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自然観察大学ブログ

漆掻きを体験

9月なかばに、自然観察大学講師の川名先生とともに、茨城県大子町の漆生産の現場を見てきた。
自然観察とは話がそれるが、ご容赦いただきたい。
漆掻きを体験_d0163696_12510073.jpg
これが漆畑。ウルシが等間隔で植えられている。
樹幹に付けられた黒い傷が“漆掻き”の溝で、これを“辺”という。
下枝が落とされて真っ直ぐになっているのは、多数の辺をつけて効率よく漆を採取するためだ。

畑は山深い中にあって、イノシシも普通に生活しているようなところだ。
放っておくとすぐに、奥に見える藪のようになってしまう由。
管理はたいへんなことと想像できる。

漆には強いアレルギーの人が多く、人家の近くに畑を作ると問題になるらしい。山深いところに畑を作るのは、そのことと関係があるのかもしれない。

案内いただいた漆掻き職人のO.K.さんに話を伺った。
同じウルシの木では4日ごとに辺をつけ漆液を収穫するそうである。
辺の深さ、位置ぎめなど木の生理・生態を知り尽くし、効率よく採取していることが分かった。
(詳しくは別の機会に紹介します)

さて、私も漆掻きを経験させていただいた。
漆掻きを体験_d0163696_12511275.jpg
これが私の掻いた“辺”である。
“掻き鎌”という独特の形状をした鋭利な刃物で掘ると、見る間に漆液がにじみ出してくる。
これが本物の樹脂である。

本来は溢れる前にへらで掻き集めるのだが、このときは撮影用に溢れさせてしまった。
貴重な漆液なのに、申し訳ないことである。

漆掻きの道具も紹介しよう。
漆掻きを体験_d0163696_12511986.jpg
手前から
・漆液を採る“掻きべら”
・樹皮に溝を掘るU字型の刃の“掻き鎌”
・へらで採った漆液を集める“漆桶”(ホオノキの樹皮を丸めて作る)

昭和の末期にはこの大子町で年間1トンを生産していたものが、現在ではわずかに200キロほどになってしまったそうだ。少しさかのぼって昭和30年代には2トンだったというのだから、短期間に激減している。安価な海外産の輸入漆液におされているためだ。

海外では天然ゴムのように受け皿を設置しておいて漆液を集めるという。その理由もあってか、海外産は不純物が混じるなどで、収穫した漆液の品質に大きな違いが出るらしい。
大子の漆は、透明度と光沢で作家の方々の間でも高い評価を得ておられるそうだ。

日本の漆は12000年前(1200年前ではない!)から利用されていることが分かっているらしい。なんと縄文時代である。絶やさずに受け継いでいただきたいものだ。


余談ですが…

じつは川名先生は見かけによらず(失礼!)漆に強いアレルギーがあって、畑ではヤッケに眼鏡・手袋・マスクと完全防備であった。そのおかげでなんとか無事に取材を遂行できた。
一方私は、ついうっかり素手で漆液にふれてしまったのだが、幸いなことに何も無かった。(本来はデリケートな肌のはずです)


大子町では11月11日に「うるしフェスタ2017」が実施される。
お近くの方、興味のある方にお勧めしたい。

NPO法人麗潤館(今回取材でお世話になった団体)のHP
⇒ http://reijunkan.com/ 

同HP内の「うるしフェスタ2017」の案内直通(チラシPDFが閲覧できます)
⇒ http://reijunkan.com/info/1043.html 

2017年10月6日、報告:自然観察大学 事務局O



by sizenkansatu | 2017-10-06 12:56 | その他 | Comments(0)

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