自然観察大学ブログ

カテゴリ:植物( 155 )




チガヤの狂い咲き

いつもふるい話でもうしわけないが、11月なかばの話。

道ばたでチガヤの開花を観た。

d0163696_07304361.jpg
簡易舗装のアスファルトのすき間に、列をなしていた。

本来なら4-5月頃のはずなのに…

狂い咲きというやつだ。

 

サクラが秋に咲くのを観るが、それと同じことなのかもしれない。

台風で葉が落ちたサクラは冬越しと勘違いし、花を咲かせてしまうのだそうだ。

このチガヤも、草刈りされたのを冬越しと思い込んで、再生して開花したということかもしれない。

 

穂を観てみよう。

d0163696_07303384.jpg
エンジ色の葯が目立つが、白い毛の奥のほうに見えるブラシ状のものは雌しべの柱頭だ。

チガヤは、雌性先熟だそうだが、これは雌性期を過ぎて雄しべが出ている。

 

雌しべだけの穂を探したのだが…

d0163696_07305246.jpg
出穂したばかりの穂で、すでに葯が出ている。

…ということは雌雄同時に熟していることになる。

狂い咲きのチガヤだからなのか? 

教科書どおりにはいかないのが、自然観察の面白いところだ。

 

 

植物の雌雄

雄雌異花や雌雄異株、雌性期と雄性期をずらしてみたり、植物の雌雄に注目してみるとなかなかおもしろい。

たとえばヘラオオバコの花もチガヤと同じ雌性先熟の両性花で、雌性期から雄性期を経て果実になる。

S子さんの報告 ⇒ http://sizenkan.exblog.jp/19245742/

 

欄外オレンジ色部分の右下のほうの枠に『雌雄』と入力して検索すると、過去の記事がご覧いただける。ので、お時間のある時にバックナンバーを見ていただけるとありがたい。

 

 

余談ですが…

一年くらい前に発刊されたある図鑑に「オオバコに雄花と雌花がある」と記載されているのだが、これは明らかな誤りだ。

当時これに気づいたある専門の方が、誤った知識を広がってしまうのは困ると憤っておられた。

悩んだ末に 〝誤りはほおっておけない〟 と出版社へ手紙を送られたそうだが、ネット上では正誤表は見つからない。

 

20131226日、報告:自然観察大学 事務局O


[PR]



by sizenkansatu | 2013-12-26 07:36 | 植物 | Comments(0)

親愛なる、そのへんの植物-13「秋の散策」

秋と言えば、実りの秋、紅葉・・ 秋が深まりつつある11月上旬、お天気のよい日にふらりと野外を歩いてみると、ちゃんと「秋」がありました。
今回は、その中からいくつかをお届けしたいと思います(少し前の話でごめんなさい)。

d0163696_19072250.jpg
果物売り場で見かけるブルーベリーによく似た実。
これはシャシャンボの実です。
ブルーベリーと同じツツジ科スノキ属で、昔は子供達のおやつがわりに食べられていたこともあるそうです。そのお味は? 早速食べてみました。

なんとなく甘酸っぱいような・・ でもちょっと皮が固い。
シャシャンボは、身近な雑木林でよく見かけます。私が歩いた林にもたくさんいましたが、日当りがよい場所の木には、丸々とした実が鈴なりになっていました。しかも、そちらの方がおいしかったです。

d0163696_19073990.jpg
こちらはノブドウの実です。色がきれいなので、思わず足を止めました。熟すともっと鮮やかな青や紫色になるのですが、残念ながら人が好んで食べるものではないようです。
ノブドウも、身近な薮などに普通にみられます。

d0163696_19075775.jpg
赤く染まった、よく似た葉が3枚。
落葉樹の葉が色づいた雑木林は、上を見ながら歩くのも見事ですが、下を見るのも楽しいです。赤、黄、茶色の葉っぱが道いっぱいに落ちて、色とりどりのふかふか絨毯になっています。

落ち葉の中から、きれいな葉を見つけては集める。そんなことをしていたら、とてもよく似た葉を3種類見つけました。
3枚並べてみたのが、上の写真です。
ちなみに、葉の裏はこんな感じです。

d0163696_19081471.jpg
木を見分けるには、葉の付き方(対生・互生)、生育場所、樹形など、いろんな要素をみるのが大事なので、葉っぱ一枚からというのは、本来はよくないのですが・・
落ち葉では仕方がないですね。まわりにヒントになるものがないか探してみました。落ちている実は? まわりにいる木は? ここはどんな林?


答えは、写真の右から時計回りに、ミズキ、オオウラジロノキ、ツタウルシ(小葉1枚)だと思います。
オオウラジロノキの実は、あたりにいっぱい落ちていました。


最後に、気に入った冬芽をご紹介します。
冬芽は、夏の終わり頃からできていたりするのですが、落葉すると目に留まりやすくなるので、私は秋以降に観察することが多いです。

ひとつめは、シロモジ。

d0163696_19083137.jpg
シロモジの冬芽は、葉芽と花芽に分かれています。先端の尖ったものが葉芽で、その両側のまん丸いのが花芽です。かわいらしくて個性的なかたちをしていると思います。


ふたつめに、ムラサキシキブ。

d0163696_19083997.jpg
裸芽は、葉のかたちがよくわかっておもしろいです。ムラサキシキブは対生で、幼い2枚の葉が仲良く向き合っています。


みっつめは、裸芽の代表格とも言えるオオカメノキ。

d0163696_19085644.jpg
ムラサキシキブと同様に2枚の葉がぴったりとくっついているのですが、こちらは、なんと言っても巨大です!


以上、散策中に見かけたものをご紹介しました。どれも派手さはないものの、秋を感じさせてくれました。

植物を、四季を通じて観察すると、その変化から季節の移り変わりがわかります。そんな変化をみるのに、散策はうってつけです。
時間や目的を気にすることなく、目に留まったものをゆっくりと観察しながら歩く。とっても贅沢なひとときです。


おまけの一枚

d0163696_19090860.jpg
つい先日、早朝の田んぼ道で、キラキラ光るノボロギクを見ました。
冠毛についた霜が溶け始め、水滴一粒一粒に朝日が当たって、なんとも美しかったです。秋の深まりを一層感じるとともに、こんなにきれいなものが見られて、とても嬉しくなりました。

2013年11月28日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子


[PR]



by sizenkansatu | 2013-11-28 23:20 | 植物 | Comments(2)

偽装だろうか?  -ミゾソバ、イヌタデ-

10月末に所用で南房総の館山にいった。
予想外に早く着いたので、小一時間観察することができた。

大通をはずれて、ちょっと山がわに入ると…
d0163696_093663.jpg
ミゾソバが出迎えてくれた。
d0163696_0103377.jpg
用水路に沿ってびっしり。
さすが南国、まだまだ元気だ。

ちなみにこの用水には淡水エビがたくさんいて、上空ではトビが飛び交っていた。

こちらはイヌタデ。
d0163696_011418.jpg
秋と言えば、やっぱりこれ。遭遇するたびに、うれしくて、つい撮ってしまう。
d0163696_011263.jpg
一つの花穂に、開花と結実が隣り合わせにある。
花期が長いのは、繁殖のための知恵なのだろう。さすがは長い歴史を持つ雑草である。

ところで、ミゾソバもイヌタデも、タデ科の花は花弁がない。花弁に見えるのは〝がく〟だそうだ。
今話題の偽装ということになる。
もっとも、花弁かがくかは、人間の都合で定義づけをしたもので、本人たちにとってはどうでもよいことなのだろう。
もともと花弁もがくも、植物の進化の過程で葉から変化したとされていて、もとはといえば葉なのだ。偽装と言ってはかわいそうだ。

余談ですが…
渦中の『偽装』であるが、昆虫の擬態は偽態と表すこともあって、文字から受ける印象ではそんなに悪意は感じられない。(私だけ?)
意図的に欺くわけだから、『欺装』としたほうがしっくりするのではないだろうか。
まぁ、昆虫の擬態も天敵の捕食者を欺く目的ではあるのだが…

2013年11月10日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2013-11-10 00:14 | 植物 | Comments(0)

親愛なる、そのへんの植物-13 「クズの花」

Oさんのご報告に、クズの花は葉陰にあることが多いけれど、虫媒花ならば一番目立つところに咲いて訪花昆虫を誘うのでは? ・・というご意見がありました。  

そこでクズの送粉者誘引について私なりに考えてみました。

まず、クズの花の形からすると、送粉者は主にハナバチを中心とした昆虫だと思われます。ハナバチの仲間なら、花びらを押し下げて、花の奥にある蜜を吸えるからです。クズの花は、形でもって送粉者を限定し、効率よく花粉を運んでもらえるようにしているのでしょう。
d0163696_1238461.jpg
花の中心にある黄色い部分は、送粉者に蜜の場所を示すためのマーク「蜜標」です。また、花の色も鮮やかです。
以上の特徴から、クズの花が日中に送粉者を引きつけたいのは確かだと思います。

d0163696_12384123.jpg
花の付き方も観察してみましたが、花茎は葉腋から上に向かって出ていて、一緒に出ている葉には隠れておらず、むしろ葉群から抜け出して送粉者を引きつけようとしているように見えました。
d0163696_12391522.jpg
けれど、ここで注意しなければいけないのが、クズの並外れた繁茂ぶりです。ツルが一重なら問題はありませんが、旺盛に成長を続け、ツルが互いに絡まりながらモシャモシャに茂ったら? そんな状態では、花が多数の葉に埋もれて、見えづらくなることもあるかもしれません。

そこで、大繁茂と花の匂いの関係を考えました。
クズの花には、けっこう強い匂いがあります。花の匂いで送粉者を誘引するのは夜に咲く花が多いですが、植物が茂った森などでは、視覚よりも匂いの方が遠くまで届く可能性もあるそうです。

だとすると、クズの並外れた大繁茂は、深い森に相当すると言っても過言ではないのでは? ここからはあくまで私の推測ですが、クズが旺盛に成長するには光合成をするための葉が欠かせませんが、あの繁茂ぶりでは、葉で花を覆ってしまうことにもなりかねません。そんなとき、花の匂いは、遠くにいる虫や葉が重なった中にいる虫たちを引きつけるのに一役買っているかもしれません。ハナバチ媒花の場合、花の匂いがあるものが多いので、クズの花の匂いもハナバチに対して誘引効果がある可能性はありそうだ、そんな風に思いました。

クズの戦略は、旺盛に光合成をして、どんどん成長することのようですが、それでも、繁殖のための工夫もぬかりなくしているのですね。

2013年9月18日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
[PR]



by sizenkansatu | 2013-09-18 12:44 | 植物 | Comments(1)

親愛なる、そのへんの植物-12 「クズの葉の運動」

クズの3つの小葉は、閉じて合わさったり開いたりして動きます。どんな仕組みで動くのでしょうか。Oさんの報告 「猛暑に耐えるクズ」 を受けて、私も小葉の動きについて考えてみました。

まず、なぜ日中に小葉を合わせて閉じるのか。
調べてみたところ、ちょっと気になる研究を見つけました。クズは小葉を畳んで合わせると、広げた状態よりも葉の温度が低くなるというのです。しかも、小葉を合わせていない状態よりも光合成速度が大きくなるのだとか。

植物は葉の温度が上がりすぎると光合成活性が落ちることが知られています。クズが葉を閉じるのは、強い日射で葉の温度が上がるのを防ぎ、光合成活性を落とさない工夫なのかもしれません。
河原や林縁などで、あっという間にまわりを覆い尽くし、大繁茂しているクズの姿をよく見かけます。クズの並大抵でない成長力の秘密をみた気がしました。

ただし、クズは夜間も同じように葉を合わせて閉じるのですが、こちらの理由の方はまだよくわかっていないようです。

d0163696_1351393.jpg次に、どんな仕組みで小葉は動くのか。調べたところ、マメ科とカタバミ科の場合、小葉の動きは、葉枕の細胞の膨圧が関係して起こるものだそうです。


d0163696_1354082.jpg上の図を拡大しました。葉枕(ようちん)とは、小葉の基部にある少し膨らんだ部分です。

d0163696_1371265.jpg


動く仕組みはこうです。
葉枕の中心には維管束がありますが、その上下にそれぞれ細胞群があります。
d0163696_1381064.jpg
d0163696_1382131.jpg
これらの細胞群の間で、水分が移動するそうです。上の細胞群に水分がたまると上側の膨圧が高くなり、小葉は下に曲がります(膨圧:上>下)。逆に下の細胞群に水分がたまると下側の膨圧が高くなり、小葉は上に曲がります(膨圧:上<下)。
葉の動きが、このように上下に分かれた細胞群の力関係で決まるものだとすると、Oさんの言われる “バイメタルのような構造” と言えそうですね。


参考までに、こちらは、私の観察したクズと同じマメ科の ノアズキ です。
(花がねじ曲がっていておもしろいです)
d0163696_139781.jpg
ノアズキも比較的陽当たりのよい場所に生育していて、林縁や堤防などの草むらでよく見られます。

d0163696_139457.jpg 私が観察した時は、3つの小葉は下向きに曲がっていました。
d0163696_13102962.jpg

ただ、ノアズキも、強い日射がある場合はクズと同じく葉を上向きに立てていることがあるようです。私が観察した日はあいにくの雨模様だったので、また天気のよい日に見てみたいと思います。

2013年9月13日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
[PR]



by sizenkansatu | 2013-09-13 13:13 | 植物 | Comments(1)

猛暑に耐えるクズ

文末に追記があります(9月15日)

クズは、暑い日には葉を閉じて日照を避けることが知られている。
今年の夏は彼らにとっても〝これまでに経験したことのない猛暑〟なのではないだろうか。

葉を閉じたクズ。
d0163696_6415783.jpg
3枚の小葉をぴったりと閉じている。
このとき8月16日の朝9時30分。もちろん気温は30度を超えている。
彼らは日陰に逃れることもできないし、むろんエアコンなど知らない。猛暑を乗りきるためのせいいっぱいの行動なのだろう。

念のため、クズの通常の状態はこれ。
d0163696_6421950.jpg
一枚目の写真と同じときの写真だが、日陰ではちゃんと葉を開いていた。
3枚ワンセットの3出複葉となる。

クズは日照がつらくなってから葉を閉じるわけだが、それは何時ころなのだろう。
別の日に、すこしだけ早起きして観察したのだが、7時すぎにはもう閉じはじめていた。
d0163696_6424495.jpg
真ん中の小葉が、ぐいっと上に反っている。
このときの気温は、ちょうど30度くらいだったと思う。
d0163696_6432244.jpg
別の葉では、もうほとんど閉じる体勢だ。

それにしても、どんなしくみなのだろう。
バイメタルのような構造になっているのだろうか?
ネムノキやカタバミなどの就眠行動と同じなのだろうか?
…S子さんのご意見をうかがいたいものだ。

こちらは、閉じた葉の間から顔をのぞかせたクズの花。
d0163696_6435296.jpg
クズの花は、姿も匂いも派手だが、なぜか恥ずかしそうに葉陰にあることが多い。
訪花昆虫のために日よけになっているのかと考えていたのだが、これではイザというときの役に立たない。
ふつう、植物の花(虫媒花)は一番目立つところで昆虫を誘うものだと思うが、これも謎である。

…………………………………………………………………

9月15日追記
S子さんが葉を閉じるしくみを投稿してくれました。とても分かりやすい、ていねいな図入りです。ぜひ見てください。 
…………………………………………………………………

2013年8月21日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2013-08-22 06:44 | 植物 | Comments(0)

ブラジルコミカンソウ -秋葉原で気ままに暮らす-

雄花と雌花

ブラジルコミカンソウは、花よりも果実が目立つ。
d0163696_0175854.jpg
名前の元になったコミカンソウと違って、こちらはあまりミカンの実には似ていないように思う。
コミカンソウに比較して花柄が長いので、別名ナガエコミカンソウあるいはナガエノコミカンソウとも言われる。
原産地はブラジルではなく、インド洋あたりだそうだ。
※ 日本帰化植物写真図鑑、清水矩宏ほか、全農教 

d0163696_021944.jpg
果実と同時に開花しているのは雄花だ。もとの方にはつぼみが多数観られる。
先端はもう果実になっているのに、まだ開花が続くというのはどういうことなのだろう。

雌花の方が先熟するということなのか、と思ったのだが…
別の枝では雄雌が、同時に開花していた。
d0163696_0221353.jpg
星形の花が雌花で、真中のが雄花だ。
う~む。
このところS子さんが雌雄の開花順序について観察報告をしてくれているのだが、ブラジルコミカンソウはどうなっているのか? わからん。
雄だろうと雌だろうと、こだわらないおおらかな性格なのかもしれない。

それにしても、直径2㎜程度のちいさな花だが、こうして拡大するとなかなかのものだ。
(残念ながら柱頭にごみが付着)


木か草か

ブラジルコミカンソウには、もう一つ悩ましいことがある。
木本か草本かということだ。

ブラジルコミカンソウは事務所のある秋葉原かいわいでは、冬場でも遅くまで枯れずに残っている。
さすがに1~2月の厳冬期には枯れるのだが、春になると芽吹きがあるのだ。

これは4月はじめのようす。
d0163696_0232620.jpg
ビルの間の空き地の、舗装の隙間にならぶブラジルコミカンソウだ。
画面左の株に寄ってみると…
d0163696_0245132.jpg
木質化した去年の枝から芽が出ていた。
やっぱり木本だ。
前述の「日本帰化植物写真図鑑」で確認すると 〝低木または一年草本〟 とある。
在来のコミカンソウが草本だからといって、近似種のブラジルコミカンソウも草本とは限らないのである。
さらに、同書に掲載のキダチコミカンソウというのがあって、こちらは草本だそうである。名前は木立なのに…

木本だろうと草本だろうと、本人たちにしてみればたいした問題ではないのかもしれない。環境しだいで気ままに暮らしているのだろう。
ましてや、インド洋出身なのに 〝ブラジル〟 と呼ばれていることなんか、どうでもよいことだろう。
d0163696_0245561.jpg
6月。秋葉原の路地裏で、元気に育つブラジルコミカンソウであった。

2013年7月21日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2013-07-21 00:27 | 植物 | Comments(0)

親愛なる、そのへんの植物-11 「ヘラオオバコの開花の仕方」

6月、道端や堤防、公園など、身近ないろんなところで、花を咲かせたヘラオオバコを見かけました。
d0163696_18124798.jpg
オオバコは踏みつけられる場所に多いですが、ヘラオオバコは草刈りされる場所に多いようです。
それぞれに適応した環境が異なり、それぞれに生育環境に合った工夫があるのだと思います。ヘラオオバコが草刈りに強いのは、ヨーロッパ原産の帰化植物であり、はるか昔から、草刈りが定期的に行われていた牧草地で生活していたためかもしれません。

今回は、そんなヘラオオバコの開花の仕方について、詳しくみてみたいと思います。(2012年6月28日に、事務局Oさんもヘラオオバコについて報告されています ⇒  )


● 花序について

d0163696_1814396.jpg


これは、ある時期のヘラオオバコの花序です。ヘラオオバコは穂状花序(すいじょうかじょ)で、花軸に柄のない花が並んでついています。一見わかりにくいですが…

d0163696_18224757.jpg


模式的に描くとこんな感じです。花軸は成長して伸びていきます。それにしたがって、花芽の数も増え、花序が長くなっていきます(このような花序は、無限花序と呼ばれ、穂状花序は無限花序のひとつです)。ヘラオオバコは、花軸の成長が著しいようで、花序はぐんぐん伸びます。


穂状花序では、基本的に花軸の下の方から順に花が咲いていきます。
花序の成長と開花の順番を模式図で示すと、こんな感じになります。
d0163696_18162518.jpg




● ひとつの花

次に、ひとつの花を見てみたいと思います。

ヘラオオバコは両性花ですが、ひとつの花には雌性期と雄性期があります。つまり、同じ花が、雌機能を持った時期と雄機能を持った時期に分かれています(これも自家受粉を避ける仕組みのひとつで、雌雄異熟と呼ばれています)。

d0163696_18182048.jpg
こちらが雌性期です。花柱が出ているのがわかります。d0163696_18184936.jpg


d0163696_18192591.jpg次に、これが雄性期です。花糸の先に、花粉がいっぱい詰まった葯があります。d0163696_18195130.jpg


どちらも地味な花ですね。
花冠はあるものの、小さくて色も目立ちません。香りもあまりない気がします。
ここから予想されることがあるのですが、何でしょう?

答えは “ヘラオオバコは風媒花ではないか?” です。
花の大きさや色、香りは、すべて虫など送粉動物の誘因効果になります。これらが発達していないと花粉を運んでくれる動物を引きつけることができません。
よって、質素な花のヘラオオバコは、風媒花ではないかと考えられます。


● 風媒花であるならば

風に花粉を運んでもらう場合、雌機能と雄機能の花の配置は、どのようになっているのが有利でしょうか。
(ヒメコウゾのブログ ⇒  を読んでくださった方は、お分かりかもしれませんね)

「雌機能が上、雄機能が下」です。
その理由は、雄機能の花が上ではたくさんの花粉が自然落下し、下にある雌機能の花が自家受粉しやすくなってしまうからですね。

ちなみに、風媒花は、雌性先熟が多いと言われています。まわりにまったく雌がいない状態で雄が花粉を出し始めても、せっかくの花粉が無駄になってしまうからかもしれません。花粉をつくるのにも、コストがかかりますからね。


● 開花の仕方を考えてみよう

ということで、ヘラオオバコの開花について、これまでの話をまとめてみると…

① 穂状花序で、下から順に開花していく
② ひとつの花は、雌性期から雄性期へと変化する(雌性先熟)
③ 花序の中の花の配置は、常に雌性期が上


以上、3つをまとめてイメージしてみると、どうでしょう。
規則性を考えると、開花の仕方がわかりやすいかもしれません。

それでは実際に、順を追って観察してみましょう。

d0163696_18405378.jpg

まずは、つぼみ。花序の下の方から、花が咲き始めています。

d0163696_18412238.jpg

次第に上へ上へと開花していきます。次々と咲いていく花は、はじめはみんな雌性期です。

d0163696_1842946.jpg

しばらくすると、はじめに開花した下の方の花が、雌性期から雄性期に変化します。

d0163696_18423888.jpg

そして、今度は次々と雄性期の花に置き換わっていくわけです。

d0163696_1843655.jpg

そのときも、常に「雌機能が上、雄機能が下」です。雄が雌を追い越すことはありません。こうして、雌の後を雄が追うように、開花は進んでいきます。

d0163696_18455183.jpg

雄性期の花は葯が飛び出て目立つので、開花している部分がリングのように見えます。リングが順々と上に登っていくのがよくわかりますね。

d0163696_18462079.jpg
花序の長さが伸びているのもわかります。ぐんぐん伸びて、こんなに長い花序になったものもありました。ところで、こうして順を追って花序を見ていくと、雄性期の下の茶色の部分が気になりますね。ここは何なのでしょう?

花は、花期が終わると実になります。
ヘラオオバコの花期が終わるというのは雄性期が終わる時です。
したがって、花序において、雄性期の後を追いかけるのは…?
結実期ですね。雄性期の下にある茶色くなった部分は、実になる部分です。
結実期のひとつの花を見てみましょう。d0163696_1848288.jpgd0163696_18482059.jpg
 
雄性期が終わって、しおれた花を分解してみると、ちゃんと子房が膨らんでいるのを確認できました。

このように、ヘラオオバコのひとつの花は 「雌性期 → 雄性期 → 結実」 と変化します。
つまり、ヘラオオバコの開花は、花が入れ替わるわけではないのですが、ひとつひとつの花の機能が段階的に変化することによって、花序の構成(内訳みたいなもの?)が変化するわけですね。

ヘラオオバコの開花の仕方は、いかがでしたでしょうか。
確かに複雑ですよね。そんなとき、その仕組みと、なぜそうなっているのかを考えてみると、イメージしやすい気がします。
植物の名前に加えて、特徴についてあれこれ考えてみる。すると、そのちょこっとのことで、その植物への親近感は大幅にアップするように思います。

2013年7月11日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
[PR]



by sizenkansatu | 2013-07-11 18:48 | 植物 | Comments(6)

親愛なる、そのへんの植物-10 「ヒメコウゾは雄花が下? 雌花が上?」

5月の中旬、雑木林の林道脇でなにやらおもしろい形の花を見つけました。
d0163696_19395824.jpg
ヒメコウゾです。ヒメコウゾは、クワ科カジノキ属の落葉広葉樹の低木で、低山地の林縁や林道沿いでよく見かけます。
d0163696_1940229.jpg


d0163696_19404359.jpg
ひとつのシュート(枝)に2種類の違った花がついていました。どちらも個性的な姿をしています。
シュート(枝)の下の方にあるのが雄花序、上の方にあるのが雌花序になります。ヒメコウゾは、同じ個体の中で雄花と雌花が分かれている“雌雄異花同株”です。

d0163696_19411952.jpg
雄花序は、雄花がたくさん集まって球状になっています。雄しべがいっぱい突き出して、まるでボンボンのようですね。花糸の先端の葯には花粉がいっぱい詰まっています。

d0163696_19414474.jpg
雌花序も同じく、まん丸の球状になっています。赤色の花柱が糸のように長く伸びて、イソギンチャクのようです。


ところで、なぜシュート(枝)の上部が雌機能、基部が雄機能になっているのでしょう? 植物の中には、雄花が上で、雌花が下につくものも数多くいます。雄花と雌花の配置は、何と関係しているのでしょうか。

雄花が上につく理由として、訪花昆虫との関係が言われています。一般的に雄花の方が派手で目立つ場合が多く、シュート(枝)の先端に咲かせた方が虫を引きつけやすいと考えられます。また、特にハナバチは下から上へ移動していく習性があるため、飛んできたハナバチは下方の雌花を通ってから、上方の雄花を通ります。つまり、他花の花粉(同種の他個体のものならラッキー)を体に着けて雌花を訪れ、その花粉を雌花の柱頭に付けた後に雄花へ移動し、雄花の花粉を付けて別の雌花へと飛び立ちます。自家受粉のリスクを減らし、他家受粉を促進しようという仕組みです。

それでは、ヒメコウゾのように下が雄花で上が雌花の場合はどうなのでしょう? 虫媒花だとすると、自家受粉が多発して、不利になってしまいそうです。

そう考えて、調べてみました。
すると、どうやらヒメコウゾは風媒花のようです。
風媒花の場合、雄花の花粉は自然落下するので、上についていては下の雌花に花粉が着いて、自家受粉しやすくなってしまいます。雌花の方も、風に乗って飛んでくる花粉を効率よく捕まえるためには、上に着いていた方が有利な気がします。長い花柱も、花粉をうまくキャッチするためかもしれません。
風媒花では、雄花が下で雌花が上という配置がしばしばみられるそうです。

ふとした好奇心から、なかなか奥深い知識につながりました。「なぜ?」と考えることから、世界は広がるのですね。

6月に入り、ヒメコウゾの雌花は実になりました。
d0163696_19423678.jpg

d0163696_19425129.jpg
なんだか、マリモに毛が生えているみたいです。

これがもうしばらくすると、赤く熟して、食べられるようになります。

※参考までに、こんな感じです(以前の写真)。
d0163696_1943257.jpg
私も食べたことがあるのですが、味はなんとなく甘いものの、花柱(やはり毛みたい)が口の中に残って、味よりもそっちの方が気になりました。
今年も試してみようと思います。

2013年6月17日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
[PR]



by sizenkansatu | 2013-06-17 19:45 | 植物 | Comments(1)

中山道和田宿周辺の観察-1 雑草編

5月の連休に、中山道和田宿へ行った。
その時のことを何回かに分けて報告させていただくが、今日はその一回目。

d0163696_8501792.jpg
こんな光景を見ると、ついうれしくなって口元がほころんでしまう私。
やっぱり雑草ファンなのだろう。

関東に比べると一か月近く季節が遅いので、雑草のベストシーズンを二度観ることができる。
草種を確認すると、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ハコベにシロツメクサ、セイヨウタンポポ。それらの見慣れた雑草にイヌナズナが混じる。
イヌナズナは関東ではトンと見かけないが、こちら信州では、ご本家のナズナよりも多いくらいだ。

おあつらえ向きに、両種がならんでいた。
d0163696_8504543.jpg
右の白いのがナズナで、左の黄色いのがイヌナズナ。


カキドオシは、とくに好きな雑草のひとつ。つい何度も撮ってしまう。
d0163696_851455.jpg
下唇を突き出したような形は、やっぱりシソ科の唇形花だ。
下唇の奥の方にある半透明の毛は何のためにあるんだろう。
訪花した昆虫のために足場を提供しているのだろうか…

白いヒメオドリコソウがあった。
d0163696_8513058.jpg
白いホトケノザは観たことがあるが、ヒメオドリコソウでははじめて。
アルビノなのだと思うが、赤紫の同僚との競争に耐えていけるだろうか…

ほかではどうなのかとネットで調べると、興味深い情報が見つかった。
10余年間かけて、安定的に白いホトケノザを栽培している方の話  ⇒ http://flat.kahoku.co.jp/u/ozozoz/iw1v8ebPT6HQxspgfXjt/

山のほうへ向かうと、水路わきにはネコノメソウが花を開いていた。
d0163696_8531319.jpg
ネコノメソウの仲間は花弁がなく、花びらに見えるのはがく。
ネコノメソウは雄しべが4個ということだが、これは8個なのでミヤマネコノメソウ(別名イワボタンともいうらしい)のようだ。


余談ですが…

中学校の校庭に、雑草のみごとな築山があった。
d0163696_8535415.jpg

この学校は、グランドにもふんだんに雑草がある。
d0163696_8542348.jpg
どうです。癒される校庭!

この校庭は中心部だけ草取りがなされ、このときはちょうど体育の授業が行われていた。生徒と雑草の共存の姿である。
この学校で育つ諸君! 今は気づいてないかもしれないが、あなたたちは幸せです!!

なお、この学校は2009年発行の「校庭の雑草」(岩瀬徹ほか、全国農村教育協会)で、巻頭に掲載されている長和町立和田中学校。
往時のままの校舎もあって、映画のロケなどでたびたび利用されるそうだ。

2013年5月18日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2013-05-18 08:56 | 植物 | Comments(5)

植物、虫、鳥など自然を楽しむ  ★写真の無断転載はお断りいたします★
by sizenkansatu
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

最新の記事

スギの花
at 2018-03-29 16:50
立春のロウバイ
at 2018-02-06 17:58
「季節の生きもの観察手帖」ト..
at 2018-02-05 18:39
ハクウンボクの冬芽
at 2018-01-25 18:40
ラクウショウとメタセコイアを..
at 2017-12-20 13:03

最新のコメント

> チョコさん コメン..
by sizenkansatu at 12:44
こんな感じの本が欲しかっ..
by チョコ at 14:10
鈴木裕子さん、コメントあ..
by sizenkansatu at 15:19
日経新聞で冬の雑草の記事..
by 鈴木裕子 at 19:35
アレチヌスビトハギ 最悪..
by EVIS at 15:16

検索

ブログジャンル