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自然観察大学ブログ

ヤブガラシの観察-4 性転換する花

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これがヤブガラシの花。花の周辺にはつぼみが並ぶ。
花の緑色の部分が花弁で、まだ閉じていた時の形が残っている。開花したばかりなのだろう。
オレンジ色の部分は花盤(花托)と言われるもので、その縁に4本の雄しべがある。
花盤の中心は雌しべの花柱だ。
ヤブガラシの観察-4 性転換する花_d0163696_22080279.jpg
こちらは花弁が開いてきた状態。
左の花はすでに終わった花で、花盤は淡いピンク色。

花盤の上面にはたくさんの蜜を分泌する。
ヤブガラシの観察-4 性転換する花_d0163696_22082192.jpg
この蜜を求めて、さまざまな昆虫が集まってくる。

ところで、写真(↑)の花は花弁が5、雄しべが5。
ヤブガラシは基本的に花弁も雄しべも4個だが、自然界ではこのようなこともふつうに観られる。

さて、見出しに記した性転換を観てみよう。


雄しべの時期(雄性期)
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はじめは雄しべが熟す時期。
雄しべの葯にはたっぷりと花粉がついている。
花盤には蜜を分泌して、虫を誘っている。
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このとき雌しべの花柱は短く未熟な状態だ。

花弁は反り返り、このあと雄しべとともに落下する。


ちょっとひと休み(中性期/無性期)
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写真の左は雄性期だが、右の花は中性期/無性期という。
中性期では、雄しべを落としたあと、花盤はいったん淡いピンク色になる。ちょっとひと休みといった状態だ。

ついさっきまでの私は、右の花は正常な成長ができず、雌しべが未熟なまま終わってしまった花と考えていた。
ところが、じつはそうではなく、これが中性期であることを教えていただいた。
● 花色は3回変わる?~ヤブガラシ : 里山の四季  
アオイスミレさん、ありがとうございました。


雌しべの時期(雌性期)
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雌しべの花柱が長く伸びてくる。雌しべが熟した状態。
いったんピンク色になった花盤は、また鮮やかなオレンジ色に戻る。

ヤブガラシの花は雄しべが先に熟し(雄性期)、そのあとで雌しべが熟す(雌性期)。
“雌雄異熟”と言って、自家受粉を避けるためのしくみだ。

ところで、上の写真ではあふれんばかりの蜜を出している。
雄性期と雌性期にそれぞれ蜜を分泌し、昆虫を誘う。
ヤブガラシやノブドウなどは、花は小さいが多量の蜜を分泌し、非常に人気が高い。

そして花盤は再び淡いピンク色になる。
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これで花は終了。
なお、花のすぐ下のところにある球体が真珠体だ。

雄しべ期の花と終わった花が並んでいた。
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雌しべの先端が黒くなってしまっているが、花柱の長さの違いがよくわかる。

さて、以上をまとめると次の4つの段階がある。
① 雄しべの時期(花盤はオレンジ色)
② ひと休み(雄しべを落とす。花盤はピンク色)
③ 雌しべの時期(雌しべが伸びる。花盤はオレンジ色)
④ 終了(花盤はピンク色)
ということになる。

次は果実を期待したいところだが、残念ながら関東のヤブガラシは果実ができない。
関東のヤブガラシは3倍体なのがその理由で、果実ができないので地下茎からの繁殖をずっと続けていることになる。
なお、西日本のヤブガラシは2倍体で、よく結実するという。関東でも埋め立て地や造成地などでヤブガラシの果実を観たという話を聞くが、もしかすると土と一緒に西日本のヤブガラシが持ち込まれたのかもしれない。

果実を観たいと思いながら日々ヤブガラシを観ているのだが、ある時、ヤブガラシの果実と思われるのをみつけた。
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これは!  黒光りする球体はヤブガラシの果実ではないか?

…興奮しながら近づいてみると、どこかおかしい。
なんと、ヤブガラシと絡み合ったヤマノイモのむかごであった。
一気に心がしぼんでしまった。


さて、前述のようにヤブガラシの花では繁殖のための3つのしくみがある。
まとめると次のとおり。
●開花の時期をずらす
●大量の蜜を分泌して訪花昆虫を誘う
●雌雄異熟で自家受粉を避ける
これだけ懸命にくふうを凝らしているにもかかわらず、果実ができないとは… 
なんということか!

次回はヤブガラシの花に来る昆虫の予定。
真珠体にかかわる新発見もあります。

2025年7月14日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




by sizenkansatu | 2025-07-14 22:28 | 植物 | Comments(4)
Commented by cfl at 2025-07-15 16:34
今回の記事も大変勉強になりました、ありがとうございます。
「衝撃」だと事前に予告されていても、見出しを見た瞬間はすごく驚きました。
私にとって興味深い点がいくつもあります:

1. 雄性期も雌性期も蜜を分泌しますが、それぞれ分けて考えると、一つの花にとっては、雄性期の蜜は「他人」の受粉のために、雌性期の蜜は自分自身の受粉のために。花全体としては、どちらも受粉に役立つという点。

2. 「むかご」という言葉も、その存在自体も初めて知りました。「地上に落ちると根を出して新しい個体となる」という繁殖方法もあるんですね!

3. 三倍体という事実が最も衝撃的でした。こんなに精巧な仕組みが最終的に「無用」になるとは...なかなか納得できません。

4. 「し」は「si」でもスマホで入力できますか! 私はいつも「shi」で打っています。

(少し気になったのは、見出しの「性転換」という表現です。私の理解では「性期順番」や「雌雄異熟」などの方が適切ではないかと思いました。)

次回の記事も楽しみにしています!
Commented by sizenkansatu at 2025-07-16 07:26
> cflさん
コメントありがとうございます。
ていねいに見ていただいて、感謝です。
今後ともよろしくお願いします。

ローマ字表記ですが、私の幼少のころは si でした。
最近はヘボン式の shi に変更になったようです。
ワープロなどの Rかな入力はどちらでもできると思います。

おっしゃるとおり、性転換という表記は適切ではありません。
わかりやすさとインパクト狙いで使用してしまいました。
本当に “性転換する植物” はマムシグサなど別にあります。
よろしければ次を見てやってください。
https://sizenkan.exblog.jp/30674710/
Commented by miyabiflower at 2025-07-16 21:17
ヤブガラシをよく見てみようと思って歩いていても
花がきれいに咲いているものがなかったり
刈られてしまっていたり・・・。
ピンクの色がかわいらしいですね。

ノブドウの花を記事に載せたので
またリンクを貼らせていただきました^^
よろしくお願いします。s
Commented by sizenkansatu at 2025-07-16 22:27
> miyabiflowerさん
リンクいただきありがとうございます。

ヤブガラシはどこにでもあると思うので、いつでも見られると思います。
ただ、ノブドウと一緒で午前中でないときれいな花はないと思います。

ノブドウの記事、拝見しました。きれいに咲いてますね。

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