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自然観察大学ブログ

イシノミ -昆虫の進化を考える-

旅先でイシノミに会った。はじめて会う虫だ。
イシノミ -昆虫の進化を考える-_d0163696_19155782.jpg
イシノミは 石蚤 だろう。原始的な昆虫の仲間で、石の上にいて藻類などを食べるという。
うぅむ…しぶいっ。
なんとなくシミに似ているが、イシノミはイシノミ目で、シミはシミ目。

持ち帰ったイシノミを撮影するのに、静かにしてもらおうと冷蔵庫で冷やしたが、なかなかじっとしてくれない。低温に強いらしい。
そのうえ、名前のとおりよく跳ねる。脚は細くて、これでどうやって跳ねるのか? 
不思議に思って観ていると、なんと、腹部を叩きつけてその反動で跳ねた
危険を感じた時だけ跳ぶのだろうが、消耗の激しい命がけのジャンプだ。

イシノミの顔…
イシノミ -昆虫の進化を考える-_d0163696_19163783.jpg
体を覆う鱗片と、複眼があるのは昆虫の証だが、その下にある触角は腕のように自由に動く。(手旗信号のよう)

さらにその下にある一対は脚のように見えるが、実は小顎髭(小腮髭)という器官。

横から観ると小顎髭が3対の脚と別にあるということがよくわかる。
イシノミ -昆虫の進化を考える-_d0163696_19171265.jpg
脚にそっくりだが、たぶん感覚器官なのだろう。これも自在に動く。
その後方、前脚との間の短めの2対のものは唇か?

注目したいのは、脚の間に見え隠れしている短い脚のような突起だ。
上の別カットがこれ。
イシノミ -昆虫の進化を考える-_d0163696_19173990.jpg
画面中央の中脚の付け根に突起がある。
はじめの写真でも、中脚と後脚のところに、突起が観えていた。

調べてみると、これは腹脚の退化した脚基突起というもので、中・後脚の付け根のほか、すべての腹節にもあるそうだ。原始的昆虫の性質であるとともに甲殻類との類縁関係を示すものだそうである。(参考「原色昆虫大図鑑」)
なるほど、イシノミはエビに近い感じがする。
昆虫は各体節が進化して、触角や口器、脚となったとされる。
口器なのか脚なのか、我々は何かと定義付けをしたくなるのだが、そんなことは本人にとってはどうでもよいことなのだろう。


驚きの単眼!

大図鑑によると、複眼の下にある、赤茶色の横に伸びた斑紋のような、観かたによっては鼻汁のようなもの、これはなんと、単眼だそうである。
こんな単眼を持つ昆虫がいるとは驚きだ。


余談ですが…

イシノミを見つけたのは島根県の韓竈神社(からかま神社)という神社で、山中の苔生した長い石段を登ると、大きな岩の間に、やっと通り抜けられるくらいの隙間がある。
イシノミ -昆虫の進化を考える-_d0163696_19182759.jpg
これを何とかすり抜けて、たどり着くのが、素戔嗚尊(すさのおのみこと)を祀った本殿。
本殿といっても、ごく小さな祠(ほこら)なのだが、知る人ぞ知るパワースポットなのだとか…

※ 観光協会の案内    旅行会社の案内 

清い心で参拝しないと罰があたる由だが、もちろん私は大丈夫であった。(ホントはちょっと不安だったりして)
韓竈の〝竈〟は、たたら製鉄の竈(かまど)のようで、この神社の奥地には、太古の人々による野たたらの跡が発見されたそうだ。

じつは、石段に疲労困憊した私が、岩にお腹が引っかかった状態で休んでいたところに、目の前を通りがかったのがイシノミであった。
観たいと思っていたイシノミに会えたのは、素戔嗚尊のご利益なのだろう。

次回はシミの予定。

2013年8月26日、報告:自然観察大学 事務局O



# by sizenkansatu | 2013-08-26 19:29 | 昆虫など | Comments(0)

猛暑に耐えるクズ

文末に追記があります(9月15日)

クズは、暑い日には葉を閉じて日照を避けることが知られている。
今年の夏は彼らにとっても〝これまでに経験したことのない猛暑〟なのではないだろうか。

葉を閉じたクズ。
猛暑に耐えるクズ_d0163696_6415783.jpg
3枚の小葉をぴったりと閉じている。
このとき8月16日の朝9時30分。もちろん気温は30度を超えている。
彼らは日陰に逃れることもできないし、むろんエアコンなど知らない。猛暑を乗りきるためのせいいっぱいの行動なのだろう。

念のため、クズの通常の状態はこれ。
猛暑に耐えるクズ_d0163696_6421950.jpg
一枚目の写真と同じときの写真だが、日陰ではちゃんと葉を開いていた。
3枚ワンセットの3出複葉となる。

クズは日照がつらくなってから葉を閉じるわけだが、それは何時ころなのだろう。
別の日に、すこしだけ早起きして観察したのだが、7時すぎにはもう閉じはじめていた。
猛暑に耐えるクズ_d0163696_6424495.jpg
真ん中の小葉が、ぐいっと上に反っている。
このときの気温は、ちょうど30度くらいだったと思う。
猛暑に耐えるクズ_d0163696_6432244.jpg
別の葉では、もうほとんど閉じる体勢だ。

それにしても、どんなしくみなのだろう。
バイメタルのような構造になっているのだろうか?
ネムノキやカタバミなどの就眠行動と同じなのだろうか?
…S子さんのご意見をうかがいたいものだ。

こちらは、閉じた葉の間から顔をのぞかせたクズの花。
猛暑に耐えるクズ_d0163696_6435296.jpg
クズの花は、姿も匂いも派手だが、なぜか恥ずかしそうに葉陰にあることが多い。
訪花昆虫のために日よけになっているのかと考えていたのだが、これではイザというときの役に立たない。
ふつう、植物の花(虫媒花)は一番目立つところで昆虫を誘うものだと思うが、これも謎である。

…………………………………………………………………

9月15日追記
S子さんが葉を閉じるしくみを投稿してくれました。とても分かりやすい、ていねいな図入りです。ぜひ見てください。 
…………………………………………………………………

2013年8月21日、報告:自然観察大学 事務局O



# by sizenkansatu | 2013-08-22 06:44 | 植物 | Comments(0)

カメムシの夏-その4 マルカメムシの卵

カメムシの卵は幾何学的でフォトジェニックなものが多い。
カメムシの夏-その4 マルカメムシの卵_d0163696_10141236.jpg
マルカメムシの卵も例外ではない。(クリックして拡大をぜひどうぞ)(拡大できなかったみたいなので修正しました。今度はOK。8.15)
王冠のようなフタは、尻を震わせた造形なのか?
それともミルククラウンのように弾けるように産み出すのか?
カメムシの夏-その4 マルカメムシの卵_d0163696_18381049.jpg
今の時期、クズがあるところでは必ずお目にかかるマルカメムシだが、どうやってこんな卵を産むのだろう。

ところで、
はじめの卵塊の写真で、すき間に観えるエンジ色のものに注目いただきたい。
失礼して卵塊を剥がして裏返してみた…
カメムシの夏-その4 マルカメムシの卵_d0163696_18383593.jpg
これは産卵と同時に母カメムシが用意したもので、腸内共生細菌のカプセルなのだという。
幼虫はふ化後すぐにこのカプセルを吸って、母親から受け継いだ細菌と共生することになるのだ。

応用動物昆虫学会『むしこら』2007年8月2日【マルカメムシの共生細菌カプセル】 ⇒ 
※ カプセルを吸う、ふ化幼虫の写真は必見!

この記事によると、共生細菌を獲得できなかった個体はその後順調に成長することが難しくなるそうだ。

この話は、2012年の自然観察大学観察会でも話題になった。
私も、ふ化幼虫が細菌を吸うシーンを観ようと飼育を試みたのだが、あえなく失敗。


余談ですが…

カメムシに関する新刊が、今、水面下で動いている。
仮称だが「カメムシ博士入門」という本で、カメムシの世界を一冊にまとめようという観察の手引き書。
日本原色カメムシ図鑑 第3巻」()の石川忠先生、高井幹夫先生、安永智秀先生らによる執筆で、順調に行けば2014年発行の由。
われわれシロウトにもわかりやすく〝カメムシの形とくらし〟を紹介してくれる画期的な内容と予想される。おおいに期待したい。

2013年8月14日、報告:自然観察大学 事務局O



# by sizenkansatu | 2013-08-14 18:43 | 昆虫など | Comments(2)

カメムシの夏-その3 誕生したヨコヅナサシガメ

7月末に、江戸川べりのエノキの樹幹でヨコヅナサシガメがふ化していた。
カメムシの夏-その3 誕生したヨコヅナサシガメ_d0163696_1835847.jpg
すでに2齢幼虫なのだろうか。
すぐ近くに卵塊(抜け殻)があって、乳離れ(?)できない幼虫もいた。
カメムシの夏-その3 誕生したヨコヅナサシガメ_d0163696_18354682.jpg
卵との大きさの比較と、脱皮殻もあることから、2齢以上であると思われる。

日本原色カメムシ図鑑」 を見るとサシガメの卵はカメムシの中でもとくにフォトジェニックなのだが、ヨコヅナサシガメは膜を貼り付けた一味違った卵塊となる。
おちゃたてむしさんのブログ記事を拝見して知ったことだ。 ( ぜひご覧いただきたい 

この記事を見て、私もぜひ産卵シーン観たいと探したのだが、いつものアカメガシワではみつからなかった。それなのに、すぐ近くのエノキに産卵されていたとは! 残念。
カメムシの夏-その3 誕生したヨコヅナサシガメ_d0163696_18404883.jpg
これは別の卵塊。
脱皮殻のほかに羽アリのようなものもへばりついているが、これは幼虫の食べかすだろうか。

一度卵塊の姿を知ると、あちこちでこの状態が確認できた。
来年の産卵時期をたのしみに待ちたい。

2013年8月13日、報告:自然観察大学 事務局O



# by sizenkansatu | 2013-08-13 18:42 | 昆虫など | Comments(0)

カメムシの夏-その2 カメムシのつま先

前回の口器( )に続いて、今回は脚の話。
カメムシの夏-その2 カメムシのつま先_d0163696_18303928.jpg
キバラヘリカメムシの成虫。暑さでバテバテのごようす。
この機会に、以前から気になっていたつま先を見せていただいた。
カメムシの夏-その2 カメムシのつま先_d0163696_18312265.jpg
爪に沿って、なにやら付属物がある。
褥盤(じょくばん、褥版とも)といって、カスミカメムシなどでは、種の同定の決め手になるグループもあるようだ。
カメムシの褥盤は小さくて観察しにくい。そのうえ内部に体液が充填されているらしく、標本ではしぼんでしまう。
カメムシの夏-その2 カメムシのつま先_d0163696_18315472.jpg
半球形の毬のようなものが、爪の付け根から出た柄の先についている。
なんて精密な!
平滑な面では、この褥盤が威力を発揮するのだろうか。
ガラス面のような場所にキバラヘリカメムシが遭遇するとは思えないが…

以前見たアカスジキンカメムシにも似たような褥盤があって、たしか球形だったように思う。
口器と同じように、褥盤にもいくつものタイプがあるのだろうか?
そしてそれらは生活パターンと関係があるのだろうか?
うぅ~む。また宿題が増えてしまった。


脚と生活

ほかの昆虫の脚も見てみよう。
カメムシの夏-その2 カメムシのつま先_d0163696_18325489.jpg

とげとげの跗節(ふせつ)に、長大な爪、立派な褥盤…
最強のプレデターともいわれるムシヒキアブの仲間の、アオメアブの脚だ。

※ 参考:
アオメアブのこと 
ムシヒキアブのこと 


次はこれ…
カメムシの夏-その2 カメムシのつま先_d0163696_18352058.jpg
跗節には肉球状の構造が並ぶ。
爪の間の巨大な肉球は、爪間盤(そうかんばん、爪間板とも)という。
正解はツチイナゴの前脚。
ジャンプするときに滑らないための肉球と考えられる。

昆虫の脚はくらしぶり密接に関係している。

2013年8月11日、報告:自然観察大学 事務局O



# by sizenkansatu | 2013-08-11 18:36 | 昆虫など | Comments(0)

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