人気ブログランキング | 話題のタグを見る

自然観察大学ブログ

ゴキヅルの観察

10月はじめのゴキヅル。(いまごろすみません)
ゴキヅルの観察_d0163696_15455019.jpg
ゴキヅルはウリ科ゴキヅル属のつる植物。
どこでも見られるというものではないようだが、江戸川べりではそこかしこに見られる。
上の写真は波消しブロックの上に広がっているゴキヅル。
本来は巻きひげを他物に絡ませるが、絡むものがなくても旺盛につるを伸ばすようだ。
ゴキヅルの観察_d0163696_15455818.jpg
上の写真(↑)では下向きにたれる若い果実と上向きの花序(つぼみ)がある。
葉は互生で、葉腋に花序と巻きひげがつく。
巻きひげは例の“飴玉巻き”だ(ヤブガラシの観察-1 成長と巻きひげ ⇒ )。
ただし、ヤブガラシやアレチウリにくらべると絡み方が優しいようで、ぎりぎりと巻き上げるようすはない。
ゴキヅルの観察_d0163696_15460628.jpg
つるの先の方では次々に花をつける。その一方で巻きひげを出して絡む相手を求めている。


ゴキヅルの花序と雄花と雌花
ゴキヅルの観察_d0163696_15461302.jpg
葉腋ごとに花序がつくので、花はたいへんな数になる。
ゴキヅルの観察_d0163696_15462588.jpg
これが一つの花序。雄花と雌花があるが、ほとんどが雄花で雌花はつけ根付近に一つあるだけ。
この雌花はすでに花の時期を終えている。

雄花。
ゴキヅルの観察_d0163696_15464530.jpg
花弁が10個に見えるが、外側にがく片5、内側に花弁5、雄しべ5。雌しべは見当たらない。
ゴキヅルの観察_d0163696_15465315.jpg
がく片と花弁はよく似ているが、外側に並ぶ長いのががく。
花弁はその内側に並び、がくよりも少し短いのがふつうのようだ。

こちらは雌花。(↓)
ゴキヅルの観察_d0163696_15470239.jpg
雌しべの柱頭は大きくて平たい感じ。
雌花の雄しべは退化しているというが、見たところでは花粉を出しているようだ。雌花ではなく両性花といった方がよさそうだ。
なお、私の観た雌花は雄花にくらべると花冠(がく片と花弁)が小さかったのだが、そのような記述は見られないので、特殊な例なのかもしれない。

雄花と雌花は横から見ると一目でわかる。
ゴキヅルの観察_d0163696_15470916.jpg
雄花(↑)にはない子房の膨らみが雌花(↓)にはある。
ゴキヅルの観察_d0163696_15471649.jpg

さて、上の雌花の写真から、もう一つわかることがある。
雌花が咲いていて、ほかの雄花(たぶん)はまだつぼみということだ。
一つの花序では、まず雌花が咲き、遅れて雄花が咲くということになる。
雌花が先に咲くことは前掲の花序の写真(5番目のカット)で、雌花だけがすでに終わっていたことからもわかる。

こちら(↓)は若い果実と雄花。
ゴキヅルの観察_d0163696_15474399.jpg
やはり雌花が先で、そのあと雄花が咲くことがわかる。
花序にはまだたくさんのつぼみがあるが、おそらくそれらは雄花なのだろう。

雄花と雌花に関して、ネットで調べていて花序のつくりで気になることがあった。
以下は細かなことなので適当にスルーしていただきたい。

  1. 総状の花序に着く花は雄性で、果実となる両生花は雄花序の基部に単独で生じる。(Wikipedia/『大井次三郎 新日本植物誌顕花編』より?)  
  2. 花序の上部に雄花が総状につき、基部に雌花が1個つく。(松江の花図鑑/『野に咲く花』より)  
  3. 葉腋から花序が出て、たくさんの雄花と根元付近に少数の雌花ができる。(岡山理科大学生物地球学部生物地球学科のHP)  

雌花が雄花序とは別に単独でつく(1)のか、それとも雌花は花序のもとのほうにつく(2,3)のか、記載が食い違っている。
ここまでの写真から①が正しいように思えたのだが、私の観察では両方のパターンがあるようだ。どちらの記載も正しいが、どちらも言い足りないということになる。


ゴキヅルの果実
ゴキヅルの観察_d0163696_15475201.jpg
10月半ばを過ぎると、大きな果実が見られるようになる。
果実は蓋つきの器のような独特の形。
ゴキヅルの観察_d0163696_15481055.jpg
果実が合器、あるいは御器のようなつる植物だということでゴキヅルの名前なのだという。
ゴキヅルの観察_d0163696_15482156.jpg
熟すと2つに分かれて2個の種子を落とす。
たしかに蓋つきの器に見える。

蓋に当たるところにはいがいがの突起があり、お椀に当たる方は滑らか。
このようなつくりはどうしてできたのか?
若いときの果実はどうだったのだろう。
ゴキヅルの観察_d0163696_15483215.jpg
若い果実では、蓋とお椀の境目があるが、お椀の縁の近くにも突起がある。

雌花のときにどうだったのか。さかのぼって観てみよう。
ゴキヅルの観察_d0163696_15483993.jpg
花冠のついていたところが筋状の境目になるようで、蓋になる部分では毛のつけ根がこぶ状に盛り上がっている。
毛はのちに落ちて、こぶ状の部分が蓋の突起になると思われる。
上の雌花の写真は子房の先が見えているが、先端付近は滑らかで突起はない。


ゴキヅルの葉の形
ゴキヅルの観察_d0163696_15484545.jpg
葉身の形は基本的には三角形で細長い矢じりのようだが、変化が多い。
ゴキヅルの観察_d0163696_15485173.jpg
縁の切れ込みの多いもの、深いものや、ほとんどないもの、肩の部分が大きく張り出したものなどがある。

葉を観て、一つ気になることがあった。
ゴキヅルの観察_d0163696_15485953.jpg
縁のところどころに突起がある。ほとんどの葉にこの突起が見られた。
よく観ると、縁に向けて伸びた葉脈の先端にこの突起がある。
ゴキヅルの観察_d0163696_15490545.jpg
先端が鋭くとがった突起(↑)と丸っこい突起(↓)
ゴキヅルの観察_d0163696_15491646.jpg
この突起の正体はなんだろうか?
どうも蜜腺ではないような気がする。
葉脈を伝わってきた水分や栄養分を溜めているのだろうか。

ネットで調べてもこの突起について記されているものはなかった。
ご存じの方はご教示いただけるとありがたい。

2025年11月2日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

……… 自然観察大学からのお知らせ ………

フェイスブックをはじめました。
Facebook/NPO法人自然観察大学  
ご注意:参加申込みの際は質問への回答とルールへの同意が必須です




by sizenkansatu | 2025-11-02 16:15 | 植物 | Comments(17)
Commented by wabisuke-miyake at 2025-11-02 17:56
ゴキヅル!
初めましてです
パカッと割ってみたいです(*^^*)
Commented by sizenkansatu at 2025-11-02 22:29
> wabisuke-miyakeさん
コメントありがとうございます。
おもしろい果実ですよね。
西日本の方が多いそうですので、川べりなどを探すとみつかると思います。
果実は少しずつ静かに開いてくるので “パカッ” という音はしませんが…
Commented by shizenkaze at 2025-11-02 23:53
ゴキヅルの葉にある突起は正式な資料などはありませんが30年ほど前から思っていたのは他の植物に絡みつく時のスパイクのようなものじゃないかと思っていました~
単なる私の考えなので参考にはなりませんが思い出したので書きました~
Commented by cflcfl at 2025-11-03 13:49
ウィキペディアによりますと、「ゴキヅルの種子は果実の蓋が外れることで落下するが、コルク質で水に浮くことが出来、それによって散布される」(中西弘樹、『タネは旅する 種子散布の巧みな植物』、(2022)、八坂書房)ともありますよね。  
Commented by sizenkansatu at 2025-11-03 17:19
> shizenkazeさん
コメントありがとうございます。
なるほどです。まだ川縁にあると思うので、もう一度観てみます。
いろいろ考えるのはたのしいですね。
Commented by sizenkansatu at 2025-11-03 17:22
> cflcflさん
コメントありがとうございます。

Wikipediaはなんでもかんでも調べてまとめてくれているので、ありがたいです。
聞くところによると、以外に少人数で記事をまとめておられるとか。その労力には頭が下がります。
Commented by cflcfl at 2025-11-04 00:05
「蜜腺ではないような気がする」とのことですが、花外蜜腺の可能性はございますでしょうか?🐜
Commented by sizenkansatu at 2025-11-04 17:16
> cflcflさん
可能性はゼロではないと思いますが、私は蜜腺ではないと思います。
じつは今日も見てきたのですが、何かを分泌しているようには見えません。
なお、別のコメントにあった “突起を引っ掛けて絡む” という感じもありませんでした。
ただ、今はもう果実の時期であり、盛んに伸びる成長期ではなくなったので、時期によって違った性質を持つことも考えられます。

Commented by cflcfl at 2025-11-04 20:02
なるほど。化学分析といった確かなデータなしには、手がかりを見つけるのが難しいですものね。
Commented by miyabiflower at 2025-11-05 23:57
緑色のどんぐりがぶら下がっているかのようでかわいいですね。
まだ見たことのないゴキヅル、
ぜひぜひどこかで会いたいです。
Commented by kaya2018 at 2025-11-06 14:24
葉の突起について
私が一人で思いついたことですので全く的外れかもしれません。
あしからず・・・

突起は葉脈の先端、ちょうど水孔の場所にあります。
水孔は夜間などに余分な水分を排出する孔です。
この水分排出を「溢液現象」といいます。
この時、水分ばかりでなく栄養塩類、タンパク質、炭水化物も含まれると研究結果がでています。この水溶液が乾くと白っぽい塊となることがあるらしいのです。普通あまり見られませんが新陳代謝が活発で水辺に生えるゴキヅルだったら?と想像してしまいます。

溢液現象はイネ科でよく知られていますが私はワレモコウ(バラ科)で夏、早朝よく見かけます。
露玉ともいわれ、とても美しいです。
Commented by sizenkansatu at 2025-11-06 16:15
> miyabiflowerさん
果実はかわいいですね。何ものにも似てないところがまた好いです。
ゴキヅルは江戸川べりや支流に点々とありますが、
どこにでもあるというわけではないようで、絶滅が危惧されているとか…
近くの水元公園の一角にもわんさかありますが、立ち入ることのできない場所で、近くで観ることはできません。
Commented by sizenkansatu at 2025-11-06 16:19
> kaya2018さん
コメントありがとうございます。

葉の縁に水滴がつくやつですね。ときどき見かけます。
これが塊になることもあるのですね。
勉強になります。

ただ、ゴキヅルの突起は葉の組織であって、何かの結晶ではないと思います。
まだ間に合うかもしれないので、もう一度見直してみます。
Commented by cflcfl at 2025-11-07 07:19
ちょっとした発想なんですけど、この突起が風で果実とぶつかったり引っかかったりして、種の放出を助ける役立つのではないかと考えたのですが。
Commented by sizenkansatu at 2025-11-07 23:38
> cflcflさん
うーむ。
それはないかも。
質量も硬度もゴキを割るほどのものではないと思います。
Commented by kaya2018 at 2025-11-09 17:21
葉の突起について
アドバイスをありがとうございます。
はい、そうですね。分泌物ではなさそうですね。
葉の組織だとすると鋸歯の形成に関係あるでしょうか?
Commented by sizenkansatu at 2025-11-09 23:22
> kaya2018さん
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、突起は鋸歯の先端にあります。
ゴキヅルでは鋸歯の無いような葉あるので、突起の有無との関係を確認しておきたいです。

植物、虫、鳥など自然を楽しむ  ★写真の無断転載はお断りいたします★
by sizenkansatu
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30

最新の記事

最新のコメント

ありがとうございます。正..
by cflcfl at 13:59
> cflcflさん ..
by sizenkansatu at 23:13
この紺青、鮮やかで惚れ惚..
by cflcfl at 14:16
> kaya2018さん..
by sizenkansatu at 23:22
葉の突起について アドバ..
by kaya2018 at 17:21

検索

ブログジャンル