自然観察大学ブログ

吸蜜するカメムシ?

私の近所の江戸川沿いに、矢切(やぎり)というところがある。“矢切の渡し” の歌で有名なところだ。矢切はもうひとつ、伊藤左千夫の “野菊の墓” の舞台となったところでもある。現地には “野菊の墓文学碑”というのもある。
野菊の墓との関係は不明だが、キャベツ畑やネギ畑の傍らで、多数の農家が趣味で菊(ノジギク?)を作っておられる。

11月末になっても、暖かい日にはミツバチやハエ、アブなどが活発に菊を訪花している中で、カメムシを見つけた。
d0163696_21413412.jpg
カメムシの中でもカスミカメムシ科というグループで、『日本原色カメムシ図鑑第2巻』で調べるとウスモンミドリカスミカメというらしい。体長は5mm程度。
以下、記載から興味深いところを紹介させていただく。
食草はキク科多年生草本で、菊のほかレタス(キク科植物です!)、茶、稲など農業上の害虫にもなっているようだ。
色の変異が多いらしく、かつてはウスミドリメクラガメ、コミドリメクラガメなど別種として扱われ、いろんな名前が付けられていたらしい。
さらにややこしいことに、本種ウスモンミドリカスミカメとは別種のコアオカスミカメやツマグロアオカスミカメとも混同されウスミドリメクラガメ、コミドリメクラガメなどと呼ばれていたらしい。(これらは属が異なるのだが似ているということだ!)
聞きなれないカタカナ名が並んで頭が混乱しそうだが、ややこしいということだけは分かった。

吸蜜シーン?
このカメムシのくらしに眼を向けよう。こちらで1頭、あちらに2頭という感じで、けっこうな数のカメムシが菊の頭花についている。
d0163696_21434674.jpg

d0163696_21492728.jpg
吸蜜しているように見えるが、カメムシが吸蜜するというのは聞いたことがない。
あとで調べてみたが、やはりそんな記載は見当たらない。もしかすると新発見では? 一人興奮していたが、偶然カメムシ専門家の I 氏にお会いする機会があった。 I 氏は進行中の『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』の著者のお一人である。
さっそく写真を見せてご意見をうかがった。
【 I 】う~ん。たしかに口針を刺していますね。でも、吸蜜するというのは私も聞いたことがありません。もしかすると子房を吸っているのかもしれませんね。
【O】そういうことですか。残念です。ホソヘリカメムシなんかもヒメジョオンの花で見かけますよね。あれも子房を吸っているんでしょうか。
【 I 】そうですね。彼らは何をしてるんですかね。今度気をつけて観てみましょうかね。

以上 “残念ながら新発見ならず” の報告でした。

余談その一
カスミカメムシは巨大なグループで(前述のウスモンミドリカスミカメに近いものだけでも40-50種知られているらしい)、しかもほとんど明らかにされていないカオス(混沌)の世界と言われていたそうだ。
「そのカオスに挑戦する安永先生(*)は偉大な方です。」とは I 氏の言葉である。
* 安永智秀先生は『日本原色カメムシ図鑑 第2巻』の著者。

余談その二
“カスミカメムシ” のグループは10数年ほど前までは “メクラカメムシ” と言われていた。『日本原色カメムシ図鑑』(第1巻)ではメクラカメムシ科とあるが『日本原色カメムシ図鑑 第2巻』ではカスミカメムシ科となっている。前述のウスミドリメクラガメの名称もそれと同じことだ。
メクラカメムシの名称の由来は、単眼がないからとか複眼が白目になっているからとか言われているが、改名のきっかけは “複眼があって見えているのにメクラカメムシはおかしい” とカスミカメムシを提唱した方がおられたということらしい。
ちょうどそのころ、蔑称や差別用語をなくそうという社会情勢にあり、カスミカメムシの新名称は急速に普及した。
農業害虫の分野で著名な例をあげると、
  アカヒゲホソミドリメクラガメ ⇒ アカヒゲホソミドリカスミカメ
  アカスジメクラガメ ⇒ アカスジカスミカメ
ということである。各種印刷物で○○メクラガメの表記があると、これはたいへんとばかりに○○カスミカメに修正して刷り直す場面が多々あった。
提唱したカメムシ学者はむろんのこと、当のカメムシたちにとっては、農業界でどう表記されようが気にならないと思うのだが…
一方、『日本原色カメムシ図鑑』を発行した貧しい出版社にとって、全編カスミカメに修正して刷り直すなど、とんでもない出費である。見てみぬふりであったことはお許しいただきたい。

余談その三
文字ばかりになってしまったので、高知の昆虫写真家、高井幹夫氏の傑作写真を紹介しよう。(写真をクリックすると拡大され、すごさが分かります)
d0163696_2146546.jpg
タバコカスミカメがカボチャの花の中にいるところ。彼らは花弁を吸っているのだろうか。体長は3-3.5mmと小さいが、これで成虫だそうである。雰囲気もよいが、この角度で3頭ともにピントがびしっと合っているところがすごい。
ところで、
アブラムシがカメムシ目という分類も、この写真をみると得心が行くのではありませんか?

2010年12月7日、報告:事務局O
[PR]



by sizenkansatu | 2010-12-07 22:05 | 昆虫など | Comments(0)

植物、虫、鳥など自然を楽しむ  ★写真の無断転載はお断りいたします★
by sizenkansatu
プロフィールを見る
画像一覧
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新の記事

最新のコメント

> チョコさん コメン..
by sizenkansatu at 12:44
こんな感じの本が欲しかっ..
by チョコ at 14:10
鈴木裕子さん、コメントあ..
by sizenkansatu at 15:19
日経新聞で冬の雑草の記事..
by 鈴木裕子 at 19:35
アレチヌスビトハギ 最悪..
by EVIS at 15:16

検索

ブログジャンル