自然観察大学ブログ

ワレモコウの花の真実

ワレモコウは切り花として花屋さんで扱われている。
家人もワレモコウファンの一人で、この季節になると必ず買い求めてくる。

ワレモコウは漢字で“吾亦紅”などと表されるので、赤いのが花だとばかり思っていたら、どうやらそうではないらしい。

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これは8月半ばに長野県長和町(旧和田村)で見たワレモコウ。
秋の里山ではよく見かける、おなじみの姿である。

上の写真で、一部分が白っぽくなった花穂がある。
よく観てみよう。

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白い部分は開花中で、これこそが花である。
上部の赤いのはすでに終わった花のようだ。
下の部分は蕾である。
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こちらの花穂は若くて、まだ咲きはじめたところ。
花序の先端から順に下に向かって咲いていくのだろう。


紅い花のワレモコウもある?

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これは2012年に八方尾根の稜線で観たワレモコウ。
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どう見ても開花中であろう。
これが紅色だったので “ワレモコウの花は紅い” と思い込んでいたのだ。
それとも高山性の別種、あるいは単なる変異なのだろうか?

 ※ 八方尾根に行ってきました http://sizenkan.exblog.jp/16634796/ 

いずれにしても、本当のワレモコウの花は白いことが判った。
いつも花屋の店頭で見られるのは、すでに花の終わったもの。いわばドライフラワーのような状態なのだろう。
今回、ワレモコウの本当の花を観て、目からウロコであった。



お詫び

前回のホトケノザの記事以来、なんと一か月以上たってしまった。
このところ写真の整理をがんばって、やっと季節に追いつくことができた。(それでも月遅れ!)
次回予告としてカキドオシの花をあげていたが、いずれ書かせていただく。

2016年9月8日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2016-09-08 20:33 | 植物 | Comments(0)

ホトケノザの花 -シソ科の花1

まったく季節外れで申し訳ないが、ホトケノザの花の話。

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シソ科の花は唇に似ているというので唇型花(しんけいか)と呼ばれる。
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たしかに下唇を突き出した形と言えなくはないが…
やっぱりこの花は蓮華座に乗った仏さまだ。

ところで、仏さまの顔にあたるところに朱色の葯が見える。
吸蜜しようとする虫の背中に花粉をつけるためには、理想的なつくりだろう。
たいしたものである。

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フード状の部分をはがすと雄しべが出てきた。
雄しべは合着して、全体がシャワーハンドルのようになっている。
この形状で、訪花昆虫の背中に確実に花粉をつける。

しかし、雌しべはどこにあるのか?
合着した雄しべを、ピンセットで突っついてはがしてみると…

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中から雌しべが現れた。
4本の雄しべの真ん中にあるのが雌しべである。
先端が二またになった、ヘビの舌のような柱頭だ。
この形状だと、同花受粉の可能性はかなり高いと思うが、何かそれを避けるための工夫があるのだろうか?

もともと、ホトケノザは閉鎖花で繁殖するくらいだから、自家受粉には抵抗がないのだろう。
しかしそうなると、昆虫の背中に花粉をつけるための理想的な構造は、何の目的なのだろうか。
う~む。むずかしい。

ホトケノザの花については、『なかなかの植物ルーム/ホトケノザの閉鎖花』 に詳しく紹介されている。



余談ですが…

閉鎖花と開放花を見分けるのはなかなか難しい。
開花した花を観れば当然開放花であることは分かるのだが、閉鎖花だと思っていたものが、開放花の若い蕾だったという経験は何度もある。
閉鎖花のりっぱな群落を発見し、これはと思って夢中で写真を撮った。その1週間後に同じ場所に行くと、ホトケノザの花のじゅうたんのようになっていた。
このときはけっこうショックであった。

次回はカキドオシの花の予定。

2016年7月26日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2016-07-26 19:33 | 植物 | Comments(0)

ナラメリンゴフシとシギゾウムシ

文末に追記あり 2016.6.16

虫えい:ナラメリンゴフシ

5月3日、長野県でのこと。(毎度の月遅れ情報ですみません)
今回の話はちょっとややこしい話なので、ご承知おきいただきたい。

さて、5月3日、芽吹きの季節を楽しみながら山間の小道を歩いた。
その時に見つけたのがこれ。

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遠目には果実のように見えたのだが、虫えいのようだ。

普通「虫こぶ」といわれるが、専門家らしく「ちゅうえい」と呼ぼう。

周囲には同じような虫えいがたくさんあった。

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コナラの新梢の先端に、直径2cmを超える大きな球体があり、新葉はしかたなく脇から伸びている。
この時期にこんな果実があるとは思えないから、やはり虫えいだろう。
一つ失敬して中を割ってみると…
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やっぱり虫がいた。すでに複眼らしきものがあって、どうやらタマバチ類の蛹のようだ。

後日「日本原色虫えい図鑑」で調べたところ、コナラの虫えいで、ナラメリンゴフシというものらしい。
(虫えいにはちゃんと和名がある)
漢字で書くと「楢芽林檎フシ」だろう。
同書によると、古くから知られた虫えいで大きなものは直径4cmにもなるそうだ。

だとすると、この蛹はナラメリンゴタマバチということになる。
1個の虫えいの中に多数の幼虫がいて、放射状にならんでいるらしいのだが、そこまで確認できなかったのは残念だ。
ナラメリンゴタマバチは、このあと5月下旬から6月に羽化し、地中の根に産卵する由。これをナラネタマフシというそうだ。
芽に虫えいをつくるのとは別に、次世代は根に虫えいを作って生活する。その次の世代はまた冬芽に産卵し、虫えいを作るということ。
つまり芽と根に交互に虫えいづくりを繰り返すのだという。しかもそれぞれは両性世代と単性世代だそうである。
なんとややこしい!!

ところで、写真の整理をしていて気付いたのだが、2枚目の写真に蜂の成虫が映っていた。
見るからにタマバチとは異なる寄生蜂である。
おそらく中のタマバチに寄生するのだろう。植物に寄生すして虫えいをつくる蜂と、その蜂に寄生する蜂… 蜂の世界はややこしい。

調べてみると、次にナラメリンゴフシの寄生蜂が紹介されていた。
※ 神戸・明石の虫ときどきプランクトン 「ナラメリンゴフシに産卵するオナガコバチの一種」  
同種かどうかは不明だが、素晴らしい虫の素晴らしい写真をぜひご覧いただきたい。


ミヤマシギゾウムシ(?)

虫えいを撮っていると、飛び入りがあった。

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体長は4-5mmほどの小さなシギゾウムシ。
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長い口吻の先は鋭いニッパーのようになっていて、これでグリグリと果実に孔を開けて産卵する。
先端の大あごをどうやって動かすか?
動力源の筋肉はどこにあるのか?

答えは、山﨑秀雄先生が解明している。
ほとんど複眼だけの小さな頭部ではなく、筋肉は胸部にあって、口吻の中を通る長い腱で先端の大あごを動かすのだ。
このマジックハンドのような構造は、次の講演レポートに写真付きで紹介されている。
※ 自然観察大学室内講習会 「昆虫の口-形にはワケがある-」  

だが、ちょっと待て。
シギは嘴の長いシギのようだという名前だ。ゾウムシというのは鼻の長いゾウのようだということではなかったのか?
シギか、ゾウか、ややこしい名前である。

話を元に戻そう。
このシギゾウムシは、たまたまナラメリンゴフシにとまっただけなのかと思ったら、そうではないらしい。

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付け根のところに口吻を差し込もうとしている。
シギゾウムシ特有のグリグリをはじめた。
(グリグリ:刺した口吻を中心に全身で左右に回転する。ゆっくりとした反復横跳びのよう)
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奥深くまで孔を開けると、今度は反転して…
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産卵であろう。

こいつは面白い。
虫えいを果実と勘違いして産卵してしまったのだろう。
…と考えたら、さにあらず。

後日調べると、このゾウムシはナラメリンゴタマフシを狙って産卵するらしい。

※ ハンマーの虫のページ2 「ミヤマシギゾウムシ」  
※ てくてく日記 「ミヤマシギゾウムシの産卵」  


シギゾウムシの斑紋がはっきりしているのですぐにわかるだろうと、念のため種名を図鑑で確認しようと思ったが、考えが甘かった。

北隆館の原色昆虫大図鑑(第10版、昭和56年)で見ると、ミヤマシギゾウムシと並んで、ナツグミシギゾウムシというのが載っている。
よく似ていて、写真では判別できない。
ナツグミシギゾウムシの分布は本州・四国・九州だが、ミヤマシギゾウムシの分布は北海道とある。
そうなるとナツグミの方になるのか? しかしホストが違う。
う~む。悩ましい。
どなたかご存知の方は、ぜひご教示いただきたい。
ちなみに背面からの写真は…

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余談ですが…

ネットで探っているときに、面白い話を見つけた。
※ あいの飼育ブログ「ミヤマシギゾウムシのジャンプ」  
そういえば、撮影できたと思ったら、いきなりファインダーから消えたのは、この習性によるものか?


<2016.6.16追記>
シギゾウムシの種名について、恐縮しながらも森本桂先生にこの記事をお送りし、ご意見をうかがったところ、次のようなコメントをいただいた。

……………………………………………………………………………………

コナラのムシコブのシギゾウムシは下記の種です。

 Curculio koreanus (Heller)ミヤマシギゾウムシ

世界の大・中型のシギゾウの中で、ムシコブで幼虫が成育する例外的な種です。
写真は大変きれいで見事です。

シギゾウ類の大顎は、一般昆虫の大顎が左右から中央で噛み合うのに対し、大顎の外側が下方へ直角近くに移動して大顎が上下に動くだけになっており、噛み合うことは不可能です。大顎を前に伸ばした状態では、ちょうど錐の歯のようになり、これを産卵や吸汁植物の表面に当て、これを中心として体を左右に揺り動かして、吻をもみこみます。
頭部が前胸先端でよく動くように、複眼を含めて頭部は球状となり、円形器状の前胸先端の開口にはまり込んでいます。このようにして産卵孔をうがち、体を回転させて腹端から細長い産卵管を差し込んで1卵ずつ産みこみます。
クリシギゾウやツバキシギゾウのように大変長い吻をもつものでは、産卵管も長く、♀の吻長と産卵管は正の相関があります。

……………………………………………………………………………………

森本先生、ありがとうございました。

種名が判明したことだけでもたいへんにありがたいことであるが、そのうえほかにもご教示いただいた。
●虫えいで成育するという稀有な習性を持つこと!
(「ハンマーの虫のページ2」「てくてく日記」の記述は正しい)
それにしてもどうやってこの習性を身につけたのだろう? 彼らにはどんな進化の過程があったのか??
●大あごはニッパーのような機能ではなく、錐のように使う!
(写真を見て勘違いをしていた。お詫びして訂正します)
●口吻が長いシギゾウムシは同じ長さの産卵管を持つ。
(雄の口吻も長いと思うが、これは飾りにすぎないのか?)
今後、シギゾウムシを見かけたときの、観察の楽しみがぐっと拡大した。

2016年6月10日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2016-06-10 19:44 | 昆虫など | Comments(0)

江戸川べりの観察-39 エノキの花

4月なかばのこと。(毎度月遅れですみません)
江戸川べりのエノキに花が咲いた。

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小さいながら、なかなかの賑わい。
なじみのエノキだが、花をじっくりと観るのははじめてだ。

少し近づくと、雄花と雌花があるのが見える。

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雌花が枝の先のほうについて、もとのほうには雄花がつくのは植物界では当たり前のことらしい。
自家受粉を避けるにはこの位置関係が有利ということで、詳しくは次の記事をご覧いただきたい。

参考:親愛なる、そのへんの植物-10 「ヒメコウゾは雄花が下?雌花が上?」 (自然観察大学植物生態学部S子さんの投稿)

雄花はこれ。

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雄しべが4本。シンプルで飾り気がない。小さいながらもなかなかの美形だ。


雌花はこちら。

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立派な柱頭と子房。雄花と同様に、機能を追求したような虚飾を排した潔い姿だ。
しかし、雌花とはいっても、ちゃんと雄しべがあるではないか。けっこう立派で、授粉の能力もありそうだ。
これでは、せっかくの自家受粉回避システムも意味がないのでは?

ちなみに、古い牧野図鑑と寺崎図譜で確認すると、 “雌花には4本の雄しべがある”と記されている。

う~む。それって雌花ではなくて両性花ではないか?

いろんな雌花を観ると、進化した(?)雌花があった。

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この雌花は、雄しべがないではないか。
エノキ界のミュータントかもしれない。

2016年5月31日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2016-05-31 12:43 | 植物 | Comments(0)

上野公園のサクラ 2016年

2016年の東京のソメイヨシノは3月31日が満開日だったそうだ。

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まさしくその31日の上野公園。
朝の通勤途上で撮ったものだが、すでに大勢の花見客があった。
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見たところ、多くは中国など海外からの観光客で、8割から9割はそのようだった。


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やはりサクラは、背景が青空でないと困る。
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樹の老齢化が懸念されているが、今年の上野公園では剪定された跡が目立った。
一時的に見た目は寂しくなるが、今後のことを考えると剪定は正しいのだろう。
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個人的には、絵としてはやはり緑がほしくなる。
その点でヤマザクラのように新緑と花が同時に見られるのが好ましい。

2016年4月6日、報告:自然観察大学 事務局O


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# by sizenkansatu | 2016-04-06 13:09 | 植物 | Comments(0)

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