セリバヒエンソウの観察
内側で手をかざすような形をしているのが4枚の花弁だそうだ。
観察した現場は暗い木陰で、種子は1.5mmほどと小さいので、現場では気づかなかったのだが、じつに不思議な形をしている。
もう一度よく観察しようと、5月末に現地水元公園に行ってみると果実はまだたくさんあった。
それどころか昨日(6/4)でもまだ花もつけていた。
次々に花を咲かせるので、花期は1か月半以上と長いようだ。
しかし何度チャレンジしても現地での果実と種子の撮影は難しい。
果実は裂開する前にも袋ごと落下しやすく、また裂開した果実からはすぐに種子がこぼれてしまう。
裂開前の果実を慎重に持ち帰って、机上で撮ることにした。
持ち帰ったセリバヒエンソウを水に挿しておいて果実が熟すのを待つ間、ネットでセリバヒエンソウの果実と種子を調べた。するとおなじみの「木のメモ帳」に詳しい観察記録があった。
● 木のメモ帳/続・樹の散歩道/セリバヒエンソウの花の観察 ⇒
花の各部、果実と種子の詳しい観察記録はもちろん、各種図鑑の記載の比較まで掲載されている。
いつものように参考にさせていただいた。ありがとうございました。
その日の夕刻、袋ごと落ちていた果実がさっそく裂開した。 袋の中には種子が3個ずつ2列にならび、合計6個であった。「木のメモ帳」には4個×2列で合計8個が標準とあったが、私の観たところ1袋当たり種子6個がいちばん多かった。
右側の2個は表面と裏面で、右下の種子には親株と連結したへその緒の跡が見られる。(どっちが表面か?)
膜の呼び方はいろいろで、「横膜翅」「翼」「ひれ」などがあるらしい。
ところで、きれいに裂開した果実を観たいのだが、水に挿した果実では一向にその気配が見られない。
観たところ、果実が裂開するときに種子を弾き飛ばすようなことはない。
このまま静かに反り返るようになるまで開いて、自然に種子が落ちるようだ。
もちろん、触れたりするとすぐに落ちるし、前述のように袋ごと落下することも多い。
図鑑の記載にはらせん状の部分と同心円状の部分は上半分と下半分で分かれているなどと記されているようだが、私の観たところでは明確な法則はなさそう。多くは同心円状でそれが乱れたときにらせん状になるのではないだろうか。成長の過程でたまたまらせん状になるのだと思う。「木のメモ帳」と同意見だ。
右上の種子はへその緒が残っている。
ところで、いったいこの膜(翼、ひれ)はどのような機能があるのだろうか。
膜で風を受けて飛ぶということはまずない。
一つだけ考えられるのは、濡れたときに膜と膜のすき間に水を溜めておいて、動物にくっついて種子を散布しようという作戦だ。
濡れた種子がピンセットに張り付くかどうか、さっそくやってみた。 たしかに、膜の間に水分を蓄えることで、ほかのものにひっつきやすくなっている。 とはいっても、小さい種子なのでこのような複雑な造形でなくても、ちょっと濡れるだけでひっつくだろう。
謎の膜である。
それにしても「木のメモ帳」のくわしい観察にはまいどおそれいるとともに、ちょっとくやしい。
2023年6月5日、報告:自然観察大学 事務局O
by sizenkansatu
| 2023-06-05 19:51
| 植物
|
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