自然観察大学ブログ

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クロアゲハの吸水を観た

自然観察大学講師の平井先生が寄稿された 『昆虫の熱中症予防(全農教HP/話のたねのテーブルNO.150) と同じ現象が観察できた。
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クロアゲハの吸水である。
見沼自然公園の池のほとり。昼までの雨が上がり陽が射してくると、ひらひらとやってきた。
雨後で湿った地面から、夢中で吸水をはじめた。
遠目には真っ黒に見えるが、よく観ると微妙に青味がかった美しい翅だ。
日ごろ警戒心の強いクロアゲハも、このときはたっぷりと撮らせてくれた。
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かなり近寄っても平気なそぶり。

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観ていると、ときどき尻から水滴が出ている。
体温の上昇を防ぐために、吸水しては尻から出すというのだ。
詳しくは前述の『昆虫の熱中症予防』をご覧いただきたい。http://www.zennokyo.co.jp/table/index_table.html 
『話のたねのテーブル』は次々に更新されるので、時間が経過してから見る場合は一覧表からNo.150を選んでください

もう一枚掲載させていただく。
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時々思い出したように出る水滴にタイミングを合わせるのは難しいのだが、事前にこの話を聞いていたので、“これか!”と感動してシャッターを切り続けた成果である。

面白いものが観察できた。
平井先生、ありがとうございました。

2011年8月31日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-31 20:18 | 昆虫など | Comments(1)

タマムシはやっぱりきれい

8月半ばの今年一番暑かったころ、房総の奥のほうの、ノウサギの糞らしきものがいたるところで見られるような場所。
タマムシが猛暑の中をブンブン飛び交っていた。
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タマムシはやっぱりきれいだ。
翅の真ん中あたりが少し凹んでいるのが残念。

玉虫厨子に代表されるように、日本人は古来からタマムシの色にあこがれてきたらしく、玉虫色を再現しようと織物や装飾品で懸命に試みられていたらしい。
光の具合で色が微妙に変化するので、タマムシ色としか表現できない。
どっちつかずの色から “玉虫色の決着” などとたとえられるが、そのたとえはタマムシに対して失礼にあたるだろう。
玉虫色というからには、目の覚めるような鮮やかさがほしい。

顔をよく観てみよう。
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少し離れた眼が人なつこい印象。なかなか味のある顔だ。
ごていねいに大顎まで玉虫色になっている。
黒い “へ” の字型のところは小顎というのだろうか?

ところで、この顔どっかで見たような…
そう。仮面ライダーに似ている。
強力な飛翔能力を有し、猛烈な日差しをものともせず、虹色の光線銃が武器。
特技は喧嘩の仲裁で “玉虫色の鮮やかな裁定” …
『仮面ライダー夏玉(なつおう)』なんていうニューヒーローはどうだろう。
問題は玉虫色のライダースーツをどうやって作るかだ。


ほかに観た虫たち

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アオバハゴロモ
よく観ると浅黄色の翅に朱色の翅脈がなかなか美しい。
観たことのない方は一度ルーペを使って観ていただきたい。
どこでも観られる虫だが、ここは密度がすごい。
植物はクワ科のようだが残念ながら不明。


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ベッコウハゴロモ
多数のアオバハゴロモにまじっておとなしくしていた。
体色が鼈甲のようだという名前なのだろうが、拡大して見ると鱗粉がビッシリ。羽化直後ということだろうか。
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この角度で見るとセミに似た印象。同じカメムシ目なのだからうなずける。
複眼のストライプが効いている。

ちなみにこのハゴロモたちはアオバハゴロモ科とハゴロモ科で、それほど近い仲間ではない。翅のたたみ方が違うのもうなずける。


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アズチグモ
葉裏でほかのクモ(サツマノミダマシと思う)を捕らえていた。
2本脚でぶら下がって、ゆっくりとお食事中。
眼の部分の細長い三角模様が悪役風だ。

漢字で書くと “安土蜘蛛” だそうだが、地名の安土と関係があるのだろうか? だとするとアヅチグモではないのか?
ちなみに、サツマノミダマシの方は果実に似ているから “薩摩の実騙し” で、“薩摩蚤騙し” ではない由。

クモは獲物に消化液を注入して溶かして液状になったものを吸うと聞く。捕らえられた獲物は溶かされながら意識が遠のいていくのだろうか… 考えると恐ろしい話だ。
それはさておき、注入した消化液をもう一度飲み込むことになると思うのだが、食べる本人は消化されないのだろうか?


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フキバッタ
たぶんタンザワフキバッタではないかと思う。写真は翅が小さいが立派な成虫だ。
フキバッタは飛ぶことをやめたバッタで、そのためか地域によって種が細分化している。

抜群の跳躍力を秘めたフトモモ(後脚腿節)に目が行きがちだが、つま先にも目を向けよう。写真を拡大してご覧いただく。(写真が荒れてしまっているがご勘弁ください)
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爪の間に吸盤というか肉球のようなものがある。
この肉球は爪間盤(そうかんばん)というものだそうだ。
バッタは脚もとの表面構造によって爪と肉球を使い分け、ジャンプするときに滑らないようにするのだと考えられる。上手くできているものだ。

もっと面白い構造なのが後脚で、跗節(ふせつ)全体がジャンプに適した形になっている。残念ながらそれは写っていないので、ぜひご自分で確認していただきたい。お近くのイナゴやトノサマバッタでぜひどうぞ。

※ 編集中の『昆虫博士入門』では、そのあたりをていねいに紹介する予定です。発行が遅れてすみません。

2011年8月30日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-30 12:51 | 昆虫など | Comments(2)

「さかき」異説

さかき(賢木)はなぜサカキ (Cleyera japonica Thunb.) なのか?

★「さかき」とは元来何であったのか?
「さかき(賢木)」は、『古事記』や『万葉集』では呪術の小道具として登場します。そして、大槻文彦氏の『大言海』によれば、
「常緑木ニモアレ、落葉木ニモアレ、種種ノ樹木ノ、神境ニ植リテアルニ就キテ称する語ナリ」「境木ノ義、磐境(イハサカ)ノ木」
つまり「神の御座所の木」の意であり、具体的にどのような木であるか、ということについてはまったく解らない、とのことです。
この説は、音韻学の面から「岩波古語辞典」でも肯定的に扱われています。

★なぜサカキが「さかき」になったのか?
今、「さかき」の地位には「サカキ」がついています。その理由としては、「(神事に用いられる常緑樹の)中で、サカキは色や形が美しく、神事にふさわしいものとして、神社の境内などによく植えられた」(平凡社大百科事典)からである、という考えが一般的なようです。
しかし私はかねてからこの説に疑問を感じていました。
 ① サカキが多い地方でも、町や村の小さな神社にサカキなんぞ植えられてはいない。
 ② サカキが他を圧して美しい木である、などとはとうてい思えない。
等が理由です。私は、なぜサカキが「さかき」の地位についたのか不審でした。

★トランス状態の小兎「ぽんぽん」
ところが先日、ある小さな事件から、「あるいは?」という一つの仮説を私は得ました。
私のうちには「ぽんぽん」という名の、体重1.5kgに満たない小兎がいます。
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ある日のこと、この「ぽんぽん」に、採ってきた「サカキ」の枯葉をやってみました。「ぽんぽん」は大喜びでパリパリ食べていましたが、突然ぴたりと食べるのをやめました。「あれ? 飽きたのかな?」と思い、それでも念のためにサカキの葉を口の前に差し出してみましたが、食べようとしません。そして、それだけでなく、顔を背けることもせず、じっとしています。何だか妙です。「あれ?…」と思って見ていると、やがて、歩いてお気に入りの隠れ家に向かい始めましたが、その様子がやはりヘンです。なんだか腰が抜けたようなかっこうで、のそのそ這うように歩いていくのです。
…それから3時間、大好物のドライフルーツや麦をやっても食べようとせず、いじっても明確な反応を示さず、なんだかぼう~っとしていて、トランス状態(催眠状態)のような感じで、大いに心配させられました。幸い恢復しましたが、もう二度とサカキをやる気はありません。

★ある仮説
しかし「ぽんぽん」のこの状態は私にある仮説を与えてくれました。それは以下です。
サカキには微量ながら動物をトランス状態にする物質が含まれているのではないでしょうか? 「ぽんぽん」の状態はそれを暗示します。呪術は元来トランス状態におちいった人間が鬼神を使役して何事かを実現しようとするものです。薬物に敏感な古代の人々は、サカキに含まれる微量のトランス物質を知っており、だから呪術の象徴としてサカキを使ったのではないでしょうか? そしてこの習慣がだんだん広まって、サカキが「さかき」の地位を得たのではないでしょうか?

★どこかに証拠がないかな?
ただ、以上の仮説が、根拠のきわめて乏しい意見に過ぎないことは私も重々承知しています。
 ① 「ぽんぽん」のヘンな状態は本当にサカキによるトランス状態だったのか?
 ② サカキに、動物をトランス状態にする物質が本当にあるのか?
ざっと見たところ、そのような指摘はまったくありません。ただ、
 ア) シーボルト『日本植物誌』では「強い収斂性のある種子」「麻酔効果」「精神疾患に対して…効果的」等の記述があります。また
 イ) 『倭名類聚抄』ではサカキの実を「龍眼」と誤解しており、これがサカキの別名としての「龍眼」の名の起こりかとも思われますが、これは「補心虚脾弱」という本来の「龍眼」の効能に似た効果がわずかながらサカキにもあるから生じた誤りなのではないでしょうか?

以上、ほとんど妄説とでも呼ぶべき仮説です。皆さんのご批正をいただければ幸いです。

【ご注意】危険があるかもしれませんから、皆さん絶対にサカキを食べないでくださいね。

2011年8月23日、報告:自然観察大学 品川駐在 小田
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by sizenkansatu | 2011-08-23 12:39 | 植物 | Comments(3)

紀州の話-4

クマゼミ

紀伊白浜の三段壁と言われる海岸の岩壁。
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マサキやトベラなどの低木が群落をなし、うるさいほどクマゼミが鳴いていた。

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これは交尾中で右が雄。
すぐ後ろのクマゼミ(たぶん雄)がうらめしそうに横目で見ている。
とにかくいっぱいいて、波の音をかき消していた。

間近でクマゼミを見たのは今回初めて。眼の高さでよく観察できた。
これまで鳴き声は何度も聞いてきたのだが、高い樹上で見ることができなかったのだ。

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こいつは鳴くときに左の翅を少し浮かせるようなしぐさをする。
翅や腹部のひねり方など、それぞれ個性があって、おそらく鳴き声も微妙に違うのだろう。

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このクマゼミは全体が白っぽく見える。羽化したては微毛があるのだそうだ。
クマゼミというと黒光りのイメージだったが、あれは短期間ではげてしまったということらしい。(親近感!)

セミの中でも、クマゼミの鳴き声の大きさはトップクラスではなかろうか。
この岩壁では、打ち寄せる波の音もかき消す。
それにしてもセミの仲間は、小さい体のいったいどこからあんな大きな音が出るのか?

セミの腹部は中が空洞(!)になっていて、共鳴させることで大きな音になるということだ。
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写真の胸板のような飴色のものは腹弁という器官で、この腹弁をはじめいろいろな仕組みがあるらしい。
鳴くことだけに特化した雄のセミは、何を考えてくらしているのだろう…

クマゼミはもともと九州中心に分布していたのが、近年(と言っても数十年前)西日本に広がり、最近では関東でも見られる。
事務所の若手スタッフに京都出身のものがいるが、彼女にクマゼミ情報を聞くと、子供のころ(20年くらい前)に急にクマゼミが増えた由。それまでは京都郊外ではアブラゼミが優占していたそうである。
もしかすると関東も何十年か後にはクマゼミの世界になっているのかもしれない…
ちなみにセミの分布確認は鳴き声を聞いたとか成虫を見ただけではだめで、幼虫の抜け殻(もちろん幼虫も可)によるそうだ。

余談ですが…

もうひとつ、彼女から教えられた “セミ爆弾” を紹介しよう。
セミ爆弾とは、路上でひっくり返っているセミのことで、死んだかと思って拾い上げた途端、 “ギャワワッ” と爆発的に鳴いて飛び去るセミのことを言うそうだ。
若者の言語感覚はたいしたものだ。


南方熊楠記念館で観た昆虫たち

紀伊白浜の南方熊楠記念館での話。
記念館の展示には粘菌の実物も用意されるなどたいへん興味深いものだったが、内容については公式HPをご覧いただきたい。
南方熊楠記念館 : http://www.minakatakumagusu-kinenkan.jp/
うれしい発見は熊楠がヘビィスモーカーだったことだ。
最近、喫煙者としてしいたげられ続けているので、力強い味方を得たような気がする。

海に面した高台の、その頂上の記念館から見た林地。
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記念館へのアプローチとなる斜面には亜熱帯の植物など、見慣れない植物が移植されていた。
ジャングルのような多様な植物園のおかげか、わずかな滞在時間で面白いものが観られた。

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ハネナガウンカの一種
翅を開いたこの姿のまま、葉裏でじっとして動かない。
実物を見たのははじめてだが、奇妙な昆虫だ。
長い翅もさることながら、太く立派な触角が眼の下(写真では上)に突出て、先の方に感覚毛のようなものがある。(クリックして拡大でご覧いただきたい)

腹部は、頭部と胸部と同じくらいの大きさ。翅だけが異様に長い。
横にまわって全身を撮ろうとしたら飛び去ってしまった。(この姿で飛べる!)
ウンカの仲間だから植物を吸汁するのだと思うが、どんなくらしをしているのだろう。
そして長い翅はどんな役割がるのだろう。
複眼の下から伸びた触角は?
謎は深まるばかりだ…

もう一つ奇妙な昆虫。
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アカヒゲベニトゲアシガというらしい。
漢字で書くと赤髭紅棘脚蛾だろうか。写真と比べるとその意味が分かる。
写真がよくないので紹介するのをためらったのだが、『みんなで作る日本産蛾類図鑑』 http://www.jpmoth.org/Stathmopodidae/Atkinsonia_leechi.html を見ると、“118年ぶりの再発見か?” とある。
2005年に、1988年以来なんと118年ぶりに発見された希少な蛾らしいのだ。
これは、みなさんに見ていただかねば!
“こんなの出しなさんな” と言われてしまいそうな写真だが、ご容赦いただきたい。
2005年の再発見以降は東北などでも見つかっているようだが、この蛾の生態や歴史についてご存知の方はぜひご教示いただきたい。

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ベッコウクモバチがアシダカグモの仲間(たぶんコアシダカグモ)を捕らえて運んでいた。
偶然事務所を来訪された狩蜂のT先生に写真を見ていただくと、数年前まではベッコウバチ類とされていたが、数年前からクモバチ類と改められた由。クモを狩るのでクモバチ。
写真のように触肢をくわえて運ぶのが特徴だそうだ。

獲物が大きく重いので引きずるように運ぶ。
途中ときどき獲物を離し、あたりを確認するかのようにぐるりと巡回して、あやしいヤツ(私のこと)をじっと睨みつける。
私がビビったのを確認して、また獲物を運びはじめる…

※ 関連してご覧ください:『アシダカグモのお蔭です』 http://sizenkan.exblog.jp/12145359/

ところで…
T先生の40年間におよぶ狩蜂研究の集大成として、『狩蜂生態図鑑』(仮称)を作成中だ。
狩猟シーンの圧倒的な写真は、断片的に拝見したことはあるが、系統的にまとめて見られるというのはすごいことだ。2012年春の完成が楽しみだ。
なお、かつては狩人蜂(かりゅうどばち)と言われたものだが、最近はなぜか狩蜂(かりばち)と言われている。

2011年8月22日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-22 12:57 | 昆虫など | Comments(0)

紀州の話-3

紀州で見たチョウ

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ツマグロヒョウモン。
近年は関東でも普通に見かけるが、関西以西が本場。
写真は翅の先端が黒くない雄だ。
ちなみに “ツマグロ” は漢字で表すと “褄黒” で、翅の先が黒いという意味だそうだ。雌の翅が黒いからといって “妻黒” ではない。
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ツマグロヒョウモンの蛹は金属鋲のような独特の紋様がある。
触るとくねくねと動きこの鋲が光る。
天敵を脅かす効果があるのだろうか?
このヘビメタに驚くかもしれない…

急な石段を登っていると、目の前でひらひらとチョウが近づき、ポイと石段にとまった。
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スミナガシではないか! ずっと見たかったチョウだ。
離れた位置からまずシャッターを切り。慎重に近づきながら撮り続けていく…
細かなモノトーンのような紋様に、微妙な色の変化があるのが観えてきた。
名前は絵画の技法 “墨流し” に由来するというのがうなずける。
翅の端のV字紋様が抑えとなり、デザインを引き締めている。
シブイ!
もっと近づこうとしたら、プイと飛び立ってしまった。う~む。無念だ。
(写真はけっこうトリミングしています)

スミナガシの石段には水がちょろちょろと流れていて、たぶんこれを吸水に来たのだろう。

石組みの隙間にはサワガニがいた。
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関東で見慣れた黒っぽいサワガニとは違ってゆでたように赤い。
ここで見たサワガニはこのタイプがほとんどだった。地域個体群の違いということらしい。

熊野古道の茶店で、店内を数頭のコジャノメが飛びまわっていた。
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吸っているのは、直前までベンチに座っていた人の汗だろうか…
人を警戒するようすがない。
人とチョウの共生については、去年キベリタテハで経験済み。(http://sizenkan.exblog.jp/11838835/ をご覧いただきたい)

〔訂正〕上の写真はヒメジャノメではなくコジャノメでした。斑紋の数が違います。申し訳ありませんでした。2011.8.26

撮影できなかったが、一番目立っていたチョウはモンキアゲハだった。
大きな体で、全体が黒に白い斑紋が目立つ。
写真はどうかほかで見ていただきたい。例えば…
http://www.j-nature.jp/butterfly/zukan/ageha11.htm

モンキアゲハは本来西日本が本場のようだが、近ごろは関東でも増えているらしい。
食草はアゲハと同じミカン科だそうだ。
たくさん飛んでいたのだが、飛びっぱなしでちっとも止まってくれなかった。残念。


カゲロウがビッシリ

熊野川の支流のとある温泉で、旅館の窓ガラスを見て驚いた。
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遠目には蚊かユスリカだろうと思ったのだが、近くで観るとカゲロウだ。
さすがにすごい自然度。
すぐ後ろには脱皮殻が見える。
旅館は川に面していて、そこから出てきたものだろう。
窓のあちこちで羽化していたのを、一つずつ確認すると…
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亜成虫がいた。さっきの成虫とは別種らしく、すこし大形。
触角のように前方に伸びているのは前脚で、長い尾とバランスを取るかのようだ。
ガラスに映った姿はいかにもはかなげ。

カゲロウはまず亜成虫になって飛び立ち、その後改めて正式に羽化するというややこしい手順を踏む。
それにしても、この亜成虫からきれいに脱皮するのは難しそう。
極薄の翅の部分もちゃんと脱皮するのだろうか?
気になってもう一度窓ガラスの脱皮殻を観ると…
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小さいがちゃんと翅の抜けた後がある。羽化の精密さに感心する。

しかし、より進化したとされる完全変態の昆虫では亜成虫のシステムが引き継がれていないところを見ると、どこかに無理があるのだろう。


カタツムリの成貝

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貝殻の縁が反り返っているのは成貝の証、と専門家のM先生にうかがったのを思い出した。
幼貝の貝殻は年輪を重ねながら成長を続けるので、縁は真っ直ぐ。
成貝になると身の安全のためか、丸く反り返るのだそうだ。

本来夜行性のカタツムリは、昼間に成貝が姿を見せることはないらしいが、これはどう見ても成貝。曇りなのと、湿度が高かったためだろうか。
(ふだん昼間見かけるカタツムリは、遊んでいて時間を忘れたいたずらっ子だそうだ)

写真ではつい眼にピントを合わせてしまったが、カタツムリは貝殻で同定するのだった。が、それはご勘弁いただくとして、M先生に写真をお送りしたら、すぐに以下のご回答をいただいた。

……………………………………………………

立派な成貝ですね。
イセノナミマイマイEuhadra eoa communisiformis)です。
軟体に背条線がなく、殻の光沢が弱いのがこの写真で分かる特徴です。
伊勢湾周辺の普通種。

これが東海にいくとより扁平なヒラマイマイ(Euhadra eoa)に、近畿にいくと山手では重厚な殻をもつギュリキマイマイ(Euhadra eoa gulicki)になります。
ギュリキマイマイからイセノナミマイマイへは連続的な変異がありますし、この個体の扁平さは、ヒラマイマイへの連続変異の間にあるようです。

「ナミマイマイ」とはつくものの、ナミマイマイの仲間ではなく、ヒラマイマイやギュリキマイマイの仲間です。
ちょっとややこしいですね。和名のつけ方の失敗です。

撮影場所はどこでしょうか?(尾根筋で種が変わるので)… また大きさはどれくらい? ちなみにナチマイマイやクマノマイマイも同じグループ。
クマノマイマイの可能性もゼロではないですが、軟体のたくましさや、殻色の深さがないように見えます。

写真、さすが生きもの好きですね!
私はどうしても殻にピントだけでなく構図まであわせてしまい、後で見ると、眼が写ってない、という失敗がよくあります。

……………………………………………………

さすが専門家の見立ては深い!
しかも、お忙しい毎日のはずなのにもかかわらず、即座にご返答いただいたのだ。

ところでいま、M先生を中心として、画期的なカタツムリ生態図鑑を作成中だそうです。
ご期待ください。

2011年8月19日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-19 13:13 | 昆虫など | Comments(3)

紀州の話-2

熊野古道の植物

熊野古道では、さぞかしたくさんの生物との出会いあるはずと期待していたのだが、残念なものだった。
古道の周囲は広大な山林で、管理の行き届いたスギ林だから、生物多様性の点ではあまりよい環境ではないのかもしれない。シダ類が繁茂しているのだが、それも多様な印象はない。

それに比べて、時々差し掛かる集落では、農作物や帰化植物、園芸植物によってさまざまに彩られ、多様な生物がくらしている。
今回、軽薄な旅行者としてつまみ食いのように中辺路を10kmほど歩いただけなので、あくまでその範囲の感想ではあるが…

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ベニバナボロギク。
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頭花が下向きになる特徴的な花序。
キク科の帰化雑草とされているが、ここではたいせつにされているらしい。
きれいに草刈りされた古道沿いで、ベニバナボロギクだけを刈り残しているようなのだ。
頭が低く、礼儀正しく信心深い植物と思われているのだろうか。

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ナツズイセン。
ヒガンバナ科で、同じように花の時期に葉はない。園芸用にも栽培され、リコリスという名前でいろんな品種があるらしい。

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老夫婦が熊野名物のカラスと一緒に我々を歓迎してくれた。
この老夫婦はシシオドシのように水力で挨拶してくれる。

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コニシキソウかと思ったが、葉の斑紋がない。
さすが古の道、在来種のニシキソウががんばっているのかと思ったのだが…
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茎の毛が多いので、どうやら帰化雑草のアレチニシキソウのようだ。
アレチニシキソウらしき雑草は随所で観察できた。

2011年8月16日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-16 12:55 | 植物 | Comments(0)

紀州の話-1

7月末から8月はじめに和歌県に行ってきたので、その報告をさせていただく。

熊野の巨樹

山熊野速玉大社のご神木、オガタマノキ。
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すごい迫力。
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案内板に、天然記念物、モクレン科、樹高21m、目通り幹回り1.65mの大樹と記してある。
樹皮はマメヅタで覆われている。
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名前はマメヅタだが、マメでもツタでもなく、ウラボシ科のシダ植物。
胞子嚢が確認できる。
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高所の枝には着生ランが見える。
説明書きにボウランという暖地性の植物と記されていた。
このオガタマノキの巨樹ではミカドアゲハも育っているらしい。

次は熊野那智大社のクスノキ。
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樹高27m、幹回り8.5m、樹齢約800年の天然記念物で、平重盛の手植えと伝えられている由。
こちらの御神木はやや通俗的。
樹幹部の空洞の胎内くぐりというのがあって、護摩木を手に中に入れるのだ。
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護摩木初穂料300円。

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どこの境内でも目立ったのがイヌビワ。
ビワに似ているが食えないのでイヌビワという名前が付いたらしいが、どう見てもイチジク似だ。(分類はクワ科イチジク属)
イヌビワは関東にもあるが、ここ紀州ではとても多かった。
もともとイヌビワの分布は関西以西で、東京近郊で見るイヌビワは導入移植されたものなのだろう。


熊野大社といえばカラス
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三本足の八咫烏(やたがらす)は現在サッカー日本代表のシンボルとなっているが、熊野大社が元祖。太陽の使いの神獣とされている。
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熊野牛王符(ごおうふ)は、一般的な護符のほか、古くから起請文として利用されている。
この牛王符は、熊野権現の使いである烏で文字が書かれている。
なんと記されているのか、残念ながら私には読めない。


熊野古道を少しだけ歩いた

熊野古道はご存知のように熊野三山を中心に伊勢神宮、高野山など紀伊半島を縦横に結ぶ道で、総延長は1000kmに及ぶと言われている。
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千数百年の歴史を持つ古道は、自然と人間が作り出した傑作。
歩くだけでなんとなく荘厳な気持ちになってくる。
この道が太古の昔につくられたのだと考えると、まったく頭が下がる。
石畳あり、玉砂利や砂を敷いたような箇所あり、重機のない時代によくぞこれだけのスケールの道を整備したものだ。
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山林のほとんどは整備されたスギの人工林。
どこを見ても手入れが行き届いている。
自然林とはちがって、これはこれで美しい。
世界遺産になってからは自分の山林の手入れができなくなったと聞いた記憶があるが、今は解決しているのだろうか。


余談ですが…

熊野古道には九十九王子というのがある。
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これは “牛馬童子” という、九十九王子のうちのひとつ。
かわいい顔をしているが、牛と馬を横並びにしてまとめてまたがるのだから、驚くべき巨人だ。
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隣にいたのは役行者。
説明書きを見てはじめて役小角と分かったのだが、よく観ると確かに長いあごひげと一本歯の高下駄姿だ。
ほかで見るおそろしげな修験者像とは雰囲気がまるで違う。

九十九王子自体が信仰の対象にもなったようだが、明確な由来はわからないそうだ。
牛馬童子のような石像は珍しく、普通、石塔や石碑が数kmごとにある。
熊野詣での人々には、旅程の目印・励みになったものと考えられるが、なぜか中辺路と紀伊路の二つの道にしかないらしい。


もう一つ余談

熊野古道の自販機で、カボス果汁入りの飲料(名前は失念)を購入した。
これが絶妙な大人の味! 酸味とほのかな苦みが夏の熊野古道にぴったりだった。
それ以後、もう一度飲みたいとずっと探していたのだが、残念ながらどこにもなかった。
みなさん紀州・熊野古道へ行ったらぜひ探して飲んでみてください。
ちなみに私が買ったのは、発心門王子の近くの休憩所そばの自販機です。

次回から、紀州で見た生物の話をさせていただく。

2011年8月15日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-15 19:03 | フィールド | Comments(2)

残暑見舞い

毎日猛烈な残暑が続いていますが、如何お過ごしですか。

今年は節電の影響でお盆休みが変更になってしまい、今週も通常通りに出勤しています。
今朝なんぞ、駅から会社へ向かう途中で熱中症になりかねないからここから引き返したほうがいいぞなどと悪魔のような囁きが聞こえてくる始末。
たまたま、涼しげな写真があったので贈らせていただきます。
イカ刺しを肴に冷たいビールといきたいところです(笑)
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写真のコウイカ(多分)は先週末に葛西の水族園を訪れた際に水槽の中にいたのを撮ったものです。夏休みで子供たちに揉みくちゃにされながら、割りと空いている水槽前での一枚です。
水槽のガラスは結構分厚いのでレンズを真っ直ぐに向けていないと歪みがでてしまいます。
水槽の照明も中の生き物に合わせて明るかったり暗かったりするため、高感度デジタルカメラならではの自由度の高さが有難いですね。
空いている時期にゆっくりと見て回りたいものです。
残念ながら、美味しそうだなという視点はあっても自然観察という視点は欠如していますね(笑)

2011年8月11日、自然観察大学 習志野駐在Hiro

………………………………………………

事務局宛に暑中見舞いをいただきました。ありがとうございました。
ご本人了解の上、紹介させていただきます。
自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-12 12:23 | その他 | Comments(0)

ヘクソカズラとグンバイムシ

ヘクソカズラ -不思議な花の形-

ヘクソカズラはこの時期よくめだつ。
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夏のつる植物の代表的な雑草の一つだ。
同じアカネ科のアカネやヤエムグラなどはトゲでひっかかりながら絡むのだが、ヘクソカズラはトゲがなく、巻きつき型のつる植物である。
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花も独特な筒状の形で、アカネ科らしくない。
不思議な形の花だ。
花の赤いところをお灸の火に見立てて、ヤイトバナ(灸花)とも言われる。
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ヘクソカズラの名前は、この葉を揉むと屁糞のようなすごいにおいがするから、ということはよく知られている。すごい名前を付けたものだ。
たしかにくさいが、個人的には名前ほどのことはないと思うのだが、いかがだろうか…

ヘクソカズラグンバイ -異形チャンプ-

このヘクソカズラに付くヘクソカズラグンバイという虫がいる。
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異形ぞろいのグンバイムシの中でもナンバーワンの奇怪な姿。
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拡大してみると、頭胸部に風船のような柄杓のようなものがある。
Y先生いわく “グンバイムシ界の小林幸子”
この飾りは、風に乗って長距離移動するための帆のような働きをするのだと考えられる。

ヘクソカズラグンバイは近年分布を広げていて、写真は昨年(2010年)野川公園の観察会でY先生が発見したもの。
(フィルム撮影のスキャニングなので画質の劣化はお許しいただきたい)
今年も探しているのだが、今のところまだ発見できない。
これから数が一番増える時期だと思うので、引き続き注意して観察したい。
みなさんもお近くのヘクソカズラで探してみてはいかが?
発見したらぜひご一報ください。

余談ですが…
屁糞のような葉を吸収するヘクソカズラグンバイは、いったいどんな臭いなのだろう。
濃縮され、極め付きの臭いになっているのだろうか?
興味のある方はぜひ試していただきたい。
これについても報告をお待ちしている。

2011年8月10日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-10 18:55 | 植物と虫 | Comments(0)

ホタルの発光を撮る

やっとの発光の話になった。
ヘイケボタルである。
d0163696_12311159.jpg
まずまずの写真はこれ。
発光部は見えないが、元気な顔が見える。
発光がモワッとして心霊写真のようになってしまったのは、長時間露光の間にホタルが移動したためだ。
なかなか思ったような写真は撮れない。

d0163696_12304221.jpg
こちらは横からのカット。
露光中に頭をもたげてくれたのは良いが、ピントが合ってない。
暗闇で修正することはできない。(すみません。ご容赦ください)

ヘイケボタルは日没後に発光をはじめ、しばらくの間は盛んに発光しながら活発に行動する。
しかしこの時間は元気がよすぎて写真は撮りにくい。
d0163696_12321123.jpg
これはヘイケボタルが明滅しながら透明容器の壁を移動した軌跡。
シャッターを開いた30秒間の行動記録だ。
活発に歩いて、リズミカルに点滅を繰り返すことがわかる。

動くということは、ピントの問題が出てくる。
ピントを合わせようと照明を当てると、ホタルは発光をやめてうつむき姿勢になってしまうのだ。
ホタルの光で小さな虫にピントを合わせるのは不可能なので、じっとしていてもらうようにお願いして、結果は天に任せるしかない。

午後9時くらいになると、ホタルはほとんど動かなくなる。
d0163696_12324930.jpg
一時間も発光すると疲れてしまうのだろうか。
じっとうつむいて、弱い発光を続ける。
撮りやすいのだが、絵にならない。

ところで、
ホタルを腹側から見たら面白かった。
d0163696_12332611.jpg
この角度からはまるで別人のよう。ヤマネのような夜行性の動物に共通する表情だ。
透明容器に止まった姿を撮ったのだが、容器が汚れているのはご容赦いただきたい。

余談ですが…
撮影方法を紹介しよう。
まず、ホタルの光だけで撮ると次のようになる。
d0163696_12342656.jpg
発光部分しか見えない。
シャッターは30秒開きっぱなしで、その間に何度か点滅した結果が上の写真だ。

これにストロボを併用すると次のようになる。
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30秒間ホタルに光ってもらって、最後にストロボを当てて姿を映したということだ。

マニアのためにさらにご報告しておく。
絞り22、ISOは6400、露出補正は+3EVでストロボは反対に-3EV補正。
補正は好みの分かれるところだろう。
撮った数は100コマ程度と、数だけ見ればたいしたことはないのだが、三脚にすえての撮影であることと、シャッタースピードが30秒であることを考えると、撮影の苦労がお分かりいただけると思う。
以前フィルムで撮ったことを考えれば、デジタルでずいぶんラクにはなったが…

2011年8月8日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-08 12:44 | 昆虫など | Comments(1)

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