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自然観察大学ブログ

ヒトリシズカとフタリシズカ

ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07315690.jpg
ヒトリシズカの名前の由来は、源義経の愛妾、静御前が舞う姿を観たてたのだという。
真偽のほどは知る由もないが、木陰にひっそりと咲く姿はなかなか好い。
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07320528.jpg
あんまりたくさんあると、静かなイメージとはずれるが、観察にはありがたい。


ヒトリシズカの花のつくり
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07321326.jpg
多数の花を集めた花序であることはわかるが、どんな構造なのだろうか。
撮るだけ撮っておいて調べてみると、驚きの構造であることがわかった。
以下、それを紹介させていただく。

上の写真の一部を拡大したのがこれ。(↓)
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07322301.jpg
白く長いのは雄しべの花糸で、それが3本セットになっている。
そのつけ根にあるのが雌しべで、膨らんだ子房の先に柱頭がある。

雌しべの膨らんだ部分(子房)の横腹から3本の雄しべを出す。このユニットが一つの花で、がくも花弁もない。
文字で書いただけでは判りにくいので、上と同じ写真に雌しべと雄しべを記入してみた。
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07323205.jpg
雄しべのつけ根に観える黄色く膨らんだものは葯で、3本の雄しべのうち、外側の2本のつけ根には葯がつく。

受粉に関しては、雌しべの上面に蜜を分泌し、昆虫を呼ぶという。
訪花しているところを見たことはないが、すぐ上の花粉が背中につくのだろう。
シンプルかつ機能的なつくりで、常識にあてはまらない、唯我独尊を地で行く存在だ。


フタリシズカの花のつくり
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07325125.jpg
フタリシズカは、ヒトリシズカと同じくセンリョウ科チャラン属(Chloranthus)。

普通2本の花序を立てるのでフタリシズカという名前は想定内だが、調べてみるとそれどころではなかった。
能の演目で二人静というのがあり、物語では吉野勝手明神(勝手神社)で二人の娘が舞うのだそうだが、一人は静御前の霊で、もう一人はその霊に憑依された娘なのだという。
う~む。奥深い。

さて、花の構造である。
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07330982.jpg
ヒトリシズカに似ているが、さらにわかりにくい。
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07331708.jpg
雌しべの横腹に3本の雄しべがつくのは同じだが、雄しべが合わさってモグラの手(前足)のようになっている。おそらくこの中に葯があるのだと思うが、内側に反り返っているので、確認できない。

ネットで調べると、次で花の構造が掲載されていた。
●木のメモ帳/続・樹の散歩道/二人静の果実に群がるアリの謎  
センリョウとヒトリシズカの花についても次で解明されている。
●木のメモ帳/続・樹の散歩道/平凡社の「日本の野生植物(木本)」にセンリョウが掲載されていない理由  
毎度のことながら、『木のメモ帳』はさすがの観察である。敬服するとともに、ちょっと悔しい思いが…

センリョウ科のセンリョウは、またちょっと違ったおもしろい形をしているようなので、実物を見たくなった。
近所の寺にセンリョウがあるので行ってみたが、花はまだであった。
7月ころに咲くそうなので、開花を待とう。

<2022年7月1日> センリョウの花の観察  

余談ですが…
二人のヒトリシズカ
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07332547.jpg
六人のフタリシズカ
ヒトリシズカとフタリシズカ_d0163696_07333330.jpg


2022年5月21日、報告:自然観察大学 事務局O




by sizenkansatu | 2022-05-21 07:42 | 植物 | Comments(6)
Commented by wabisuke-miyake at 2022-05-22 04:12
六人静はあっぱれですね
うちには
フタリシズカしかないのですが
さっそく庭にでて観察してみたら
四人静まででした

女6人集まれば
マスク越しだとしても
とても静かではいられないでしょうね

花の白いところ
雄蕊なんですね~
ヒトリシズカとの比較も面白くて
勉強になります
ありがとうございました

静御前ゆかりのお寺がちかくにあります
四国八十八ヵ所霊場86番の『長尾寺』
フタリシズカが咲くと
お寺の庭にもあるのか
ずっと気になっているのですが
いまだ確認できずにいます
これをいい機会に行ってみよう~(^^)

Commented by sizenkansatu at 2022-05-22 07:10
> wabisuke-miyakeさん
コメントありがとうございます。
六人静は高尾の多摩森林科学園で観ましたが私も初めてでした。
ここでは四人、五人は当たり前のようにありました。
静かさは感じられなかったです。
Commented by miyabiflower at 2022-05-23 17:15
ヒトリシズカもフタリシズカも見たことがないのですが
両口屋是清の和菓子の「二人静」なら好きです^^
似たような花なのかと思ったら、少し違っているのですね。
どこかで見る機会があったらよく見てみますね。
何人静まであるのかも観察してみたいです。

寺家ふるさと村の記事をアップしましたが
その中でコウゾリナのことを書きました。
こちらのコウゾリナの記事へのリンクを貼らせていただきました。
事後報告になりましたがよろしくお願いします。
茎のぞりぞり、なんのためなのか興味深いですね。
Commented by sizenkansatu at 2022-05-23 22:27
> miyabiflowerさん
コメントありがとうございます。
そちらの記事を拝見しました。リンクいただきありがとうございました。
サルトリイバラで包んだ餡麩三喜羅という名古屋銘菓があるそうです。
ぜひお試しください。
Commented by a-kazenifukarete at 2022-06-02 10:37
こんにちは~^0^/
初めまして....コメントさせていただきます。
ヒトリシズカ・フタリシズカにロクニンシズカなんて初めて知りました。秋田に居た時の庭にヒトリシズカとフタリシズカはありましたがこんなに細かく見たことはありませんでした。
ヒトリは一本、フタリは二本そんなことだけで
又、葯=は何て読むの~? ゴメンナサイ
今度ゆっくり=の所に行って見てみたいと思っています。
興味津々の歩布里でした。
Commented by sizenkansatu at 2022-06-02 12:22
> a-kazenifukareteさん
コメントありがとうございます。
庭にヒトリシズカとフタリシズカがあるなんて、すばらしいですね。
実家が山形の知人から聞いた話ですが、家の前の用水路にはミズバショウがあるとか…
東北はあこがれてしまいます。

すみません。葯は「やく」で、ご存知のように花粉の入っているところです。
葯の字は普通は使わないですよね。
やくと書けばよいのですが、それだと文中でわかりにくくなることがあるので、漢字にしています。ご了承ください。

このブログは細かくて面倒くさい記事ばかりですが、今後ともよろしくお願いいたします。

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