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自然観察大学ブログ

ネギを観て考える

私の近所の江戸川沿いでは、冬の季節にはさかんにネギが作られる。
ネギを観て考える_d0163696_2033923.jpg

関東ではネギの白い部分を好んで食べるので、土寄せをして土中深くネギを埋め込む。
ネギを観て考える_d0163696_204142.jpg
こうして埋め込まれた部分が、白く軟らかく、そして長く伸びる。
それにしても、ふかふかの土を上手く盛り上げるものだ。

ネギは本来、多年生植物で、寒さ暑さにはもっとも強い野菜のひとつだそうだが、このネギを植物として観てみよう。

ネギの葉の表裏は?

緑色の葉は筒状になっていて、よく考えると不思議な形をしている。
ネギの葉の表裏はどうなっているのか、お分かりだろうか? 
実は筒状の内側が葉表で、外側が葉裏だそうである。白いところは茎ではなく巻いて重なった葉鞘。
ちなみに、ネギの茎は根のすぐ上にある短い部分で、芯のようなところだ。

……………………………………………………
1/20追記
ネギは単面葉といって、遺伝子的に葉裏の性質しかないことが最近になって解明されたそうです。
⇒ 『アヤメやネギがもつ、裏しかない葉「単面葉」の形作りの仕組みを解明』(基礎生物学研究所、2010年 7月22日) http://www.nibb.ac.jp/press/100722/100722.html
ミルフイユさん、ご指摘いただきありがとうございました。
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ネギと同じユリ科植物で、春の雑草のノビルがある。子供のころ小さなラッキョウのような鱗茎を食べた。
図鑑で見てみよう。
ネギを観て考える_d0163696_20174991.jpg
※ 『形とくらしの雑草図鑑』(岩瀬徹、全農教)より http://www.zennokyo.co.jp/book/ykhb/kkzso.html

葉の断面の写真を拡大してみる。ノビルの葉は断面が三日月形で、中空になっていることがわかる。
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ネギの花

葱坊主は初夏に出るのだが、以前撮った写真を紹介しよう。
ネギを観て考える_d0163696_20195716.jpg
葱坊主は花序のこと。小さな花がビッシリとついている。
ノビルの花序も、葱坊主に似ている。
薄い膜は総苞で、つぼみのときはこの総苞が花序全体を包んでいる。
ちなみに、ネギの品種によっては花をつけないものがあり、“坊主しらず”といわれるらしい。

分解して一つだけ花を取り出してみた。
ネギを観て考える_d0163696_20211180.jpg
ネギの花はユリ科の特徴を備えている。
花弁が6(内花被3+外花被3)。雄しべが6で、雌しべの子房は3室。

雑草では、秋に咲くツルボもユリ科だ。ツルボは個人的に好きな雑草で、このブログでも以前紹介しているので、ご覧いただきたい。
http://sizenkan.exblog.jp/11973582/

ネギを観て考える_d0163696_2023072.jpg
これは同じユリ科のアマナ。比べると基本的に同じ構造の花であることが分かる。

もっとも、DNA解析による新しい考え方ではネギはネギ科としてユリ科とは分けるらしい。ちょっとややこしくなってしまった。やはり形態による系統分類の方が親しみがもてる。

余談ですが…
以前、ネギ畑で作業をする農家に話をうかがったところ、安い中国産ネギに押されて、ネギ栽培を続けていくのが難しいということを言っておられた。
中国産ネギとか、アメリカ産ブロッコリーとか、確かに見かけはきれいなのだが、やはり地元で採れた新鮮な野菜とは、味の面では比べものにならない。
いま一面のネギ畑を見て、あの農家も何とか踏みとどまってくれたのだろうと、ほっとしている。

もうひとつ余談
ネギをネットで調べると、犬や猫には与えてはいけないという説が多数あった。 “ネギ 犬” で検索すると2000万件以上がヒット!
この中には「食べさせてはいけない」という内容と、反対に「まったくのガセネタで、ドッグフードメーカーの謀略」などという両方の意見が混在している。
かつて私の家でも犬を飼っていて、けっこう食べさせていたように思う。
本当のことをご存知の方は、ぜひお教えいただきたい。

【参考図書】
校庭の作物』(板木利隆・岩瀬徹・川名興、全農教):ネギに関して参考にさせていただきました。この本は“身近な農作物を植物学の眼で観察しよう”というもので、 「校庭シリーズの中でいちばん面白いかも…」 と岩瀬先生が話しておられました。興味のある方はぜひどうぞ。もちろん、タイトルの読み方は(こうていのさくもつ)です。
http://www.zennokyo.co.jp/book/kote/sak_0.html

2012年1月16日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2012-01-16 20:31 | 植物 | Comments(4)
Commented by ミルフイユ at 2012-01-19 17:19 x
綺麗なネギでいいですね~。
群馬では、前橋あたりまでなら商業的に栽培してるんだろうなあ?という面積の畑を見ますが、それより北の方では年が明けると霜で葉っぱがボロボロになります。甘くなりますけどね。

単面葉って裏しかないんじゃなかったですっけ?
遺伝子的にも裏の性質のが全体に…って聞いた気がしますが…
ええっとここかな?
http://www.nibb.ac.jp/press/100722/100722.html
Commented by ミルフイユ at 2012-01-19 17:45 x
犬猫のタマネギ中毒といえば超有名で仕組みもわかっているので本当だと思います。獣医さんでも沢山症例あるそうです。
ガセだと言う方は敏感じゃないコを飼っているだけじゃないでしょうか?個体差が大きい(赤血球内の還元型グルタチオンやカリウム濃度によるらしい)そうですし、通常は体重1kgあたり10~30g食べないとはっきりした症状は出ないそうですから。

玉葱や葱の臭いや泣ける成分である有機チオ硫酸化合物が、ヘモグロビンを酸化し、ギザギザしたハインツ小体に変えてしまいます。すると赤血球が破壊されたり(溶血)脾臓で回収され、貧血、血尿、黄疸…などの症状が。

1度で死ぬことはまれだそうですが、少量でも与え続けると軽度の貧血になるとか。
敏感な個体だと少量の煮汁でも危険だそうですよ。すき焼きの汁とかハンバーグ、餃子などは要注意。
ニンニク、ニラ、らっきょ、エシャロット…、風邪薬のアセトアミノフェンも。
牛、羊、ウサギ、リス、フェレットなどでも症例があるそうです。個体が小さい場合は少量でもなりやすいそうです。
Commented by sizenkansatu at 2012-01-20 10:14
単面葉ってはじめて知りました。勉強不足ですみません。
さっそく本文で追記させていただきました。

ネギと犬猫の件は、もしかしてミルフイユさんから教えてもらえるかも…
と期待していたのです。
ありがとうございます。
加熱すれば大丈夫、なんて話もあるようですが、ダメなんですね。

ネギ類は血をさらさらにして成人病予防によいというのも、同じことなんでしょうね。
ネギ類は大好物なんですが、私の場合、残念ながら効果は出てないようです。それともネギのおかげでこの程度ですんでいるのかも…
Commented by ミルフイユ at 2012-01-21 01:09 x
人が玉葱中毒にならないのは、還元型グルタチオン濃度が犬ほど高くないからとか、分解酵素があるからとか聞きますが、よくわかりません。でも中毒になっちゃう人もまれにいるとか。

葱・玉葱・大蒜等の血液サラサラ効果を得るには…
ひとつは切ったりすり下ろして生で食べる。細胞が壊れることで物質が変化して効果が出るそうです。水溶性なので水にさらしてはいけません。
もうひとつは、同じく切ったりして、15分以上放置すると酵素が働いてサラサラ物質が出来るそうで、こちらは加熱してもこわれないとか。ためしてガッテンでやってましたが、うちの母によるとかなり効果があるそうです。玉葱と大蒜を切っておいておいてから炒めるそうで、依頼されて大蒜を栽培しています。

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