頭突きをするハエ
4月はじめに観たハエは、頭突きをするハエだった。 低い体勢で口器を押し付けるように樹液を舐めている。舐めることに夢中で、カメラなど眼中にない、といったそぶり。
翅をすぼめてナナメに構えているのが特徴的で、ジェット戦闘機のようなちょっとかっこいいハエだ。
はっきりとした紋様があるので、あとで名前を調べたが、残念ながらわからなかった。
写真を撮っている間に別の1頭が近寄ってきた。 優先権を持った左のハエは、餌場を守るために低い体勢からなんと “頭突き” をした。新参者(写真右側)はあっという間にどこかへ突き飛ばされてしまった。
頭突きは目にもとまらぬ速さで、ヒザ(?)のバネを使って跳びつくように体ごと当たる。とてもシャッターが追いつける動きではない。上の写真はジャンプする直前で、1/250秒のシャッタースピードでもブレてしまっている。
追い払われたハエは、懲りずに何度も近寄ってくる。この樹液がよほど美味しいらしい。
この攻防戦を5,6度繰り返すうちに、うまいこと頭突をかわし、そのままクンヅホグレツの戦いになった。素早い動きでぐるぐると回転した後…
止まったと思ったら、もう交尾の姿勢になっていた。本当の目的はこれだったのか!
めでたし、めでたし…
雄のあきらめない執念と、超速の身のこなしには脱帽である。
ハエの世界もなかなかたいへんなようだ。
………………………………………………………
〔4.21追記:ムラクモハマダラミバエ〕
<<頭突きをする種は、ムラクモハマダラミバエ Staurella nigrescens Zia, 本州に分布、生態不明と同定されました。>>
双翅目の専門家であるS先生からご教示いただいた。S先生には半ば強引に自然観察大学の学生になっていただいている。
名前がわかると、ネットでも本種について検索できた。
個人的に、ミバエの仲間は翅が開き気味で体型も丸型と思い込んでいた (下の写真が好例) が、そんなに単純なものではないようだ。
S先生、ありがとうございました。
………………………………………………………
ミバエのこと
別の樹の葉裏にいた別のハエ。こちらは単に休んでいるところらしい。
翅の紋様がなかなか美しい。
翅を開きぎみにするところは、ミバエの仲間だろうと思われる。
後日、特徴的な紋様をたよりに『原色昆虫大図鑑』(北隆館)(http://hokuryukan-ns.co.jp/books/archives/2005/09/_iii.html の旧い版)で調べた。
“チャイロワモンハマダラミバエ” で間違いないと思う。
ミバエの仲間には重要な農業害虫とされるものが多く、沖縄地方で根絶宣言されたウリミバエというニガウリ(ゴーヤ)などのウリ科作物の害虫が著名である。
ウリミバエは、大量飼育された雄成虫を不妊化し自然界に放飼し続けるという壮大な国家事業で根絶やしにされた。
それまで本土へ移動禁止とされたニガウリが、ウリミバエ根絶のおかげで全国に流通可能になったのだ。
人間の都合でそこまでするか? という意見もありそうだが、果実を切って中に充満した幼虫(ウジ)を見た経験のある人なら納得いくかもしれない。
これはその飼育中のウリミバエ雌(写真提供:全国農村教育協会)。
ニガウリに産みつけられたウリミバエの卵は、ふ化後果実の内部を食い尽くす。
ウリミバエの根絶についての書籍は『ミバエの根絶』(石井象二郎、農林水産航空協会)、『害虫殲滅工場』(小林照幸、中央公論新社)があったが、残念ながらいずれも絶版のようだ。
話はドンドンそれるが、ウリミバエ同様に侵入警戒中の害虫として、アリモドキゾウムシとイモゾウムシというのがいる。サツマイモの大害虫である。
写真はアリモドキゾウムシ(写真提供:全国農村教育協会)。
少し前の沖縄基地移転問題に絡んだ話で、ある移転受け入れ容認派の条件の中に 『アリモドキゾウムシの根絶』 というのがあった。
極端に言えば “アリモドキゾウムシを根絶してくれるなら米軍基地の受け入れを考えよう” というのだ。
現地でいかに深刻な問題であるかがうかがえる。
余談ですが…
双翅目(ハエ目)の名前を調べるのは難しい。某大図鑑では双翅目の多くは展翅していない標本写真であり、そうなると絵合わせで検討をつけるわれわれ素人には同定不可能だ。
ネット上で昆虫図鑑は数多くあるが、双翅目の実用的なものがないのは、ひとえに難しいからだろう。生態写真による双翅目の入門用の図鑑が望まれる。
2011年4月19日、報告:自然観察大学 事務局O
翅をすぼめてナナメに構えているのが特徴的で、ジェット戦闘機のようなちょっとかっこいいハエだ。
はっきりとした紋様があるので、あとで名前を調べたが、残念ながらわからなかった。
写真を撮っている間に別の1頭が近寄ってきた。
頭突きは目にもとまらぬ速さで、ヒザ(?)のバネを使って跳びつくように体ごと当たる。とてもシャッターが追いつける動きではない。上の写真はジャンプする直前で、1/250秒のシャッタースピードでもブレてしまっている。
追い払われたハエは、懲りずに何度も近寄ってくる。この樹液がよほど美味しいらしい。
この攻防戦を5,6度繰り返すうちに、うまいこと頭突をかわし、そのままクンヅホグレツの戦いになった。素早い動きでぐるぐると回転した後…
止まったと思ったら、もう交尾の姿勢になっていた。本当の目的はこれだったのか!
雄のあきらめない執念と、超速の身のこなしには脱帽である。
ハエの世界もなかなかたいへんなようだ。
………………………………………………………
〔4.21追記:ムラクモハマダラミバエ〕
<<頭突きをする種は、ムラクモハマダラミバエ Staurella nigrescens Zia, 本州に分布、生態不明と同定されました。>>
双翅目の専門家であるS先生からご教示いただいた。S先生には半ば強引に自然観察大学の学生になっていただいている。
名前がわかると、ネットでも本種について検索できた。
個人的に、ミバエの仲間は翅が開き気味で体型も丸型と思い込んでいた (下の写真が好例) が、そんなに単純なものではないようだ。
S先生、ありがとうございました。
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ミバエのこと
別の樹の葉裏にいた別のハエ。こちらは単に休んでいるところらしい。
翅を開きぎみにするところは、ミバエの仲間だろうと思われる。
後日、特徴的な紋様をたよりに『原色昆虫大図鑑』(北隆館)(http://hokuryukan-ns.co.jp/books/archives/2005/09/_iii.html の旧い版)で調べた。
“チャイロワモンハマダラミバエ” で間違いないと思う。
ミバエの仲間には重要な農業害虫とされるものが多く、沖縄地方で根絶宣言されたウリミバエというニガウリ(ゴーヤ)などのウリ科作物の害虫が著名である。
ウリミバエは、大量飼育された雄成虫を不妊化し自然界に放飼し続けるという壮大な国家事業で根絶やしにされた。
それまで本土へ移動禁止とされたニガウリが、ウリミバエ根絶のおかげで全国に流通可能になったのだ。
人間の都合でそこまでするか? という意見もありそうだが、果実を切って中に充満した幼虫(ウジ)を見た経験のある人なら納得いくかもしれない。
ニガウリに産みつけられたウリミバエの卵は、ふ化後果実の内部を食い尽くす。
ウリミバエの根絶についての書籍は『ミバエの根絶』(石井象二郎、農林水産航空協会)、『害虫殲滅工場』(小林照幸、中央公論新社)があったが、残念ながらいずれも絶版のようだ。
話はドンドンそれるが、ウリミバエ同様に侵入警戒中の害虫として、アリモドキゾウムシとイモゾウムシというのがいる。サツマイモの大害虫である。
少し前の沖縄基地移転問題に絡んだ話で、ある移転受け入れ容認派の条件の中に 『アリモドキゾウムシの根絶』 というのがあった。
極端に言えば “アリモドキゾウムシを根絶してくれるなら米軍基地の受け入れを考えよう” というのだ。
現地でいかに深刻な問題であるかがうかがえる。
余談ですが…
双翅目(ハエ目)の名前を調べるのは難しい。某大図鑑では双翅目の多くは展翅していない標本写真であり、そうなると絵合わせで検討をつけるわれわれ素人には同定不可能だ。
ネット上で昆虫図鑑は数多くあるが、双翅目の実用的なものがないのは、ひとえに難しいからだろう。生態写真による双翅目の入門用の図鑑が望まれる。
2011年4月19日、報告:自然観察大学 事務局O
by sizenkansatu
| 2011-04-19 19:30
| 昆虫など
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