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自然観察大学ブログ

サルトリイバラの観察 ②


サルトリイバラの葉
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21231920.jpg
葉は饅頭や餅を包むのに利用されるという。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21232818.jpg
葉身は美しい緑色で、表面にやや光沢があって、軟らかくておいしそう。
幅広で中央の主脈のところから折れ気味なので、餅を包むのには都合がよさそうだ。
なお、この写真の葉は中央に斑紋があるが、ときどきこのように斑紋のあるサルトリイバラを見かける。

西日本では柏餅にサルトリイバラの葉を利用する地域があるという。関東でも“ばらっぱ餅”や“ばらっぱ饅頭”として使うという話も聞くし、名古屋の銘菓“餡麩三喜羅”というのもある。(サンキライはサルトリイバラの別名)

葉柄に注目したい。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21233725.jpg
葉柄は途中で屈曲し、曲がったところに巻きひげがある。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21234610.jpg
一部は膜状、ひれ状になっている。

切って横断面を観てみよう。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21235641.jpg
巻きひげのつけ根のところの断面。
上下に突き出ているのがひれ状に見えた部分。
中央の白いのは維管束が集まっているところ。

次はもう少し茎寄りのところの断面。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21240957.jpg
巻きひげのついていたところが左右に膨らんでいる。

次はもう少し茎寄りを切る。
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ひれは上下に突き出ているが、とくに上方が目立つ。そして一か所穴が開いている。

さらに茎寄りを切る。
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穴の中に何かが現れた。
ひれ状の部分は上方に口を開けている。

別の葉柄で、こんどは縦断面。
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これを縦に切ってみた。すると中には…
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21245502.jpg
空洞部分があって、その奥にはもう大きな冬芽ができている。
これを観たのは4月26日だったが、翌年開く冬芽はこの時点、すなわち1年前に用意できていたことになる。

これはいわゆる“葉柄内芽(ようへいないが)”としてよいと思う。
葉柄内芽は葉柄で冬芽を守るとされ、その例としてスズカケノキ(プラタナス)類やハクウンボクが知られる。
スズカケノキは落葉のとき、ハクウンボクは翌年の萌芽の前までに葉柄を落とす。冬芽を守るのは半年から1年間だ。
それに対してサルトリイバラの場合は、萌芽のときはもちろん、長いものではまる2年間以上もずっと守り続ける。面倒見がよいというか、子離れできない葉柄内芽である。


果実と種子
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21250380.jpg
夏の果実は緑色。
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赤く色づいたのは10月末だった。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21251819.jpg
12月には黄葉と赤い果実がたのしめた。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21252471.jpg
1月。果実だけを残して落葉。
(1年前の2025年の1月の撮影。葉柄が残っている)

さて、種子を観てみよう。
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この果実には大きな種子が1個入っていた。

別の果実を切ってみる。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21254166.jpg
こちらは1個だけが見えているが、1個は落ちて、奥にもう一個あったので計3個。

ネットで見ると、種子は1個という記事と3個という記事があった。
1個の果実に種子は1~3個ということになる。

なお、果実は赤くなったあとさらに熟して褐色になり、破れて種子を出すという記事をネットで見た。
そういえば赤い実を鳥が食べるところは見たことがない。
1月現在の果実はしわしわになっているが、まだ赤い。熟して種子を出すかどうかを確かめてみたい。


サルトリイバラの地下部

サルトリイバラの地上部は数年で枯れて、太く短い地下茎が残るという。
実物を観たくなった。

サルトリイバラは深い藪の中から出てくるので探すのがたいへんだが、おあつらえ向きの場所を見つけた。
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落ち葉の間から出ている緑色の茎がサルトリイバラ。
ここは大きなヒノキの生け垣で、夏にはサルトリイバラがおおいつくすような勢いだったところで、暗い樹冠下には下草がない。
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節のところにこぶのようなのがあるのは、これから枝分かれするのだろうか。

別の株の生え際を10cmほど掘ってみた。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21260586.jpg
こぶ状の地下茎がある。
もっと深く地下茎が張り巡らされているようなのだが、これ以上は掘り進めなかった。
ヒノキの生け垣の下で、低い姿勢で掘るので、もう限界だ。
地下茎はまだ続いていたが、掘り出したところまでを切り取って、明るいところに出してみた。
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地下茎の先端から新たな芽を出すような雰囲気がある。

この株元から1m以内の場所で、石垣のようなブロックの間からサルトリイバラが芽を出していた。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21262720.jpg
もしかすると地下でつながっているのだろうか。
深いところに大きな地下茎があって、四方八方に茎(つる)を伸ばしているのかもしれない。
大がかりに掘り返してみたいが、さすがにそれは難しい。


サルトリイバラは木か草か?

サルトリイバラは木本とされる。地下茎は木化して太くなり、地上茎も木化するが緑色のままのものも多く、太くなることはない。

一般に木の定義は次のようにまとめられている。(『樹木博士入門』より)
➀ 茎や根が木化する
② 木化した茎や根は肥大成長する
③ 休眠芽(冬芽)が地上にある

サルトリイバラは③は該当するが、地上茎はなかなか木化せず太ることはないので➀と②に関しては疑問が残る。
クズ、アオツヅラフジ(カミエビ)など、つる植物には木本か草本か悩ましい植物が多い。
もっとも、木と草とを分けているのは人間の勝手な考えである。
本人たちにとってはどうでもよいことなのだろう。


おまけ サルトリイバラで見た虫

2025年にサルトリイバラで見た虫を2種紹介しよう。
まずはルリタテハの幼虫。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21263789.jpg
サルトリイバラでよく見かけるが、ホトトギスでも見る。
おどろおどろしい姿だが、毒はないので安心。

次はヒゲナガクロハバチの幼虫。
サルトリイバラの観察 ②_d0163696_21264466.jpg
幼虫は若いときには横一線に並んで葉をかじる。体色は白。
成長すると散らばって単独行動になり、体色は黒。
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この幼虫はホトトギスを食べている。

ホトトギスを喰われるととんでもなくかわいそうな気になるが、サルトリイバラなら少しぐらい喰われてもよさそうな気がする。

2026年1月10日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

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by sizenkansatu | 2026-01-10 21:41 | 植物 | Comments(4)
Commented by cflcfl at 2026-01-11 14:18
サルトリイバラ: 私なら良さそうだと?!💢
Commented by miyabiflower at 2026-01-11 15:12
生け花やフラワーアレンジメントの花材として
もともとは「サンキライ」の名前で知っていました。
堅いトゲがあるので
長い蔓の束を持って混んだ電車に乗るのはとても大変でした。
(痛い思いをしないようにするのが・・・)
↓の記事でもあるように里山で見かけるものには棘がありませんね。
種類が違うのでしょうか・・・
サンキライ=棘、と思っていたので
サルトリイバラという別名を知ったときには
その由来にこのトゲなら猿も痛いだろうなぁと
納得したものです。
花屋さんでみかけたら、棘の有無を見てみますね。
赤い実はクリスマスリースとして花屋さんに並んでいました。
Commented by sizenkansatu at 2026-01-12 18:36
> cflcflさん
怒らないでください。
ホトトギスだと枯れてしまうかもしれませんが、
サルトリイバラはたくさん葉を出してくるので少しぐらいは喰わせてあげてもよいと思いました。
Commented by sizenkansatu at 2026-01-12 18:44
> miyabiflowerさん
コメントありがとうございます。
『三河の植物観察』には変種としてトゲナシサルトリイバラ(別名トキワサルトリイバラ)という名前が出ています。果実が大きくてなかなか落葉しないそうです。
https://mikawanoyasou.org/data/sarutoriibara.htm
トゲナシサルトリイバラはWikipediaによると伊豆諸島に分布するとされています。

なお、私は個人的にあまり細かく種を分けるのは好きではありません。

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