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自然観察大学ブログ

ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②

はじめにクイズ。
この写真(↓)はヘビイチゴ、ヤブヘビイチゴのどちらか?
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19450039.jpg
上の写真では濃緑色の葉と黄緑色の葉が入り混じっているが、これは種の違いではなく個体差だろう。
葉は3出複葉。果実はイチゴに似た鮮やかな赤色。これは両種に共通している。

一般にヤブヘビイチゴのほうが葉、花、果実など全体に大きいとされるが、当然のように例外がある。
なにより、大きさが違うと言われても両種を並べて比較しなければわかりにくい。
葉が濃色なのがヤブヘビイチゴとされるが、個体差があり、上の写真のように絶対的なものではない。

前回の①で記したように、ヘビイチゴは日なたに生育し、半日陰の藪のまわりにあるのがヤブヘビイチゴとされるが、もちろん例外はある。
自然界、生物界のことであり、どれも例外があり、中間的なものがあって悩ましい。


ところで、上のクイズの正解はヤブヘビイチゴ。


葉をくらべる
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19451241.jpg
左がヘビイチゴで、右がヤブヘビイチゴ。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19452297.jpg
これ(↑)も同じく、左がヘビイチゴで、右がヤブヘビイチゴ。

どちらも3出複葉で、ヘビイチゴは小葉の先が丸く、ヤブヘビイチゴは小葉の先がやや細くすぼまる。
ただ、すべての葉が必ずこのとおりということはないので、株全体を見て判断したい。
なお、葉の色については、日当たりや個体差で変わってくるのであまりあてにできない。


果実をくらべる

こんどは果実をくらべよう。
この写真(↓)はヘビイチゴとヤブヘビイチゴを並べている。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19453128.jpg
前回の①で記したように、中心の大きな球体は花床(花托)で、ほんとうの果実(痩果)は表面の粒々である。

さて、上の写真でヘビイチゴとヤブヘビイチゴ、どっちがどっち?

正解は、右がヘビイチゴで左がヤブヘビイチゴ。

ヤブヘビイチゴでは副がく片(外側のがく片)が大きいとされるが、それよりもわかりやすいのは花床の表面だ。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19454108.jpg
ヘビイチゴ(↑)は花床の表面が白っぽくてつやがない。
ヤブヘビイチゴ(↓)は花床の表面は果実と同じ鮮やかな赤色で光沢がある。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19454980.jpg


少し拡大してみると、花床の違いのほかに、果実(表面の粒々)の違いも観えてくる。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19455920.jpg
ヘビイチゴ(↑)は果実の表面がでこぼこでざらついた感じ。
ヤブヘビイチゴ(↓)は果実の表面が滑らかで光沢がある。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19461588.jpg


花床と果実の表面での違いはわかりやすい。

ただ、ややこしくしてしまって申し訳ないが、もっと拡大するとヤブヘビイチゴの果実でも表面にしわがある。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19463249.jpg


果実の形も、横から観てみると両種に違いがある。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19464331.jpg
ヘビイチゴ(↑)はトウモロコシの粒のような形で、上側が少し盛り上がっている。
ヤブヘビイチゴ(↓)は上の方がやや細くなって曲がり、勾玉のような形だ。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19465397.jpg


余談-その1 ほんとうの種子は?

種子のように見える表面の粒々は果実だが、そうなると種子も観てみたくなる。
そこでヤブヘビイチゴの果実を切ってみた。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19470524.jpg
表面が赤くて断面の白い半透明の部分が果皮で、黄色がかった部分が種子であろう。
痩果(そうか)はごく薄い果皮が種子を包んでいるという。

余談の余談だが、断面の写真はずいぶん前に撮ったものである。
果実を切るのはとんでもなくたいへんだった。小さいうえに硬く滑りやすい。
固定して剃刀を当てるのに、何度も失敗した。上の写真は多くの失敗を重ねた上での、まさに偶然の産物であった。


余談-その2 オヘビイチゴ

ヘビイチゴのなかまには、ほかにもう一つ、オヘビイチゴというのがある。
生育環境はヘビイチゴに似て、湿っていて日当たりのよいところ。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19471522.jpg
茎が立ち上がって先端に複数の花がつく(花序になる)。
花はヘビイチゴなどによく似ているが、がく片が小さい。

葉は掌状複葉。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19472867.jpg

果実は茶褐色で、花床が膨らむことはない。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴ②_d0163696_19473852.jpg
こうなるとヘビイチゴとは似ても似つかない。

ヘビイチゴとヤブヘビイチゴの果実は大きくて瑞々しく鮮やかな赤色で、いかにも“食べてくれ”と誘っているようだが、実際に鳥などの動物が食べているところを見たことはない。種子散布のために目立っているということはなさそうだ。
オヘビイチゴの地味な果実とくらべると、鮮やかな果実はなんのためなのだろうと気になる。

2024年6月6日、報告:自然観察大学 事務局 大野透





by sizenkansatu | 2024-06-06 19:56 | 植物 | Comments(4)
Commented by miyabiflower at 2024-06-07 16:18
ひとつだけ実をみつけることがあるのですが
大きさが中くらいだと どちらなのかわからないですね。
ただ、なんとなくですが
ヤブヘビイチゴはぴかぴか光っていて
ヘビイチゴは光沢がないという印象があります。
拡大された写真の花床の表面がずいぶん違うのですね。
オヘビイチゴの果実は初めて見ました。
オヘビイチゴの花はみつけたことがありますが
どこに咲いていたか忘れてしまうので
その後の様子がわかりませんでした。
地味ですが、きれいな造形ですね。

それから遅くなりましたが、先日教えていただいたワイルドライフ、視聴しました。
とてもわかりやすくて興味深い番組でした。
ありがとうございます。
Commented by sizenkansatu at 2024-06-07 22:47
> miyabiflowerさん
コメントありがとうございます。
ヘビイチゴとヤブヘビイチゴは中間のようなのがあって悩ましいですね。
ふだんは区別する必要がないので、眺めて愛でているだけで満足してしまいます。

オヘビイチゴは果実になるととても地味なので、見のがしてしまいます。
今年はしっかり場所を覚えていたので、撮影できました。

ワイルドライフはよくできていると思いました。
NHKはていねいに番組を作りますね。さすがです。
最後のほうで出演された飯島和子博士の取材にはご一緒させてもらったのですが、
各種の植物をていねいに撮っていて、ほぼ一日がかりのていねいな取材でした。
それが5分くらいしか使われてないので、驚きました。
Commented by yamasemi21 at 2024-06-08 23:20
こんばんは^^
アップの表面や断面図 ただただ美味しそう~ って
写真しか目にはいらなくて・・
特にヘビイチゴのほうは、粉砂糖をふりかけたみたい^^

でも、ヘビイチゴもヤブヘビイチゴも
食べられないんでしょうね?
夫にきいても食べたことがないそうです。

説明文も、
やっと今日、落ち着いてから読ませていただきましたm(__)m
Commented by sizenkansatu at 2024-06-09 05:31
> yamasemi21さん
コメントありがとうございます。
たしかにどちらも美味しそうですね。
でも、どれをみても食べられないと書いてあるので、
私は食べたことはありません。

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