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自然観察大学ブログ

チュウゴクアミガサハゴロモの観察

文末に追記があります。(2025年7月9日)
追加訂正(2025年7月14日)

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ここ数年、たいへんに目立っているチュウゴクアミガサハゴロモの幼虫。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19230835.jpg
ハゴロモ類の幼虫は腹部の末端に分泌腺があって、白い毛の束(蝋物質)をつけて扇のように広げる。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19231405.jpg
チュウゴクアミガサハゴロモはそれが縮れたようになっているのが特徴だ。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19232016.jpg
ときどきは白い毛が直線的なもの(↑)もいるが、これから縮れていくのだろうか。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19232551.jpg
こんなふうに(↑)固まって帯状になっているのもいる。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19233003.jpg
前にまわりこんで観ると(↑)、少し前の大みそかの小林幸子さんの衣装のようだ。
本体の幼虫も大きくなっている。黒っぽいのは翅芽(しが)という翅のもとだ。

幼虫は歩くのはゆっくりだが、危険を察知すると、ぴんっと跳ねて逃げる。
跳ねたときにはおそらく蝋物質が落ちるので、この幼虫はこれまで平穏無事に過ごしてきたということなのかもしれない。

さて、成虫はこちら、今年の6月末に観ている。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19233652.jpg
茶褐色の粉が吹いたようになっていて、翅の端にある白い斑紋が特徴だ。

こちらは真っ黒の成虫。(↓)
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19234269.jpg
ネットで調べると、羽化直後は真っ黒で、そのあと茶褐色になるらしい。
茶褐色の粉が落ちて黒くなったのかと思っていたが、そうではないようだ。


幼虫は植物の茎に口針を刺して吸汁するので、農業場面でも警戒されている。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19234813.jpg
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19235556.jpg
食草は各種の草本、木本。植物の種類を選ばず、ほとんど何でもよいようだ。


ところで、私がこの虫をはじめて観たのは2022年の9月であった。たぶん初夏に発生したのが産卵し、その次の世代を観たのだろう。
当時ネットで調べると、和名はなく、Pochazia shantungensis の学名で検索できた。
そのときの記事では
“日本では2017年に発見され、その後何度も確認されているが、毎年飛来しているものの越冬できないという可能性もあり、帰化昆虫かどうかは不明”
といったことが記されていた。
(毎年飛来して増殖するものの、越冬できずに死に絶える昆虫というのはけっこうたくさんいる)

いまのネットの記事では、和名はチュウゴクアミガサハゴロモ、学名Ricania shantungensis と記されている。
中国原産で日本に定着していることが確認され、分類も見直されたようだ。


アミガサハゴロモ
よく似たアミガサハゴロモも載せておこう。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19240293.jpg
成虫は同様に粉が吹いたようになっているが、こちらの粉は緑がかっている。
白い斑紋が前翅の同じような位置にあるが、よく観ると斑紋の形が違っている。
よく似ているので、チュウゴクアミガサハゴロモの命名のもとになったのだろう。

幼虫はこちら。(↓)
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_19241352.jpg
体色は白が基調だが、茶褐色の部分がある。
なにより、尻につく毛の束は直線的できれいな扇形。
ハゴロモ類はほかにもいくつもあるが、扇が縮れているのは外国原産の種で、日本在来のハゴロモ類はどれも縮れることはないようだ。

2025年7月2日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

追記/2025年7月9日

記事をアップしたあとで、チュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕と思われるものが観察できたので追加しておきたい。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_05522726.jpg
ネットで見られる産卵痕の写真にそっくり。今の時季に見られるアオバハゴロモの幼虫のコロニーに似ているが、幼虫は近くにはいない。
たぶんチュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕と思われるが、産卵しているところを見たわけではないので、確証はない。

別の枝で、こんどは白いワックスを取り除いて撮った。
チュウゴクアミガサハゴロモの観察_d0163696_05523584.jpg
茶褐色のすじが、成虫が産卵管を刺し込んだ痕と思われる。
植物はクロモジの当年枝。枝を切って中に卵があるかどうかを確認したいところだが、ここは厳しく管理された植物園なのでそれはできない。

追加訂正(2025年7月14日)

先日、チュウゴクアミガサハゴロモの産卵シーンを観察しました。
上の写真は産卵痕ではないようです。
近日中に正しいものをアップします。
写真を整理するまで、少しの間お時間をください。

………………………………………………………………


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2025年9月14日(日) 東京都町田市、相原中央公園周辺

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by sizenkansatu | 2025-07-02 19:28 | 昆虫など | Comments(14)
Commented by wabisuke-miyake at 2025-07-02 20:17
ハゴロモの幼虫さんは
この季節の庭にはびこるいやな虫です
枝が白くなってると
水をかけたり剪定したりするけど
またすぐにもどってきて
イラッとします
でも最近は
メダカのエサになってもらってるので
見つけるとうれしいくらいです(^^)

Commented by shizenkaze at 2025-07-02 22:26
昔は外来種が越冬できなくて繁殖するのが難しいものが多いと言われていましたが今は温暖化の影響で熱帯産の生物も日本で繁殖できるようになりましたが気温の低い所でしか生きられない生き物たちが暮らせず消えていることもあって悲しいですね・・・・・
チュウゴクアミガサハゴロモより若い頃にフライフィッシングをしていた私はトドノネオオワタムシの方が馴染みがあります~(*´∇`*)V
Commented by sizenkansatu at 2025-07-02 23:16
> wabisuke-miyakeさん
コメントありがとうございます。
メダカの餌ですか!
かわいそうですが、うまい方法だと思います。
脂分が多くておいしいのかもしれませんね。
Commented by sizenkansatu at 2025-07-02 23:20
> shizenkazeさん
コメントありがとうございます。
トドノネオオワタムシはそちらにはいないと思いますが、疑似餌のモデルということなのですね。
巨大綿虫もどきでつるのでしょうか。
Commented by pallet-sorairo at 2025-07-03 23:07
こんばんは。
チュウゴクアミガサハゴロモのクリアな写真と丁寧な解説を
ありがとうございます。
姿形も生態もすごくよくわかりました。
↑ の方のコメントにある、メダカの餌にするというのも
とても面白く興味深いです。
それにしても、見れば見るほどヘンな生き物だなぁと思います(^^ゞ
Commented at 2025-07-03 23:16
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sizenkansatu at 2025-07-04 14:42
> pallet-sorairoさん
ハゴロモのなかまはおもしろいですよね。
幼虫が脱皮するときは毛の束は抜け殻についたままになると思うのですが(そんな抜け殻を観たように記憶しています)、
脱皮後に新たな蝋物質を出すのだと思います。
その過程を観察したいですが、飼育しないと無理でしょうね。
飼育は苦手なので、悩ましいです。
Commented by sizenkansatu at 2025-07-04 14:43
>鍵さん
もちろんOKです。
私としてもうれしく、ありがたいことです。
Commented by miyabiflower at 2025-07-08 22:52
今年は実家の庭のグミ、梅、ムラサキシキブにたくさんいました。去年まではほとんど見かけなかったのに・・・。
生けるために枝を切って庭に置いておくと
わさわさと葉の間から出てきました。
ジャンプ力もありますね。
連れ帰りたくないので、枝はしばらく庭の敷石の上に置いてから
持ち帰っていましたよ。

7月に入ってからは自宅マンションの玄関の外の天井や
ベランダのりんごの木、網戸などにとまっている成虫をよく見かけます。
マンションの上階なのですが、どこからか飛んでくるのでしょうね。
去年までは成虫を見かけなかったので
ふえているのでしょうね。

幼虫の姿、羽根を背負った宝塚の男役のようだとおもしろがっていましたが、
どんどんふえると困りものですね。
Commented by sizenkansatu at 2025-07-09 06:03
> miyabiflowerさん
コメントありがとうございます。
ムラサキシキブにもいましたか。ほんとにいろんな植物につくようですね。

先ほど産卵痕と思われる写真を追加しました。
今の季節は産卵シーズンのようなので、枝を切って持ち帰るときは、ワックスがないものを選ばないと、たいへんなことになるかも…
Commented by H.M at 2025-07-09 08:29
文中に「跳ねた時に蝋物質が落ちる」とありますが、跳ねても落ちないのを見たことがあります。何回くらい跳ねると落ちるものなのでしょうか?ご教示お願い致します。
Commented by cfl at 2025-07-09 10:55
幼虫の姿が本当に可愛らしい😊
Commented by sizenkansatu at 2025-07-09 15:38
> H.Mさん
コメントありがとうございます。
申し訳ありません。跳ねて蝋物質が落ちると記したのは想像です。
跳ねた瞬間に目で追えなくなるので、確認はしていません。
跳ねても落ちない例があってもおかしくないと思います。

ネットで見た飼育している人の記事で、跳ねたときに落ちると書いてあったように記憶していますが、飼育箱にぶち当たったのかもしれません。
Commented by sizenkansatu at 2025-07-09 15:40
> cflさん
コメントありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

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