自然観察大学ブログ

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親愛なる、そのへんの植物-9 「早春において、開花の早さは何で決まる?」



4月上旬、いまだ寒さの残る温帯(一般的には冷温帯と言われている)の落葉広葉樹林では、林床まで差し込む明るい光を利用して、スプリング・エフェメラルとして有名なカタクリが今にも咲こうとしていました。
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今回は、暖温帯上部から温帯にかけての落葉広葉樹林について、新葉と開花の様子に注目してご報告します(観察地:岐阜)。

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まずは、ミツバウツギです。主に3出複葉の落葉低木です。
葉が開くと同時につぼみができていました。

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クロモジです。落葉低木です。
クロモジも、葉の展開と同時に開花し、黄色の小さな花を咲かせていました。性が個体で分かれている雌雄異株(しゆういしゅ)植物です。

ミヤマシキミも、すでに花が咲いていました。
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ミヤマシキミは常緑の低木で、落葉広葉樹林にも生育しています。
クロモジと同じく、雌雄異株植物です。この写真の場所では、雄株と雌株が隣同士にいました。左側が雄株で、右側が雌株になります。

前回のブログ で、雌雄異株植物の性を見分けるには花の時期が重要だと書きましたが、ミヤマシキミも同様で、雄の花は雄しべが目立ち、雌の花は雄しべが退化しています。
まずは雄の花。
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つぎは雌の花。
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花を見れば、一目瞭然で個体の性が判別できました。

次は、ハナイカダです。
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花はどうかな? 重なった新葉を、そっと開いてみました。
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ありました。葉の真ん中に一つ、つぼみがついています。
ハナイカダの花は、葉(イカダ)の真ん中に花が乗っているように咲くので、とても印象的です。

ハナイカダも雌雄異株植物であり、雄の花は一枚の葉に数個つくのに対し、雌の花は大抵1個なので、私が見た個体は、おそらく雌ではないかと思います。

続いて、コハウチワカエデです。落葉の高木です。
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新葉が開く様子が、なんだか、お化けか恐竜の手(前足)のようなかたちをしていておもしろいです。
こちらはまだ花は見あたりません。


同じくカエデ属のコミネカエデです。落葉小高木です。
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これも花は見あたりません。


ここまであげた種の中で、いち早く花を咲かせるかどうかの違いは、どこにあるのでしょう?
ひとつ、思い当たることとして、その種が低木か高木になるかということがあげられました。

低木と高木では、持っているつぼみの数が大きく異なり、高木の方がたくさんの花を咲かせることができます。
繁殖のために必要な花粉を運んでくれるポリネーターは、花がたくさん咲いているなど目立つ方に惹きつけられやすいと言われています。よって、低木と高木では、高木の方がポリネーターを惹きつける上で有利になると考えられます。
つまり、低木は、高木が咲き始めるより前に開花し、高木とのポリネーター獲得の競争を少しでも避けようとしている、という説です。

また、寒さの残る早春は、ポリネーターの数や種類は少ないですが、マルハナバチ類に先駆けて、ハナアブやハエの仲間が活動を開始します。
低木は、こういったハナアブやハエに花粉を運んでもらっている場合も多いと言われており、虫との相互関係で、早くに開花するという説もあります。
今回よく観察した雌雄異株植物は、低木が多いと言われています。雌雄異株植物が早く開花するのも、これらの理由からかもしれません。

いずれの説、もしくはその両方の説にしても、林内を観察していると、低木の種の方が高木よりも早く開花しているような印象でした(もちろん例外もたくさんあります)。

目の前の自然を観察しながら、目には見えない環境や生き物同士のつながりに考えを巡らせてみると、好奇心や疑問がわいてきて、そこからまた、次の観察が楽しくなるように思いました。

2013年4月26日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-04-26 23:01 | 植物 | Comments(1)

オトシブミのゆりかご(揺籃)づくり その1

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これはエゴツルクビオトシブミのゆりかご。

オトシブミは〝落とし文〟のことで、葉を巻いて中に産卵する。幼虫はこの巻文を食べながら成長する。

巻文なんて書いたこともないし、博物館以外では目にすることもない。
逆にオトシブミの揺籃を見て 〝人間はこんな巻文を交わしていたんだなぁ〟 と万葉の世界に想いを寄せる、というくらいである。
こまかいことを言うと、揺籃を切り落とす 〝落とし文〟 派と、切り離さず樹上にそのまま残す 〝吊るし文〟 派があって、実は吊るすのが多数派のようだが、まぁヨシとしよう。


さて、何年か前に、この揺籃づくりの作業現場を観ることができた。
5月3日、ゴールデンウイークの最中のことであった。

この日、毎年たくさんの揺籃があって以前から眼をつけていたエゴノキを観に行くと…
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エゴツルクビオトシブミが、新葉に切れ込みを入れている。
このまま揺籃づくりを追いかけてみよう。
ちなみに、このとき11時35分。
デジタルカメラは撮影時刻が記録されるので便利だ。

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主脈を少しだけかじって、しんなりさせる作戦。
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そして、おもむろに先端に移動して、何やらおまじない(?)
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およそ5分間の儀式を終えて、次は二つ折りにする作業。
小さな体のわりに力があるようだが、いかんせん葉っぱが大きすぎる。
6本の脚に渾身の力を込めて、グイグイと挟みつけながら移動する。d0163696_125297.jpgd0163696_12522995.jpg
およそ10分間、根気よくこの動作を続けながら主脈沿いを往復。
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下準備を済ませ、やっと巻きはじめる。
このとき11時58分。作業開始後23分だ。

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巻きはじめるとけっこう速い。産卵はどのタイミングなのだろうと見ていると…

(以下、その2へ続く。 ⇒  この記事の下に続きます)

2013年4月19日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2013-04-19 13:31 | 昆虫など | Comments(0)

オトシブミのゆりかご(揺籃)づくり その2

(その1から続き ⇒その1 )
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何処からか雄がやってきて、交尾をはじめた。
このとき12時。まさに真昼の交尾。

雌は雄の来襲に動じることなく、揺籃づくりを続けている。d0163696_12562289.jpgd0163696_12564872.jpg

かいがいしく働く雌にくらべて、雄はエラそうに乗ってるだけ。
余談だが、オトシブミはとくに雄の首が長く、雌はちょっと短めだそうである。
なぜなら長すぎると揺籃づくりがしにくいから。
本人に聞いたわけではないが、だとすると雄は 〝生まれながらの役立たず〟 ということになる。
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交尾は10分ほどで終わり、雄は無言で立ち去る。しょうがない遊び人だ。
働き者の雌に、ねぎらいの言葉はないのか?

雌のほうは、これからが本番。
葉縁を内側へ折り込みはじめた。
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頭を突っ込んだと思ったら、そのまま中に入り込んで見えなくなった。
今になって考えると、このとき奥に産卵したのかもしれない。(12時23分)

…ということは、もしもあの雄が来なかったら、揺籃づくりは中断したままだったのだろうか? 
だとすると、ベストなタイミングで現れた雄はエライ!
役立たずなんて言ってスミマセン。
(さっきの交尾で受精したとは限らないが…)
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産卵を終えたのか、再び外へ出てきて、さらに巻いていく。d0163696_1258144.jpgd0163696_12581595.jpg
最後はあっという間に揺籃が完成した。
どこをどうとめるのか、こまかいことはわからなかったが、うまく作るものだ。

ひと仕事を終えて、隣の葉に移動した雌。
このとき時間は12時48分。73分間の重労働であった。
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涼風を顔にあてながら、しばし充実感を味わったのち、さっそうと飛び去った。


その後、揺籃の中は…

後日、ほかの揺籃で落ちてしまったのを切ってみると、中に幼虫がいた。
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ゆりかごの中でぬくぬくと育った、いわば深窓の令嬢。(御曹司かも)
丸々として元気そうである。
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別の巻文では、未受精なのか、黒ずんだ卵がそのまま残っていた。
よく観て巻き方をたどろうとしたが、頭が痛くなってきたのでやめた。

巻き方を極めたい方は、鈴木海花さんの次のブログをどうぞ…
『オトシブミの揺籃づくりをマネしてみた』 ⇒ http://blog.goo.ne.jp/mushidoko64/e/99c0e36ca69621c7e8c678c135a0c19a
揺籃づくりのコツが、オトシブミ目線でまとめられています。


注目は、およそ1か月後のこのときまで、巻文が新鮮なままであること。
幼虫が成長する間、ずっと新鮮な葉が食べられるということだ。


見直したいオトシブミ

もう一つ感心したことは、揺籃に使った一枚の葉だけで成長しきることだ。
世の中には、あちこちの葉を食い散らす虫もいれば、たいせつな果実や種子だけを食べるヤツもいるし、ついでにウイルス病を伝染していく極悪虫もいる。
そいつらとくらべると、オトシブミたちはなんと奥ゆかしい、環境保全型の昆虫であろうか。

巻文という日本文化の継承者(?)であり、エコ生活の先導者でもあるオトシブミ
 … おそれいりました。

2013年4月19日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2013-04-19 13:17 | 昆虫など | Comments(5)

親愛なる、そのへんの植物-8 「落葉広葉樹林は春真っ盛り(暖温帯編)」

まもなく4月という頃、街なかではサクラ、田んぼや道端ではオオイヌノフグリ、ホトケノザなどが次々と咲いて、春の訪れを感じさせてくれます。
今回は、同じ頃に落葉広葉樹林で見つけた「春」をご紹介します(観察地:岐阜)。

※ 写真はすべてクリックで拡大してご覧いただけます

これは、3月末のある落葉広葉樹林の様子です。
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なんだか、殺風景に見えます。色とりどりの花が咲き乱れるような、鮮やかな印象はありません。落葉広葉樹は、冬に葉を落とすので、早春はまだ展葉しておらず、林全体が明るく見えます。
一体何が春らしいのか。個々の木に近づいて、よーく観察してみると、かわいらしい芽吹きが見えます。今回注目したいのは、この新葉です。

コバノガマズミ
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小さいながらも、その木ならではの葉の特徴をちゃんと持っているので、「これは何の木だろう」などと、考えながら観察するのはおもしろいです。
こうした新葉が見られるのは、この時期だけ。暖かくなったと同時に、一斉に芽吹きを始める木々を見ると、春真っ盛りを感じずにはいられません。


それでは、暖温帯の落葉広葉樹林で見られたいくつかの樹種について、とっておきの新葉をご紹介します。

コナラ
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たしかにコナラの葉のかたちをしています。フサフサした毛に包まれて、柔らかいです。また、葉の展開と同時に、雄花が先に咲きます。目立っているのは、雄花序です。

サルトリイバラ
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サルトリイバラも、葉の展開と同時に花を咲かせます。雌雄異株植物であり、これは雄花のみをつける雄株です。雄花の雌しべは退化して、ほとんど見えません。雌雄異株植物の性を見分けるには、このように花の時期は重要です。

ヤマハゼ
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新葉のときから、当然ではありますが、ちゃんと複葉になっています。精巧なミニチュアのようです。

リョウブ
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新葉の時は、特に黄緑色が鮮やかで美しいです。遠くからでも目立ち、まるで林の中に黄色い花が浮かんで咲いているかのように見えます。


このように、いまだ葉も花も少ない早春の林ですが、観察してみると、季節に応じたユニークな姿を見ることができます。
新葉は、身近な公園や庭、街路に植えられた樹でも見られるので、ぜひ気軽に観察してみてください。夏や秋の見慣れた葉のかたちを知っているならば、小さな葉が成長していく様子を想像しながら見てみるのも楽しいかもしれません。

次回は、同じく落葉広葉樹林の新葉について、温帯編でご報告したいと思います。

2013年4月12日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-04-12 19:16 | 植物 | Comments(1)

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