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自然観察大学ブログ

新宿御苑で秋の観察

10/30(日)に新宿御苑で観察会があった。

自然観察大学のメンバーによる“フリー観察会”と称する会で、この日の参加は6人。
その中には新宿御苑でボランティアガイドをつとめておられるTBさんがいる。
TBさんは園内の隅々まで熟知しておられる、たいへんにありがたい方である。

とはいっても、フリー観察会は、特定のガイドや講師はいない。
その場その場で各人が知っていることを披露したり、おもしろいと思ったことをみんなに紹介ししようというものである。
当日、みんなで観察したものの一部を紹介させていただく。


まず一つめはタイサンボクの果実。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16423137.jpg
タイサンボクはコブシのなかまで、基本的な果実のつくりは共通している。
コブシと同様に糸を伸ばして種子を垂らすというが、上の写真は“やらせ”で、つまんで引き伸ばしたものであった。(すみません)

タイサンボクの果実は高い枝について、普通は近くで観ることできないのだが、この果実は眼の高さで観察することができた。

ここ新宿御苑の木はおおらかに管理され、ゆったりと下枝を広げた形をしている。
このタイサンボクもそうで、観察にはたいへんありがたいことだ。


次はシリブカガシ。
本来は関西以西に分布するそうで、この時期には花を観られるのではないかとたのしみにしていたのだが…
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16423875.jpg
残念ながら下枝を落とされてしまい、遠くから見上げるだけであった。しかも花はもう終わっているようだ。

じつは3年前の同じ時期に新宿御苑の同じ木を観ていたので、その時の写真を紹介しよう。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16424571.jpg
いぼいぼに見えるのが雌花序で、ブラシ状に見えるのが雄花序。これも花は終わってしまっている。
開花時期にはマテバシイやクリの雄花序に似た雄花が観られるはずだと思ったが、残念だ。

なお、新しい枝の基部に果実が観えるが、これは前年咲いた雌花が育ったものだ。

一年目の雌花はこれ(↓)。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16425388.jpg
ごく小さな花柱が3個で、一つの花はこれのみ。それが3個ずつセットになる。
ここから一年かかけて果実が熟し、次の年の秋にどんぐりを落とす。

マテバシイと同じ属だが、春に咲いた花が年を越して翌年の秋まで、約一年半かけて熟すマテバシイに対し、シリブカガシは丸一年の早熟ということになる。
ちなみに名前の由来は、殻斗(お椀の部分)が外れると深く凹んでいるので“尻深樫”だという。

それにしても、どちらも西日本に分布するマテバシイとシリブカガシだが、マテバシイは関東でもいたるところに植栽されているのに対し、シリブカガシはとんとお目にかからないのはなぜだろう。


大きな幼虫はクロメンガタスズメ。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16430056.jpg
マルバチシャノキ(訂正しました)という木の、紙やすりのようなざらざらした硬い葉を食べていた。(半端じゃない強烈なざらざら!)

クロメンガタスズメの成虫は背面に人面というか、髑髏のような斑紋があり、『羊たちの沈黙』という怖い映画に登場する蛾のモデルの由。(ドクロメンガタスズメという呼称もあり)
さすがに幼虫も迫力がある。終齢幼虫の体長は80-90mm。
なお、似た種にメンガタスズメというのがいるが、幼虫の尾角がくるりと巻くのは本種、クロメンガタスズメ。

参考:クロメンガタスズメ/昆虫エクスプローラ   


次はナラガシワ。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16431181.jpg
コナラに似たどんぐりで、殻斗(お椀の部分)はカシワに似ている。
落ちてすぐに根を出すところは、コナラに共通するようだ。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16431935.jpg
葉は遠く上空のものしか見られなかったが、カシワあるいはミズナラに似た感じ。
ナラガシワという名前だが、立派に独立した種で、学名はQuercus aliena


突然ですが、ここでクイズ…
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16432769.jpg
これ(↑)は何でしょう?

ヒント①:水木しげるの漫画の妖怪変化のようですが、そうではありません。

ヒント②:背景は私の左手で、掌のしわが見えています。

ヒント③:果実全体はこれ(↓)。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16433500.jpg

答え:ムクゲの種子

街なかのいたるところに植えられているが、果実は貧相で、注目されることはないだろう。
こんなおもしろい種子があるとは、なかなか気づかない。


さて、いよいよ本日のメインイベント、ヒマラヤスギの雌花である。
これまで唯一、私が観察していたヒマラヤスギの雌花は柏の葉公園内の1本で、その木が下枝をバッサリと落とされてしまって、いまは観ることができなくなった。
新宿御苑のヒマラヤスギは前述のようにのびのびと枝を広げたものが多く、眼の高さで雌花が観られるのではないかと期待していたのである。

前述のTBさんによると、新宿御苑にあるヒマラヤスギは約350本(!)だが、雌花を確認したのはこの木だけだそうだ。(↓)
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16434821.jpg
みんなで雌花を探すと…

見つけた。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16435672.jpg
なんと神々しい姿!

花とは言っても花弁はもちろん、雌しべさえない。
いっさいの飾りをもたない潔い姿は、植物好きの概念を超えた、じつに清々しいものだ。
(地味とも言う?)

350本のヒマラヤスギから探してくれたTBさんに感謝である。

この日は快晴の日曜ということもあって、ヒマラヤスギの木のまわりの広場は家族連れなどでにぎわっていた。
そんな中で、私たちは小さな雌花を観て歓声を上げる、ちょっと怪しい集団だったかもしれない。

ところで、以前に柏の葉公園で観た雌花よりも小さく、高さは半分ほど。
これで開花したと言ってよいのか、それとも本当の開花はもう少し伸びて鱗片がもっと開いたときなのか、そのあたりのことはよくわからない。
まぁ、そんな細かいことは気にしないようにしよう。何しろ神の領域のことなのだ。

なお、柏の葉公園のヒマラヤスギの観察記録は次でご覧いただける。

● ヒマラヤスギの観察 2020(その2) : 自然観察大学ブログ  

追記:ヒマラヤスギについては、飯島先生の講習会レポートに詳しく記されている。

● ヒマラヤスギの花から実-樹木観察の面白さ (4)- ⇒(PDF) 


おまけ
フリー観察会が終了したあと、一人で観察を続けたので、それを簡単に記させていただく。
都心で昆虫が少ないためか、虫食いのないきれいな植物が見られるのがありがたい。
(虫があまり観られないのはもの足りないが…)

タケニグサの果実。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16440582.jpg
完熟して、中の種子(黒い粒)が見えていた。

ガマズミの果実。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16441218.jpg
程よい果実の密度と、夢のあとのような半枯れの葉が秋らしい。

サルトリイバラ。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16442287.jpg
普通は虫食いやクモの糸などがあって、きれいな果実はなかなか観られない。

ホトトギス。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16442918.jpg
このごろ街なかで見かけるのはタイワンホトトギスばかりで、貴重な存在。

ヤブタバコ。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16444848.jpg
このようなきれいな株はなかなか観られない。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16445712.jpg
下から花序を見上げると、キク科の頭状花。

クロコノマチョウの雄。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16443837.jpg
コナラの樹液を夢中で吸っている。
クロコノマチョウは幼虫がおもしろい。よろしければ次をご覧いただきたい。

● ジュズダマのクロコノマチョウ : 自然観察大学ブログ  


最後はラクウショウの気根。
新宿御苑で秋の観察_d0163696_16450400.jpg
ここのラクウショウは、気根の先端がとがっている。
新宿御苑の名物と言ってもよいだろう。

ふつう、他の公園で見る気根は先端が丸くなっている。
新宿御苑のとがった気根を観て、ほかでは危険なので先端を丸く削っているのではないかと思ったのだが、そうではないらしい。何故とがっているのか、不思議なことだ。


お詫び
前回の記事から一か月以上あいてしまいました。申し訳ありません。
やっと時間ができたので、これからは間をあけずに報告させていただきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

2022年11月1日、報告:自然観察大学 事務局O




by sizenkansatu | 2022-11-01 16:57 | 植物と虫 | Comments(6)
Commented by shizenkaze at 2022-11-01 23:15
マテバシイやスダジイは多いのにシリブカガシって本当に少ないですね~
こちらでも少ないですよ・・・・・
原因は分かりませんがシリブカガシよりマテバシイ等の方が名前が美しい(?)からかなと勝手に想像しています・・・・・
マテバシイもシリブカガシも悪が少ないのでそのままでも食べられますが炒ると美味しいです~
ヒマラヤスギのシダーローズを先日は4個拾って来ました・・・・・
こちらは雌木は多いです~
ラクウショウの呼吸根は尖ってますね・・・・・(*´∇`*)
こちらのものは先が丸いです~
それでも公園には『足元注意』の立札が立っています・・・・・
この上に転びたくないですよね~。゚(゚´Д`゚)゚。
Commented by sizenkansatu at 2022-11-02 05:31
> shizenkazeさん
シリブカガシ情報、ありがとうございます。
名前が理由ということはないと思いますが、やはりそちらでも少ないのですね。

ヒマラヤスギはこちらでも球果はたくさんつきますが、雌花が観られる木がないのです。
雌雄異株か同株かも調べたことがあるので、当該の講習会のレポートのリンクを追記しました。(赤字)
お時間のあるときに見てもらえるとうれしいです。
Commented by verysmallcreature at 2022-11-02 21:04
あっ!先日なんだろうと思った植物がヤブタバコだったことがわかりました、ありがとうございます。
Commented by sizenkansatu at 2022-11-02 22:52
> verysmallcreatureさん
コメントありがとうございます。
お役に立てたようでよかったです。
ヤブタバコは主軸がとまって横枝を広げるので特徴的ですね。
Commented by take_it_easy at 2022-11-07 21:20
的を射た精細な画像と観察記録、たのしませていただいております。ありがとうございます。
ところで、「マルバトゲチシャという木」を手持ちの図鑑やwebで探したのですが見つかりません。わたしに身近な北海道には「マルバトゲチシャ(トゲチシャも)というキク科の草本」はたくさん生えています。葉縁や葉裏中肋には鋭いトゲがありますが、葉身は紙ヤスリほどの硬さはなさそうです。
クロメンガタスズメ幼虫の食草にはキク科は注目されていないようです。で食べていたのはキク科じゃないかもしれない。(食べることもあるかもしれませんからなんとも決めつけられませんが。)
「マルバトゲチシャという木」について、さらに情報をお持ちでしたら教えて下さいませんか。
Commented by sizenkansatu at 2022-11-07 23:31
> take_it_easyさん
ご指摘ありがとうございます。
マルバトゲチシャは間違いです。正しくはマルバチシャノキでした。
葉の面がざらざらのとげとげなので、つい間違ってしまったようです。
申し訳ありませんでした。
ムラサキ科で、いずれにしてもクロメンガタスズメの食草とは記されていないようです。
文中も赤字で訂正しておきました。
ありがとうございました。

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