自然観察大学ブログ

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エノキグサのニュー・ハーフ

ちょっと変なエノキグサを見た。
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どこがおかしいのか、気付いた方は、ふだんから雑草をよく観ている方だろう。
答えは雄花穂の先に雌花があること。
エノキグサの雌花は画面下の苞葉に包まれたコロンとしたところにあるのが普通。
雌花は毛のような雌しべがあるだけで、花びらはない。
その上のエンジ色のところが雄花の集まった穂で、白いのが雄しべだ。
そこまでが普通のエノキグサなのだが、このエノキグサは雄花穂のさらに先に雌花がある。

こちらは別の花穂。
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少し小さめだがやはり先端に雌花がついている。
この株には、そんなおかしな花が多数あった。
いわばエノキグサのニュー・ハーフのようなものか?

そもそも、エノキグサのように雄花穂の下に雌花があると、落下した花粉によって自家受粉をする可能性が高いだろう。
先端の雌花は受粉できる可能性は低いだろうが、できたときは新しい遺伝子を備えたニュー・ハーフの種子を作り出すことになる。
このエノキグサがこの後どうなるのか継続して観察しようと考えたが、一週間後に行ってみたら、除草剤が散布されていた。もしかするとこの進化したニュー・ハーフ・エノキグサがなわばりを広げるところを見たかったのだが…
うーむ。雑草観察のつらいところだ。

ところで、エノキグサは今ごろの季節によく目立つ。
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葉がエノキに似ているというのでついた名前だそうだが、日なたのエノキグサはあまり似ていないと思う。
日陰で育った葉の大きなものではそれなりに似ているが…

エノキグサについては「形とくらしの雑草図鑑」(岩瀬徹、全国農村教育協会)にその一生が出ている。
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ちょっと地味だが、なかなか味のある雑草である。

2014年9月21日、報告:自然観察大学 事務局O

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by sizenkansatu | 2014-09-21 23:06 | 植物 | Comments(0)

駒ヶ根で…

千畳敷から木曽駒、宝剣に登った次の日。
朝飯まえに宿の近くをまわった。

林縁の小さな水の流れに沿ったアジサイに美しいカメムシがいた。

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まずはアカアシカスミカメ
体長は小さめ(8㎜程度)だが、ツウ好みの美しさ。

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横から観てもGood。


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次はジュウジナガカメムシ。(ちょっときずもの)
よく似たヒメジュウジナガカメムシはガガイモに群れているのを平地でよく観るが、このジュウジナガカメムシは山間のイケマの花で見かける。
ガガイモ科だけでなくアジサイのつぼみも好物らしい。


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ヒメハサミツノカメムシ
これは雄で、腹端にハサミのような突起がある。この突起がV字型に広がるのが特徴。
微妙な色合いが再現できているだろうか。

こちらはハサミの本家、ハサミムシ。

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キバネハサミムシだと思う。
逃げないので何をしているのかと思ったら…
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食事中だった。
獲物はなんだろう。腹の下に卵嚢のようなものがあってカイガラムシの感じだが、アブラムシのような翅がある。
けっこうな勢いでバリバリ食べ、ハサミムシが肉食であることを実感した。


次はシリアゲムシ

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ふもとで見かけるヤマトシリアゲかと思ったが、8月に黒いのは解せない。
ヤマトシリアゲはふつう年間2回発生で、春に出るのが黒色型、秋は褐色のはずである。(かつては別種のベッコウシリアゲとされた)
もしかして、高地で見られる年1化のタイプかとも考えたが、専門家のS木先生にうかがうと、年1化は標高千数百mの菅平あたりでは確認されているが、600m程度の駒ヶ根では未確認で、よく似た別種の可能性がある由。それらは写真では見分けられないそうだ。
 ※参考『シリアゲムシ 馬面のワケ』 ⇒ http://sizenkan.exblog.jp/18899154/


最後はこれ。

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これはたぶんミドリシジミの仲間と思われる。
とりあえず上の写真を撮ったが、このままではどうということもないシジミチョウだ。
これが翅を開くと内側(翅表)は金緑色の鮮やかな姿のはず。
私はまだお目にかかっていないのだが、聞くところでは、早朝は翅を開くポーズをとることが多いらしい。

今はまだ7時前。千載一遇のチャンスだ。ファインダーにとらえながら、少しずつ近づき、翅が開くのを待った。
ところがそのとき、足元の枯れ木が折れ、ずっぽりと小川の中に落ちてしまった。
水深は浅くとくに被害はなかったのだが、ミドリシジミは撮り逃がしてしまった。残念。



余談:霊犬早太郎とヒカリゴケ

ふもとの光前寺に、霊犬験早太郎の伝説がある。
静岡に遠征して、村人を困らせる怪物を退治したという英雄である。
 ※ 光前寺の案内 ⇒ http://www.kozenji.or.jp/contents/hayatarou.html 

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これは寺に祀られた霊犬早太郎の勇姿。


この光前寺にヒカリゴケが自生していた。
参道の両側に石垣が続き、そのところどころで見られる。

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暗い石垣の隙間の奥で、ほんのりと光るヒカリゴケ。
写真ではストロボで全体が明るくなってしまったが、実物はなかなか風情がある。
ヒカリゴケは、自身が発光するのではなく、レンズ状の細胞によって光が増幅されるそうだ。
もともと暗い場所でわずかな光でも光合成ができるようにレンズ状に進化したものらしい。



もう一つ余談

駒ヶ根の地名はは駒ヶ岳のふととということだと思うが、木曽駒ケ岳の反対側には甲斐駒ケ岳がある。この辺りではそれぞれ西駒、東駒と呼ぶらしい。
駒ヶ岳は全国各地にあるが、二つあるのはおそらくここだけだろう。

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これは明治亭という人気店のソースかつ丼。
すごいボリューム。

もともと駒ケ根や伊那などの伊那谷では「かつ丼」といえばこのソースかつ丼のこと。
とくに駒ケ根では、町をあげて名物にしようとしている。
 ※ 駒ケ根ソースかつ丼の公式サイト ⇒ http://www.komacci.or.jp/katsu/index.html

後日、駒ヶ根出身の同僚に聞いたところ、おすすめの店(S屋という)があるとか… 残念。いずれチャンスがあれば試してみたい。

ソースかつ丼は伊那谷だけでなく長野県内各地のほか山梨や群馬でも体験している。またネットで見ると福井でも盛り上がっているようだ。
卵とじかつ丼とソースかつ丼の住み分け分布を誰かがわかりやすく作ってくれないものだろうか。

2014年9月10日、報告:自然観察大学 事務局O


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by sizenkansatu | 2014-09-10 13:15 | 昆虫など | Comments(0)

夏の木曽駒ヶ岳と宝剣

8月のはじめに木曽駒ヶ岳に行った。
体力に自信がないので、山といってもロープウェイ利用の半日コースだ。
そこで観た高山植物を中心に紹介させていただく。
千畳敷カールより宝剣岳。
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う~む。絵になるなぁ。画面左端が宝剣岳。写真は事務局I嬢の写真。
手前に広がる千畳敷カールは夏の間お花畑になっているはずなのだが、今年は冬の大雪のために遅れているらしい。(画面でも残雪が見える)
我々はこれから写真中央右のつづら折りの登山道(八丁坂という)を登る。
稜線部分(乗越浄土という)を超えて、そこから木曽駒ヶ岳まで往復する。

なお、私は接写用のレンズしかないので、残念ながら上のような写真は撮影できない。
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これがその105mmマクロレンズで撮った宝剣岳。
つい、手前のナナカマドにピントを合わせてしまう。

これはイカンと、宝剣岳に合わせるとこうなる。
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岩肌がすごい迫力。
眺めるには好いが、あとでここを登ることを考えると、ちょっと恐ろしい。

振り返ってみると、南アルプスの山々…
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左端が北岳。富士山も遠望できた(画面右奥)。
雲海の下にかすかに見えるのは駒ヶ根の街だろう。
天候に恵まれたが、聞くところによると富士山が見えるのはめずらしい由。
常日頃のヨイオコナイによるものであろう。

お花畑で観たチシマギキョウ。
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逆光のため、とりわけ鮮やかだ。特徴である白い毛もよく観える。

この日一番多く見かけたイワツメクサ。
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ツメクサというよりは、下界で観るノミノフスマやハコベに似た感じ。
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高山植物らしく、全身に比較して花が大きい。

イワベンケイ。
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雌雄異株で、これは雌株。
つぼみかと思ったら、これで花らしい。

ハイマツ。
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何も考えずにスルーしてしまいがちだが、自然観察大学で学んだことを思い出した。
まずは雌花穂と松ぼっくり。
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右の雌花穂は、一年後に松ぼっくりになる。
左の松ぼっくりは去年の花で、今年の秋に笠を開いて種を散らすのだろう。
開花から種子散布まで通算して一年以上かかるということだ。

こちらは雄花穂。
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軽くたたくと多量の花粉を飛ばした。
ハイマツだけに枝は短く全体が低くなっているが、基本的なことは観察会で観たアカマツと同じだ。

女王といわれるコマクサ。
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木曽駒ヶ岳手前の登山道わきに点々とあった。
きれいなコマクサと思ったのだが、よく観ると花弁の横に穴が開いているのがある。
たぶんマルハナバチ類の盗蜜によるものだろう。

別株のコマクサ。
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こちらの女王は派手好みのようだ。
地上では小さく可憐に見える株でも、礫の間に深くたくましく根を張っているそうだ。

木曽駒から宝剣岳一帯のコマクサは明治・大正期に薬草として採りつくされ、今あるものは植栽なのだそうである。それでもなお盗掘があるとか… 盗蜜と違ってこちらは罪が深い。

木曽駒ヶ岳の頂上にあったヨツバシオガマ。
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近縁の○○シオガマというのがいくつもあってややこしいが、これはヨツバシオガマでよさそうだ。
名前の由来はいろいろあるようだが、こじつけのようなものもあって決定的なものはなさそう。
シオガマ類の特徴は花の形が鳥の頭に似て、先端がくちばしのようにとがっているところである。

そんなわけでタイミングよく登場したイワヒバリ。
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今年生まれた若鳥なのだろうか。山頂の人混みをおそれることなく姿を見せてくれ、しばしの間いろいろなポーズをとってくれた。
イワヒバリは山頂付近のハイマツと礫地帯で繁殖し、中腹の谷で越冬するそうである。ふもとの街でお目にかかることはまずない。

8月2日(土)というもっとも混雑の予想される日程だったが、頑張って始発のロープウェイに乗ったおかげで、木曽駒から宝剣を回って昼には千畳敷に戻ることができた。
次回はふもとの駒ケ根の話をさせていただく予定。

参考までに行程を記しておく。

駒ヶ根
 ↓ (バス。臨時便4:45発。運転技術にびっくり)
しらび平(標高1,662m)
 ↓ (ロープウェイ。臨時便)
千畳敷(2,612m)
 ↓
乗越浄土
 ↓
中岳(2,925m)
 ↓
木曽駒ヶ岳(2,956m。折り返し)
 ↓
中岳
 ↓
乗越浄土
 ↓
宝剣岳(2,931m。往復ピストン)
 ↓
乗越浄土
 ↓
千畳敷

2014年9月6日、報告:自然観察大学 事務局O

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by sizenkansatu | 2014-09-06 15:46 | 植物 | Comments(0)

『図鑑大好き!』で見た驚きの昆虫図鑑

千葉県立中央博物館の企画展『図鑑大好き』に行ってきた。
ダーウィンのフジツボ図鑑や、手塚治虫の手作り昆虫図鑑ではじまり、フィールド図鑑の草分け・野鳥観察の「ピーターソン図鑑」、鱗翅目の鱗粉を転写したすごい図鑑もあった。完全アナログのコンピュータ植物図鑑(なんのこっちゃ?)なんていうのもあった。
もちろん歴史的なものだけでなく、実用的な図鑑やその制作裏話も紹介され、充実した楽しいものだった。

私がいちばん驚いたのはこれ。
画像を公開してよいものかどうか悩んだが、少しくらいはよいだろう。展示内容そのもではないし…

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漢字で書くと岡崎常太郎の「天然色写真 昆虫700種」という1930年発行の図鑑である。
これは本扉のページだが、すべてカタカナで記されている。
ここだけでなく、全編がカタカナ。なんという本だ !
ページをめくると、巻頭には 『ユケ カナモジ!』 というのが記されている。書き出しは次のとおり。

オー,アイスルカナモジヨ.ジブンワ イマ ナンジオ ヨノナカエ オクリダス.イヤ,ヨノナカエ ホーリコムノダ.

以下、この項は2ページにわたって続く。
『ハシガキ』という前書きがそのあとに1ページだけあって、そのあとまた 『コノ ホンニ カナモジオ モチイタ コトニ ツイテ』という項目がある。いわゆる凡例であるが、チョクシルイ(直翅類)をスグハネルイ、ハンシルイ(半翅類)をクダクチルイとしたなどということが記されている。(す、すごい…)

「昆虫博士入門」の前書きで「原色千種昆虫図譜」とともに紹介されているので名前は知っていたのだが、実物ははじめて見た。内容は立派な原色図鑑だが、まさかすべてカタカナで表記されているとは驚いた。
筆者によると、カナ文字は読み方で悩むこともなく世界に誇るべき優れた日本の文字である、という。たしかにその通りかもしれないが、読んで理解するにはかなり苦労する。慣れの問題もあるかもしれないが、それだけではなかろう。


あとで知ったことだが、著者の岡崎常太郎氏はカナモジ論者だそうである。(つい最近まで財団法人カナモジカイというのがあったらしい)
出版社の松邑三松堂は、全編カナモジの昆虫図鑑には抵抗はなかったのだろうか。
巻末の出版社の広告ページに、同じ岡崎常太郎著の「通俗蝶類図説」「通俗直翅類図説」「通俗脈翅類図説」の3巻が紹介されていたところを見ると、両者が納得しての発行なのだろう。ちなみにこの広告ページのみ漢字表記だった。



自然観察大学が活躍!

ところで、この企画展ではわれらが自然観察大学の先生方の活躍が目立った。
やや手前みそだが、紹介させていただく。

まず昆虫図鑑コーナーの展示。

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魅力的な図鑑たちにまじって、紫と黄色の「校庭の昆虫」が目立つ。
これは自然観察大学講師の鈴木信夫先生、田仲義弘先生の著書だ。
うーむ。山﨑秀雄先生の「昆虫博士入門」がもっと早くできていれば…


次は植物図鑑の展示。

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村田威夫先生の「シダ植物」が一番良いところにある。

右端には、「カビ図鑑」もある。
著者の細矢剛先生、伊沢正名先生には講習会で講演いただいた。


しかし、植物図鑑コーナーに肝心の図鑑がない。
ちょっとがっかりしていると、最後のコーナーにあった。

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岩瀬名誉学長の「形とくらしの雑草図鑑」と、川名興先生、飯島和子先生と3人で共著の「校庭の雑草」である。
いちばんよい場所に展示されている!
なんとありがたい。

個人的にとくにうれしかったのは、「校庭の雑草」の紹介である。原文のまま引用させていただこう。

校庭に生える雑草に絞った図鑑。付属のCDに花、芽生え、果実なども掲載されている。季節別の花の一覧表などもあるので、オマケかなと侮らずにCDを見なければいけない。

と記されていた。
CDは、デジタルの苦手な著者のかわりに、私が主体的に制作させていただいたものだ。うれしさのあまり涙がこみ上げた。
(出版社のHPにCD-ROMの体験版があるのでぜひ  ) 

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展示では、子供たちの自作の図鑑が多数紹介されていた。
夏休みの自由研究ネタにおすすめである。今ごろ遅いかもしれないが、ぜひ足を運んでいただきたい『図鑑大好き!』であった。
(10月13日まで)  http://www2.chiba-muse.or.jp/?page_id=842 


2014年9月4日、報告:自然観察大学 事務局O


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by sizenkansatu | 2014-09-04 12:48 | その他 | Comments(0)

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