自然観察大学ブログ

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クイズ:この写真はなんでしょう?

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まずは写真を見て、少し考えていただきたい。
少し画面を引いてみる。
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さらにもう少し引く。紙粘土かフスマのようにみえる。
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コガタスズメバチの巣だ。植物を噛み砕いて唾液でこねたものだろうか、フスマというよりも和紙のような手触りだ。
色は材料の違いであろう、きれいな紋様ができるものだ。これは立派な職人技だ。

この巣は以前報告させていただいたもので、改めて今回(12月下旬)に見てみるとハチはきれいに消えていた。
前回の報告の後、スズメバチは冬になると女王バチだけが朽木の中などに移動して越冬するということを聞いた。
そうは言っても、もしかしたら何頭かは弱った蜂がいるかもしれないと考えたのだが、案の定、もぬけのカラであった。残念。
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そういえば、7年ほど前に、スズメバチの越冬を撮影していたことを思い出した。
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Y先生に同行した時に偶然朽木の中で発見した越冬中の オオスズメバチ キイロスズメバチ* の女王である。
めったに観られないものらしいが、さすがY先生と一緒だとおもしろいものが観られる。
冬を越した女王バチは、翌年たった一頭で巣作りをはじめ、家族を増やしていくということだ。前年に交尾を済ませてから越冬に入るのだろうか。

………………………………………………………
【注:2011.2.21訂正】
越冬中のハチはオオスズメバチではなくキイロスズメバチだそうです。訂正します。
判別のポイント等は本項のコメントを見てください。
コメントいただいた伊澤さんは26年間スズメバチ類の生態を研究されている方です。
伊澤さん、ご指摘ありがとうございました。
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話を巣に戻そう。
何度見てもカラだが、この巣作り技術はすごい。
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この中で幼虫が育っていたのだろう。
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巣は上下二段重ねになっていて、周囲は和紙のようなものを何層も重ね、ふわふわしている。空間がたっぷりあって保温性がよさそう。
さらにばらしてみよう。下の段をはずして、上の段を観てみる。
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不思議なことに上段は個室の口がふさがっている。中央部の穴は下段を取り外したときに開いた穴なので、全部の口が閉ざされていたことになる。
もしかするとこの中に幼虫でもいるのかと思って破ってみたが、中はカラであった。
これは不思議だ。
上段は下段よりも先につくられているはずだから、上段の姉たちは下段の妹たちよりも先に羽化し、働き蜂として活躍していたのだろう。しかし、わざわざ羽化後の個室の蓋を閉ざす理由はなんだろうか。
ナゾだ。
どなたかご存知の方がいたらご教示いただきたい。

年末のご挨拶
2010年のブログはこれで終了です。
みなさまよいお年をお迎えください。
新年はおそらく1月11日以降の再開になります。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2010年12月28日、報告:事務局O
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by sizenkansatu | 2010-12-28 19:13 | 昆虫など | Comments(6)

12月のミチヤナギ -タデ科の花-

12月だというのに、ミチヤナギの花が咲いているのを見つけた。
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径3mmほどの小さな花だが、拡大するとなかなか美しいと思う。
それにしても12月である。『形とくらしの雑草図鑑』(岩瀬徹、全農教)で確認すると “花期5~9月” とある。暖かい日だったとはいえ12月に花を観るとは…
生物だから型にはまらないことはもちろんだが、例外が多いというのも雑草らしいことなのかもしれない。
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さらに拡大して観ると、花糸(かし:雄しべの柄の部分)のもとの方が太くなっている。この形からすると “糸” というよりは “綱” という印象だ。
ほかの花も観てみたが、花糸はやはり太くなっていた。

ところで、タデ科は地味で目立たない花が多い。その意味でも雑草らしい雑草といえるかもしれない。
『晩秋の雑草観察』 http://sizenkan.exblog.jp/12360830/ のイヌタデのところでも話したが、タデ科は花弁がないから地味なのだろう。
ミチヤナギも花弁に見える部分は“がく”なのだ。

植物は科ごとの特徴が分かってくると、観察の面白さが違ってくるようだ。

※ 『形とくらしの雑草図鑑』(岩瀬徹、全農教) http://www.zennokyo.co.jp/book/ykhb/kkzso.html には、主な科の特徴が分かりやすくまとめてあります。これはタデ科の特徴のページです。
これから植物観察をしてみようという方にもおすすめの図鑑です。(宣伝してすみません)
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2010年12月20日、報告:事務局O
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by sizenkansatu | 2010-12-20 19:37 | 植物 | Comments(0)

カメムシの吸蜜

12月7日のブログを見て、私の考えを記させてもらいます。
カメムシはたぶん吸蜜をするだろうと思っています。というのはアブラムシがたくさん発生しているところにチャバネアオカメムシが居たり、本来寄主植物ではない植物の花に居たりすることがあるからです。

オオキンカメムシのこと
以前、夏の四国山地のサンショウの花で、オオキンカメムシを見たことがあります。
オオキンカメムシの寄主植物はアブラギリ(シナアブラギリを吸汁することもある)で、繁殖には果実が必要です。アブラギリが果実を着けるのは夏から秋にかけてであり、この時期に繁殖した個体は晩秋に越冬地(主に海岸部の照葉樹)に移動します。この時期四国山地を高知県側に越えている相当数の個体が確認されています。(オオキンカメムシは年1世代)
前述したサンショウのオオキンカメムシは、逆に越冬地から繁殖地へ移動していた個体ではないかと思われます。アブラギリは唐傘の紙に塗る油を採るため栽培されていたもので、何処にでも普通にある木ではないからです。
オオキンカメムシの移動能力は高く、かつて北アルプスの雪渓上で見つかったとの報告もあります。繁殖地から越冬地、そして再び繁殖地に向かうという移動には、やはりそれなりにエネルギーの補給が必要で、それにはアブラムシの甘露(排泄物)や花の蜜が良いエネルギー源なのではないかと、私は考えています。
あくまで推測の域を出ませんが、オオキンカメムシのように寄主範囲が狭く、繁殖時期が限られているカメムシにとって、花の蜜や甘露は絶好のエネルギー源になっているのではないかと思っています。
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写真はミカン類の花についたオオキンカメムシ成虫。(川村満氏撮影。フィルムからのスキャニングなので品質劣化はご容赦ください)

ところで…
ウスモンミドリカスミカメは我が家の庭の野菊や春菊にたくさんいます。春菊では生長点部を加害していますが、野菊では花上にいるのがよく目に付きます。前回のブログに掲載されているように筒状の花に口器を刺している個体もいれば、下の写真のように未開花のものに口器を刺している個体も見られます。
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こちらの植物はキク科のレタスです。
ウスモンミドリカスミカメにとってキク科植物は繁殖植物であり、蜜を吸わなくてもよいわけですが、開花期には花に多く見られることから、栄養価の高い部位を選んで吸う可能性も考えられるのではないでしょうか。栄養成長期には生長点部、開花期には花蕾部を好んで吸っているように思います。開花期には蜜を吸うことも多分にありそうです。

以上、カメムシの吸蜜についていろいろ書きましたが、あくまで推測で、全く確証はありません。

2010年12月13日、報告:高井幹夫(自然観察大学 土佐支部長)
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by sizenkansatu | 2010-12-13 16:59 | 昆虫など | Comments(3)

古城の紅葉 ~ シダ ~ ハモグリバエ

文末に追記があります(2013年7月26日)

11月末に奈良県の高取城というところに行った。すばらしい紅葉の季節だった。
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ここは虎口といわれるところ。守備のために入り組んだ複雑な構造になっている。
高取城はそのスジでは著名な山城で、日本三大山城のひとつとされている。現在は石垣を残すのみだが、明治20年代まで天守があったそうだ。当時の写真も残っている。
どうして天守閣が無くなったのか、はっきりとした経過がわからないらしい。わずか120年ほど前というのに、不思議な話だ。

シダの魅力
石垣はシダ植物によって、いっそうその魅力を増している。シダ植物はしっとりとした “和” の雰囲気に合うのだ。(非科学的ですみません)
屋上緑化もよいが、石垣やせめてレンガ造りでシダが生える都市づくりを目指すというのはどうだろうか。昼休みに事務所ビルの裏の石垣で前葉体を観察する、なんて考えるとワクワクしてくる。
先日の自然観察大学シダ植物観察会で、詳しく同定できなくてもシダを楽しむ方法を教えていただいた影響だろうか…

シダを食べる虫の話
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これはハモグリバエの仲間の仕業らしい。シダ植物につく昆虫はふだんあまり目にしない。これまで私はアブラムシと小さなカメムシを見たことがある程度だった。

ハモグリバエは幼虫が葉に潜って内部を食べ進むので、写真のような食べ跡になる。野菜の春菊などで家庭の台所でもよく目にする。蛾の仲間にもハモグリガというのがいてこれらとあわせて俗に “エカキムシ” “ジカキムシ” といわれる。

d0163696_050778.jpg同じハモグリバエの仲間の、幼虫と成虫を紹介しよう。逆光に透けた中に表皮を残して葉肉だけを食べる幼虫が見える。いわゆるウジだが、極限まで進化したシンプルな姿という見かたができる。画面右側が頭部。
d0163696_0564896.jpgなお、これらの写真はこのところお世話になりっぱなしの高井幹夫氏による。


話をシダに戻そう
後日、シダのハモグリバエについて調べてみたが、身近にそんな資料は見あたらない。
困っていると、何という偶然! 高名な双翅目(ハエ目)の専門家のS先生から “今春、シダ植物のハモグリバエ3種を公表しました” というメールをいただいた。
渡りに船とばかりに、先の潜葉の写真をお送りしたところ、さっそく以下のご返答をいただいた。
………………………………………………………
シダ類のハモグリバエは、
●クマワラビに潜るChromatomyia dryoptericola Sasakawa, 1961
●Polypodium属(Europe で)に潜るC. scolopendri Rob.-Des., 1851
●ノキシノブに潜るC. masumiae Sasak., 2010
が日本から知られていますが、前2種の潜葉を見ていませんので、いただいた写真からは同定不能です。
………………………………………………………
“知られている” とあるが、おそらく知らしめたのはS先生なのだと思う。あるいは知っているのはS先生、と言ったほうが良いのかもしれない。

なお、S先生とのかかわりは、恐れ多くも、なかば強引に自然観察大学入学を勧誘させていただいたものである。
S先生、どうもありがとうございました。

ついでですが…
11月21日のシダ植物観察会で、シダにつく虫を発見した。
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こんな感じで表裏に点々ととり付いていた。まわりを見まわすと数多くいた。
はじめはミノガのようにぶら下がってシダを食べているのかと思ったが、よく観るとマユの抜け殻のようだ。周囲には食べ跡がないので、もしかすると他所から移動してきて、ここで蛹化しただけなのかもしれない。
どなたかご存知でしたら教えてください。

2010年12月11日、報告:事務局O


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<2013年7月26日追記>

この虫の正体はニセマイコガ科の幼虫であることがわかった。
詳しくは次のブログで紹介されているので、ぜひご覧いただきたい。

『いもむしうんちは雨の音/目立つ待避所』 
『そよ風の中で/ニセマイコガ科の幼虫』  


この巣は多数観られたが、11月下旬という季節からすると、抜け殻だったようだ。
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by sizenkansatu | 2010-12-11 01:14 | 昆虫など | Comments(0)

吸蜜するカメムシ?

私の近所の江戸川沿いに、矢切(やぎり)というところがある。“矢切の渡し” の歌で有名なところだ。矢切はもうひとつ、伊藤左千夫の “野菊の墓” の舞台となったところでもある。現地には “野菊の墓文学碑”というのもある。
野菊の墓との関係は不明だが、キャベツ畑やネギ畑の傍らで、多数の農家が趣味で菊(ノジギク?)を作っておられる。

11月末になっても、暖かい日にはミツバチやハエ、アブなどが活発に菊を訪花している中で、カメムシを見つけた。
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カメムシの中でもカスミカメムシ科というグループで、『日本原色カメムシ図鑑第2巻』で調べるとウスモンミドリカスミカメというらしい。体長は5mm程度。
以下、記載から興味深いところを紹介させていただく。
食草はキク科多年生草本で、菊のほかレタス(キク科植物です!)、茶、稲など農業上の害虫にもなっているようだ。
色の変異が多いらしく、かつてはウスミドリメクラガメ、コミドリメクラガメなど別種として扱われ、いろんな名前が付けられていたらしい。
さらにややこしいことに、本種ウスモンミドリカスミカメとは別種のコアオカスミカメやツマグロアオカスミカメとも混同されウスミドリメクラガメ、コミドリメクラガメなどと呼ばれていたらしい。(これらは属が異なるのだが似ているということだ!)
聞きなれないカタカナ名が並んで頭が混乱しそうだが、ややこしいということだけは分かった。

吸蜜シーン?
このカメムシのくらしに眼を向けよう。こちらで1頭、あちらに2頭という感じで、けっこうな数のカメムシが菊の頭花についている。
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吸蜜しているように見えるが、カメムシが吸蜜するというのは聞いたことがない。
あとで調べてみたが、やはりそんな記載は見当たらない。もしかすると新発見では? 一人興奮していたが、偶然カメムシ専門家の I 氏にお会いする機会があった。 I 氏は進行中の『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』の著者のお一人である。
さっそく写真を見せてご意見をうかがった。
【 I 】う~ん。たしかに口針を刺していますね。でも、吸蜜するというのは私も聞いたことがありません。もしかすると子房を吸っているのかもしれませんね。
【O】そういうことですか。残念です。ホソヘリカメムシなんかもヒメジョオンの花で見かけますよね。あれも子房を吸っているんでしょうか。
【 I 】そうですね。彼らは何をしてるんですかね。今度気をつけて観てみましょうかね。

以上 “残念ながら新発見ならず” の報告でした。

余談その一
カスミカメムシは巨大なグループで(前述のウスモンミドリカスミカメに近いものだけでも40-50種知られているらしい)、しかもほとんど明らかにされていないカオス(混沌)の世界と言われていたそうだ。
「そのカオスに挑戦する安永先生(*)は偉大な方です。」とは I 氏の言葉である。
* 安永智秀先生は『日本原色カメムシ図鑑 第2巻』の著者。

余談その二
“カスミカメムシ” のグループは10数年ほど前までは “メクラカメムシ” と言われていた。『日本原色カメムシ図鑑』(第1巻)ではメクラカメムシ科とあるが『日本原色カメムシ図鑑 第2巻』ではカスミカメムシ科となっている。前述のウスミドリメクラガメの名称もそれと同じことだ。
メクラカメムシの名称の由来は、単眼がないからとか複眼が白目になっているからとか言われているが、改名のきっかけは “複眼があって見えているのにメクラカメムシはおかしい” とカスミカメムシを提唱した方がおられたということらしい。
ちょうどそのころ、蔑称や差別用語をなくそうという社会情勢にあり、カスミカメムシの新名称は急速に普及した。
農業害虫の分野で著名な例をあげると、
  アカヒゲホソミドリメクラガメ ⇒ アカヒゲホソミドリカスミカメ
  アカスジメクラガメ ⇒ アカスジカスミカメ
ということである。各種印刷物で○○メクラガメの表記があると、これはたいへんとばかりに○○カスミカメに修正して刷り直す場面が多々あった。
提唱したカメムシ学者はむろんのこと、当のカメムシたちにとっては、農業界でどう表記されようが気にならないと思うのだが…
一方、『日本原色カメムシ図鑑』を発行した貧しい出版社にとって、全編カスミカメに修正して刷り直すなど、とんでもない出費である。見てみぬふりであったことはお許しいただきたい。

余談その三
文字ばかりになってしまったので、高知の昆虫写真家、高井幹夫氏の傑作写真を紹介しよう。(写真をクリックすると拡大され、すごさが分かります)
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タバコカスミカメがカボチャの花の中にいるところ。彼らは花弁を吸っているのだろうか。体長は3-3.5mmと小さいが、これで成虫だそうである。雰囲気もよいが、この角度で3頭ともにピントがびしっと合っているところがすごい。
ところで、
アブラムシがカメムシ目という分類も、この写真をみると得心が行くのではありませんか?

2010年12月7日、報告:事務局O
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by sizenkansatu | 2010-12-07 22:05 | 昆虫など | Comments(0)

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