自然観察大学ブログ

<   2012年 01月 ( 4 )   > この月の画像一覧




アザミウマの話

前回報告したネギ畑。
“綺麗なネギでいいですね~。” とミルフイユさんからうらやましがられたのだが…
d0163696_19422582.jpg
近くに寄ると表面に無数の細かな傷がある。
d0163696_19425565.jpg
近づいてみると傷の犯人はネギアザミウマ。寒い中でも元気に活動している。
彼らは口針を刺してネギを吸汁するので、そのあとがかすり状になる。
ネギの害虫なのだが、関東の人々は緑色の部分は食べないとされ、店頭でも農家もあまり気にしないらしい。青い部分の方が美味しいと思うのだが…

d0163696_19433639.jpg
ネギアザミウマ(写真:全国農村教育協会)は体長1mmほどの小さな昆虫で、最近はネギ類だけでなく、キャベツなどの野菜やカキの害虫としても問題となっている。英名もそのまま onion thrips と言って世界的な農業害虫だ。
http://www.boujo.net/handbook/saien/saie-60.html

d0163696_19461412.jpg
これはネギアザミウマのプレパラート標本(写真:全国農村教育協会)で、残念ながら後翅がなくなってしまっているが、翅が鳥の羽根状(総状)になっているのがわかる。
アザミウマ目は総翅目(そうしもく)とも言って、みな羽根状の翅を持つ。こんな翅だが風に乗ってけっこう遠くまで飛ぶらしい。

農業害虫としてのアザミウマ
アザミウマの仲間は花粉を食べたり子房を吸ったりするものが多い。
d0163696_19471161.jpg
写真は花の中に潜むアザミウマ(写真:全国農村教育協会)。
緑色部分は子房で、棒状のものが雄しべ、白い粒は花粉。どんなに小さいかイメージできると思う。

やがて子房が大きくなったときに果実の表面が傷だらけになるので、農業では重要な害虫のグループとなっている。しかも、厄介なことに農作物(のうさくもつ)のウイルス病の媒介者にもなるのだ。
(ゆえに全国農村教育協会さんにはたくさんのアザミウマの写真がストックされている)

余談ですが…
雑草の花を撮影すると、思いがけずアザミウマが写り込んで、仕上がりでびっくりすることが多々ある。
d0163696_1949266.jpg
なかなか愛嬌のある顔だ。

アザミウマの語源は、アザミの花にいるこの虫を “馬出ぇ” などと言いながら追い出す子供の遊びによると言われている。関西地方中心の遊びらしいが、こんな小さな虫を遊びの対象とするとは、いにしえ日本の子供たちの驚くべき観察力!

2012年1月25日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2012-01-25 19:53 | 昆虫など | Comments(2)

ネギを観て考える

私の近所の江戸川沿いでは、冬の季節にはさかんにネギが作られる。
d0163696_2033923.jpg

関東ではネギの白い部分を好んで食べるので、土寄せをして土中深くネギを埋め込む。
d0163696_204142.jpg
こうして埋め込まれた部分が、白く軟らかく、そして長く伸びる。
それにしても、ふかふかの土を上手く盛り上げるものだ。

ネギは本来、多年生植物で、寒さ暑さにはもっとも強い野菜のひとつだそうだが、このネギを植物として観てみよう。

ネギの葉の表裏は?

緑色の葉は筒状になっていて、よく考えると不思議な形をしている。
ネギの葉の表裏はどうなっているのか、お分かりだろうか? 
実は筒状の内側が葉表で、外側が葉裏だそうである。白いところは茎ではなく巻いて重なった葉鞘。
ちなみに、ネギの茎は根のすぐ上にある短い部分で、芯のようなところだ。

……………………………………………………
1/20追記
ネギは単面葉といって、遺伝子的に葉裏の性質しかないことが最近になって解明されたそうです。
⇒ 『アヤメやネギがもつ、裏しかない葉「単面葉」の形作りの仕組みを解明』(基礎生物学研究所、2010年 7月22日) http://www.nibb.ac.jp/press/100722/100722.html
ミルフイユさん、ご指摘いただきありがとうございました。
……………………………………………………

ネギと同じユリ科植物で、春の雑草のノビルがある。子供のころ小さなラッキョウのような鱗茎を食べた。
図鑑で見てみよう。
d0163696_20174991.jpg
※ 『形とくらしの雑草図鑑』(岩瀬徹、全農教)より http://www.zennokyo.co.jp/book/ykhb/kkzso.html

葉の断面の写真を拡大してみる。ノビルの葉は断面が三日月形で、中空になっていることがわかる。
d0163696_20185611.jpg




ネギの花

葱坊主は初夏に出るのだが、以前撮った写真を紹介しよう。
d0163696_20195716.jpg
葱坊主は花序のこと。小さな花がビッシリとついている。
ノビルの花序も、葱坊主に似ている。
薄い膜は総苞で、つぼみのときはこの総苞が花序全体を包んでいる。
ちなみに、ネギの品種によっては花をつけないものがあり、“坊主しらず”といわれるらしい。

分解して一つだけ花を取り出してみた。
d0163696_20211180.jpg
ネギの花はユリ科の特徴を備えている。
花弁が6(内花被3+外花被3)。雄しべが6で、雌しべの子房は3室。

雑草では、秋に咲くツルボもユリ科だ。ツルボは個人的に好きな雑草で、このブログでも以前紹介しているので、ご覧いただきたい。
http://sizenkan.exblog.jp/11973582/

d0163696_2023072.jpg
これは同じユリ科のアマナ。比べると基本的に同じ構造の花であることが分かる。

もっとも、DNA解析による新しい考え方ではネギはネギ科としてユリ科とは分けるらしい。ちょっとややこしくなってしまった。やはり形態による系統分類の方が親しみがもてる。

余談ですが…
以前、ネギ畑で作業をする農家に話をうかがったところ、安い中国産ネギに押されて、ネギ栽培を続けていくのが難しいということを言っておられた。
中国産ネギとか、アメリカ産ブロッコリーとか、確かに見かけはきれいなのだが、やはり地元で採れた新鮮な野菜とは、味の面では比べものにならない。
いま一面のネギ畑を見て、あの農家も何とか踏みとどまってくれたのだろうと、ほっとしている。

もうひとつ余談
ネギをネットで調べると、犬や猫には与えてはいけないという説が多数あった。 “ネギ 犬” で検索すると2000万件以上がヒット!
この中には「食べさせてはいけない」という内容と、反対に「まったくのガセネタで、ドッグフードメーカーの謀略」などという両方の意見が混在している。
かつて私の家でも犬を飼っていて、けっこう食べさせていたように思う。
本当のことをご存知の方は、ぜひお教えいただきたい。

【参考図書】
校庭の作物』(板木利隆・岩瀬徹・川名興、全農教):ネギに関して参考にさせていただきました。この本は“身近な農作物を植物学の眼で観察しよう”というもので、 「校庭シリーズの中でいちばん面白いかも…」 と岩瀬先生が話しておられました。興味のある方はぜひどうぞ。もちろん、タイトルの読み方は(こうていのさくもつ)です。
http://www.zennokyo.co.jp/book/kote/sak_0.html

2012年1月16日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2012-01-16 20:31 | 植物 | Comments(4)

謎のサイン

秩父の霊場。とある場所の壁面に不思議なサインが印されていた。
d0163696_2044371.jpg
場所が場所だけに、何か霊的なものを連想させる。

もったいぶらずにネタを明かそう。
上の写真の一部分を拡大してみる。
d0163696_205943.jpg
カタツムリのかじった跡だ。
壁の表面のコケを食べていたらしい。
首を左右に動かしながら届く範囲を舐め、わずかずつ前進するとこのような食痕になるらしい。
このような食痕は樹幹など植物上でも観察できる。
見かけはおとなしそうだが、カタツムリの口器は意外なパワーがありそう。いずれ機会があったら拡大して観てみたいものだ。

………………………………………………………
上の話で、M川先生ご本人の手記が公開されました。次でご覧いただけます。
http://www.spacelan.ne.jp:80/~rob.roy/hibi-r.html
2012.3.24追記
………………………………………………………

M川先生のお気に入りのカタツムリも紹介させていただく。
d0163696_2072682.jpg
宝石の翡翠(ひすい)のような美しいカタツムリ。
南西諸島に生息するアオミオカタニシ(青身陸田螺)という。「青身」の名のとおり、翡翠色なのは身(肉)であって、殻ではない。乳白色の貝殻を透過して、肉の色が見えている。これは非常に老成した個体で(殻口が大きく広がっています!)殻が厚いため、翡翠色がややくすんでいる。幼貝は殻が薄いので、もっと翡翠色が鮮やかなんですと!
(微妙な色なので、画面で表現できているかどうか気になります)

ちなみに、カイガラの下に見えるベッコウ色の板は蓋。しかもこのカタツムリの眼はツノの付け根にある。
このオカタニシの仲間や前回のキセルガイの仲間は、厳密に言うとカタツムリの仲間ではないという方もおられるかもしれないが、まぁ、細かいことは良しとしましょう。カタツムリは概念的なもので、分類学上の定義はないそうだから…

熱帯地方などには、トロピカルカラーの派手なカタツムリもいるらしい。雨季ともなるとカタツムリファンには天国のような環境なのだろう。

御礼とお願い
今回紹介した写真は、カタツムリがご専門のM川先生にご提供いただいたものです。
貴重な写真とたのしい話をありがとうございました。
M川先生! いずれ、カタツムリの口器の写真もお待ちしています。

2012年1月11日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2012-01-11 20:12 | 昆虫など | Comments(1)

皇居のカタツムリ

新年早々ですが、真夏の8月、北の丸公園の話。
田仲先生の狩蜂観察 http://sizenkansatu.jp/index_3.html が終わった後にちょっとだけ覗いたが、なかなか好い環境だった。

d0163696_20271180.jpg
イチョウの大樹には、江戸築城以来の歴史を感じさせる。
d0163696_2027296.jpg
小さめながら気根もあった。

樹々にはコケが貼りつき、しっとりとした雰囲気。
d0163696_202837.jpg
よく観ると何かが這ったような跡がある。
d0163696_20282441.jpg
キセルガイだ。
キセルの名前の由来は煙管で、今では時代劇でしかお目にかかることはない。
いわゆる普通のカタツムリと違って貝殻が長い。

ウィキペディアには、九州地方を中心とした興味深いキセルガイ信仰について記されていた。
“乾燥や飢餓に比較的強く、殻内に入ったまま長期間(数ヶ月以上)生存するため、旅や出征に赴く際に神社の樹から採ってお守りとして持ち歩き、無事帰還したときに再び神社の木に戻すことなどが行われた。”

カタツムリの仲間はふだん昼日なかはどこかに隠れているらしいが、この日は都心で記録的な豪雨があった後なので、キセルガイも調子が狂ったのかもしれない。

d0163696_20285552.jpg
こちらは別種のキセルガイで、上の写真は子供(幼貝)。
d0163696_203095.jpg
こちらが大人(成貝)。
大人と子供の違いがお分かりだろうか。

キセルガイに限らず、カタツムリ類は成貝になると口の部分が丸く反り返る。
カタツムリ類の同定は成貝でないと難しいらしく、名前を知るために、まずは成貝かどうか見分ける必要があるということだ。

カタツムリの修行人生

カタツムリの仲間は、大人になって成長が止まったときにはじめて貝殻の口縁が厚くなってラッパ状に広がる。
成長の過程で螺旋形の貝殻の口の部分を徐々に積み重ねていくので、幼年期から青年期にわたって、ずっと殻の縁は薄くカミソリ状になっている。首元に刃物をあてがったまま、四六時中緊張して生活しているのだろうか? 毎日が命がけの修行のようだが、心配することはない。カミソリ状の先端は薄く脆い。この薄く脆い先端に、少しずつ殻を付け足していっている。
たとえ硬くても大丈夫。そもそも、カタツムリは本物のカミソリの刃の上だって歩けるのだ!

2012年1月6日、報告:自然観察大学 事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2012-01-06 20:33 | 昆虫など | Comments(0)

植物、虫、鳥など自然を楽しむ  ★写真の無断転載はお断りいたします★
by sizenkansatu
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

最新の記事

漆掻きを体験
at 2017-10-06 12:56
ラクウショウとメタセコイアを..
at 2017-08-30 17:09
マダニの観察
at 2017-08-22 19:24
エゴヒゲナガゾウムシの成虫が..
at 2017-07-21 20:21
メタセコイアの花から実
at 2017-05-24 21:16

最新のコメント

> チョコさん コメン..
by sizenkansatu at 12:44
こんな感じの本が欲しかっ..
by チョコ at 14:10
鈴木裕子さん、コメントあ..
by sizenkansatu at 15:19
日経新聞で冬の雑草の記事..
by 鈴木裕子 at 19:35
アレチヌスビトハギ 最悪..
by EVIS at 15:16

検索

ブログジャンル

画像一覧