自然観察大学ブログ

紀州の話-3

紀州で見たチョウ

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ツマグロヒョウモン。
近年は関東でも普通に見かけるが、関西以西が本場。
写真は翅の先端が黒くない雄だ。
ちなみに “ツマグロ” は漢字で表すと “褄黒” で、翅の先が黒いという意味だそうだ。雌の翅が黒いからといって “妻黒” ではない。
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ツマグロヒョウモンの蛹は金属鋲のような独特の紋様がある。
触るとくねくねと動きこの鋲が光る。
天敵を脅かす効果があるのだろうか?
このヘビメタに驚くかもしれない…

急な石段を登っていると、目の前でひらひらとチョウが近づき、ポイと石段にとまった。
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スミナガシではないか! ずっと見たかったチョウだ。
離れた位置からまずシャッターを切り。慎重に近づきながら撮り続けていく…
細かなモノトーンのような紋様に、微妙な色の変化があるのが観えてきた。
名前は絵画の技法 “墨流し” に由来するというのがうなずける。
翅の端のV字紋様が抑えとなり、デザインを引き締めている。
シブイ!
もっと近づこうとしたら、プイと飛び立ってしまった。う~む。無念だ。
(写真はけっこうトリミングしています)

スミナガシの石段には水がちょろちょろと流れていて、たぶんこれを吸水に来たのだろう。

石組みの隙間にはサワガニがいた。
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関東で見慣れた黒っぽいサワガニとは違ってゆでたように赤い。
ここで見たサワガニはこのタイプがほとんどだった。地域個体群の違いということらしい。

熊野古道の茶店で、店内を数頭のコジャノメが飛びまわっていた。
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吸っているのは、直前までベンチに座っていた人の汗だろうか…
人を警戒するようすがない。
人とチョウの共生については、去年キベリタテハで経験済み。(http://sizenkan.exblog.jp/11838835/ をご覧いただきたい)

〔訂正〕上の写真はヒメジャノメではなくコジャノメでした。斑紋の数が違います。申し訳ありませんでした。2011.8.26

撮影できなかったが、一番目立っていたチョウはモンキアゲハだった。
大きな体で、全体が黒に白い斑紋が目立つ。
写真はどうかほかで見ていただきたい。例えば…
http://www.j-nature.jp/butterfly/zukan/ageha11.htm

モンキアゲハは本来西日本が本場のようだが、近ごろは関東でも増えているらしい。
食草はアゲハと同じミカン科だそうだ。
たくさん飛んでいたのだが、飛びっぱなしでちっとも止まってくれなかった。残念。


カゲロウがビッシリ

熊野川の支流のとある温泉で、旅館の窓ガラスを見て驚いた。
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遠目には蚊かユスリカだろうと思ったのだが、近くで観るとカゲロウだ。
さすがにすごい自然度。
すぐ後ろには脱皮殻が見える。
旅館は川に面していて、そこから出てきたものだろう。
窓のあちこちで羽化していたのを、一つずつ確認すると…
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亜成虫がいた。さっきの成虫とは別種らしく、すこし大形。
触角のように前方に伸びているのは前脚で、長い尾とバランスを取るかのようだ。
ガラスに映った姿はいかにもはかなげ。

カゲロウはまず亜成虫になって飛び立ち、その後改めて正式に羽化するというややこしい手順を踏む。
それにしても、この亜成虫からきれいに脱皮するのは難しそう。
極薄の翅の部分もちゃんと脱皮するのだろうか?
気になってもう一度窓ガラスの脱皮殻を観ると…
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小さいがちゃんと翅の抜けた後がある。羽化の精密さに感心する。

しかし、より進化したとされる完全変態の昆虫では亜成虫のシステムが引き継がれていないところを見ると、どこかに無理があるのだろう。


カタツムリの成貝

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貝殻の縁が反り返っているのは成貝の証、と専門家のM先生にうかがったのを思い出した。
幼貝の貝殻は年輪を重ねながら成長を続けるので、縁は真っ直ぐ。
成貝になると身の安全のためか、丸く反り返るのだそうだ。

本来夜行性のカタツムリは、昼間に成貝が姿を見せることはないらしいが、これはどう見ても成貝。曇りなのと、湿度が高かったためだろうか。
(ふだん昼間見かけるカタツムリは、遊んでいて時間を忘れたいたずらっ子だそうだ)

写真ではつい眼にピントを合わせてしまったが、カタツムリは貝殻で同定するのだった。が、それはご勘弁いただくとして、M先生に写真をお送りしたら、すぐに以下のご回答をいただいた。

……………………………………………………

立派な成貝ですね。
イセノナミマイマイEuhadra eoa communisiformis)です。
軟体に背条線がなく、殻の光沢が弱いのがこの写真で分かる特徴です。
伊勢湾周辺の普通種。

これが東海にいくとより扁平なヒラマイマイ(Euhadra eoa)に、近畿にいくと山手では重厚な殻をもつギュリキマイマイ(Euhadra eoa gulicki)になります。
ギュリキマイマイからイセノナミマイマイへは連続的な変異がありますし、この個体の扁平さは、ヒラマイマイへの連続変異の間にあるようです。

「ナミマイマイ」とはつくものの、ナミマイマイの仲間ではなく、ヒラマイマイやギュリキマイマイの仲間です。
ちょっとややこしいですね。和名のつけ方の失敗です。

撮影場所はどこでしょうか?(尾根筋で種が変わるので)… また大きさはどれくらい? ちなみにナチマイマイやクマノマイマイも同じグループ。
クマノマイマイの可能性もゼロではないですが、軟体のたくましさや、殻色の深さがないように見えます。

写真、さすが生きもの好きですね!
私はどうしても殻にピントだけでなく構図まであわせてしまい、後で見ると、眼が写ってない、という失敗がよくあります。

……………………………………………………

さすが専門家の見立ては深い!
しかも、お忙しい毎日のはずなのにもかかわらず、即座にご返答いただいたのだ。

ところでいま、M先生を中心として、画期的なカタツムリ生態図鑑を作成中だそうです。
ご期待ください。

2011年8月19日、報告:自然観察大学 事務局O
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by sizenkansatu | 2011-08-19 13:13 | 昆虫など | Comments(3)
Commented by りりねこ at 2011-08-19 17:18 x
わあ、美しい蝶ですね。スミナガシっていうお名前なんですね。
東南アジアのバティック(ろうけつ染め)や、大島紬なんかが想われました・・・。クレーの絵にも少し似てるかも。
見とれてしまいます。うっとり。
Commented by sizenkansatu at 2011-08-19 18:23
りりねこさんとは気が合いますね。
私は天目茶碗のようにも感じました。
機会があったらもっとちゃんと撮り直したいです。
スミナガシは山間に多く都市近郊ではあまり見られないので、難しそうですが…
Commented by りりねこ at 2011-08-20 15:36 x
なるほど、生で見たら、天目茶碗のような深い光沢を感じたかもしれませんね。天目茶碗も、りりねこは大好きなんです(宇宙を感じますよね)。私もますます出遭いたくなりました。山間ですか~いつか。
スミナガシの次回の写真も楽しみにしてます。

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