アリヅカムシ
千葉県館山市の野鳥の森公園でアリヅカムシを採集した。
ずいぶん前の2006年の12月のことで、拙著「昆虫博士入門」の取材に没頭していたころの話である。
リター層(落枝・落葉層)を篩って自宅に持ち帰り、ツルグレン装置にかける前にルーペで目視調査をしたところ、興味深い光景が観察され、夢中で撮影した。
(残念ながらこの写真の掲載は見送ったが…)
アリヅカムシがトビムシを捕えていた。
自分より大きいトビムシだが、脚や触角は切断されている。
少し移動したあとで、やがて食べはじめた。
しかし、食物連鎖の世界ではこれが当たりまえ。日常茶飯事なのだ。
「あー、人間でよかった。トビムシでなくて。」と思う瞬間でもある。
アリヅカムシは漢字では蟻塚虫。
アリの巣の中にいる虫という意味だが、実際にはアリの巣との関係は薄く、リター層に生息する土壌昆虫のようである。サイズは3mm前後と小さく、しかも落ち葉や塵芥にまぎれているので、野外観察に興味のある人でさえも、眼に触れることは少ないだろう。
彼らは暗い中でどうやって獲物を発見し、どのように狩りをするのだろうか?
アリヅカムシの仲間は、かつてアリヅカムシ科として独立した科であったが、現在はハネカクシ科の1つの亜科となっている。
アリヅカムシと同じように鞘翅が短く、このあたりはよく似ている。
違いは腹部の自由度で、ハネカクシはかなり曲げることができるが、アリヅカムシのグループは腹部がほとんど動かない。
それにしても、この翅で飛べるというのは驚きだ。飛翔妨害トラップ(FIT)にかかることもある。
「ハネカクシ」は「翅隠し」で、この小さな鞘の下に折りたたんだ後翅があるからなのだが、最近、後翅のたたみ方が解明され、話題になっている。
⇒(http://ascii.jp/elem/000/000/950/950076/)
最近、ハネカクシ科のカタログが刊行された(2013年) 。そこには分類的再検討の結果が示されていて、21亜科514属2,163種にまとめられている。また、これまで和名の無かった多くの種に和名が付けられている。
ハネカクシ科は、日本産既知のコウチュウ目16,000種のなかで、13.5%を占める大きなグループである。しかしながら大型種が少なく、いわゆる格好の良い種が少ないためか、愛好家、研究者が少ない。また、図鑑で同定できる種は少なく、同定用の解説書もほとんどない。
調査などで同定できないハネカクシがあると、標本を専門家に送って同定を依頼するしかないのだが、それでも名前がつかない種がある。ある日本のハネカクシの研究者は、昭和から平成にかけて300種を超える新種を記録したという。ハネカクシ科の分類はそのくらい未開であったのだ。
これは「昆虫博士入門」のハネカクシ科のページである。
ハネカクシの仲間でよく知られているのは、アオバアリガタハネカクシだ。膨大なハネカクシ科はであるが、身近で注目されるのは本種くらいだろう。
この虫は夏の夜間、郊外で人家の灯火に誘引されて飛来するのだが、首筋などにとまった虫をうっかりつぶしたらたいへんだ。この虫は体内にペデリンという毒物を有し、体液がつくと皮膚に水膨れを起こさせるのだ。
なお、上記ページの左下にアリヅカムシが掲載されている。ちなみに、右下のヤマトデオキノコムシも、デオキノコムシ科からハネカクシ科への編入生である。
2015年5月11日、報告:自然観察大学 講師 山﨑秀雄
アリヅカムシって、小さいのにすごいですね。
写真もすごいです。
時間のある時に、またぜひ投稿をお願いします。
事務局Oより
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