安土城跡とハンミョウ -滋賀その4-
安土城は言わずと知れた信長の城だ。
四百段以上とされる大手道という石段を登る。
かつては荒れ果てていたということだが、今は20年間の発掘調査が終了し、石垣と石段が整備され、往時の壮大さを偲ぶことができるようになった。
安土城跡をはじめ、かつての日本の建築物のなんと風格のあることか。それに比べると現代の六本木ヒルズや東京スカイツリーなど味も素っ気もない。
それにしても猛暑の中でこの石段はこたえる。汗だくになって
“織田家中の人たちは毎日この石段を行き来したのだろうか。昔の人はすごい。エスカレーターがほしいなぁ”
などと考えていると、目の前をハンミョウが横切った。石段をものともせずに移動している。信長の時代から石段の上り下りで足腰が鍛えられているのだろうか。うらやましいくらい軽やかな動きだ。
写真のハンミョウは持ち帰って一眼レフカメラで撮ったものである。今回コンパクトカメラのみの携行で、動きの早いハンミョウを撮ることは不可能ということもあるが、実はそのコンパクトカメラのバッテリー残量がなくなったためである。
光っているようで、光ってない
ハンミョウの金属光沢は頭部と胸部に限られる。前翅は一見して光り輝いているように見えるが、これはその斑紋のマジックであった。じっくりと撮ってはじめて気がついた。
これと同じことはアカスジキンカメムシにも見られる。
(ハンミョウもカメムシも画像をダブルクリックすると拡大されます)
アカスジキンカメムシでは頭部は金属光沢があるが、胸部と小楯板は紋様によって輝くように見えるのである。光るように見せるのは何かわけがあるのだろうか。それとも光っているように見えるのは私だけだろうか。
話がそれたついでにもうすこしアカスジキンカメムシの話。
小楯板(しょうじゅんばん)というのは、他の昆虫の前翅にあたるところにある。小楯板は普通は前翅の間にある三角形の部分で、アカスジキンカメムシなどキンカメムシ科ではこれが大きくなって背面を覆っているのだ。
飛ぶときは小楯板の下から翅を出す。飛ぶ写真は 『鎮(チン)さんの自然観察記』 2008年5月28日 で写真が紹介されている。クズでよく見かけるマルカメムシも同じように紹介されている。
鎮(チン)さんのブログは飛翔をテーマにしていて、自然観察大学ブログよりもっとマニアック。おもしろいですよ。
天守台ではコハンミョウが…
話は安土城に戻る。石段を登りきると天守台だ。写真はその入り口。
肝心の天守台はバッテリー切れで写真がないが、このブログの主旨ではないのでご容赦いただきたい。遺構はほかで見ていただこう。
天守台跡では地下の礎石が残る。60-70個の礎石が規則正しく並んでいる。小説『火天の城』や映画で見た話とは違うようだ(好きなので両方見ています)。たしか小説では4本、映画では1本の柱で天守を支えるという話だったが…
などと悩んでいると、こんどはコハンミョウがいた。天守台跡地一面にかなりの数がいる。小さく地味なので誰も気づかないようだが、私一人は双眼鏡で虫を追いかけ、雌雄の確認をすることに熱中していた。
コハンミョウについては、このブログの7月22日、
あるいは 自然観察大学 2010年6月27日の観察レポートを見ていただきたい。
ついでで恐縮だが小説の『火天の城』(文春文庫)は面白い。おすすめです。
後日談
ハンミョウを持ち帰って、撮らせていただいた後に自宅付近で放した。放した途端すぐに逃げ去ると思ったら、さにあらず。近くにいたアリをたてつづけに4頭、見ている前で食べた。数日間の断食でよほど空腹だったらしい。
近日中に改めてこの報告をさせていただく。
2010年8月19日、報告:事務局O
【Y先生より補足】8/23
アカスジキンカメムシが飛ぶ時に小楯板の下から出す翅は後翅です。前翅は小さくなって小楯板の横につきます。
ところで、鎮(チン)さんのブログでは、かなり正確に同定されていますね。撮影場所が明記されているのもいいです。飛ぶところの写真も参考になりました。
四百段以上とされる大手道という石段を登る。
かつては荒れ果てていたということだが、今は20年間の発掘調査が終了し、石垣と石段が整備され、往時の壮大さを偲ぶことができるようになった。
安土城跡をはじめ、かつての日本の建築物のなんと風格のあることか。それに比べると現代の六本木ヒルズや東京スカイツリーなど味も素っ気もない。
それにしても猛暑の中でこの石段はこたえる。汗だくになって
“織田家中の人たちは毎日この石段を行き来したのだろうか。昔の人はすごい。エスカレーターがほしいなぁ”
などと考えていると、目の前をハンミョウが横切った。石段をものともせずに移動している。信長の時代から石段の上り下りで足腰が鍛えられているのだろうか。うらやましいくらい軽やかな動きだ。
写真のハンミョウは持ち帰って一眼レフカメラで撮ったものである。今回コンパクトカメラのみの携行で、動きの早いハンミョウを撮ることは不可能ということもあるが、実はそのコンパクトカメラのバッテリー残量がなくなったためである。
光っているようで、光ってない
ハンミョウの金属光沢は頭部と胸部に限られる。前翅は一見して光り輝いているように見えるが、これはその斑紋のマジックであった。じっくりと撮ってはじめて気がついた。
これと同じことはアカスジキンカメムシにも見られる。
(ハンミョウもカメムシも画像をダブルクリックすると拡大されます)
アカスジキンカメムシでは頭部は金属光沢があるが、胸部と小楯板は紋様によって輝くように見えるのである。光るように見せるのは何かわけがあるのだろうか。それとも光っているように見えるのは私だけだろうか。
話がそれたついでにもうすこしアカスジキンカメムシの話。
小楯板(しょうじゅんばん)というのは、他の昆虫の前翅にあたるところにある。小楯板は普通は前翅の間にある三角形の部分で、アカスジキンカメムシなどキンカメムシ科ではこれが大きくなって背面を覆っているのだ。
飛ぶときは小楯板の下から翅を出す。飛ぶ写真は 『鎮(チン)さんの自然観察記』 2008年5月28日 で写真が紹介されている。クズでよく見かけるマルカメムシも同じように紹介されている。
鎮(チン)さんのブログは飛翔をテーマにしていて、自然観察大学ブログよりもっとマニアック。おもしろいですよ。
天守台ではコハンミョウが…
話は安土城に戻る。石段を登りきると天守台だ。写真はその入り口。
肝心の天守台はバッテリー切れで写真がないが、このブログの主旨ではないのでご容赦いただきたい。遺構はほかで見ていただこう。
天守台跡では地下の礎石が残る。60-70個の礎石が規則正しく並んでいる。小説『火天の城』や映画で見た話とは違うようだ(好きなので両方見ています)。たしか小説では4本、映画では1本の柱で天守を支えるという話だったが…
などと悩んでいると、こんどはコハンミョウがいた。天守台跡地一面にかなりの数がいる。小さく地味なので誰も気づかないようだが、私一人は双眼鏡で虫を追いかけ、雌雄の確認をすることに熱中していた。
コハンミョウについては、このブログの7月22日、
あるいは 自然観察大学 2010年6月27日の観察レポートを見ていただきたい。
ついでで恐縮だが小説の『火天の城』(文春文庫)は面白い。おすすめです。
後日談
ハンミョウを持ち帰って、撮らせていただいた後に自宅付近で放した。放した途端すぐに逃げ去ると思ったら、さにあらず。近くにいたアリをたてつづけに4頭、見ている前で食べた。数日間の断食でよほど空腹だったらしい。
近日中に改めてこの報告をさせていただく。
2010年8月19日、報告:事務局O
【Y先生より補足】8/23
アカスジキンカメムシが飛ぶ時に小楯板の下から出す翅は後翅です。前翅は小さくなって小楯板の横につきます。
ところで、鎮(チン)さんのブログでは、かなり正確に同定されていますね。撮影場所が明記されているのもいいです。飛ぶところの写真も参考になりました。
by sizenkansatu
| 2010-08-19 18:21
| 昆虫など
|
Comments(3)
Commented
by
りりねこ
at 2010-08-20 16:15
x
コハンミョウは、すぐどっかにいっちゃうので、ゆっくり見られなかったのですが、地味な虫の印象でした。
でもハンミョウって、ずいぶん華やかな虫なんですね。
しかも、「斑猫」だと知り、漢字だとぐんとおしゃれだわ!と思いました。そういわれてみれば、猫の模様のような。
父が、「道しるべ」という名前も教えてくれました。
草むらに入らず道を跳んで歩くから、みたいです。
「道標の斑猫」。これだけでもなにかのお話が生まれそう。
アカスジキンカメムシもきれいですね。
黒に黄緑、オレンジにピンク、微妙にブルーが混じった、現代アートの点描みたい。
自然のデザインって、すごい♪
でもハンミョウって、ずいぶん華やかな虫なんですね。
しかも、「斑猫」だと知り、漢字だとぐんとおしゃれだわ!と思いました。そういわれてみれば、猫の模様のような。
父が、「道しるべ」という名前も教えてくれました。
草むらに入らず道を跳んで歩くから、みたいです。
「道標の斑猫」。これだけでもなにかのお話が生まれそう。
アカスジキンカメムシもきれいですね。
黒に黄緑、オレンジにピンク、微妙にブルーが混じった、現代アートの点描みたい。
自然のデザインって、すごい♪
Commented
by
ワカン
at 2015-01-12 03:06
x
よく観察しておられますね゜∀
Commented
by
sizenkansatu at 2015-01-13 06:07
ワカンさんコメントありがとうございます。
このところなかなか時間がとれないのが悩みですが、がんばります。
このところなかなか時間がとれないのが悩みですが、がんばります。
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