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自然観察大学ブログ

スギナの観察2024

つくしとスギナ

つくしの目立つ季節になった。
スギナの観察2024_d0163696_14190478.jpg
つくしはスギナの胞子茎。
茎の部分は食用として人気があるようで、近所の江戸川の土手では、きれいに摘み採られていることがある。

つくしの根もとを観ると、すぐ近くにスギナが芽を出していた。
スギナの観察2024_d0163696_14191577.jpg
スギナはシダ植物の一種であり、胞子で繁殖する。栄養茎と胞子茎があるのは、シダ植物の一般的な特徴である。

緑色の栄養茎がスギに似ているので “杉菜”と名付けられたそうだ。
つくしと言われるのはスギナの胞子茎で、先端の縦長のフットボール形(胞子嚢穂)の中に胞子がある。
植物の種名(和名)はスギナであるが、ふつう栄養茎のことをスギナ、胞子頸をつくしと言うので、本記事ではそのように表記したい。

つくしとスギナは地下部でつながっている。
スギナの観察2024_d0163696_14192727.jpg
ふつう、まずつくしが先に出て、少し遅れてスギナが出るのだが、これ(↑)はスギナのほうが先に出たようだ。(あるいは別の株から出ているのかもしれない)

スギナは地中の深いところでたくさんの地下茎を縦横に走らせ、毎年春になるとその節々から芽を出す。
胞子だけでなく地下茎の切れはしからも再生するため、畑地などに侵入すると厄介な雑草の代表として扱われる。


つくしの胞子を観よう

これは、胞子を散らす前のつくし。
スギナの観察2024_d0163696_14193623.jpg
胞子嚢穂を拡大しよう。
スギナの観察2024_d0163696_14195532.jpg
亀甲文様の内側を観たいので、無理やり曲げてみた。(意外に硬くて頑丈)
スギナの観察2024_d0163696_14200490.jpg
六角形のものは胞子嚢床(ほうしのうしょう)という。
その内側に並んでつく濃緑色の部分が胞子嚢で、その中に胞子が詰まっている。


次は、胞子を出しているつくしを観よう。
スギナの観察2024_d0163696_14201496.jpg
上半分はすでに胞子を出した後で、胞子嚢は白いひだ状の抜け殻になっている。
下半分の暗色の部分を拡大して観よう。
スギナの観察2024_d0163696_14202459.jpg
綿埃(わたぼこり)のようなものが無数の胞子で、よく観ると緑色の小さな粒があり、これが胞子の本体。
胞子には4本の腕(それとも脚?)があって、それが絡まって綿埃のようになっている。

この写真を撮っている間に、風で飛ばされた胞子がきらきらと光って観えたのだが、残念ながら写ってはいなかった。

だいぶ以前に撮ったスギナの胞子。
スギナの観察2024_d0163696_14203322.jpg
球体の緑色の胞子に4本の腕(脚?)がついているのがわかる。この腕を弾糸(だんし)という。

弾糸は濡れると本体に沿ってたたみ込まれる。(↓)
スギナの観察2024_d0163696_14204132.jpg
おそらく、はじめ胞子嚢の中にはこのような状態で収納されていたのだろう。
それが成熟し、乾燥したときに胞子嚢からあふれ出て、綿埃のように盛り上がってくるものと考えられる。

そして、風に乗って移動した胞子は、湿ったところに着地して弾糸をたたみ、そこで発芽するという仕組みだろう。

乾燥すると再び弾糸が伸びる。(↓)
スギナの観察2024_d0163696_14204954.jpg
これなら、万一着地した後に乾燥したときにも、再び風に乗って移動できるだろう。
上手くできているものだ。


さて今回の観察で一つ気づいたことがあった。
これまで“弾糸”という呼称から、胞子は弾けるように飛びだすものと思っていた。
しかし、実際には弾糸を伸ばしてもこもこと盛り上がり、風を待って飛散するのであった。
私の勝手な思い込みであった。


胞子を飛ばす

弾糸のメカニズムがわかったところで、胞子の飛散を再現してみよう。
スギナの観察2024_d0163696_14205737.jpg
充分に熟した胞子嚢穂にレンズを向けて、片手でブロアーを使って風を送った。
カメラを片手で構えながらので、ちょっと難しい。
タイミングを合わせてシャッターを切ると…
スギナの観察2024_d0163696_14210635.jpg
なんとかうまくいったが、この画像(↑)でわかるだろうか。いま一つはっきりしない。

別のつくしを探して何度かチャレンジしたが、なかなかタイミングが合わない。
スギナの観察2024_d0163696_14211420.jpg
ようやく撮れたのがこれ。(↑↓)
スギナの観察2024_d0163696_14212129.jpg
風が強すぎてしまった。
やりすぎを反省。m(_ _)m

2024年3月26日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

スギナの観察2024_d0163696_20394099.jpg
オオイヌノフグリ ファンクラブ 会員募集中

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# by sizenkansatu | 2024-03-26 14:32 | 植物 | Comments(2)

オオイヌノフグリ ファンクラブを結成しました

<2024年2月26日修正&追記>

オオイヌノフグリのファンクラブを設立したました。
オオイヌノフグリ ファンクラブを結成しました_d0163696_20394099.jpg

目 的:オオイヌノフグリを愛でる者同士の連帯をはかる
入会資格:オオイヌノフグリを愛でる者であること
活 動:とりたてて明確のものはありません。必要に応じてこれから決めたいと思います

その他くわしくは次の規約をご覧ください(クリックで拡大)
オオイヌノフグリ ファンクラブを結成しました_d0163696_12551661.png
オオイヌノフグリ ファンクラブを結成しました_d0163696_20400736.jpg
会員募集中
みなさまの入会をお待ちしております。入会は随時受け付けます。

入会希望の方へ:
この記事のコメント欄に記載して申し出てください。

現在の会員:
3/26現在の会員は、Yamasemi21 さん、wabisuke-miyakeさんと私の三人です。(以下。クリックで拡大)
オオイヌノフグリ ファンクラブを結成しました_d0163696_12552617.png
オオイヌノフグリ ファンクラブを結成しました_d0163696_20403029.jpg
ご参考:
当ブログでのオオイヌノフグリに関する主な記事を上げさせていただきます。(新しい順)
よろしければ、お時間のあるときに見てやってください。

2024年3月24日、報告:自然観察大学 事務局 大野透
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# by sizenkansatu | 2024-03-24 21:03 | その他 | Comments(10)

春の雑草2024

今の時期の雑草はじつに好ましい。
待っていた春が実感できるのは、雑草があってこそ、ではないだろうか。

ここ数日に撮った雑草をならべてみたい。


オオイヌノフグリとそのなかま
春の雑草2024_d0163696_22522270.jpg
オオイヌノフグリは私の一番のお気に入りだ。
春の雑草2024_d0163696_22523241.jpg
オオイヌノフグリは今の時期がいちばん美しいと思う。

次はコゴメイヌノフグリ。
春の雑草2024_d0163696_22524039.jpg
オオイヌノフグリによく似ているが、花が白く、やや小さい。
どこにでもあるわけではないが、あるところにはこれでもかというほど生えている。

フラサバソウ。
春の雑草2024_d0163696_22530797.jpg
写真ではオオイヌノフグリに似ているかもしれないが、実物の花はずっと小さい。

オオイヌノフグリのなかまについては昨年まとめたので、よろしければそちらをご覧いただきたい。


キュウリグサ
春の雑草2024_d0163696_22531944.jpg
ここのキュウリグサは成長が遅く、まだ小さい。
そのため写真に撮りやすいのがありがたい。
春の雑草2024_d0163696_22533593.jpg
写真の花の先に渦巻状にあるのがつぼみで、これが伸び出して次々に花を咲かせる。
長さは数十cmになり、そうなると写真にしにくくなる。


カラスノエンドウ
春の雑草2024_d0163696_22535857.jpg
今の時期のカラスノエンドウは奥ゆかしく、繁茂しすぎることもない。


ツメクサ
春の雑草2024_d0163696_22540943.jpg
歩道のブロックの継ぎ目で、踏まれながらがんばっている。
吹き溜まりのようなところで、犬の毛などいろんなものが写り込んでしまうのだが…
春の雑草2024_d0163696_22541700.jpg
よく観ると花は清楚で整った形だ。


ホトケノザ
春の雑草2024_d0163696_22542458.jpg
おなじみのホトケノザは“仏の座”で、花が両手を合わせた仏様、葉の形をその蓮華座に例えたものだという。


ヒメオドリコソウ
春の雑草2024_d0163696_22543725.jpg
春の雑草2024_d0163696_22544585.jpg
花はホトケノザによく似たシソ科の唇形花だが、葉は行儀よく並んでいる。


ヒメウズ
春の雑草2024_d0163696_22545450.jpg
ヒメウズは雑草というより野草だが、特別出演をお願いした。
ヒメウズの魅力は以前に何度か報告しているので、そちらをご覧いただきたい。

2024年3月19日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

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第41回講習会レポート
① きのこ観察入門 -四季のきのこの観察-
② 鳥たちの狩り
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# by sizenkansatu | 2024-03-19 23:05 | 植物 | Comments(16)

スギの開花 2024

3月10日、11日の二日間にスギの開花を観た。
スギの開花 2024_d0163696_21302571.jpg

2月14日では、まだつぼみだった。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21303379.jpg
このときはまだ鱗片が硬く閉じていた。
これがその後どうなるか、いつ開花するかを観たかったのだ。

私の身のまわりではスギが開花していないにもかかわらず、世の中では花粉症が問題になっていることに違和感があった。そのことは以前記事にさせていただいた。
それ以来ずっと気にしていたスギが、やっと開花したのでご報告したい。


スギの雄花の開花

雄花の開花を観たのは3月10日だった。
スギの開花 2024_d0163696_21304443.jpg
この時点で花粉を出していたのは一部の雄花だけだった。
ただ、ほとんどは花粉が膨らんでいて、前掲の2/14のものとくらべると、その違いがはっきりとわかる。

拡大して観よう。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21305974.jpg
花粉の入った袋がパンパンに膨らんで、鱗片はすき間が開いている。

別の花(↓)ではすでに花粉を出して抜けがらになったところもある。
スギの開花 2024_d0163696_21310748.jpg

次の日(3月11日)、別のスギの木の雄花を観た。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21311522.jpg
鱗片は完全に開いている。
この雄花では先端のところに花粉が残っているだけだ。

全体はこんな感じ。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21312493.jpg
すでにほとんどの花粉を飛ばした後のようで、開いた鱗片の中はほとんどからっぽだ。

3/10,11に観たスギはそれぞれ別の個体だが、どちらも身近な場所のものだった。
3/10に開花初めで、3/11にはほぼ終了だったのは、観察したのがたまたまそうだったというだけで、個体差や生育環境の違いによるものだろう。

いずれにしても3/10,11の前後が開花時期ということになる。
とすると、2月半ばころから花粉症が問題になるのは、やはりスギ以外の花粉に原因があるのではないだろうか。
疑問は深まるばかりである。


スギの雌花

雌花も観ておこう。
スギは雌雄同株だが、ふつう雄花と雌花は別の枝につく。
スギの開花 2024_d0163696_21313164.jpg
一見すると花にとは思えない。
下から見上げるとこんな感じ。
スギの開花 2024_d0163696_21313974.jpg
まったくそれらしくないのだが、これが雌花(雌球花)だ。

拡大して観よう。
スギの開花 2024_d0163696_21314506.jpg
多数の鱗片が見えるだけだが、下にまわって正面を観ると…
スギの開花 2024_d0163696_21315535.jpg
鱗片の付け根のほうに孔の開いたものが観える。
これが胚珠の先端で、孔からは受粉滴を出す。
受粉滴は花粉を受け取るためのもので、雌しべの柱頭のような役割とされる。
上の写真でも少しだけ受粉滴が確認できる。

スギの花は花被も雄しべも雌しべもないので開花を確認するのは難しい。
今回3/10,11に花粉を出すのと受粉滴が確認できたということは、まさしく開花期であるといえる。

スギの花については以前にも報告しているので、よろしければそちらもご覧いただきたい。

2024年3月13日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

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# by sizenkansatu | 2024-03-13 21:42 | 植物 | Comments(6)

‘河津桜’とホトケノザ

2月20日、近くの公園で‘河津桜’が見ごろだった。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20032924.jpg
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20033936.jpg
この公園の‘河津桜’はなかなか立派で、大きな木が4株並んでいる。
もちろん、TVで観る本場の河津町には遠く及ばないが、これだけ立派な‘河津桜’を身近で見た記憶はない。
他の公園はどれも若木だが、ここの‘河津桜’はずいぶん早く導入されたのだと思う。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20035045.jpg
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20040350.jpg
公園の管理の方に聞いたところ、土日はほとんど咲いてなかったのが、前日の2月19日に一斉に開花したという。
手元のメモを見ると、2022年、2023年といずれも3月初旬に‘河津桜’の見ごろとなっていた。
今年はそれよりも10日以上早いということになる。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20041240.jpg



こちらはホトケノザ。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20042241.jpg
耕起後の畑に、みごとな群落をつくっていた。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20043246.jpg
‘河津桜’に引けを取らないと、個人的に思うのだが、どうだろうか。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20044257.jpg
ホトケノザも大好きな花で、これまでに何度か観察記録を載せているので、よろしければご覧いただきたい。


本稿で‘河津桜’を漢字で表記した理由

ところで、植物(生物)種の和名は、基本的にカタカナで記すことにしている。
漢字をあてると、ふさわしくない当て字であったり、複数の説があったり、なにかとまずいことがあるためだ。
専門家の先生方はふつうカタカナで表記するので、私もそれにならっている。
ところが本項では‘河津桜’と表記している。その理由を記しておこう。
‘河津桜’は‘染井吉野’などと同様に栽培品種であり、生物種ではない。
その場合は ‘ ’(シングルコーテーションマーク)でくくり、漢字で表記するのが望ましいということをうかがった(カタカナでもよい)。
漢字でOKなのは、おそらく名前の由来がはっきりしているからであろう。
このルールはあまり浸透してないようだが、みなで合わせるように心がけたい。
公園で木に名札をつけてくれているのはたいへんありがたいが、面倒でもこのようにしていただけると、野生種なのか栽培品種かを知ることができる。
私の記憶では、新宿御苑の名札はこのルール通りになっていたと思う。

2024年2月21日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2024-02-21 20:11 | 植物 | Comments(4)

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