スギの開花 2024
このときはまだ鱗片が硬く閉じていた。
これがその後どうなるか、いつ開花するかを観たかったのだ。
私の身のまわりではスギが開花していないにもかかわらず、世の中では花粉症が問題になっていることに違和感があった。そのことは以前記事にさせていただいた。
それ以来ずっと気にしていたスギが、やっと開花したのでご報告したい。
スギの雄花の開花
ただ、ほとんどは花粉が膨らんでいて、前掲の2/14のものとくらべると、その違いがはっきりとわかる。
この雄花では先端のところに花粉が残っているだけだ。
3/10,11に観たスギはそれぞれ別の個体だが、どちらも身近な場所のものだった。
3/10に開花初めで、3/11にはほぼ終了だったのは、観察したのがたまたまそうだったというだけで、個体差や生育環境の違いによるものだろう。
いずれにしても3/10,11の前後が開花時期ということになる。
とすると、2月半ばころから花粉症が問題になるのは、やはりスギ以外の花粉に原因があるのではないだろうか。
疑問は深まるばかりである。
スギの雌花
雌花も観ておこう。
これが胚珠の先端で、孔からは受粉滴を出す。
受粉滴は花粉を受け取るためのもので、雌しべの柱頭のような役割とされる。
上の写真でも少しだけ受粉滴が確認できる。
スギの花は花被も雄しべも雌しべもないので開花を確認するのは難しい。
今回3/10,11に花粉を出すのと受粉滴が確認できたということは、まさしく開花期であるといえる。
スギの花については以前にも報告しているので、よろしければそちらもご覧いただきたい。
2024年3月13日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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<自然観察大学より>
自然まるごと観察会
参加者募集中
第41回講習会レポート
① きのこ観察入門 -四季のきのこの観察-
② 鳥たちの狩り
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by sizenkansatu
| 2024-03-13 21:42
| 植物
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‘河津桜’とホトケノザ
もちろん、TVで観る本場の河津町には遠く及ばないが、これだけ立派な‘河津桜’を身近で見た記憶はない。
手元のメモを見ると、2022年、2023年といずれも3月初旬に‘河津桜’の見ごろとなっていた。
本稿で‘河津桜’を漢字で表記した理由
ところで、植物(生物)種の和名は、基本的にカタカナで記すことにしている。
漢字をあてると、ふさわしくない当て字であったり、複数の説があったり、なにかとまずいことがあるためだ。
専門家の先生方はふつうカタカナで表記するので、私もそれにならっている。
ところが本項では‘河津桜’と表記している。その理由を記しておこう。
‘河津桜’は‘染井吉野’などと同様に栽培品種であり、生物種ではない。
その場合は ‘ ’(シングルコーテーションマーク)でくくり、漢字で表記するのが望ましいということをうかがった(カタカナでもよい)。
漢字でOKなのは、おそらく名前の由来がはっきりしているからであろう。
このルールはあまり浸透してないようだが、みなで合わせるように心がけたい。
公園で木に名札をつけてくれているのはたいへんありがたいが、面倒でもこのようにしていただけると、野生種なのか栽培品種かを知ることができる。
私の記憶では、新宿御苑の名札はこのルール通りになっていたと思う。
2024年2月21日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2024-02-21 20:11
| 植物
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スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?
春は、花粉症の方にはつらい日々であろう。お見舞いを申し上げたい。
天気予報でも連日のように飛散量の予測が報じられるようになった。
しかし、いまほんとうにスギの花粉が飛んでいるのだろうか。
スギはまだつぼみ
つっついてみても、花粉は出てこない。
雄花は開花すると鱗片が開き、その隙間から花粉を飛ばす。
開花中の雄花は次でご覧いただける(開花しても見た目はあまり変わらないが…)
私の住む近くにはスギはあまりないのだが、それでも見つけるたびに未だつぼみであることを確認している。
開花していないのに花粉が飛んでいるというのはどういうことなのだろうか。
私の観ているのは目の高さの枝なのだが、樹上の高いところの雄花はすでに開花して花粉を散らしているのだろうか。あるいは、暖地(房総など)のスギはこちらより早く開花して、それが、飛ばされてきたということなのだろうか。
いずれにしても、この時期にスギの花粉が多量に飛散というのは、疑わしいものがある。
ハンノキの花
スギの開花はまだだが、ハンノキはすでに開花している。
黄色枠:雌花序。雄花序よりもとの方に数個つく。
赤色枠:葉芽。同じ枝のさらにもとの方につく。
ハンノキの雄花
まず雄花序を観てみよう。
これはどのような構造なのだろうか。
『樹木生活史図鑑』(樹形研究会、北隆館)によると、雄花序では “赤紫色の花被片が目立つ” と記されている。
私の昨年の観察記録( ハンノキの花の観察 : 自然観察大学ブログ )では「雄花は花弁もがくもない」と記していたのだが、そうではないようだ。
しかし花被片(花弁とがく)があるということは、カニの甲羅と縁の舌が花被片なのだろうか? カニの甲羅状ががくで、舌が花弁か?
ハンノキの花粉症?
気になるのはハンノキの花粉だ。
ネットで調べると、スギの花粉症とされているものの中には、ハンノキの花粉症が少なからずある、という記事がいくつかあった。
ほんとうのところはどうなのだろうか…
北海道ではスギ、ヒノキがないので、ハンノキや同じカバノキ科のシラカンバの花粉症が問題になっているという。
ハンノキの雌花
さて、雌花を観てよう。
この時期はちょうど開花が始まったところで、↑の雌花序は成長の早いもの。
(音がするかどうかは定かではないが…)
鱗片の下には雌しべらしきものもうかがえる。
これがさらに膨らんで開花し、前掲の雌花序のようになるわけだ。
ハンノキの葉芽
葉芽といっても葉だけが出てくるわけではなく、これがシュート(枝葉など)になる。
余談ですが…
ハンノキの雌花序は小さくて撮りにくいのだが、昨年から導入したOM-1&90mmマクロレンズで簡単に撮影できた。現地で樹上の新鮮なものを手持ちで撮れるのはたいへんにありがたい。
近々、より高性能のOM-1 MarkⅡが出るらしいが、はたしてこれ以上の性能が必要なのだろうか?
気になるところではある。
それにしても、オリンパスからOMシステムに会社が変わって心配していたが、変わらぬ志ですばらしいカメラを提供してくれているようだ。
2024年2月16日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2024-02-16 18:45
| 植物
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ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編
前編( ⇒ )からの続きで、もう少しお付き合いいただきたい。
冬芽から次の冬芽へ
上向きのシュートでは葉のつけ根に新しい腋芽ができているのがわかる。
下向きのシュートはちょっと隠れているが、落葉して腋芽が残っている。
話はそれるが、花序 → 果実への成長過程もおもしろい。
小さな花が多数集まった花序だったのが、果実ではそれが合着して、全体が一つの大きな果実になる。(集合果)
『樹木博士入門』(小幡和男ら,全農教) をお持ちの方は、p190をご覧いただきたい。
上の写真は2個とも葉芽である。
花芽のほうは外側の芽鱗が横に裂けることが多い。
花芽からは花序と2個のシュートが出て、翌年は二叉になって伸びる。
一方、葉芽からは1個のシュートが伸びる。
その繰り返しで樹形を作っていくものと考えられる。
ハナミズキも同じ伸び方
ハナミズキの果実は、小花がそのまま合着せず一つずつの果実になる。
枝の伸び方はヤマボウシと同じなのだろう。
上の写真の右側のシュートには花芽ができているのがわかる。
ホンコンヤマボウシ
このところ街なかの新築の家の庭でよく見かける常緑のヤマボウシ。
上の写真では総苞片はごく小さいが、同じ日に観た別株ではすでに伸びはじめていた。 ホンコンヤマボウシの原産地はおそらく名前のとおり香港なのだと思うが、四季のない暖地で育ってきたので、越冬とか冬眠といった概念がないのだろう。
2024年2月8日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2024-02-08 19:14
| 植物
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ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編
写真では総苞片は開いているが、中央の小花はまだつぼみである。
総苞片の先端は初めからへこんで茶褐色だということになる。
ヤマボウシもハナミズキも総苞片の色や形はさまざまだが、先端がピンと伸びているかへこんでいるかで両種を見分けることができる。
この総苞片の違いはどうして起こるのか。冬芽の観察から推測してみた。
めんどくさい話で申し訳ないが、お付き合いいただければありがたい。
なお、ヤマボウシのなかまについては八田洋章先生の講演のレポートをご覧いただきたい。
●ヤマボウシの自然誌とその自生地探訪/自然観察大学講習会レポート ⇒
樹木に関して智の泉のような八田先生だが、ヤマボウシ類については格別な興味を持って観察しておられる。
この講演では、ヤマボウシのなかまの冬芽の違いについても系統だてて紹介いただいたが、このとき時間が押していたこともあって、消化不良気味であった。
私としては、『樹木博士入門』(小幡和男ら,全農教)の取材に際し、ヤマボウシとハナミズキのそれぞれの冬芽の展開を観てきたのだが、じつは、上記の講演をうかがって以来、注目して観察してきたのである。(一部の写真は『樹木博士入門』と共通して掲載)
冬芽をくらべる
わかった方は、ふだんからよく観察しておられる方だと思う。
芽鱗と総苞片の間にはふつう2個の腋芽があり、これはシュート(枝葉など)になる。
ヤマボウシとハナミズキはどちらもミズキ科ミズキ属(Cornus属)で、ハナミズキにはアメリカヤマボウシという別名もある。両種の基本的な冬芽のつくりは同じだ。
なお、図は前述の講演での八田先生の図を改変したもので、冬芽の先端がとがってないのは作図の都合であり、ご容赦いただきたい。
それでは正解。
左がヤマボウシ、右はハナミズキ。
前述の八田先生の講演で、ハナミズキの冬芽は1/3当年に成長し、翌年残りの2/3成長して開花するとしておられた。
ハナミズキの冬芽の動き
ハナミズキの冬芽の動きを詳しく観てみよう。
これがさらに伸びて、前掲の冬越しの冬芽になる。
ハナミズキのほうは夏の間に芽鱗が開いて、花序が伸び出した状態で越冬する。
なお、芽鱗と総苞片の間にあるのは腋芽で、のちに伸びてシュートになる。
ヤマボウシの冬芽の動き
いっせいに出てくるが、シュートがやや先行して伸び、次に花序、最後は総苞片という順序のようだ。
芽鱗で守られた状態で越冬するので、先端まできれいに伸びるのだと思われる。
ハナミズキの冬芽の展開
と同時に、2個の腋芽(シュート)が伸びる。
総苞片の先端は、冬越しのときに褐色になったのがそのまま伸びたのであり、それが傷のようにへこんでいるものと思われる。
なお、このように総苞片の赤色のものもふつうにある。
2024年2月6日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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by sizenkansatu
| 2024-02-06 11:38
| 植物
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