ヤブガラシの観察-4 性転換する花
花の緑色の部分が花弁で、まだ閉じていた時の形が残っている。開花したばかりなのだろう。
オレンジ色の部分は花盤(花托)と言われるもので、その縁に4本の雄しべがある。
左の花はすでに終わった花で、花盤は淡いピンク色。
ところで、写真(↑)の花は花弁が5、雄しべが5。
ヤブガラシは基本的に花弁も雄しべも4個だが、自然界ではこのようなこともふつうに観られる。
さて、見出しに記した性転換を観てみよう。
雄しべの時期(雄性期)
雄しべの葯にはたっぷりと花粉がついている。
花弁は反り返り、このあと雄しべとともに落下する。
ちょっとひと休み(中性期/無性期)
中性期では、雄しべを落としたあと、花盤はいったん淡いピンク色になる。ちょっとひと休みといった状態だ。
ついさっきまでの私は、右の花は正常な成長ができず、雌しべが未熟なまま終わってしまった花と考えていた。
ところが、じつはそうではなく、これが中性期であることを教えていただいた。
● 花色は3回変わる?~ヤブガラシ : 里山の四季 ⇒
アオイスミレさん、ありがとうございました。
雌しべの時期(雌性期)

雌しべの花柱が長く伸びてくる。雌しべが熟した状態。
いったんピンク色になった花盤は、また鮮やかなオレンジ色に戻る。
ヤブガラシの花は雄しべが先に熟し(雄性期)、そのあとで雌しべが熟す(雌性期)。
“雌雄異熟”と言って、自家受粉を避けるためのしくみだ。
ところで、上の写真ではあふれんばかりの蜜を出している。
雄性期と雌性期にそれぞれ蜜を分泌し、昆虫を誘う。
ヤブガラシやノブドウなどは、花は小さいが多量の蜜を分泌し、非常に人気が高い。
なお、花のすぐ下のところにある球体が真珠体だ。
さて、以上をまとめると次の4つの段階がある。
① 雄しべの時期(花盤はオレンジ色)② ひと休み(雄しべを落とす。花盤はピンク色)③ 雌しべの時期(雌しべが伸びる。花盤はオレンジ色)④ 終了(花盤はピンク色)
ということになる。
次は果実を期待したいところだが、残念ながら関東のヤブガラシは果実ができない。
関東のヤブガラシは3倍体なのがその理由で、果実ができないので地下茎からの繁殖をずっと続けていることになる。
なお、西日本のヤブガラシは2倍体で、よく結実するという。関東でも埋め立て地や造成地などでヤブガラシの果実を観たという話を聞くが、もしかすると土と一緒に西日本のヤブガラシが持ち込まれたのかもしれない。
…興奮しながら近づいてみると、どこかおかしい。
なんと、ヤブガラシと絡み合ったヤマノイモのむかごであった。
一気に心がしぼんでしまった。
さて、前述のようにヤブガラシの花では繁殖のための3つのしくみがある。
まとめると次のとおり。
●開花の時期をずらす●大量の蜜を分泌して訪花昆虫を誘う●雌雄異熟で自家受粉を避ける
これだけ懸命にくふうを凝らしているにもかかわらず、果実ができないとは…
なんということか!
次回はヤブガラシの花に来る昆虫の予定。
真珠体にかかわる新発見もあります。
2025年7月14日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
by sizenkansatu
| 2025-07-14 22:28
| 植物
|
Comments(4)
今回の記事も大変勉強になりました、ありがとうございます。
「衝撃」だと事前に予告されていても、見出しを見た瞬間はすごく驚きました。
私にとって興味深い点がいくつもあります:
1. 雄性期も雌性期も蜜を分泌しますが、それぞれ分けて考えると、一つの花にとっては、雄性期の蜜は「他人」の受粉のために、雌性期の蜜は自分自身の受粉のために。花全体としては、どちらも受粉に役立つという点。
2. 「むかご」という言葉も、その存在自体も初めて知りました。「地上に落ちると根を出して新しい個体となる」という繁殖方法もあるんですね!
3. 三倍体という事実が最も衝撃的でした。こんなに精巧な仕組みが最終的に「無用」になるとは...なかなか納得できません。
4. 「し」は「si」でもスマホで入力できますか! 私はいつも「shi」で打っています。
(少し気になったのは、見出しの「性転換」という表現です。私の理解では「性期順番」や「雌雄異熟」などの方が適切ではないかと思いました。)
次回の記事も楽しみにしています!
「衝撃」だと事前に予告されていても、見出しを見た瞬間はすごく驚きました。
私にとって興味深い点がいくつもあります:
1. 雄性期も雌性期も蜜を分泌しますが、それぞれ分けて考えると、一つの花にとっては、雄性期の蜜は「他人」の受粉のために、雌性期の蜜は自分自身の受粉のために。花全体としては、どちらも受粉に役立つという点。
2. 「むかご」という言葉も、その存在自体も初めて知りました。「地上に落ちると根を出して新しい個体となる」という繁殖方法もあるんですね!
3. 三倍体という事実が最も衝撃的でした。こんなに精巧な仕組みが最終的に「無用」になるとは...なかなか納得できません。
4. 「し」は「si」でもスマホで入力できますか! 私はいつも「shi」で打っています。
(少し気になったのは、見出しの「性転換」という表現です。私の理解では「性期順番」や「雌雄異熟」などの方が適切ではないかと思いました。)
次回の記事も楽しみにしています!
> cflさん
コメントありがとうございます。
ていねいに見ていただいて、感謝です。
今後ともよろしくお願いします。
ローマ字表記ですが、私の幼少のころは si でした。
最近はヘボン式の shi に変更になったようです。
ワープロなどの Rかな入力はどちらでもできると思います。
おっしゃるとおり、性転換という表記は適切ではありません。
わかりやすさとインパクト狙いで使用してしまいました。
本当に “性転換する植物” はマムシグサなど別にあります。
よろしければ次を見てやってください。
https://sizenkan.exblog.jp/30674710/
コメントありがとうございます。
ていねいに見ていただいて、感謝です。
今後ともよろしくお願いします。
ローマ字表記ですが、私の幼少のころは si でした。
最近はヘボン式の shi に変更になったようです。
ワープロなどの Rかな入力はどちらでもできると思います。
おっしゃるとおり、性転換という表記は適切ではありません。
わかりやすさとインパクト狙いで使用してしまいました。
本当に “性転換する植物” はマムシグサなど別にあります。
よろしければ次を見てやってください。
https://sizenkan.exblog.jp/30674710/
ヤブガラシをよく見てみようと思って歩いていても
花がきれいに咲いているものがなかったり
刈られてしまっていたり・・・。
ピンクの色がかわいらしいですね。
ノブドウの花を記事に載せたので
またリンクを貼らせていただきました^^
よろしくお願いします。s
花がきれいに咲いているものがなかったり
刈られてしまっていたり・・・。
ピンクの色がかわいらしいですね。
ノブドウの花を記事に載せたので
またリンクを貼らせていただきました^^
よろしくお願いします。s
> miyabiflowerさん
リンクいただきありがとうございます。
ヤブガラシはどこにでもあると思うので、いつでも見られると思います。
ただ、ノブドウと一緒で午前中でないときれいな花はないと思います。
ノブドウの記事、拝見しました。きれいに咲いてますね。
リンクいただきありがとうございます。
ヤブガラシはどこにでもあると思うので、いつでも見られると思います。
ただ、ノブドウと一緒で午前中でないときれいな花はないと思います。
ノブドウの記事、拝見しました。きれいに咲いてますね。
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