自然観察大学ブログ

カテゴリ:植物( 152 )




親愛なる、そのへんの植物-13 「クズの花」

Oさんのご報告に、クズの花は葉陰にあることが多いけれど、虫媒花ならば一番目立つところに咲いて訪花昆虫を誘うのでは? ・・というご意見がありました。  

そこでクズの送粉者誘引について私なりに考えてみました。

まず、クズの花の形からすると、送粉者は主にハナバチを中心とした昆虫だと思われます。ハナバチの仲間なら、花びらを押し下げて、花の奥にある蜜を吸えるからです。クズの花は、形でもって送粉者を限定し、効率よく花粉を運んでもらえるようにしているのでしょう。
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花の中心にある黄色い部分は、送粉者に蜜の場所を示すためのマーク「蜜標」です。また、花の色も鮮やかです。
以上の特徴から、クズの花が日中に送粉者を引きつけたいのは確かだと思います。

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花の付き方も観察してみましたが、花茎は葉腋から上に向かって出ていて、一緒に出ている葉には隠れておらず、むしろ葉群から抜け出して送粉者を引きつけようとしているように見えました。
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けれど、ここで注意しなければいけないのが、クズの並外れた繁茂ぶりです。ツルが一重なら問題はありませんが、旺盛に成長を続け、ツルが互いに絡まりながらモシャモシャに茂ったら? そんな状態では、花が多数の葉に埋もれて、見えづらくなることもあるかもしれません。

そこで、大繁茂と花の匂いの関係を考えました。
クズの花には、けっこう強い匂いがあります。花の匂いで送粉者を誘引するのは夜に咲く花が多いですが、植物が茂った森などでは、視覚よりも匂いの方が遠くまで届く可能性もあるそうです。

だとすると、クズの並外れた大繁茂は、深い森に相当すると言っても過言ではないのでは? ここからはあくまで私の推測ですが、クズが旺盛に成長するには光合成をするための葉が欠かせませんが、あの繁茂ぶりでは、葉で花を覆ってしまうことにもなりかねません。そんなとき、花の匂いは、遠くにいる虫や葉が重なった中にいる虫たちを引きつけるのに一役買っているかもしれません。ハナバチ媒花の場合、花の匂いがあるものが多いので、クズの花の匂いもハナバチに対して誘引効果がある可能性はありそうだ、そんな風に思いました。

クズの戦略は、旺盛に光合成をして、どんどん成長することのようですが、それでも、繁殖のための工夫もぬかりなくしているのですね。

2013年9月18日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-09-18 12:44 | 植物 | Comments(1)

親愛なる、そのへんの植物-12 「クズの葉の運動」

クズの3つの小葉は、閉じて合わさったり開いたりして動きます。どんな仕組みで動くのでしょうか。Oさんの報告 「猛暑に耐えるクズ」 を受けて、私も小葉の動きについて考えてみました。

まず、なぜ日中に小葉を合わせて閉じるのか。
調べてみたところ、ちょっと気になる研究を見つけました。クズは小葉を畳んで合わせると、広げた状態よりも葉の温度が低くなるというのです。しかも、小葉を合わせていない状態よりも光合成速度が大きくなるのだとか。

植物は葉の温度が上がりすぎると光合成活性が落ちることが知られています。クズが葉を閉じるのは、強い日射で葉の温度が上がるのを防ぎ、光合成活性を落とさない工夫なのかもしれません。
河原や林縁などで、あっという間にまわりを覆い尽くし、大繁茂しているクズの姿をよく見かけます。クズの並大抵でない成長力の秘密をみた気がしました。

ただし、クズは夜間も同じように葉を合わせて閉じるのですが、こちらの理由の方はまだよくわかっていないようです。

d0163696_1351393.jpg次に、どんな仕組みで小葉は動くのか。調べたところ、マメ科とカタバミ科の場合、小葉の動きは、葉枕の細胞の膨圧が関係して起こるものだそうです。


d0163696_1354082.jpg上の図を拡大しました。葉枕(ようちん)とは、小葉の基部にある少し膨らんだ部分です。

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動く仕組みはこうです。
葉枕の中心には維管束がありますが、その上下にそれぞれ細胞群があります。
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これらの細胞群の間で、水分が移動するそうです。上の細胞群に水分がたまると上側の膨圧が高くなり、小葉は下に曲がります(膨圧:上>下)。逆に下の細胞群に水分がたまると下側の膨圧が高くなり、小葉は上に曲がります(膨圧:上<下)。
葉の動きが、このように上下に分かれた細胞群の力関係で決まるものだとすると、Oさんの言われる “バイメタルのような構造” と言えそうですね。


参考までに、こちらは、私の観察したクズと同じマメ科の ノアズキ です。
(花がねじ曲がっていておもしろいです)
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ノアズキも比較的陽当たりのよい場所に生育していて、林縁や堤防などの草むらでよく見られます。

d0163696_139457.jpg 私が観察した時は、3つの小葉は下向きに曲がっていました。
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ただ、ノアズキも、強い日射がある場合はクズと同じく葉を上向きに立てていることがあるようです。私が観察した日はあいにくの雨模様だったので、また天気のよい日に見てみたいと思います。

2013年9月13日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-09-13 13:13 | 植物 | Comments(1)

猛暑に耐えるクズ

文末に追記があります(9月15日)

クズは、暑い日には葉を閉じて日照を避けることが知られている。
今年の夏は彼らにとっても〝これまでに経験したことのない猛暑〟なのではないだろうか。

葉を閉じたクズ。
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3枚の小葉をぴったりと閉じている。
このとき8月16日の朝9時30分。もちろん気温は30度を超えている。
彼らは日陰に逃れることもできないし、むろんエアコンなど知らない。猛暑を乗りきるためのせいいっぱいの行動なのだろう。

念のため、クズの通常の状態はこれ。
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一枚目の写真と同じときの写真だが、日陰ではちゃんと葉を開いていた。
3枚ワンセットの3出複葉となる。

クズは日照がつらくなってから葉を閉じるわけだが、それは何時ころなのだろう。
別の日に、すこしだけ早起きして観察したのだが、7時すぎにはもう閉じはじめていた。
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真ん中の小葉が、ぐいっと上に反っている。
このときの気温は、ちょうど30度くらいだったと思う。
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別の葉では、もうほとんど閉じる体勢だ。

それにしても、どんなしくみなのだろう。
バイメタルのような構造になっているのだろうか?
ネムノキやカタバミなどの就眠行動と同じなのだろうか?
…S子さんのご意見をうかがいたいものだ。

こちらは、閉じた葉の間から顔をのぞかせたクズの花。
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クズの花は、姿も匂いも派手だが、なぜか恥ずかしそうに葉陰にあることが多い。
訪花昆虫のために日よけになっているのかと考えていたのだが、これではイザというときの役に立たない。
ふつう、植物の花(虫媒花)は一番目立つところで昆虫を誘うものだと思うが、これも謎である。

…………………………………………………………………

9月15日追記
S子さんが葉を閉じるしくみを投稿してくれました。とても分かりやすい、ていねいな図入りです。ぜひ見てください。 
…………………………………………………………………

2013年8月21日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2013-08-22 06:44 | 植物 | Comments(0)

ブラジルコミカンソウ -秋葉原で気ままに暮らす-

雄花と雌花

ブラジルコミカンソウは、花よりも果実が目立つ。
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名前の元になったコミカンソウと違って、こちらはあまりミカンの実には似ていないように思う。
コミカンソウに比較して花柄が長いので、別名ナガエコミカンソウあるいはナガエノコミカンソウとも言われる。
原産地はブラジルではなく、インド洋あたりだそうだ。
※ 日本帰化植物写真図鑑、清水矩宏ほか、全農教 

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果実と同時に開花しているのは雄花だ。もとの方にはつぼみが多数観られる。
先端はもう果実になっているのに、まだ開花が続くというのはどういうことなのだろう。

雌花の方が先熟するということなのか、と思ったのだが…
別の枝では雄雌が、同時に開花していた。
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星形の花が雌花で、真中のが雄花だ。
う~む。
このところS子さんが雌雄の開花順序について観察報告をしてくれているのだが、ブラジルコミカンソウはどうなっているのか? わからん。
雄だろうと雌だろうと、こだわらないおおらかな性格なのかもしれない。

それにしても、直径2㎜程度のちいさな花だが、こうして拡大するとなかなかのものだ。
(残念ながら柱頭にごみが付着)


木か草か

ブラジルコミカンソウには、もう一つ悩ましいことがある。
木本か草本かということだ。

ブラジルコミカンソウは事務所のある秋葉原かいわいでは、冬場でも遅くまで枯れずに残っている。
さすがに1~2月の厳冬期には枯れるのだが、春になると芽吹きがあるのだ。

これは4月はじめのようす。
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ビルの間の空き地の、舗装の隙間にならぶブラジルコミカンソウだ。
画面左の株に寄ってみると…
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木質化した去年の枝から芽が出ていた。
やっぱり木本だ。
前述の「日本帰化植物写真図鑑」で確認すると 〝低木または一年草本〟 とある。
在来のコミカンソウが草本だからといって、近似種のブラジルコミカンソウも草本とは限らないのである。
さらに、同書に掲載のキダチコミカンソウというのがあって、こちらは草本だそうである。名前は木立なのに…

木本だろうと草本だろうと、本人たちにしてみればたいした問題ではないのかもしれない。環境しだいで気ままに暮らしているのだろう。
ましてや、インド洋出身なのに 〝ブラジル〟 と呼ばれていることなんか、どうでもよいことだろう。
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6月。秋葉原の路地裏で、元気に育つブラジルコミカンソウであった。

2013年7月21日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2013-07-21 00:27 | 植物 | Comments(0)

親愛なる、そのへんの植物-11 「ヘラオオバコの開花の仕方」

6月、道端や堤防、公園など、身近ないろんなところで、花を咲かせたヘラオオバコを見かけました。
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オオバコは踏みつけられる場所に多いですが、ヘラオオバコは草刈りされる場所に多いようです。
それぞれに適応した環境が異なり、それぞれに生育環境に合った工夫があるのだと思います。ヘラオオバコが草刈りに強いのは、ヨーロッパ原産の帰化植物であり、はるか昔から、草刈りが定期的に行われていた牧草地で生活していたためかもしれません。

今回は、そんなヘラオオバコの開花の仕方について、詳しくみてみたいと思います。(2012年6月28日に、事務局Oさんもヘラオオバコについて報告されています ⇒  )


● 花序について

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これは、ある時期のヘラオオバコの花序です。ヘラオオバコは穂状花序(すいじょうかじょ)で、花軸に柄のない花が並んでついています。一見わかりにくいですが…

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模式的に描くとこんな感じです。花軸は成長して伸びていきます。それにしたがって、花芽の数も増え、花序が長くなっていきます(このような花序は、無限花序と呼ばれ、穂状花序は無限花序のひとつです)。ヘラオオバコは、花軸の成長が著しいようで、花序はぐんぐん伸びます。


穂状花序では、基本的に花軸の下の方から順に花が咲いていきます。
花序の成長と開花の順番を模式図で示すと、こんな感じになります。
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● ひとつの花

次に、ひとつの花を見てみたいと思います。

ヘラオオバコは両性花ですが、ひとつの花には雌性期と雄性期があります。つまり、同じ花が、雌機能を持った時期と雄機能を持った時期に分かれています(これも自家受粉を避ける仕組みのひとつで、雌雄異熟と呼ばれています)。

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こちらが雌性期です。花柱が出ているのがわかります。d0163696_18184936.jpg


d0163696_18192591.jpg次に、これが雄性期です。花糸の先に、花粉がいっぱい詰まった葯があります。d0163696_18195130.jpg


どちらも地味な花ですね。
花冠はあるものの、小さくて色も目立ちません。香りもあまりない気がします。
ここから予想されることがあるのですが、何でしょう?

答えは “ヘラオオバコは風媒花ではないか?” です。
花の大きさや色、香りは、すべて虫など送粉動物の誘因効果になります。これらが発達していないと花粉を運んでくれる動物を引きつけることができません。
よって、質素な花のヘラオオバコは、風媒花ではないかと考えられます。


● 風媒花であるならば

風に花粉を運んでもらう場合、雌機能と雄機能の花の配置は、どのようになっているのが有利でしょうか。
(ヒメコウゾのブログ ⇒  を読んでくださった方は、お分かりかもしれませんね)

「雌機能が上、雄機能が下」です。
その理由は、雄機能の花が上ではたくさんの花粉が自然落下し、下にある雌機能の花が自家受粉しやすくなってしまうからですね。

ちなみに、風媒花は、雌性先熟が多いと言われています。まわりにまったく雌がいない状態で雄が花粉を出し始めても、せっかくの花粉が無駄になってしまうからかもしれません。花粉をつくるのにも、コストがかかりますからね。


● 開花の仕方を考えてみよう

ということで、ヘラオオバコの開花について、これまでの話をまとめてみると…

① 穂状花序で、下から順に開花していく
② ひとつの花は、雌性期から雄性期へと変化する(雌性先熟)
③ 花序の中の花の配置は、常に雌性期が上


以上、3つをまとめてイメージしてみると、どうでしょう。
規則性を考えると、開花の仕方がわかりやすいかもしれません。

それでは実際に、順を追って観察してみましょう。

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まずは、つぼみ。花序の下の方から、花が咲き始めています。

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次第に上へ上へと開花していきます。次々と咲いていく花は、はじめはみんな雌性期です。

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しばらくすると、はじめに開花した下の方の花が、雌性期から雄性期に変化します。

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そして、今度は次々と雄性期の花に置き換わっていくわけです。

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そのときも、常に「雌機能が上、雄機能が下」です。雄が雌を追い越すことはありません。こうして、雌の後を雄が追うように、開花は進んでいきます。

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雄性期の花は葯が飛び出て目立つので、開花している部分がリングのように見えます。リングが順々と上に登っていくのがよくわかりますね。

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花序の長さが伸びているのもわかります。ぐんぐん伸びて、こんなに長い花序になったものもありました。ところで、こうして順を追って花序を見ていくと、雄性期の下の茶色の部分が気になりますね。ここは何なのでしょう?

花は、花期が終わると実になります。
ヘラオオバコの花期が終わるというのは雄性期が終わる時です。
したがって、花序において、雄性期の後を追いかけるのは…?
結実期ですね。雄性期の下にある茶色くなった部分は、実になる部分です。
結実期のひとつの花を見てみましょう。d0163696_1848288.jpgd0163696_18482059.jpg
 
雄性期が終わって、しおれた花を分解してみると、ちゃんと子房が膨らんでいるのを確認できました。

このように、ヘラオオバコのひとつの花は 「雌性期 → 雄性期 → 結実」 と変化します。
つまり、ヘラオオバコの開花は、花が入れ替わるわけではないのですが、ひとつひとつの花の機能が段階的に変化することによって、花序の構成(内訳みたいなもの?)が変化するわけですね。

ヘラオオバコの開花の仕方は、いかがでしたでしょうか。
確かに複雑ですよね。そんなとき、その仕組みと、なぜそうなっているのかを考えてみると、イメージしやすい気がします。
植物の名前に加えて、特徴についてあれこれ考えてみる。すると、そのちょこっとのことで、その植物への親近感は大幅にアップするように思います。

2013年7月11日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-07-11 18:48 | 植物 | Comments(6)

親愛なる、そのへんの植物-10 「ヒメコウゾは雄花が下? 雌花が上?」

5月の中旬、雑木林の林道脇でなにやらおもしろい形の花を見つけました。
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ヒメコウゾです。ヒメコウゾは、クワ科カジノキ属の落葉広葉樹の低木で、低山地の林縁や林道沿いでよく見かけます。
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ひとつのシュート(枝)に2種類の違った花がついていました。どちらも個性的な姿をしています。
シュート(枝)の下の方にあるのが雄花序、上の方にあるのが雌花序になります。ヒメコウゾは、同じ個体の中で雄花と雌花が分かれている“雌雄異花同株”です。

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雄花序は、雄花がたくさん集まって球状になっています。雄しべがいっぱい突き出して、まるでボンボンのようですね。花糸の先端の葯には花粉がいっぱい詰まっています。

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雌花序も同じく、まん丸の球状になっています。赤色の花柱が糸のように長く伸びて、イソギンチャクのようです。


ところで、なぜシュート(枝)の上部が雌機能、基部が雄機能になっているのでしょう? 植物の中には、雄花が上で、雌花が下につくものも数多くいます。雄花と雌花の配置は、何と関係しているのでしょうか。

雄花が上につく理由として、訪花昆虫との関係が言われています。一般的に雄花の方が派手で目立つ場合が多く、シュート(枝)の先端に咲かせた方が虫を引きつけやすいと考えられます。また、特にハナバチは下から上へ移動していく習性があるため、飛んできたハナバチは下方の雌花を通ってから、上方の雄花を通ります。つまり、他花の花粉(同種の他個体のものならラッキー)を体に着けて雌花を訪れ、その花粉を雌花の柱頭に付けた後に雄花へ移動し、雄花の花粉を付けて別の雌花へと飛び立ちます。自家受粉のリスクを減らし、他家受粉を促進しようという仕組みです。

それでは、ヒメコウゾのように下が雄花で上が雌花の場合はどうなのでしょう? 虫媒花だとすると、自家受粉が多発して、不利になってしまいそうです。

そう考えて、調べてみました。
すると、どうやらヒメコウゾは風媒花のようです。
風媒花の場合、雄花の花粉は自然落下するので、上についていては下の雌花に花粉が着いて、自家受粉しやすくなってしまいます。雌花の方も、風に乗って飛んでくる花粉を効率よく捕まえるためには、上に着いていた方が有利な気がします。長い花柱も、花粉をうまくキャッチするためかもしれません。
風媒花では、雄花が下で雌花が上という配置がしばしばみられるそうです。

ふとした好奇心から、なかなか奥深い知識につながりました。「なぜ?」と考えることから、世界は広がるのですね。

6月に入り、ヒメコウゾの雌花は実になりました。
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なんだか、マリモに毛が生えているみたいです。

これがもうしばらくすると、赤く熟して、食べられるようになります。

※参考までに、こんな感じです(以前の写真)。
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私も食べたことがあるのですが、味はなんとなく甘いものの、花柱(やはり毛みたい)が口の中に残って、味よりもそっちの方が気になりました。
今年も試してみようと思います。

2013年6月17日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-06-17 19:45 | 植物 | Comments(1)

中山道和田宿周辺の観察-1 雑草編

5月の連休に、中山道和田宿へ行った。
その時のことを何回かに分けて報告させていただくが、今日はその一回目。

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こんな光景を見ると、ついうれしくなって口元がほころんでしまう私。
やっぱり雑草ファンなのだろう。

関東に比べると一か月近く季節が遅いので、雑草のベストシーズンを二度観ることができる。
草種を確認すると、オオイヌノフグリ、ヒメオドリコソウ、ハコベにシロツメクサ、セイヨウタンポポ。それらの見慣れた雑草にイヌナズナが混じる。
イヌナズナは関東ではトンと見かけないが、こちら信州では、ご本家のナズナよりも多いくらいだ。

おあつらえ向きに、両種がならんでいた。
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右の白いのがナズナで、左の黄色いのがイヌナズナ。


カキドオシは、とくに好きな雑草のひとつ。つい何度も撮ってしまう。
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下唇を突き出したような形は、やっぱりシソ科の唇形花だ。
下唇の奥の方にある半透明の毛は何のためにあるんだろう。
訪花した昆虫のために足場を提供しているのだろうか…

白いヒメオドリコソウがあった。
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白いホトケノザは観たことがあるが、ヒメオドリコソウでははじめて。
アルビノなのだと思うが、赤紫の同僚との競争に耐えていけるだろうか…

ほかではどうなのかとネットで調べると、興味深い情報が見つかった。
10余年間かけて、安定的に白いホトケノザを栽培している方の話  ⇒ http://flat.kahoku.co.jp/u/ozozoz/iw1v8ebPT6HQxspgfXjt/

山のほうへ向かうと、水路わきにはネコノメソウが花を開いていた。
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ネコノメソウの仲間は花弁がなく、花びらに見えるのはがく。
ネコノメソウは雄しべが4個ということだが、これは8個なのでミヤマネコノメソウ(別名イワボタンともいうらしい)のようだ。


余談ですが…

中学校の校庭に、雑草のみごとな築山があった。
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この学校は、グランドにもふんだんに雑草がある。
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どうです。癒される校庭!

この校庭は中心部だけ草取りがなされ、このときはちょうど体育の授業が行われていた。生徒と雑草の共存の姿である。
この学校で育つ諸君! 今は気づいてないかもしれないが、あなたたちは幸せです!!

なお、この学校は2009年発行の「校庭の雑草」(岩瀬徹ほか、全国農村教育協会)で、巻頭に掲載されている長和町立和田中学校。
往時のままの校舎もあって、映画のロケなどでたびたび利用されるそうだ。

2013年5月18日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2013-05-18 08:56 | 植物 | Comments(5)

上田城の攻防 -エゾタンポポとセイヨウタンポポ-

連休中の一日、長野県の上田城に行った。
上田城は真田昌幸によって築城され、自らの指揮のもと、子息の信之・幸村らとともに二度にわたって徳川の大軍を退けた城として知られる。小城ではあるが、実戦で証明された正真正銘の名城なのである。

現在、城跡は公園となり、周囲には広場や運動場などがあるが、往時は湿地、泥濘地で囲まれた難攻不落の城であったという。
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これは現地の案内板。
内堀は本丸全体を囲んでいるわけではなく、コの字型で、堀のない方面(地図の芝生ひろば)へは絶壁となっている。

ということで上田城の概略を頭において、タンポポのようすを観察しよう。
春に古城を訪れるときは、タンポポの攻防戦を観るのが楽しみなのである。
いわば 〝タンポポ版攻城シミュレーション〟 だ。

参考:岩瀬先生の彦根城のタンポポ観察の話 ⇒『籠城する? カンサイタンポポ』
※話のたねのテーブル過去の記事一覧表からNo.25をクリック (若干、手間がかかります)
http://www.zennokyo.co.jp/table/index_table.html


さて、地図の右手の〝二の丸橋〟からの写真。
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明治期に土塁に植樹されたケヤキが上空をおおい、何とも素晴らしい新緑の眺め。
地図の 〝けやき並木遊歩道〟 というところである。かなり深くて急な斜面で、空掘としてもみごとだ。

さてこの空掘へ下りる通路のタンポポは…
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りっぱなセイヨウタンポポだった。
徳川軍だって、ここら辺までは寄せていたのであろう。
まぁ、許してやろうではないか。

この空掘の底で、一株だけ発見したエゾタンポポ。
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セイヨウタンポポに混じって奮戦中というところか。

この先、城の内外での攻防戦はどうなっているのか… 興味津々である。

さて、空掘を渡って駐車場を過ぎると、内堀がある。
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これまた見事な眺めだが、攻城にはやっかいな堀だ。

話はそれるが、真田昌幸は城内から穴を掘り、北方の山中に出口があって兵站(物流)に困らなかったという。この遠くの山なのだろうか。だとするとかなり長いトンネルになる。

堀を渡ったところに櫓門(やぐらもん)がある。
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地図の 〝東虎口櫓門〟
櫓は復元されたものだが、画面中央の大石は 〝真田石〟 と命名された築城当時のものということである。巨大すぎて誰も動かせなかった、と傍らの由緒書にある。

櫓門を抜けると、いよいよ本丸である。
セイヨウタンポポの侵攻はどんな戦況か?
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本丸内は整備された公園になっている。
画面右端の通路わきのタンポポはセイヨウだ。
やはり、これだけ人の手が加わり往来が激しければ、セイヨウタンポポに置き換わるのも仕方がないことだろう。

本丸内は舗装路があって、その奥の方は一段高くなっている。上段は過度に手を入れることなく、いい感じになっている。(地図の本丸内の上半分)
この段差の境界上にあったのは…
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エゾタンポポである。(やったね!)

嬉々として本丸内をチェックすると、どれもこれもエゾタンポポである。
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エゾタンポポは、総苞が太くがっちりしていて、実にたのもしい。
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本丸の中心部は、どこを観てもエゾタンポポがしっかりと守っていた。

ところが…
北東の一角から、土塁を越えてセイヨウタンポポの大軍が押し寄せていた。
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雪崩のように、斜面を下りてきている。エライことだ。
北東という方角はやはり 〝鬼門〟 なのだろうか。
がんばれエゾタンポポと言いたくなった。
今後の攻防が気になるところである。


余談ですが…

巷では今、真田幸村がブームらしい。
上田城本丸内では、〝NHK大河ドラマで真田幸村を実現しよう〟 という署名活動をやっていた。
かつて立川文庫の影響で幸村と真田十勇士が大人気だったように、いまはゲームの影響なのだろうか。事情通に聞くところによると、織田信長、伊達政宗、真田幸村が人気トップ3なのだそうである。
この上田城を築城したのは父親の昌幸であり、徳川軍を二度にわたって退けた際に采配を振るったのも昌幸である。幸村が嫌いなわけではないが、歪んだ人気に一言いいたくなってしまった。
そうは言っても、しっかり署名して、観光みやげの〝真田十勇士手ぬぐい〟を買ってしまったのだが…

2013年5月8日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2013-05-08 18:41 | 植物 | Comments(0)

親愛なる、そのへんの植物-9 「早春において、開花の早さは何で決まる?」



4月上旬、いまだ寒さの残る温帯(一般的には冷温帯と言われている)の落葉広葉樹林では、林床まで差し込む明るい光を利用して、スプリング・エフェメラルとして有名なカタクリが今にも咲こうとしていました。
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今回は、暖温帯上部から温帯にかけての落葉広葉樹林について、新葉と開花の様子に注目してご報告します(観察地:岐阜)。

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まずは、ミツバウツギです。主に3出複葉の落葉低木です。
葉が開くと同時につぼみができていました。

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クロモジです。落葉低木です。
クロモジも、葉の展開と同時に開花し、黄色の小さな花を咲かせていました。性が個体で分かれている雌雄異株(しゆういしゅ)植物です。

ミヤマシキミも、すでに花が咲いていました。
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ミヤマシキミは常緑の低木で、落葉広葉樹林にも生育しています。
クロモジと同じく、雌雄異株植物です。この写真の場所では、雄株と雌株が隣同士にいました。左側が雄株で、右側が雌株になります。

前回のブログ で、雌雄異株植物の性を見分けるには花の時期が重要だと書きましたが、ミヤマシキミも同様で、雄の花は雄しべが目立ち、雌の花は雄しべが退化しています。
まずは雄の花。
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つぎは雌の花。
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花を見れば、一目瞭然で個体の性が判別できました。

次は、ハナイカダです。
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花はどうかな? 重なった新葉を、そっと開いてみました。
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ありました。葉の真ん中に一つ、つぼみがついています。
ハナイカダの花は、葉(イカダ)の真ん中に花が乗っているように咲くので、とても印象的です。

ハナイカダも雌雄異株植物であり、雄の花は一枚の葉に数個つくのに対し、雌の花は大抵1個なので、私が見た個体は、おそらく雌ではないかと思います。

続いて、コハウチワカエデです。落葉の高木です。
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新葉が開く様子が、なんだか、お化けか恐竜の手(前足)のようなかたちをしていておもしろいです。
こちらはまだ花は見あたりません。


同じくカエデ属のコミネカエデです。落葉小高木です。
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これも花は見あたりません。


ここまであげた種の中で、いち早く花を咲かせるかどうかの違いは、どこにあるのでしょう?
ひとつ、思い当たることとして、その種が低木か高木になるかということがあげられました。

低木と高木では、持っているつぼみの数が大きく異なり、高木の方がたくさんの花を咲かせることができます。
繁殖のために必要な花粉を運んでくれるポリネーターは、花がたくさん咲いているなど目立つ方に惹きつけられやすいと言われています。よって、低木と高木では、高木の方がポリネーターを惹きつける上で有利になると考えられます。
つまり、低木は、高木が咲き始めるより前に開花し、高木とのポリネーター獲得の競争を少しでも避けようとしている、という説です。

また、寒さの残る早春は、ポリネーターの数や種類は少ないですが、マルハナバチ類に先駆けて、ハナアブやハエの仲間が活動を開始します。
低木は、こういったハナアブやハエに花粉を運んでもらっている場合も多いと言われており、虫との相互関係で、早くに開花するという説もあります。
今回よく観察した雌雄異株植物は、低木が多いと言われています。雌雄異株植物が早く開花するのも、これらの理由からかもしれません。

いずれの説、もしくはその両方の説にしても、林内を観察していると、低木の種の方が高木よりも早く開花しているような印象でした(もちろん例外もたくさんあります)。

目の前の自然を観察しながら、目には見えない環境や生き物同士のつながりに考えを巡らせてみると、好奇心や疑問がわいてきて、そこからまた、次の観察が楽しくなるように思いました。

2013年4月26日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-04-26 23:01 | 植物 | Comments(1)

親愛なる、そのへんの植物-8 「落葉広葉樹林は春真っ盛り(暖温帯編)」

まもなく4月という頃、街なかではサクラ、田んぼや道端ではオオイヌノフグリ、ホトケノザなどが次々と咲いて、春の訪れを感じさせてくれます。
今回は、同じ頃に落葉広葉樹林で見つけた「春」をご紹介します(観察地:岐阜)。

※ 写真はすべてクリックで拡大してご覧いただけます

これは、3月末のある落葉広葉樹林の様子です。
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なんだか、殺風景に見えます。色とりどりの花が咲き乱れるような、鮮やかな印象はありません。落葉広葉樹は、冬に葉を落とすので、早春はまだ展葉しておらず、林全体が明るく見えます。
一体何が春らしいのか。個々の木に近づいて、よーく観察してみると、かわいらしい芽吹きが見えます。今回注目したいのは、この新葉です。

コバノガマズミ
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小さいながらも、その木ならではの葉の特徴をちゃんと持っているので、「これは何の木だろう」などと、考えながら観察するのはおもしろいです。
こうした新葉が見られるのは、この時期だけ。暖かくなったと同時に、一斉に芽吹きを始める木々を見ると、春真っ盛りを感じずにはいられません。


それでは、暖温帯の落葉広葉樹林で見られたいくつかの樹種について、とっておきの新葉をご紹介します。

コナラ
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たしかにコナラの葉のかたちをしています。フサフサした毛に包まれて、柔らかいです。また、葉の展開と同時に、雄花が先に咲きます。目立っているのは、雄花序です。

サルトリイバラ
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サルトリイバラも、葉の展開と同時に花を咲かせます。雌雄異株植物であり、これは雄花のみをつける雄株です。雄花の雌しべは退化して、ほとんど見えません。雌雄異株植物の性を見分けるには、このように花の時期は重要です。

ヤマハゼ
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新葉のときから、当然ではありますが、ちゃんと複葉になっています。精巧なミニチュアのようです。

リョウブ
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新葉の時は、特に黄緑色が鮮やかで美しいです。遠くからでも目立ち、まるで林の中に黄色い花が浮かんで咲いているかのように見えます。


このように、いまだ葉も花も少ない早春の林ですが、観察してみると、季節に応じたユニークな姿を見ることができます。
新葉は、身近な公園や庭、街路に植えられた樹でも見られるので、ぜひ気軽に観察してみてください。夏や秋の見慣れた葉のかたちを知っているならば、小さな葉が成長していく様子を想像しながら見てみるのも楽しいかもしれません。

次回は、同じく落葉広葉樹林の新葉について、温帯編でご報告したいと思います。

2013年4月12日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
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by sizenkansatu | 2013-04-12 19:16 | 植物 | Comments(1)

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