タマムシはやっぱりきれい
8月半ばの今年一番暑かったころ、房総の奥のほうの、ノウサギの糞らしきものがいたるところで見られるような場所。
タマムシが猛暑の中をブンブン飛び交っていた。
タマムシはやっぱりきれいだ。
翅の真ん中あたりが少し凹んでいるのが残念。
玉虫厨子に代表されるように、日本人は古来からタマムシの色にあこがれてきたらしく、玉虫色を再現しようと織物や装飾品で懸命に試みられていたらしい。
光の具合で色が微妙に変化するので、タマムシ色としか表現できない。
どっちつかずの色から “玉虫色の決着” などとたとえられるが、そのたとえはタマムシに対して失礼にあたるだろう。
玉虫色というからには、目の覚めるような鮮やかさがほしい。
顔をよく観てみよう。
少し離れた眼が人なつこい印象。なかなか味のある顔だ。
ごていねいに大顎まで玉虫色になっている。
黒い “へ” の字型のところは小顎というのだろうか?
ところで、この顔どっかで見たような…
そう。仮面ライダーに似ている。
強力な飛翔能力を有し、猛烈な日差しをものともせず、虹色の光線銃が武器。
特技は喧嘩の仲裁で “玉虫色の鮮やかな裁定” …
『仮面ライダー夏玉(なつおう)』なんていうニューヒーローはどうだろう。
問題は玉虫色のライダースーツをどうやって作るかだ。
ほかに観た虫たち
アオバハゴロモ。
よく観ると浅黄色の翅に朱色の翅脈がなかなか美しい。
観たことのない方は一度ルーペを使って観ていただきたい。
どこでも観られる虫だが、ここは密度がすごい。
植物はクワ科のようだが残念ながら不明。
ベッコウハゴロモ。
多数のアオバハゴロモにまじっておとなしくしていた。
体色が鼈甲のようだという名前なのだろうが、拡大して見ると鱗粉がビッシリ。羽化直後ということだろうか。
この角度で見るとセミに似た印象。同じカメムシ目なのだからうなずける。
複眼のストライプが効いている。
ちなみにこのハゴロモたちはアオバハゴロモ科とハゴロモ科で、それほど近い仲間ではない。翅のたたみ方が違うのもうなずける。
アズチグモ。
葉裏でほかのクモ(サツマノミダマシと思う)を捕らえていた。
2本脚でぶら下がって、ゆっくりとお食事中。
眼の部分の細長い三角模様が悪役風だ。
漢字で書くと “安土蜘蛛” だそうだが、地名の安土と関係があるのだろうか? だとするとアヅチグモではないのか?
ちなみに、サツマノミダマシの方は果実に似ているから “薩摩の実騙し” で、“薩摩蚤騙し” ではない由。
クモは獲物に消化液を注入して溶かして液状になったものを吸うと聞く。捕らえられた獲物は溶かされながら意識が遠のいていくのだろうか… 考えると恐ろしい話だ。
それはさておき、注入した消化液をもう一度飲み込むことになると思うのだが、食べる本人は消化されないのだろうか?
フキバッタ。
たぶんタンザワフキバッタではないかと思う。写真は翅が小さいが立派な成虫だ。
フキバッタは飛ぶことをやめたバッタで、そのためか地域によって種が細分化している。
抜群の跳躍力を秘めたフトモモ(後脚腿節)に目が行きがちだが、つま先にも目を向けよう。写真を拡大してご覧いただく。(写真が荒れてしまっているがご勘弁ください)
爪の間に吸盤というか肉球のようなものがある。
この肉球は爪間盤(そうかんばん)というものだそうだ。
バッタは脚もとの表面構造によって爪と肉球を使い分け、ジャンプするときに滑らないようにするのだと考えられる。上手くできているものだ。
もっと面白い構造なのが後脚で、跗節(ふせつ)全体がジャンプに適した形になっている。残念ながらそれは写っていないので、ぜひご自分で確認していただきたい。お近くのイナゴやトノサマバッタでぜひどうぞ。
※ 編集中の『昆虫博士入門』では、そのあたりをていねいに紹介する予定です。発行が遅れてすみません。
2011年8月30日、報告:自然観察大学 事務局O
タマムシが猛暑の中をブンブン飛び交っていた。
翅の真ん中あたりが少し凹んでいるのが残念。
玉虫厨子に代表されるように、日本人は古来からタマムシの色にあこがれてきたらしく、玉虫色を再現しようと織物や装飾品で懸命に試みられていたらしい。
光の具合で色が微妙に変化するので、タマムシ色としか表現できない。
どっちつかずの色から “玉虫色の決着” などとたとえられるが、そのたとえはタマムシに対して失礼にあたるだろう。
玉虫色というからには、目の覚めるような鮮やかさがほしい。
顔をよく観てみよう。
ごていねいに大顎まで玉虫色になっている。
黒い “へ” の字型のところは小顎というのだろうか?
ところで、この顔どっかで見たような…
そう。仮面ライダーに似ている。
強力な飛翔能力を有し、猛烈な日差しをものともせず、虹色の光線銃が武器。
特技は喧嘩の仲裁で “玉虫色の鮮やかな裁定” …
『仮面ライダー夏玉(なつおう)』なんていうニューヒーローはどうだろう。
問題は玉虫色のライダースーツをどうやって作るかだ。
ほかに観た虫たち
よく観ると浅黄色の翅に朱色の翅脈がなかなか美しい。
観たことのない方は一度ルーペを使って観ていただきたい。
どこでも観られる虫だが、ここは密度がすごい。
植物はクワ科のようだが残念ながら不明。
多数のアオバハゴロモにまじっておとなしくしていた。
体色が鼈甲のようだという名前なのだろうが、拡大して見ると鱗粉がビッシリ。羽化直後ということだろうか。
複眼のストライプが効いている。
ちなみにこのハゴロモたちはアオバハゴロモ科とハゴロモ科で、それほど近い仲間ではない。翅のたたみ方が違うのもうなずける。
葉裏でほかのクモ(サツマノミダマシと思う)を捕らえていた。
2本脚でぶら下がって、ゆっくりとお食事中。
眼の部分の細長い三角模様が悪役風だ。
漢字で書くと “安土蜘蛛” だそうだが、地名の安土と関係があるのだろうか? だとするとアヅチグモではないのか?
ちなみに、サツマノミダマシの方は果実に似ているから “薩摩の実騙し” で、“薩摩蚤騙し” ではない由。
クモは獲物に消化液を注入して溶かして液状になったものを吸うと聞く。捕らえられた獲物は溶かされながら意識が遠のいていくのだろうか… 考えると恐ろしい話だ。
それはさておき、注入した消化液をもう一度飲み込むことになると思うのだが、食べる本人は消化されないのだろうか?
たぶんタンザワフキバッタではないかと思う。写真は翅が小さいが立派な成虫だ。
フキバッタは飛ぶことをやめたバッタで、そのためか地域によって種が細分化している。
抜群の跳躍力を秘めたフトモモ(後脚腿節)に目が行きがちだが、つま先にも目を向けよう。写真を拡大してご覧いただく。(写真が荒れてしまっているがご勘弁ください)
爪の間に吸盤というか肉球のようなものがある。
この肉球は爪間盤(そうかんばん)というものだそうだ。
バッタは脚もとの表面構造によって爪と肉球を使い分け、ジャンプするときに滑らないようにするのだと考えられる。上手くできているものだ。
もっと面白い構造なのが後脚で、跗節(ふせつ)全体がジャンプに適した形になっている。残念ながらそれは写っていないので、ぜひご自分で確認していただきたい。お近くのイナゴやトノサマバッタでぜひどうぞ。
※ 編集中の『昆虫博士入門』では、そのあたりをていねいに紹介する予定です。発行が遅れてすみません。
2011年8月30日、報告:自然観察大学 事務局O
by sizenkansatu
| 2011-08-30 12:51
| 昆虫など
|
Comments(2)
Commented
by
たがめ
at 2011-08-31 12:55
x
「タマムシ」の記事を拝見しました。
いつもながら(?)写真のみごとさに感服しました。
タマムシの美しさはさすがですねおっしゃrとおり「玉虫色の決着」は適切な比喩ではないな、と思いました。
ド・アップの顔も愉快でした。
精一杯凄みを利かそうと頑張ってはみたけれど、いかんせん、おまぬけな地がでてしまった、という感じです。
(もっとも私はタマムシの生活は知らないののですけれど。案外獰猛なのかな?)
それから、フキバッタなる虫の変異についての考察はおもしろかったです。
研究なされば博士論文?
このブログの過去の記事を少しだけ拝見して、ブログをめぐるおおよその事情が解ったような気がして、それで感想をお送りしました。
少し宣伝もしようと思います。またできたらたまには投稿も、とも思っていますが、多分無理でしょう。
以上。
いつもながら(?)写真のみごとさに感服しました。
タマムシの美しさはさすがですねおっしゃrとおり「玉虫色の決着」は適切な比喩ではないな、と思いました。
ド・アップの顔も愉快でした。
精一杯凄みを利かそうと頑張ってはみたけれど、いかんせん、おまぬけな地がでてしまった、という感じです。
(もっとも私はタマムシの生活は知らないののですけれど。案外獰猛なのかな?)
それから、フキバッタなる虫の変異についての考察はおもしろかったです。
研究なされば博士論文?
このブログの過去の記事を少しだけ拝見して、ブログをめぐるおおよその事情が解ったような気がして、それで感想をお送りしました。
少し宣伝もしようと思います。またできたらたまには投稿も、とも思っていますが、多分無理でしょう。
以上。
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by
sizenkansatu at 2011-08-31 13:01
たがめさん。コメントありがとうございます。
投稿は無理なんて言わずにぜひお願いします。
自然観察大学ホームページから、事務局あてにメールでお送りください。
いつでも大歓迎です。
タマムシは植物食ですので、正確もたぶんおとなしいです。
おまぬけな面もあるかも…
投稿は無理なんて言わずにぜひお願いします。
自然観察大学ホームページから、事務局あてにメールでお送りください。
いつでも大歓迎です。
タマムシは植物食ですので、正確もたぶんおとなしいです。
おまぬけな面もあるかも…
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