サネカズラの不思議な花


しかし、下向きに葉の陰に隠れるように咲き、しかも花弁をあまり開かないので、見のがしてしまうことが多いだろう。
雄花と雌花があって、どちらも不思議なつくりをしている。
つる植物は一般に花期が長いので、繰り返し観察し直すことができるのがありがたい。
詳しく観察したのでご報告したい。
雄花の観察
アバウトなところが、なんとも好ましい。
なお、写真写りのために花被を大きく開いた花を選んだが、ふつうは半開きのような中途半端な状態の花が多い。
さて、気になる中心の球形のものは何なのか?
えんじ色の平たい六角形の面が雄しべの花糸の先端で、その両側で花粉を出しているのが葯。
隣りの葯と合わせて唇のように観える。
花糸の先端がこんなに大きいことに驚く。
こんな雄しべは観たことがないが、花糸の先端を示す「葯隔」という用語がある。「葯の間にあって隔てる」という意味の名称と思われる。
六角形は、すき間なくびっしり並ぶとこうなるということであろう。
全体は下向きに開いた扇形のようだ。
わかりにくいので、写真の中に説明書きを記入した。
(めんどうならパスしてください)
雌花の観察
個体によっては花被片がほとんど開かない花もある。
中心部の球形のものは雌しべの集まりで、雄しべと同じつくりだ。
画面左の2個では、子房の側面(右の面)に沿って雌しべがあることがわかる。
ふつうの花は子房の先に雌しべがつくものと思っていたが、サネカズラの雌花はまったく異なる不思議な形をしていた。
サネカズラの雄花と雌花については、次で詳細な写真が掲載されているのでご覧いただきたい。
● 松江の花図鑑/サネカズラ ⇒
サネカズラの花でもう一つ不思議なのは、受粉しにくいと思われる構造だ。
下向きの小さな花で、花被もあまり開くことがない。虫を呼ぶための蜜を出すようすもない。
少なくとも私はこれまで、サネカズラを訪花している昆虫を観たことはない。
そのうえ、一つの花の開花期間は短いように思われる。雌花では柱頭が萎れた状態のものが多いし、ほとんど花弁を開かないままに花被片を落としてしまう雌花も観られる。
それでも、立派な果実が鮮やかに熟しているのは、何か秘密があるのだろうか。
サネカズラの雌雄
サネカズラの雌雄についての記載を見ると、「雌雄異株または同株」「ふつう雌雄異株だが、まれに雌雄同株」などと記されている。
つる植物で雌雄異株を確認することは非常に難しい。
雄花、雌花を確認するのはたやすいが、野外ではふつう複数の個体がからみ合って生えているので、一つずつたどって確認するのに困難を極める。
ずいぶん前にカナムグラの雌雄異株を確認しようとして、茎葉のとげに傷つきながら血まみれになって悪戦苦闘した記憶がある。このときは結局、わからないままあきらめた。
もう一つ余談
アオバハゴロモはカメムシ目の昆虫で、成虫・幼虫ともに植物の茎に口針を刺して吸汁する。
林縁のサネカズラの茎には、アオバハゴロモがびっしり張り付いていることが多い。
クモが網を張ることも多く、サネカズラの花を探そうという気持ちにならないのかもしれない。
来シーズンは、みなさん嫌がらずにサネカズラを観ていただきたい。
ところで、
サネカズラの別名のビナンカズラは美男蔓で、茎を短く切って水に浸しておくとぬるぬるした液体になって、これを整髪に用いたという。
サネカズラを吸汁したアオバハゴロモはどうなのだろう。
たしかによく観ると美しい姿をしているが…
2023年9月21日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
by sizenkansatu
| 2023-09-21 23:28
| 植物
|
Comments(4)
おはようございます(*^-^*)
へぇ~がいっぱいです♪
この実は見たことあるような気がするのですが…
花は間違いなく見てないですね
ほぼ開くことなく控えめでありながら
しっかり実をつけられる不思議さ。
え、アオバハゴロモが好む!?
じゃあ私、見て撮っていたかもです(笑)
秋に向けて実を探してキョロキョロしますよ(⌒∇⌒)
へぇ~がいっぱいです♪
この実は見たことあるような気がするのですが…
花は間違いなく見てないですね
ほぼ開くことなく控えめでありながら
しっかり実をつけられる不思議さ。
え、アオバハゴロモが好む!?
じゃあ私、見て撮っていたかもです(笑)
秋に向けて実を探してキョロキョロしますよ(⌒∇⌒)
> nyanko3773さん
コメントありがとうございます。
果実は11月ごろに赤くなるようです。
いまは緑色の果実が観られますが、花もまだあるのではないかと思います。
(つい先日まではつぼみがありました)
不思議な花をぜひ実感してください。
コメントありがとうございます。
果実は11月ごろに赤くなるようです。
いまは緑色の果実が観られますが、花もまだあるのではないかと思います。
(つい先日まではつぼみがありました)
不思議な花をぜひ実感してください。
サネカズラの緑色と赤の実は見たことがありますが
花は気づいたことがありませんでした。
雄花と雌花の区別はすぐにつきそうですね。
アオバハゴロモがびっしり茎についていたら
ちょっとコワイと思ってしまいますが
写真で見るころんとした粉を吹いたような姿はかわいいですね。
整髪料は試していないのですね?
草の匂いがするのでしょうか・・・。
気になります^^
花は気づいたことがありませんでした。
雄花と雌花の区別はすぐにつきそうですね。
アオバハゴロモがびっしり茎についていたら
ちょっとコワイと思ってしまいますが
写真で見るころんとした粉を吹いたような姿はかわいいですね。
整髪料は試していないのですね?
草の匂いがするのでしょうか・・・。
気になります^^
> miyabiflowerさん
コメントありがとうございます。
サネカズラの花はぜひ探してみてください。
人家の垣根なら、アオバハゴロモはいないのではないでしょうか。
それとも、もしも虫がいたら、枝をゆするとワッと跳んで逃げてくれるかもしれません。
(それはそれで嫌でしょうか?)
とろとろ、ぬるぬるの液体は見ましたが、においはなかったと思います。
整髪するほど髪がないので使ってません ^^;
コメントありがとうございます。
サネカズラの花はぜひ探してみてください。
人家の垣根なら、アオバハゴロモはいないのではないでしょうか。
それとも、もしも虫がいたら、枝をゆするとワッと跳んで逃げてくれるかもしれません。
(それはそれで嫌でしょうか?)
とろとろ、ぬるぬるの液体は見ましたが、においはなかったと思います。
整髪するほど髪がないので使ってません ^^;
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