ヒメウズの観察
素直にうれしかったのである。
しかしながら、この時は自然観察大学の観察会の真っ最中であった。
桜堤の周辺で、この日の観察テーマである各種のサクラを観ている、その足元にヒメウズがあったのだ。
● 自然観察大学HP2022年度ミニ観察会レポート ⇒「① 樹木の“形とくらし”観察」をご覧ください。
そんなわけで、このときは写真を撮ることができず、以降何度か現地水元公園に足を運ぶことになった。その観察記録を紹介させていただこう。
ヒメウズの花
改めまして、まずはヒメウズの花。
5枚の花弁が折り重なるようにして筒状になっている。
ちなみに、この形はなんとなくスイセンに似ているが、スイセンでは内側の丸いのは副花冠で、外側の大きいのが花弁とがくなので、構造はまったく違う。
ヒメウズの花は直径5mmほどと、スイセンにくらべるとかなり小さい。
距(きょ)だ。
距は、ポケットのようなところに蜜を溜め、虫を呼ぶのだという。
ヒメウズの距はかなり小さい。そのように言われないと見逃してしまうほどだ。
花弁とがくの位置関係がよくわかった。
ネットで見ると雌しべは2‐5個というものと、2-4個と記したものがあった。
オダマキはがくのすき間から長大な距を後方に突き出している。
ヒメウズはキンポウゲ科ヒメウズ属。ヒメウズ属は世界的にもヒメウズ一種のみだそうである。
しかし、オダマキ属とする考えもあるそうだ。
ヒメウズ属が Semiaquilegia、オダマキ属が Aquilegia で、属名も似ている。
ちなみに、ヒメウズを漢字で書くと姫烏頭だが、トリカブトには似ていない。
ヒメウズの果実と種子
私の観たところでは、果実は3個または4個、まれに5個であった。
この日、多数の果実が見られたものの、まだ熟してはいない。
普段の目線で歩いていると、つい見過ごしてしまいそうな目立たない姿だ。
花の期間は長く、しばらくの間花と果実を同時に観ることができた。
じつは再訪したこの日、ヒメウズの群落は草刈りをされてしまっていた。
初めはけっこう広いエリアに点々と広がっていたのだが、そのほとんどが刈り取られてしまっていたのである。
しかしこの撮影が難題であった。
ヒメウズの茎が細長くてひ弱な上に、周りの細い草が絡み合っているので、うっかり近づくとすぐに種子を散らしてしまうのだ。
しかたがないので現地で撮るのをあきらめて、はじける前の果実を少しだけ採集して帰った。
ところが、水に挿しておいたのが悪かったのか、いくら待っても果実は裂開しない。
ヒメウズのまとめ
ヒメウズがどんな暮らしをするのか、ネットで調べたことをまとめておこう。
* 落葉樹林の林縁など半日陰のようなところに生育する。
* 春に花を咲かせて種子を散らす。
* そのあと、落葉樹の葉が茂る夏には地上部が枯れる。
* 地下に塊茎をつくり、葉樹が葉を落とす秋に芽を出す。
* 花をつけるには2‐3年以上を要する。(正確にはわかっていないらしい)
落葉樹の下で適度に草刈りされるような環境が、ヒメウズにとっては理想的なのかもしれない。
春から初夏だけの活動で、暑い夏は木陰の地下で寝て過ごし、数年かけて花をつける。
まさしくスプリングエフェメラル。
なんと優雅な生活だろう。
水元公園のヒメウズの由来
ここ水元公園のヒメウズはどこから来たのだろう。
公園の一帯はかつて河川の氾濫に悩まされた低湿地を、江戸時代から整備され埋め立てられたものだそうだ。
広大な公園はすべて埋め立て地なので、ここのヒメウズも土と一緒にどこかから持ち込まれたものなのかもしれない。
ヒメウズはひ弱そうな外見に似合わず、前述の条件に合えば旺盛な繁殖をするらしいのだ。
しかし、ヒメウズのあったすぐ近くの桜堤は江戸期からそのまま残っているものらしい。
ということは、もしかしたらこのヒメウズは、当時の桜堤から代を重ねてきた由緒正しいものなのかもしれないではないか。
それを思うと、愛おしさも一入である。
2022年6月8日、報告:自然観察大学 事務局O
by sizenkansatu
| 2022-06-08 19:56
| 植物
|
Comments(12)
今晩は。
以前、優しく詳しいご指導頂きまして有難う御座いました。
お陰様で、その後、段々と花、植物に興味を覚えるようになりました。
sizewnkannsatuさんのご指導の後、自然風さんからもご指導を頂き、その後、花のブロ友も増えてきまして、段々と花に嵌って行っています。
皆様のブログの記事は素晴らしく、特に、sizenkannsatuさんの記事は専門的な学術的で素晴らしいです。
系統、漢字名、一般名、専門名など、その上、花弁、おしべ、めしべ、種ほか、参考書より詳しく、理解しやすい記事です。
読んでいて段々と面白くなってきました。
そのお礼ではないですが、コメントさせて頂きました。
ご返事は結構ですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
以前、優しく詳しいご指導頂きまして有難う御座いました。
お陰様で、その後、段々と花、植物に興味を覚えるようになりました。
sizewnkannsatuさんのご指導の後、自然風さんからもご指導を頂き、その後、花のブロ友も増えてきまして、段々と花に嵌って行っています。
皆様のブログの記事は素晴らしく、特に、sizenkannsatuさんの記事は専門的な学術的で素晴らしいです。
系統、漢字名、一般名、専門名など、その上、花弁、おしべ、めしべ、種ほか、参考書より詳しく、理解しやすい記事です。
読んでいて段々と面白くなってきました。
そのお礼ではないですが、コメントさせて頂きました。
ご返事は結構ですので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ヒメウズは私の祖母の代からお世話になっていたお寺の境内に毎年花を咲かせています・・・・・
ヒメウズですから植えたものじゃなく一人生えのものだと思いますが境内の彼方此方にたくさん見られるので毎年枝垂桜を見に行くときに撮っていますがヒメウズにカメラを向けているのは私位なものなので何を撮っているのかと不思議な目で見られますよ・・・・・(*´∇`*)
ヒメウズですから植えたものじゃなく一人生えのものだと思いますが境内の彼方此方にたくさん見られるので毎年枝垂桜を見に行くときに撮っていますがヒメウズにカメラを向けているのは私位なものなので何を撮っているのかと不思議な目で見られますよ・・・・・(*´∇`*)
水元公園って埋立地なんですか!
すごく広いのでびっくりです。
すごく広いのでびっくりです。
> mrtnszさん
コメントありがとうございます。
お褒めの言葉をいただき、光栄です。
私自身は素人なのですが、自然観察大学に専門の方々がおられて、門前の小僧として勉強させてもらっています。(小僧ではありませんが、頭髪に関しては少し似ています)
鳥は苦手なのですが、貴ブログを見て勉強させていただいています。
今後ともよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
お褒めの言葉をいただき、光栄です。
私自身は素人なのですが、自然観察大学に専門の方々がおられて、門前の小僧として勉強させてもらっています。(小僧ではありませんが、頭髪に関しては少し似ています)
鳥は苦手なのですが、貴ブログを見て勉強させていただいています。
今後ともよろしくお願いいたします。
> shizenkazeさん
コメントありがとうございます。
そうなんですよね。
私も満開の桜の下でキュウリグサを撮っていたりして、不審に思われます。
桜はたしかにきれいですが、小さくて地味な花を拡大すると、桜に負けないほどきれいでびっくりして、うれしくなってしまいます。
私はどうもひねくれものなのかもしれません。
コメントありがとうございます。
そうなんですよね。
私も満開の桜の下でキュウリグサを撮っていたりして、不審に思われます。
桜はたしかにきれいですが、小さくて地味な花を拡大すると、桜に負けないほどきれいでびっくりして、うれしくなってしまいます。
私はどうもひねくれものなのかもしれません。
> verysmallcreatureさん
コメントありがとうございます。
そうなんです。驚きですよね。
奥まったところの野鳥観察舎の並ぶあたりは、まるでジャングルのようになっていますよね。
わずか数十年であのようになったわけで、自然の、植物の力には驚きしかありませんね。
コメントありがとうございます。
そうなんです。驚きですよね。
奥まったところの野鳥観察舎の並ぶあたりは、まるでジャングルのようになっていますよね。
わずか数十年であのようになったわけで、自然の、植物の力には驚きしかありませんね。
ヒメウズ好きです
うちの庭でも咲いてくれます
花がほんとにちいさいので
私のタブレットではなかなか
きれいに撮れないので
こんなに詳しく観察できて感動です
ありがとうございました~(^^)
うちの庭でも咲いてくれます
花がほんとにちいさいので
私のタブレットではなかなか
きれいに撮れないので
こんなに詳しく観察できて感動です
ありがとうございました~(^^)
> wabisuke-miyakeさん
コメントありがとうございます。
ヒメウズが庭にあるんですか!
うらやましいです。
一部では絶滅危惧種に指定されているところもあるようですが、
昔のままで攪乱されてない所ではヒメウズが見られるようです。
皇居の周りとか、玉川上水とか…
たねを撒いてから何年で花をつけるのか、ぜひやってみてください。
コメントありがとうございます。
ヒメウズが庭にあるんですか!
うらやましいです。
一部では絶滅危惧種に指定されているところもあるようですが、
昔のままで攪乱されてない所ではヒメウズが見られるようです。
皇居の周りとか、玉川上水とか…
たねを撒いてから何年で花をつけるのか、ぜひやってみてください。
ヒメウズの花は今年初めてみつけました。
里山で足元に咲いていて、通り過ぎるところでしたが
よくよく見たら知らない花でした。
図鑑を1ページずつ探してやっとわかった花です。
小さくて写真が撮れなかったのですが、こちらでとてもきれいな写真を見られて感激です!
実がトリカブトの実に似ているそうですね。
咲いていた場所をしっかり覚えていなかったので、実を見ることができなかったのですが、
それもこちらで見ることができました。
ありがとうございます^^
記事ランキングにある「カイガラムシとテントウムシ」の記事の
1枚目の写真と同じ光景を 去年実家の梅の木で見ました。
あまりはっきり見たくなかったので遠目でしたが・・・。
木にびっしりとついているものがカイガラムシだと思っていましたが
テントウムシのサナギだったのですね。
アカホシテントウも葉っぱにたくさんいました。
毎年ではないので、今年どうなるかわかりませんが・・・。
今度行ったら、また遠目に見てこようと思います。
あまりはっきり見たくはないような・・・^^
里山で足元に咲いていて、通り過ぎるところでしたが
よくよく見たら知らない花でした。
図鑑を1ページずつ探してやっとわかった花です。
小さくて写真が撮れなかったのですが、こちらでとてもきれいな写真を見られて感激です!
実がトリカブトの実に似ているそうですね。
咲いていた場所をしっかり覚えていなかったので、実を見ることができなかったのですが、
それもこちらで見ることができました。
ありがとうございます^^
記事ランキングにある「カイガラムシとテントウムシ」の記事の
1枚目の写真と同じ光景を 去年実家の梅の木で見ました。
あまりはっきり見たくなかったので遠目でしたが・・・。
木にびっしりとついているものがカイガラムシだと思っていましたが
テントウムシのサナギだったのですね。
アカホシテントウも葉っぱにたくさんいました。
毎年ではないので、今年どうなるかわかりませんが・・・。
今度行ったら、また遠目に見てこようと思います。
あまりはっきり見たくはないような・・・^^
> miyabiflowerさん
コメントありがとうございます。
ヒメウズは私も今年初めて観察して、感激しました。
この記事のあともう一度行ってみたのですが(しつこい)、
もう種を散らした残骸がわずかに残るだけでした。
また来春のおたのしみです。
アカホシテントウの記事を見ていただき、ありがとうございます。
たしかに、普通の方はとげとげ(幼虫の脱皮殻)を見るとぞっとするかもしれませんね。
それがアカホシテントウの生き残り戦略かも…
なお、アカホシテントウの幼虫は次でご覧いただけます。
https://sizenkan.exblog.jp/13640887/
よろしければ、遠くから見てください。
コメントありがとうございます。
ヒメウズは私も今年初めて観察して、感激しました。
この記事のあともう一度行ってみたのですが(しつこい)、
もう種を散らした残骸がわずかに残るだけでした。
また来春のおたのしみです。
アカホシテントウの記事を見ていただき、ありがとうございます。
たしかに、普通の方はとげとげ(幼虫の脱皮殻)を見るとぞっとするかもしれませんね。
それがアカホシテントウの生き残り戦略かも…
なお、アカホシテントウの幼虫は次でご覧いただけます。
https://sizenkan.exblog.jp/13640887/
よろしければ、遠くから見てください。
こんばんは。
勇気を出して、というより怖いもの見たさでアカホシテントウの幼虫を見ました・・・。
幼虫は凄すぎて逆にじっと見てしまいました。
まさにウルトラ怪獣も真っ青ですね^^
トゲの枝分かれ、というのでしょうか、見事です。
刺したら抜けないため?と思いましたが、刺さないのですね。ちょっと安心しました。
幼虫のことを教えていただいてよかったですよ
梅の木を見上げて、これが動いていたらかなりコワイですから。
でも、遭遇する可能性はありますね。
とりあえずは心構えができました。
ありがとうございます^^
勇気を出して、というより怖いもの見たさでアカホシテントウの幼虫を見ました・・・。
幼虫は凄すぎて逆にじっと見てしまいました。
まさにウルトラ怪獣も真っ青ですね^^
トゲの枝分かれ、というのでしょうか、見事です。
刺したら抜けないため?と思いましたが、刺さないのですね。ちょっと安心しました。
幼虫のことを教えていただいてよかったですよ
梅の木を見上げて、これが動いていたらかなりコワイですから。
でも、遭遇する可能性はありますね。
とりあえずは心構えができました。
ありがとうございます^^
> miyabiflowerさん
アカホシテントウの記事を見ていただき、ありがとうございます。
実物は小さいからかわいいのですが、これがもしフットボールくらいの大きさだったら怖いかも。
なんでこんな形になってしまったのか、考えると興味がつきません。
アカホシテントウの記事を見ていただき、ありがとうございます。
実物は小さいからかわいいのですが、これがもしフットボールくらいの大きさだったら怖いかも。
なんでこんな形になってしまったのか、考えると興味がつきません。
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