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自然観察大学ブログ

ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど

8月末に、いつもの江戸川べりで見慣れないつる植物を発見した。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18383997.jpg
遠目にはヤマノイモに似ているが、ハート形の葉は大きくて幅が広い。
垂れ下がった花序は、ヤマノイモとは明らかに違う。
ネットで調べた結果、ニガカシュウではないかと考えた。

ニガカシュウの名前は漢字では苦何首烏で、何首烏(カシュウ、タデ科のツルドクダミのこと)に葉の形が似ていて苦いということのようだ。
どこを観てもツルドクダミではなくヤマノイモに似ている。納得のいかない命名だが、しかたがない。


ニガカシュウの葉

ちょうどよい具合にニガカシュウとヤマノイモがからみ合っていたので、両種の違いを観てみよう。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18385618.jpg
ヤマノイモの葉は細長いハート形で、ニガカシュウのほうは大きくて幅広いふっくらとしたハート形だ。
こうしてみるとはっきり違うが、葉の形には変化があり、ヤマノイモ的な細身のニガカシュウの葉もある。

葉のつき方は、ニガカシュウが互生で、ヤマノイモは対生というのは大きな違いだ。

ニガカシュウとヤマノイモは葉柄で見分けることができる。
ニガカシュウでは葉柄の両側にびらびらの翼がある。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18391086.jpg
少し拡大してみよう。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18392252.jpg
葉柄の葉身がわ(↑)と、つけ根の近く(↓)の両方にびらびらがある。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18394102.jpg
ただ、このびらびらには変化があるようで、ほとんど翼のないものがあったり、葉身がわだけに翼があるものもある。

参考までに、こちらはヤマノイモの葉柄。(↓)
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18400348.jpg
翼のような稜のようなところがあるが直線になっている。


ニガカシュウのむかご

ところで、一コマ前のニガカシュウの葉柄のつけ根に凸凹の球体がある。
これはむかご(珠芽)のできはじめである。

ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18402039.jpg
ニガカシュウのむかごは葉腋ごとにつく。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18403108.jpg
むかごの表面に突起があるのが特徴。
ちなみに、ニガカシュウのむかごを少しかじってみたところ、味はなく苦味もなかった。

参考のヤマノイモのむかご。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18404526.jpg
ヤマノイモのむかごは基本的に突起がないので、ここでも区別できる。(写真のヤマノイモのむかごには少数の小さな突起がある)
さらに、ヤマノイモは葉が対生なので、むかごも2個ずつならぶことが多いようだ。


ニガカシュウの芋

ヤマノイモの仲間は多年生で地下に芋をつくるものが多い。
ニガカシュウはどうなのか、小さめの一株を掘り出してみた。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18410124.jpg
根に隠れてわかりにくいが、立派な芋がある。

この芋はとろろ芋などで食用にするヤマノイモと同じ由来と思う。ウィキペディアによると地下茎とか担根体とか記されていてちょっとややこしい。


まとめ

さて、このニガカシュウだが、自宅近くの江戸川べりで1km以上にわたって点々と観られる。
あるときは土手から伸びたつるがフェンスにからまり、藪があるところでは立ち木にからまって高所まで伸びている。
ニガカシュウの観察 ① 葉とむかごなど_d0163696_18411154.jpg
上の写真では、画面奥ではニガカシュウが木の枝にからんでいる。
その一方、画面手前ではカナムグラやヤブガラシなどほかのつる植物が優占して、ニガカシュウはわずかに観られるだけだ。つる植物の中では比較的弱い存在で、他の隙を見つけてはかろうじて伸びているように思えた。


ニガカシュウは千葉県ではあまり知られていない存在のようだが、そのあたりのことを前回の記事で岩瀬先生が記してくださった。
● ニガカシュウの再発見 ⇒  

今回はたまたまニガカシュウと気づいたわけだが、見過ごしていた可能性は高いと思われる。ほかの地域も含めて、今後も注目していきたい。

なお、この記事で掲載した写真は、どれもわかりやすい典型的なものを選んでいるが、実際には変化が多く中間的で悩ましいことがある。
ニガカシュウと判断するには、葉身の形と大きさ、葉柄のびらびらの翼、むかごの突起を総合的に観る必要があるようだ。

次回はニガカシュウの花の観察  

2023年10月28日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




by sizenkansatu | 2023-10-28 18:55 | 植物 | Comments(4)
Commented by manyouka at 2023-10-31 00:01
ご指摘ありがとうございました。
事前に何の知識も無く思い付きで撮っていると細かな差異に気づきません。
たまたま区別できるところが写っていればラッキーです。

ニガカシュウも見かけても花や実が無いのでスルーです_(._.)_

有難うございました。
Commented by sizenkansatu at 2023-10-31 08:59
> manyoukaさん
どんぐりで見分けるのはむずかしいものがあります。
マテバシイやクヌギは特徴的なのでわかりますが、シラカシ、アラカシなど○○カシは私には見分けられません。

ニガカシュウも、ヤマノイモだけでなくオニドコロにも似ているので、見分けるのは難しいようです。
西日本の川べりなどに多いようなので、気をつけてみていただけるとおもしろいと思います。
ニガカシュウの記事はまだ続く予定なので、よろしくお願いします。
Commented by miyabiflower at 2023-11-08 09:15
おはようございます。
新しい記事にアレチヌスビトハギを載せて
こちらの「アレチヌスビトハギの緻密な作戦」へ
リンクを貼らせていただきました。
事後報告になりますがよろしくお願いします。
近所でも寺家ふるさと村でも、茶色い実になりました。
Commented by ruolin0401 at 2023-11-09 18:29
富士への散歩道です
当方ブログにコメントありがとうございました。
いつも拝見させて戴いています、今後ともよろしくお願いいたします。

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