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自然観察大学ブログ

ヒトリシズカとフタリシズカ

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ヒトリシズカの名前の由来は、源義経の愛妾、静御前が舞う姿を観たてたのだという。
真偽のほどは知る由もないが、木陰にひっそりと咲く姿はなかなか好い。
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あんまりたくさんあると、静かなイメージとはずれるが、観察にはありがたい。


ヒトリシズカの花のつくり
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多数の花を集めた花序であることはわかるが、どんな構造なのだろうか。
撮るだけ撮っておいて調べてみると、驚きの構造であることがわかった。
以下、それを紹介させていただく。

上の写真の一部を拡大したのがこれ。(↓)
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白く長いのは雄しべの花糸で、それが3本セットになっている。
そのつけ根にあるのが雌しべで、膨らんだ子房の先に柱頭がある。

雌しべの膨らんだ部分(子房)の横腹から3本の雄しべを出す。このユニットが一つの花で、がくも花弁もない。
文字で書いただけでは判りにくいので、上と同じ写真に雌しべと雄しべを記入してみた。
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雄しべのつけ根に観える黄色く膨らんだものは葯で、3本の雄しべのうち、外側の2本のつけ根には葯がつく。

受粉に関しては、雌しべの上面に蜜を分泌し、昆虫を呼ぶという。
訪花しているところを見たことはないが、すぐ上の花粉が背中につくのだろう。
シンプルかつ機能的なつくりで、常識にあてはまらない、唯我独尊を地で行く存在だ。


フタリシズカの花のつくり
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フタリシズカは、ヒトリシズカと同じくセンリョウ科チャラン属(Chloranthus)。

普通2本の花序を立てるのでフタリシズカという名前は想定内だが、調べてみるとそれどころではなかった。
能の演目で二人静というのがあり、物語では吉野勝手明神(勝手神社)で二人の娘が舞うのだそうだが、一人は静御前の霊で、もう一人はその霊に憑依された娘なのだという。
う~む。奥深い。

さて、花の構造である。
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ヒトリシズカに似ているが、さらにわかりにくい。
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雌しべの横腹に3本の雄しべがつくのは同じだが、雄しべが合わさってモグラの手(前足)のようになっている。おそらくこの中に葯があるのだと思うが、内側に反り返っているので、確認できない。

ネットで調べると、次で花の構造が掲載されていた。
●木のメモ帳/続・樹の散歩道/二人静の果実に群がるアリの謎  
センリョウとヒトリシズカの花についても次で解明されている。
●木のメモ帳/続・樹の散歩道/平凡社の「日本の野生植物(木本)」にセンリョウが掲載されていない理由  
毎度のことながら、『木のメモ帳』はさすがの観察である。敬服するとともに、ちょっと悔しい思いが…

センリョウ科のセンリョウは、またちょっと違ったおもしろい形をしているようなので、実物を見たくなった。
近所の寺にセンリョウがあるので行ってみたが、花はまだであった。
7月ころに咲くそうなので、開花を待とう。


余談ですが…
二人のヒトリシズカ
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六人のフタリシズカ
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2022年5月21日、報告:自然観察大学 事務局O




# by sizenkansatu | 2022-05-21 07:42 | 植物 | Comments(4)

タンポポの攻防 -苗木城のトウカイタンポポ-

苗木城跡は岐阜県中津川市、木曽川沿いの切り立った岩山の上にそびえる山城の跡だ。
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巨大な自然石を利用しながら石垣を積んでいる。
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天守のあったところには木組みで展望台が設置されている。
天守展望台からは360度の素晴らしい眺め…
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眼下には雄大な木曽川、遠くに霞んで見えるのは恵那山だ。

別の尾根から天守台を見たのがこれ。(↓)
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樹林帯の上に岩盤が突き出ていて、その上に石垣を組んでいることがわかる。
いにしえの石工たちの仕事に驚嘆させられる。

城域の全容はこのガイドマップが理解しやすい。
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城内のタンポポ

さて、タンポポである。
城跡で在来のタンポポとセイヨウタンポポの攻防を観るのが、私の観察テーマの一つなのである。
過去には彦根城、姫路城で、濠を境にしてカンサイタンポポがセイヨウタンポポを防衛しているところを観た。真田氏ゆかりの上田城、砥石城などでも観察した。
今回は、ここ苗木城でタンポポの攻防を観察しようというのである。
しかし、天守台付近は管理が行き届いていて、雑草もきれいに除去されている。観察にはちょっと悲しい状況だ。
あれこれ探していると、天守台を降りたところの二の丸跡が雑草地になっていた。
さっそくタンポポを確認してみると…
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たぶんトウカイタンポポでよいと思う。
タンポポの識別には総苞(頭状花全体を包むお椀形の緑色の部分)がポイントになる。
トウカイタンポポは総苞外片(二重になっている総苞の外側の列)が長いのが識別のポイントで、総苞内片の1/2以上なのだそうだが、上の写真はそれを満たしているだろうか。
近縁のカントウタンポポは1/2程度とされている。微妙だが、いずれにしても在来のタンポポであることは間違いない。

別のタンポポを観てみよう。
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こちらの総苞外片は明らかに1/2以上なので、トウカイタンポポで間違いないだろう。

さしものセイヨウタンポポもここまで来ることはできなかったのだと考えられる。
堅固な山城が、在来のトウカイタンポポを守っているのだ。


城外のタンポポ

一方、ふもとのタンポポはどうか。
登り口付近の史料館近くのタンポポを観た。
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↑ これは明らかなセイヨウタンポポ。総苞外片が大きく反りかえる。
近ごろは雑種のタンポポが増えて、はっきりセイヨウタンポポと言えるものが少なくなった。これはむしろ貴重なセイヨウタンポポだ。

史料館や駐車場付近では雑種と思われるタンポポが数多く観察できた。
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セイヨウタンポポっぽいものから在来のタンポポに近いものまで、いろいろなタンポポが混在している。
下界では今まさに在来種と外来種がせめぎ合っているところなのかもしれない。

そんな中で、苗木城内で在来のトウカイタンポポが籠城しているのが頼もしい。
これから人の往来が激しくなるとともに外来種の圧力が強まると思うが、引き続き頑張っていただきたいものである。

苗木城跡では、地域のボランティアと思われる方々の活躍が目立った。
ふもとの駐車場をはじめ、要所ごとにスタッフがいてくれて、愛想よく案内してくれた。苗木城跡が地元で大切にされていることがうかがえる、気持ちのよいものであった。
その熱心さでトウカイタンポポの応援をしていただけると、もっとよいと思う。

余談だが、メインの登城ルートに危ない植物があった。
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ツタウルシ。
ルート脇に枝を広げた古木の幹を伝って、通行人の頭上に迫っていた。
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美しい緑と、まもなく咲かせる可愛い花に、つい手を触れる人がいなければよいが…
聞くところによるとウルシのなかまでも最強クラスの毒なのだとか。
要注意の看板か何かを掲示してもらえるとよい。


参考:シナノタンポポ

苗木城跡でトウカイタンポポを観た翌日、長野県でシナノタンポポを観た。
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シナノタンポポは総苞ががっちりして、花茎が毛深い。素朴で質実剛健な感じ。

じつは当ブログではこれまで、シナノタンポポをエゾタンポポとしていた。
過去にエゾタンポポとされていたものの一部が、シナノタンポポとして別種になったのだという。しかも、分類系統としてはカントウタンポポに近いという。ややこしいことである。

この記事で登場したタンポポ類をまとめておこう(異なる考え方もある)。
① シナノタンポポ:Taraxacum platycarpum subsp. hondoence
② カントウタンポポ:T. platycarpum var. platycarpum
③ トウカイタンポポ:T. platycarpum var. longeappendiculatum
④ エゾタンポポ:T. venustum
⑤ セイヨウタンポポ:T. officinale
①~③は広い意味では同種で、亜種(subsp.)または変種(var.)という近い関係ということになる。
シナノタンポポはこれまで④のエゾタンポポとされていたというのだから本当にややこしい。

2022年5月14日、報告:自然観察大学 事務局O





# by sizenkansatu | 2022-05-14 22:58 | フィールド | Comments(4)

烏川渓谷緑地

連休中の5月2日に安曇野市の長野県烏川渓谷緑地を訪れた。
人目をはばからずに遠出ができるのは、やはりうれしい。
※ 植物名の訂正があります(2022年5月12日)
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ここは、蝶ケ岳や常念岳を水源とする烏川に沿った自然豊かな公園である。
写真の奥には蝶ケ岳が見えるのだが、この日は残念ながら霞んで写らない。
オオルリの飛来地として知られるだけに、画面中央の広場の周りにはカメラマンが潜んでいて、みなオオルリを狙っている。
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すばらしい景観に心がなごむ。
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こちらの支流ではカワガラスが岩の上で獲物を狙っていた。
手持ちにマクロレンズしかないので、残念ながら撮ることができない。
ここではヒメギフチョウ(と思う)が目の前を横切ったのだが、やはり撮ることはできなかった。

さて、烏川渓谷緑地で観察できた植物をピックアップして紹介させていただく。

ヤマナラシ
スタートしてすぐに目についたのがヤマナラシ。
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葉が風で揺れて音を立てるので“山鳴らし”という。
壮大な名前の木であるが、私の住む千葉県あたりではなかなかお目にかかれない。この木の周りにはヤマナラシの若木が並んでいた。
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話をうかがうと、これは根から不定芽を出して増えているのだそうである。

イタヤカエデ
こちらではイタヤカエデのみごとな木。
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この日はちょうど花の時期であった。
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イタヤカエデの花の形はあまりカエデらしくない。
一つの花序に雄花と両性花があるのだそうだが、どれも雄花に観えた。

チャルメルソウ(コチャルメルソウ)
渓流沿いの湿ったところに見慣れぬ植物が…
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初めて観た植物だったが、後日調べるとチャルメルソウのなかまということがわかった。
花がまたおもしろい形をしている。
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少し前のテレビのアンテナのような形をしているのが花弁。
広い花托の中央にごく短い雌しべがあり、その外側には葯を落とした短い雄しべが5個。
チャルメルソウのなかまは日本に10種以上あるそうだが、長野県であることと、この雄しべのつき方からコチャルメルソウとさせていただいた。
なお、チャルメルの名前はラッパの形をした果実からの命名だそうで、屋台ラーメンのチャルメラと同じである。
参考:HiroKen花さんぽ/野山に自然に咲く花のページ/コチャルメルソウ  

ナツトウダイ
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トウダイグサのなかまはどれもややこしい花をつけるが、ナツトウダイはとりわけややこしそうだ。

クリンユキフデ ハルトラノオ
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春に花を咲かせるのは、タデ科では珍しいのでは?
ハルタデだってもう少し遅いと思う。

※ クリンユキフデではないかとOGさんからご指摘をいただきました。ありがとうございました。

ネコノメソウ
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散策路沿いにびっしりと群落をつくっていた。

ヒトリシズカ
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そこかしこにヒトリシズカの群落が観られた。
烏川渓谷緑地_d0163696_22033194.jpg
これも不思議な花を持つが、ヒトリシズカについては後日改めて詳しく報告したい。


烏川渓谷緑地は素晴らしい管理をされていて、豊かな自然を堪能させてくれる。
じつはここの管理スタッフの一人は、自然観察大学の観察会や講習会に熱心に参加いただいているOGさんなのである(おじいさんではありません)。
管理事務所に併設されたブースでは、OGさんたちが工夫を凝らしたおもしろい展示がある。
チャンスがあったら立ち寄りいただくことをお勧めする。

長野県烏川渓谷緑地 公式サイト  

烏川渓谷緑地には水辺エリアと森林エリアの二つに分かれていて、今回訪れたのは水辺エリアだけであった。
続けて森林エリアを観察させていただくつもりだったのだが、道順を勘違いして、さんざん迷ったあげくに断念した。
次回はぜひ二つのエリアを観察させていただきたい。(事前のチェックの悪さを反省)

おまけ
烏川渓谷緑地_d0163696_22034473.jpg
公園の入り口付近の蕎麦屋さんで遅い昼食をいただいた。
季節限定、山菜天せいろ。大盛はせいろ2段重ね。
タラノメ、コシアブラ、ヤマウドの山菜は店の裏に生えているものらしく、採れたて新鮮そのもの。
(写真は箸をつけてしまったものです。すみません)

2022年5月9日、報告:自然観察大学 事務局O





# by sizenkansatu | 2022-05-09 22:19 | フィールド | Comments(6)

カエデの花の観察

4月半ばのイロハモミジ。
カエデの花の観察_d0163696_05575543.jpg
カエデは、春の新緑もまた好い。

小さくて目立たないが、この時期は開花のときでもある。
上の写真の花序の部分を拡大してみる。
カエデの花の観察_d0163696_05580265.jpg
下向きに3つの雄花が開いていて、右向きに両性花が開花している。
カエデ類には、このように一つの花序に雄花と両性花が混じってつくものが多い。

4月半ばのこの時点では、まだ咲きはじめの感じで、半数はまだまだつぼみだ。

さて、雄花を下から観る。
カエデの花の観察_d0163696_05581555.jpg
突き出した雄しべが8本。
濃紅色のしっかりしたがくが5個。
淡色の花弁はおまけのようなたよりない感じだ。
雌しべは無く、いさぎのよい雄花だ。

つづいて両性花。
カエデの花の観察_d0163696_05582267.jpg
がくと花弁は雄花と同じような形。
雌しべが突き出て、先端が二つに分かれる。
子房も発達していて、すでに果実(翼果)の原型のような形をしている。
しかし、立派な雌しべに対して雄しべはごく小さい。まだ花粉を出してはいないようだが、はたしてこの雄しべは、ちゃんと機能するのだろうか。

気になったので少し間をおいて、4月下旬に観察した。
すでに花を終えたイロハモミジが多かったが、まだ開花中の木もあった。
カエデの花の観察_d0163696_05583490.jpg
両性花(画面上)の雌しべは柱頭がしぼみ、子房は大きくなって、すでに果実と言ってよい感じ。両側の翼が張り出している。
それにくらべて雄しべは未熟なままで、花粉を出す気配は感じられない。
これで両性花と言えるのだろうか?

一方、雄花のほうはまだ新鮮なものも見られる。1カットめの花序に見られたつぼみも雄花のようであった。
どうやら雄花は早く開くものから遅いものまで、時間差をおいてだらだらと開花するらしい。

こちらは別の両性花。(↓、画面左端)
カエデの花の観察_d0163696_05584217.jpg
雌しべはさきほどの両性花と同じような状態だが、雄しべが無い。
すでに落ちてしまったのか?
写真には引っかかったような雄しべが一つだけあるが、これはこの両性花のものか、あるいは他から落ちてきたものかもしれない。

この日観察した両性花は、このように雄しべの無いものが多かった。
はたして両性花の雄しべは早く落ちるものなのか?
両性花の雄しべは花粉を出して雄としての機能を果たしているのか?
はじめから雄しべの無い両性花(=雄花)があるのか?
疑問は解決できないまま、また来年の課題となってしまった。

2022年5月5日、報告:自然観察大学 事務局O




# by sizenkansatu | 2022-05-05 06:04 | 植物 | Comments(2)

ヒノキとサワラを見分ける その2

本日2度目の投稿となります。その1はこちら  

ヒノキとサワラを見分ける裏技?

もう一つ見分ける方法を紹介しよう。
ヒノキやサワラを光にかざすと、個々の葉に明るい点がある。
これは樹脂嚢(樹脂道)というものだそうで、ヒノキ科の中でもスギなどを除く旧ヒノキ科に共通した特徴だそうだ。
この樹脂嚢の形で見分けることができるのだ。
慣れないと見えにくいが、コツは逆光を当てながら、背景は暗い場所にセットすることだ。空にかざすのは意外に見えにくい。

さて写真を紹介しよう。
ヒノキとサワラを見分ける その2_d0163696_22353548.jpg
上(↑)がヒノキで、下(↓)がサワラ。
ヒノキとサワラを見分ける その2_d0163696_22360849.jpg
それぞれをトリミングして拡大してみる。
ヒノキとサワラを見分ける その2_d0163696_22361734.jpg
ヒノキ(↑)の樹脂嚢は小さく、2タイプの葉の両方で確認できる。
サワラ(↓)の樹脂嚢は平たく小さい葉では大きくはっきりしていて、レンズ形。
ヒノキとサワラを見分ける その2_d0163696_22362660.jpg
大きな葉では樹脂嚢が見えないが、90度回転して横からだと見えるのかもしれない。

こうして見分けるのは、裏技というか、たぶんどこにも記されてない方法で、確立されたものではない。

じつは、明点(樹脂嚢)があることを教えていただいたのは樹木観察の大家である八田洋章先生だった。
しかし、八田先生ご自身も明点に格別の注目をしていたわけではなく、種の識別ポイントになるかどうかは、さらに観察が必要というご意見であった。

そのあたりをご承知いただき、みなさんにも身近で観察・確認いただけるとありがたい。
私自身、数多く観察したわけではないので、問題があったときはご一報いただきたい。


まとめ

【気孔帯の違い】
ヒノキ:鱗状葉のすき間にあって、Y字形に見える。
サワラ:主に葉面にあって、H字あるいはX字形に見えることが多いが、例外もある。
【葉の形の違い】
ヒノキ:葉の先端は丸味がある。大小の2タイプの葉が交互について、大きさの違いははっきりしている。
サワラ:葉の先端は尖る。大小の2タイプの葉が交互につくが、大きさの違いははっきりしない。
【樹脂嚢の違い】
ヒノキ:個々の鱗状葉に樹脂嚢が一つずつある。小さくてわかりにくい。
サワラ:平たい鱗状葉には、レンズ型の大きな樹脂嚢がある。


おまけにアスナロの葉

ヒノキとサワラとくると、アスナロを無視するわけにはいかない。
あまり似ているとは言えないが、念のために紹介しておこう。

まずは裏面の気孔帯…
ヒノキとサワラを見分ける その2_d0163696_22364497.jpg
葉の境界ではなく、明らかに葉面にある。
何より、ヒノキにもサワラにもまったく似ていない。
ついでに言うと、2パターンの鱗片葉は一か所からまとまってついているようにも観える。

次はアスナロの樹脂嚢。(写真は小幡和男先生の撮影)
ヒノキとサワラを見分ける その2_d0163696_22365234.jpg
平たい鱗状葉には細長い樹脂嚢がはっきりと観える。
回り込む角面の葉では樹脂嚢が観えたり見えなかったり。


余談ですが…

ヒノキやサワラを見分けるとき“葉の裏の気孔帯”という表現をしてしまいがちだ。
しかしよく考えていただきたい。鱗状葉は枝を覆うようについているので、葉の裏は外見で見えるはずがないのだ。
“葉の裏の気孔帯”ではなく、“枝の裏面(陽の当たらない面)の気孔帯”というのが正しい。
みなさん気をつけましょう。

2022年4月26日、報告:自然観察大学 事務局O




# by sizenkansatu | 2022-04-26 22:39 | 植物 | Comments(8)

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