美しいものにはとげがある ① イシミカワ

秋の空に向かって伸びるイシミカワ。淡いピンク色から藍色に…色づく果実は、まるで宝石のよう。

このイシミカワの観察を続けてきたので、それを報告させていただく。

“美しいものにはとげがある”とはよく言ったもので、宝石のようなイシミカワもご他聞に漏れない。とくに葉柄のとげがすごい威力。（6月末に撮影）

寄りかかりながら伸びるイシミカワ。（↓）さしものオオブタクサもたじたじ。

穴だらけにされることだろう。

イシミカワのつるの先端付近。葉柄のほかに葉の裏にもとげがあって、これらを引っかけながら伸びる。

弱みは、自慢のとげで自傷してしまうことか。

つる植物同士のせめぎ合い。（↓）ここではカラスウリ、ヘクソカズラを抑えて、イシミカワが勢力を誇示している。

こちら（↑）はカナムグラと競争中。

イシミカワはつる植物の中では成長がやや遅いように思える。

とげの勝負では有利のはずだが、陣取り合戦ではいつの間にか遅れてしまう。

農地の生け垣にイシミカワの繁茂しているのを見かけた。畑への侵入を阻むにはもってこいだろう。

地主による意図的なものだろうか。この地域（見沼田んぼ）ではイシミカワのバリケードが散見された。

さて、花を観よう。托葉を台座のようにして花序をつける。

このときは早くも6月初めから咲いていた。

花は小さくて目立たないが、ちょっと厳かな雰囲気でもある。

花弁はなく、半開きのがくに包まれる。のぞき込むと、雄しべの奥に雌しべの柱頭が確認できる。

失礼してがくの一部を取り除いてみた。雌しべの子房も確認できた。

この子房が大きくなって果実になる。がくは子房を包んだまま成熟し淡紫～藍色になる。中の黒いのは、種子ではなく果実ということになる。

それにしても素晴らしい光沢だ。

イシミカワはこう見えてイヌタデのなかま（Persicaria属）とされるが、花から果実を観るとそれも納得できる。

イヌタデのなかまはかなりややこしくなっているようだ。ややこしい原因は自家受粉によるものだそうで、元をただせばこの花の形によるものなのかもしれない。

じつは昨年、イシミカワの芽生えから観察を続けていた。

ほかにもイヌタデのなかまをいくつか観察したので、これから順次紹介させていただく。

整理が追い付かなくて、報告が一年遅れになってしまったのであった。 (^_^;)

2021年10月10日、報告：自然観察大学 事務局Ｏ