真を少し拡大してみよう。
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複眼のように突き出た部分があるが、これは眼ではない。
またその先には大あごのようなものがあるが、これも大あごではない。
これらは「触肢」という付属肢だというのだからびっくり。
大あごのような部分のすき間にわずかに見えるのが「口下片」という。口針にあたる部分で、ここで血を吸収する。(吸うのではなく、舐めるのに近いらしい)

マダニ類には眼も脳もなく頭部としての機能がないので、「顎体部」というらしい。
(つまり頭部に見えるところは全体が口器!?)

上の写真で後頭部(後顎体部)の後ろ向きの突起までが顎体部で、その後方はすべて腹部である。ということは、マダニには口とおなかしかないということになる。

前脚(第1脚)の付け根に大きなとげがあるが、吸血時に皮膚に食い込ませて固定するのだろう。(体ごと差し込むようなスゴイ取りつき方をする!)

ちなみに、腹部の背面には「背板」というやや硬い甲羅のようなものがあるのが、マダニ類の成虫の特徴なのだそうだ。(雌は約半分ほど、雄は全面を覆う)


驚くべき吸血のメカニズム


吸血する際に、血液が凝固しないような化学物質が唾液中に含まれているという。これは蚊も同じだ。
マダニの唾液にはさらに超絶機能があるという。

マダニの中のチマダニ属などは顎体部が短く(今回の写真のマダニもこれ)、寄生者の皮膚に安定して取りつくために、セメント様物質を分泌して固定をするというのだ。
食われたときに無理やりはがしてはいけないというのは、もっともなことである。

マダニは蚊に比べてはるかに長時間の吸血をする。マダニの種類や生育ステージによって異なるが、短い場合で十数分、長いものでは1か月(!)という。そのためにセメントで固定するというのだ。
飽血(おなかがいっぱいということ)が近づくと、今度はセメントを溶かす物質を分泌するという。

なんという機能だ。
口とおなかだけというシンプルな構造でありながら、このような高機能を持っているとは、じつに驚きである。
(同時に、これを解明した方に称賛をお送りしたい)


前脚がくせ者
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ダニの仲間はクモ類同様に4対(8本)の脚があるが、観察したところでは前脚(第1脚)を歩行にはほとんど使わないようだ。
前脚をあげて、触角のようにゆらゆらと怪しげに動かしながら歩く。(ネコハエトリのクモの合戦のよう)

脚先を観てみよう。
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先端は鋭いかぎ爪がある。写真では1本爪のようにも見えるが、普通の昆虫と同じ2本爪だ。
爪の付け根に肉球のようなものもある。これは昆虫の褥盤か爪間盤のようなものだろう。(参考:カメムシのつま先http://sizenkan.exblog.jp/19449532/

マダニ類は草むらの葉先にとまって、動物が通りかかるのを待つという。
信じられないほど長い間じっと獲物を待つのだから、チャンスは絶対にものにしなければならない。そのための前脚なのだ。


参考書籍とサイト

マダニの口器の構造は次をご覧いただきたい。(超絶構造!)
●フタトゲチマダニ/ムシをデザインしたのはダレ?
https://baba-insects.blogspot.jp/2017/07/blog-post_14.html

ほかに、今回の記事で参考にさせていただいたものは次のとおり。
●「日本ダニ類図鑑」(江原昭三、全国農村教育協会)
●「野外の毒虫と不快な虫」(梅谷健二、全国農村教育協会)
●マダニの生物学/PDF

https://www.bayer-pet.jp/vet/research_pdf/nomi_madani_57c.pdf
●マダニの遺伝学的な型別(同定)のために(初心者編)/PDF
http://www.vet.yamaguchi-u.ac.jp/member/takano/140421.pdf

予防・対策は次をご覧いただきたい。
●マダニ対策、今できること/国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html


ところで、
本記事の写真のマダニの種名が分かる方は、ぜひご教示いただきたい。
フタトゲチマダニではないかと思うが、いかがでしょうか。

関西以西ではSFTSが話題になっているが、他人ごとではない。
マダニ対策に帰宅後に着替えて風呂に入ることは、ぜひ心掛けたいものだ。

2017年8月22日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2017-08-22 19:24 | 昆虫など | Comments(0)

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