サルトリイバラの観察 ②
サルトリイバラの葉
幅広で中央の主脈のところから折れ気味なので、餅を包むのには都合がよさそうだ。
なお、この写真の葉は中央に斑紋があるが、ときどきこのように斑紋のあるサルトリイバラを見かける。
西日本では柏餅にサルトリイバラの葉を利用する地域があるという。関東でも“ばらっぱ餅”や“ばらっぱ饅頭”として使うという話も聞くし、名古屋の銘菓“餡麩三喜羅”というのもある。(サンキライはサルトリイバラの別名)
上下に突き出ているのがひれ状に見えた部分。
中央の白いのは維管束が集まっているところ。
ひれ状の部分は上方に口を開けている。
これを観たのは4月26日だったが、翌年開く冬芽はこの時点、すなわち1年前に用意できていたことになる。
これはいわゆる“葉柄内芽(ようへいないが)”としてよいと思う。
葉柄内芽は葉柄で冬芽を守るとされ、その例としてスズカケノキ(プラタナス)類やハクウンボクが知られる。
スズカケノキは落葉のとき、ハクウンボクは翌年の萌芽の前までに葉柄を落とす。冬芽を守るのは半年から1年間だ。
それに対してサルトリイバラの場合は、萌芽のときはもちろん、長いものではまる2年間以上もずっと守り続ける。面倒見がよいというか、子離れできない葉柄内芽である。
果実と種子
(1年前の2025年の1月の撮影。葉柄が残っている)
ネットで見ると、種子は1個という記事と3個という記事があった。
1個の果実に種子は1~3個ということになる。
なお、果実は赤くなったあとさらに熟して褐色になり、破れて種子を出すという記事をネットで見た。
そういえば赤い実を鳥が食べるところは見たことがない。
1月現在の果実はしわしわになっているが、まだ赤い。熟して種子を出すかどうかを確かめてみたい。
サルトリイバラの地下部
サルトリイバラの地上部は数年で枯れて、太く短い地下茎が残るという。
実物を観たくなった。
ここは大きなヒノキの生け垣で、夏にはサルトリイバラがおおいつくすような勢いだったところで、暗い樹冠下には下草がない。
もっと深く地下茎が張り巡らされているようなのだが、これ以上は掘り進めなかった。
ヒノキの生け垣の下で、低い姿勢で掘るので、もう限界だ。
深いところに大きな地下茎があって、四方八方に茎(つる)を伸ばしているのかもしれない。
大がかりに掘り返してみたいが、さすがにそれは難しい。
サルトリイバラは木か草か?
サルトリイバラは木本とされる。地下茎は木化して太くなり、地上茎も木化するが緑色のままのものも多く、太くなることはない。
一般に木の定義は次のようにまとめられている。(『樹木博士入門』より)
➀ 茎や根が木化する② 木化した茎や根は肥大成長する③ 休眠芽(冬芽)が地上にある
サルトリイバラは③は該当するが、地上茎はなかなか木化せず太ることはないので➀と②に関しては疑問が残る。
クズ、アオツヅラフジ(カミエビ)など、つる植物には木本か草本か悩ましい植物が多い。
もっとも、木と草とを分けているのは人間の勝手な考えである。
本人たちにとってはどうでもよいことなのだろう。
おまけ サルトリイバラで見た虫
2025年にサルトリイバラで見た虫を2種紹介しよう。
おどろおどろしい姿だが、毒はないので安心。
ホトトギスを喰われるととんでもなくかわいそうな気になるが、サルトリイバラなら少しぐらい喰われてもよさそうな気がする。
2026年1月10日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2026-01-10 21:41
| 植物
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サルトリイバラの観察 ①
写真は12月10日のもので、赤く熟した果実と黄葉が美しい。
サルトリイバラはサルトリイバラ科サルトリイバラ属(Smilax属、シオデ属、)とされるつる性の木本。
独立した科になっているくらいなので、いろいろとユニークな性質を持っている。
サルトリイバラを一年間観てきたので、まとめてご報告したい。
冬芽とその展開
注目したいのは葉柄のところだ。
葉柄の先には、巻きひげも残っている。
よく観ると、葉柄は上半分が開いていて、そこには冬芽ができている。
冬芽は1個の芽鱗があるが、それを下から支えている葉柄はかなり頑丈で、容易にはがれることはない。
なお、ここでは葉柄としたが、托葉とする記載もあるようだ。
葉身と茎をつなぐ部分なので葉柄であり、托葉が変形したものが巻きひげなのだと思う。
まぁ、サルトリイバラ本人にとってはどちらでもよいことだろう。
神秘の世界である。
その枝には冬芽が8個あって、それがいま、開きはじめている。
なお、画面下の横に伸びる枝はその前の年の枝(2年枝)だが、まだ葉柄は残っていて、巻きひげもついている。
まる2年間も残っているとは、なんと頑丈な葉柄なのだろう。
これがこれから伸びて、新しいシュート(葉や花をつけた枝)になるのだ。
サルトリイバラの花
これだけのものが小さな冬芽に詰まっていたことになる。
サルトリイバラは雌雄異株で、これは雄株ということになる。
雌しべの柱頭は3個、子房は膨らんでいて、これが丸い果実になる。
なお、私の身近では、雄株が多く雌株は少ない。
巻きひげが名前の由来では?
ところが、ネットで調べてみると“巻きひげでサルを捕らえる”というような記事は見当たらない。
Wikipediaなど、“茎(つる)にとげがあってこれが猿捕茨の名前の由来である”という記載ばかりであった。
これは本当だろうか。サルトリイバラにはとげのほとんどないタイプ(トゲナシサルトリイバラ)もあって、私の身近ではそのようなサルトリイバラばかりなのだ。
まぁ、名前の由来は、ほとんどの場合は後世の憶測なので、正解というものはない。いろいろ想像するたのしみがあってよい。
②につづく。( ⇒ )
2026年1月7日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2026-01-07 18:12
| 植物
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ウバメガシの観察
このドングリは去年の春に咲いた花が成長したもので、こうなるまで1年半かかっている。
成長が遅いためか、公園などで大きくなった木を見かけることは少ない。
大きくなりにくいからか、生け垣に利用されているのをよく見かける。
花から果実
ウバメガシはどこにでもあるのに、その花を観ることが少ない。
それは、大きな木にならないと花をつけないことと、剪定されてしまうためだろう。
ウバメガシは雌雄同株で、同じ枝に雄花と雌花をつける。
冬芽とくらべると、果実が小さいことがよくわかる。
どのように成長してどんぐりになるのか、この姿からは想像できない。
花後およそ14か月。殻斗が膨らんできたが、まだ果実が見えていない。
雌花はふつう2個ずつつくので、どんぐりもふつう2個が並ぶ。
どのどんぐりも殻斗は離れている。
ウバメガシのどんぐりは、小さめの殻斗に大きなどんぐりをつけるので、つけ根の部分が細くなっていることが特徴だ。
それにしても、花が咲いてからどんぐりを落とすまでおよそ20か月。
熟成された、立派などんぐりだ。
ほかの2年成熟型のどんぐりの1年目
どんぐりはブナ科の果実の総称だが、ウバメガシのように開花の翌年に熟すタイプ(2年成熟型)と、コナラやシラカシのように開花した年の秋に熟すタイプ(1年成熟型)がある。
どちらも秋にどんぐりを落とすが、2年成熟型は同時に若いどんぐりが観察できる。そんなどんぐりの子どもを並べてみよう。(いずれも12月に撮影)
冬芽は枝のつけに観える球状。
2025年12月21日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-12-21 15:40
| 植物
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シロザの観察
同じなかまで新葉が赤いタイプのアカザは、杖用の素材に最良とされる。(仙人の杖はアカザに限るとか…)
そのうえこの花は、雌雄異熟の面白い動きをするという。
ところが、じつはよく観ていないことに気づいた。
身近でよく見かけるだけに“またシロザか”とばかりにスルーしてしまうのだ。
花が小さいことも、見過ごしがちな理由の一つだろう。
詳しく観てみよう。
シロザの花/雄性期から雌性期へ
大きな葯(実物は小さい)がきれいに並んで、ぱんぱんに膨らんでいる。
中心の丸いすき間に見えるのが雌しべで、子房の先に柱頭がある。
開きはじめの花とくらべると、子房も少し膨らんできているようだ。
さて、シロザの花は雌雄異熟で、雄しべが熟したあと、いったん花被を閉じるという。
そのあと雌しべが伸びて、隙間から柱頭を出すのだという。
どんな形なのか、ネットで調べても、その状態の写真は見当たらなかった。
仕方がないので、自力で雌しべ期の花らしいのを探してみた。
開いた花の右隣の花と、反対側左奥の花では、閉じた花被の間から糸状のものが出ている。(↑)
こちらの花(↑)でも、閉じた花被のすき間から糸のようなものが…


ということは、糸状のものは葯を落とした雄しべの花糸ということになる。
シロザの花/雌性期
撮影しているときは雄しべ期の花を撮ったつもりだったのが、後で画像を拡大すると、すぐ近くに柱頭を出した花があるではないか!
閉じた花被片の中心から出ているのは、明らかにブラシ状の柱頭だ。
雌雄異熟の花はほかにもたくさんあるが、シロザが途中で花被を閉じるのはなぜなのだろう。
自家受粉を避けるためだけなら、閉じてまで徹底する必要はないと思う。
このような手順を踏む植物はほかにもあるのだろうか。
シロザの果実
膨らんで五稜郭のようになるのが、ちょっとかっこいい。
果実はごく薄い果皮に包まれ、中に光沢のある種子が1個あるという。
花は小さいが、種子は意外に大きい。(大きいといっても直径2mm程度)
シロザの成長
シロザは春ごろに陽当たりがよい場所でごっそりと芽生える。
まわりの草丈の低いのはオオイヌノフグリだ。(5月半ばに撮影)
このように、シロザはほかの植物の陰にならない、陽の当たる環境に育つ。
植物にとって厳しい環境ではあるが、そんなところでも繁殖するのがシロザで、雑草の本領発揮というところだろう。
シロザの粉粒
白かった粉粒は、じつは透明であることがわかる。
同じなかまのアカザは、この粉粒が半透明の赤紫色になる。
アカザの写真も撮りたかったが、このところアカザを見かけなくなった。
ところで、この粉粒は何ものか?
ネットで調べると、決まった名称はないようで、粉粒、粉状物、粉状の毛、丸い毛、球状の細胞などと呼ばれているようだ。『日本の野生植物』では白粉(旧版)⇒粉状毛(新版)とされているらしい。
粉なのか粒なのか、それとも毛なのか。これはもしかして植物界、生物界の七不思議では?(冗談です)
粉粒の存在意義というか、役割は何だろう。
1つ考えられるのは、外敵(虫)に喰われるのを防ぐ効果があるのではないかということだ。
植物の撮影のとき、アブラムシやアザミウマ、ハダニなどの小さな虫がついていて悩まされるが、シロザではそれらを見かけた記憶がない。
新しい茎葉にはアブラムシが、花の中にはアザミウマがつきものなのだが、シロザにはそれがいないのだ。
もしかするとこれらの虫は粉粒を嫌って寄りつかないのではないだろうか。
シロザにつく虫は、私はカメノコハムシ以外に見たことがない。
● カメノコハムシの観察 ⇒
ピーマンを切ると中に入っていてびっくりするのが、オオタバコガの幼虫である。
いろいろな植物を喰うことで知られている。
2025年12月11日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2025-12-11 19:15
| 植物
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