自然観察大学ブログ

「さかき」異説

さかき(賢木)はなぜサカキ (Cleyera japonica Thunb.) なのか?

★「さかき」とは元来何であったのか?
「さかき(賢木)」は、『古事記』や『万葉集』では呪術の小道具として登場します。そして、大槻文彦氏の『大言海』によれば、
「常緑木ニモアレ、落葉木ニモアレ、種種ノ樹木ノ、神境ニ植リテアルニ就キテ称する語ナリ」「境木ノ義、磐境(イハサカ)ノ木」
つまり「神の御座所の木」の意であり、具体的にどのような木であるか、ということについてはまったく解らない、とのことです。
この説は、音韻学の面から「岩波古語辞典」でも肯定的に扱われています。

★なぜサカキが「さかき」になったのか?
今、「さかき」の地位には「サカキ」がついています。その理由としては、「(神事に用いられる常緑樹の)中で、サカキは色や形が美しく、神事にふさわしいものとして、神社の境内などによく植えられた」(平凡社大百科事典)からである、という考えが一般的なようです。
しかし私はかねてからこの説に疑問を感じていました。
 ① サカキが多い地方でも、町や村の小さな神社にサカキなんぞ植えられてはいない。
 ② サカキが他を圧して美しい木である、などとはとうてい思えない。
等が理由です。私は、なぜサカキが「さかき」の地位についたのか不審でした。

★トランス状態の小兎「ぽんぽん」
ところが先日、ある小さな事件から、「あるいは?」という一つの仮説を私は得ました。
私のうちには「ぽんぽん」という名の、体重1.5kgに満たない小兎がいます。
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ある日のこと、この「ぽんぽん」に、採ってきた「サカキ」の枯葉をやってみました。「ぽんぽん」は大喜びでパリパリ食べていましたが、突然ぴたりと食べるのをやめました。「あれ? 飽きたのかな?」と思い、それでも念のためにサカキの葉を口の前に差し出してみましたが、食べようとしません。そして、それだけでなく、顔を背けることもせず、じっとしています。何だか妙です。「あれ?…」と思って見ていると、やがて、歩いてお気に入りの隠れ家に向かい始めましたが、その様子がやはりヘンです。なんだか腰が抜けたようなかっこうで、のそのそ這うように歩いていくのです。
…それから3時間、大好物のドライフルーツや麦をやっても食べようとせず、いじっても明確な反応を示さず、なんだかぼう~っとしていて、トランス状態(催眠状態)のような感じで、大いに心配させられました。幸い恢復しましたが、もう二度とサカキをやる気はありません。

★ある仮説
しかし「ぽんぽん」のこの状態は私にある仮説を与えてくれました。それは以下です。
サカキには微量ながら動物をトランス状態にする物質が含まれているのではないでしょうか? 「ぽんぽん」の状態はそれを暗示します。呪術は元来トランス状態におちいった人間が鬼神を使役して何事かを実現しようとするものです。薬物に敏感な古代の人々は、サカキに含まれる微量のトランス物質を知っており、だから呪術の象徴としてサカキを使ったのではないでしょうか? そしてこの習慣がだんだん広まって、サカキが「さかき」の地位を得たのではないでしょうか?

★どこかに証拠がないかな?
ただ、以上の仮説が、根拠のきわめて乏しい意見に過ぎないことは私も重々承知しています。
 ① 「ぽんぽん」のヘンな状態は本当にサカキによるトランス状態だったのか?
 ② サカキに、動物をトランス状態にする物質が本当にあるのか?
ざっと見たところ、そのような指摘はまったくありません。ただ、
 ア) シーボルト『日本植物誌』では「強い収斂性のある種子」「麻酔効果」「精神疾患に対して…効果的」等の記述があります。また
 イ) 『倭名類聚抄』ではサカキの実を「龍眼」と誤解しており、これがサカキの別名としての「龍眼」の名の起こりかとも思われますが、これは「補心虚脾弱」という本来の「龍眼」の効能に似た効果がわずかながらサカキにもあるから生じた誤りなのではないでしょうか?

以上、ほとんど妄説とでも呼ぶべき仮説です。皆さんのご批正をいただければ幸いです。

【ご注意】危険があるかもしれませんから、皆さん絶対にサカキを食べないでくださいね。

2011年8月23日、報告:自然観察大学 品川駐在 小田
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by sizenkansatu | 2011-08-23 12:39 | 植物 | Comments(3)
Commented by りりねこ at 2011-08-26 12:30 x
きゃあ、かわいい~~!こんなかわいい子を事務局Oさんは今まで登場させず隠してたとは!と思ったら、こちらは投稿だったのですね。
小田さん、はじめまして。おうちに帰るとこの子が迎えてくれる・・・うらやましい限りです。利発そうな小うさぎちゃんですね。ぽんぽん、なんてお名前もチャーミング。グッときます。
うさぎさんの話じゃ、なかったですね。興味深い仮説です。
サカキにトランス状になる物質とは私も聞いたことがないですが、考えてみたら、古来から?これだけ神事に使われてきてるサカキについて、成分はもちろん、あまり歴史もありようも知りません。
私が疑問に思ったことがあるのは、サカキって、神棚のあるところでは常時必要とされる木だろうに、植木であまり見たことない(だいたいお店でお供えとして買うものらしい)、ということです。ホームセンターの園芸コーナーなどでも、見たことないです。
あと、西日本と東日本で、マサカキ(真榊・本榊)とヒサカキ(非榊?)とか、使われているものの種類や、使い道が少し違うんですよね。
Commented by りりねこ at 2011-08-26 12:39 x
個人的には、サカキは典型的な葉の緑や形、その見た目の新鮮さが保たれやすく、感情を刺激するような花もないので、神聖さを演出するのに実用的か、というようなイメージで、それ以上考えてみたことはありませんでした。
ぽんぽんちゃんが食べたのは、ヒサカキでしょうか?枯葉を食べて変化(トランス状態のぽんぽんちゃんの描写がリアルです)があったということなのですが、枯葉になると何か成分が出てくるとかいうことはないんでしょうか?(ウサギって枯葉も食べるんですね。生のキャベツやにんじんしかあげてみたことがないので)
最後の注意まで読まなかったら、サカキを買いに近くのスーパーに行ってたかもしれないです(食用のため)。
私も知りたくなってちょっと検索してみましたが、なかなか成分に触れたものはないですね。でも歴史の話では、ご存知かもしれませんが、以下のサイトの「草木の話」が詳しいようでした。熟読はできてませんがほかの草木もついクリックして読んでしまいました。
http://www.ctb.ne.jp/~imeirou/sub8.html

新しい情報はないのですが、ぽんぽんちゃんがかわいすぎたのと、おかげで私も宗教的意味を持つサカキに改めて興味を持ったので書き込みました。
Commented by sizenkansatu at 2011-08-26 19:05
そうなんです。もちろんサカキの話も面白いですが、ぽんぽん君がかわいいんです!
ややこしい話をわかりやすくコンパクトにまとめた小田駐在員のウデにもおそれいっています。
ホントにありがたい投稿でした。

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