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自然観察大学ブログ

エゴノネコアシの観察

エゴノネコアシの観察_d0163696_21450969.jpg
エゴノキの枝先にできる虫えい(虫こぶ)。
バナナの房のような虫えいの中では、アブラムシが増殖している。
上の写真(↑)は7月初めのもので、画面左に見えるのはエゴノキの果実。

“エゴノネコアシ”と命名されたこの虫えいを、春から経過観察した。


膨らみはじめた虫えい

エゴノネコアシの観察_d0163696_21451716.jpg
5月中旬、エゴノネコアシを発見した。(以下「猫足」と略称する)
ちょうどエゴノキの花が満開のころで、小さな猫足などはつい見逃してしまいそうな、そんな季節であった。

猫足を拡大してみる。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21452556.jpg
できたての虫えいは小さく、握りしめたようになっていて、これが猫足に成長すると思われる。

一コマ前の画面右端(主軸の先端)には、もう一つさらに小さいのがある。ごく若い虫えいに見えるが、この先どうなるだろうか。


一週間後の猫足

5月下旬、同じエゴノキの枝。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21453240.jpg
左の猫足は二回りほど大きくなっている。
右の枝先部分もやはり虫えいだったことがわかる。

エゴノネコアシの観察_d0163696_21454283.jpg
おそらく虫えいの中には、たくさんのアブラムシがいるはずである。
エゴノネコアシアブラムシと言うアブラムシで、この時期には房室の中で雌だけで単為生殖をしているはずだ。
切って中を確かめたいところだが、なんとか思いとどまった。


その一週間後

6月初旬。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21455264.jpg
さらに大きくなって、重みで垂れ下がってきている。
閉じていた足指の先(バナナの先端)が開いてきた。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21460126.jpg
爪を立てたような形で、大人の猫足らしくなっている。


さらにその一か月後の猫足

7月初旬。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21460836.jpg
猫足の房は全開し、指先(先端)が裂開して孔が開いた。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21461881.jpg
よく見ると、有翅のアブラムシがいる。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21462578.jpg
おそらく孔から出てきたのだろう。
エゴノネコアシアブラムシの有翅型ということになる。

いよいよ、切って中を観てみるとしよう。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21463235.jpg
黒い有翅型のアブラムシは、猫足から飛び立って次の寄主植物であるイネ科のアシボソに移動する。
寄主転換と言う、アブラムシ類にみられるおもしろい生態だ。
なお、褐色のほうは無翅型で、こちらは移動せずにさらに仔を産む。


エゴノネコアシアブラムシの興味深い生態


アシボソで夏を過ごしたエゴノネコアシアブラムシは、秋に再びエゴノキに戻り、冬芽に卵を産み付けるという。
卵はそのまま越冬し、春に孵化する。
この幼虫が冬芽に虫こぶを形成するというのだが、このときに幼虫どうしが虫こぶに入り込むためのバトルをするらしい。そして敗れて虫こぶに入れなかった幼虫は、外で警備係のような役割に就いて、外敵を撃退するのだという。なんと負けっぷりのよい、潔い虫ではないか。

…実に興味深い。
時期は4月初めころだというから、その時のエゴノキはこんな感じだろう。
エゴノネコアシの観察_d0163696_21464112.jpg
上の写真(↑)は正常な成長をしている冬芽だと思うが、寄生された冬芽ではその時すでに猫足になり始めているのだろうか? そしてそこでは激しいバトルがはじまっているはずである。

来シーズン以降、チャンスがあったらぜひ観察したいものだ。

2022年7月23日、報告:自然観察大学 事務局O




by sizenkansatu | 2022-07-23 22:05 | 植物と虫 | Comments(6)
Commented by shizenkaze at 2022-07-23 23:25
猫好きなのでこの名前を変えて欲しいなと昔から思っています~(*´∇`*)
アシボソエゴアブラムシの方が良さそうなのに・・・・・♪
このアブラムシって近くにアシボソが無くても現れますね・・・・・・
Commented by sizenkansatu at 2022-07-24 06:19
> shizenkazeさん
なるほど。そんな見方もあるんですね。
私のほうははじめに名前だけを知ったので、そのときは猫のような足のアブラムシを想像してしまいました。肉球のあるアブラムシを想像して、なんとしても見てみたいと思ったものです。
Commented by wabisuke-miyake at 2022-07-24 06:23
虫こぶに
とても魅力を感じます
不思議です
エノキの葉っぱのトックリ集団を見たときは
ちょっと気持ち悪いけど
興味津々よく眺めてました
猫足さんは
ほんとによくできてますね
5月下旬の姿なら
花入れに生けて飾りたいくらい
でもそうすると中のアブラムシさんは
生きていけないのでしょうね

猫足見たさに
エゴノキが庭に欲しくなります(^^)
Commented by popo119-32 at 2022-07-24 08:18
おはよ~ございま~す!!(^^)!
エゴノキの花と実の可愛らしさの中で…
ネコの爪足らしき形の実が有るとか…
初めて知りました\(^o^)/

可愛い木だといつも見惚れていましたが…
気を付けないといけないですね…

勉強になりましたわ…
エゴノキを見つけたら観察しなくてはと…
有難うございました\(^o^)/


Commented by sizenkansatu at 2022-07-24 16:10
> wabisuke-miyakeさん
コメントありがとうございます。
生けて飾るという発想はありませんでした。
もしかするとアブラムシがそのまま有翅になってぞろぞろと出てきたりして…
第一世代の幼虫は攻撃的で、人を刺すらしいですよ。
ご用心ください。
Commented by sizenkansatu at 2022-07-24 16:15
> popo119-32さん
コメントありがとうございます。
私が観たのは水元公園でした。
条件のそろったエゴノキにはけっこうたくさんあり、毎年できるようです。
アブラムシがいなくなってからも、次の年の春過ぎまでバナナのミイラのようになって樹上に残っています。
ぜひ探してみてください。

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