親愛なる、そのへんの植物-6 「クサギ」
暑い夏の真っ盛り、クサギは林縁の至る所で白い花を咲かせます。遠くからでもよく目立ち、近寄ると強い花の香りもします。
クサギは、クマツヅラ科(APG植物分類体系ではシソ科)クサギ属の落葉低木で、アカメガシワと並び、路傍や林縁でよく見かける典型的なパイオニア種です。(前回ご報告したネムノキも、パイオニア種でした。)
⇒ http://sizenkan.exblog.jp/16253183/
今回も、その花に注目して観察してみました(観察地:岐阜)。
クサギの花もおもしろい形をしています。 クサギは合弁花であり、花冠は白色で、赤みがかった長い筒部があります。筒部を包んでいるピンク色の部分は萼です。萼のピンク色と花冠の白色が鮮やかなコントラストを成していて、なかなかきれいです。
続いて、めしべとおしべですが、何かお気づきになるでしょうか。
そう、めしべがくるりと曲がっているのです。
他の花はどうでしょう。 やはり、めしべがくるりとそっぽを向いています。
おしべが活き活きとしていることから、これは雄性期です。自家受粉しないように、オス機能が働いている間のめしべの工夫だと思われます。
う~ん、見れば見るほど、見事に曲がっているのに感心します。おもしろいですね。
やがておしべが枯れてくると、どうなるのでしょうか。 ご覧のように、めしべがピンと真っ直ぐに立っています。
このように、クサギの花は雄性先熟であり、おしべとめしべが入れ替わりに運動して、自家受粉を避けているのですね。
ここでさらに、雌性期の柱頭の先端に注目してみました。 なんと、先端が割れているのを確認!
それでは、雄性期のときの柱頭は? 思ったとおり、先端は割れていませんでした。
雄性期、雌性期といくつかの花を観察したところ、雄性期からの移行直後と思われる柱頭は割れておらず、雌性期に入って落ち着いたと思われるものは割れていました。
花冠が落ちた後は、このようになります。 赤い萼から、めしべだけがスッと伸びています。
残っている萼が花弁のようで、再びつぼみに戻ったようにも見えますが、なんだか美しさを感じます。
萼に包まれた中を覗いてみると、 ちゃんと子房が大きくなっていました。
ちなみに、つぼみはこんな感じです。
花冠の筒部が見えますね。なんだか、かわいらしいです。
クサギの実は、熟すと鮮やかな紫青色になります。そのときにも萼は残り、真っ赤になって、青い実を受けるように花弁のごとく開きます。その様子は花の時期より目立つほどです。
今回はご紹介できませんが、もしも思い出されることがあれば、秋になったらぜひ、その個性的な装いを見ていただきたいと思います。
最後に、クサギは「臭木」と書かれますが、葉に独特の強い匂いがあるためです。植物を見分けるときに匂いは重要な要素となりますが、このクサギも、一度覚えたら忘れられない一種になるのではないでしょうか。
その匂いを「くさい」と感じるかは人によりけりですが、私はゴマの香りにも似ている気がして、まんざら嫌な感じはしません。
そのクサギの葉は、佃煮にして食べることができるそうです。昔はよく食べられていたそうですが、そのお話に「なるほど」と思えるのが、クサギの展葉の仕方です。
クサギは順次展葉型であり、春から夏まで次々と新しい葉を出していきます。つまり、佃煮にできる食料が、次々と自然に手に入るというわけです。重宝されたわけがわかります。
人はそうして自然を知り、恵みを頂いていたのだなと考えると、興味深いお話だと思いました。
この度も、読んでくださった方、どうもありがとうございました。
2012年8月28日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
クサギは、クマツヅラ科(APG植物分類体系ではシソ科)クサギ属の落葉低木で、アカメガシワと並び、路傍や林縁でよく見かける典型的なパイオニア種です。(前回ご報告したネムノキも、パイオニア種でした。)
⇒ http://sizenkan.exblog.jp/16253183/
今回も、その花に注目して観察してみました(観察地:岐阜)。
クサギの花もおもしろい形をしています。
続いて、めしべとおしべですが、何かお気づきになるでしょうか。
そう、めしべがくるりと曲がっているのです。
他の花はどうでしょう。
おしべが活き活きとしていることから、これは雄性期です。自家受粉しないように、オス機能が働いている間のめしべの工夫だと思われます。
やがておしべが枯れてくると、どうなるのでしょうか。
このように、クサギの花は雄性先熟であり、おしべとめしべが入れ替わりに運動して、自家受粉を避けているのですね。
ここでさらに、雌性期の柱頭の先端に注目してみました。
それでは、雄性期のときの柱頭は?
雄性期、雌性期といくつかの花を観察したところ、雄性期からの移行直後と思われる柱頭は割れておらず、雌性期に入って落ち着いたと思われるものは割れていました。
花冠が落ちた後は、このようになります。
残っている萼が花弁のようで、再びつぼみに戻ったようにも見えますが、なんだか美しさを感じます。
萼に包まれた中を覗いてみると、
ちなみに、つぼみはこんな感じです。
クサギの実は、熟すと鮮やかな紫青色になります。そのときにも萼は残り、真っ赤になって、青い実を受けるように花弁のごとく開きます。その様子は花の時期より目立つほどです。
今回はご紹介できませんが、もしも思い出されることがあれば、秋になったらぜひ、その個性的な装いを見ていただきたいと思います。
最後に、クサギは「臭木」と書かれますが、葉に独特の強い匂いがあるためです。植物を見分けるときに匂いは重要な要素となりますが、このクサギも、一度覚えたら忘れられない一種になるのではないでしょうか。
その匂いを「くさい」と感じるかは人によりけりですが、私はゴマの香りにも似ている気がして、まんざら嫌な感じはしません。
そのクサギの葉は、佃煮にして食べることができるそうです。昔はよく食べられていたそうですが、そのお話に「なるほど」と思えるのが、クサギの展葉の仕方です。
クサギは順次展葉型であり、春から夏まで次々と新しい葉を出していきます。つまり、佃煮にできる食料が、次々と自然に手に入るというわけです。重宝されたわけがわかります。
人はそうして自然を知り、恵みを頂いていたのだなと考えると、興味深いお話だと思いました。
この度も、読んでくださった方、どうもありがとうございました。
2012年8月28日、報告:自然観察大学 植物生態学部 S子
by sizenkansatu
| 2012-08-28 23:23
| 植物
|
Comments(1)
Commented
by
sizenkansatu at 2012-08-28 21:28
S子さん、投稿ありがとうございました。
クサギのしべが湾曲しているのは私も見ていましたが、それにはこんなわけがあったんですね。
クサギの臭いは私も臭いと思ったことはありません。
なにせ、クサギカメムシでさえ臭いと感じたことはないもので…
またいつでも投稿をお待ちしています。(事務局O)
クサギのしべが湾曲しているのは私も見ていましたが、それにはこんなわけがあったんですね。
クサギの臭いは私も臭いと思ったことはありません。
なにせ、クサギカメムシでさえ臭いと感じたことはないもので…
またいつでも投稿をお待ちしています。(事務局O)
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