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自然観察大学ブログ

スギの開花 2024

3月10日、11日の二日間にスギの開花を観た。
スギの開花 2024_d0163696_21302571.jpg

2月14日では、まだつぼみだった。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21303379.jpg
このときはまだ鱗片が硬く閉じていた。
これがその後どうなるか、いつ開花するかを観たかったのだ。

私の身のまわりではスギが開花していないにもかかわらず、世の中では花粉症が問題になっていることに違和感があった。そのことは以前記事にさせていただいた。
それ以来ずっと気にしていたスギが、やっと開花したのでご報告したい。


スギの雄花の開花

雄花の開花を観たのは3月10日だった。
スギの開花 2024_d0163696_21304443.jpg
この時点で花粉を出していたのは一部の雄花だけだった。
ただ、ほとんどは花粉が膨らんでいて、前掲の2/14のものとくらべると、その違いがはっきりとわかる。

拡大して観よう。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21305974.jpg
花粉の入った袋がパンパンに膨らんで、鱗片はすき間が開いている。

別の花(↓)ではすでに花粉を出して抜けがらになったところもある。
スギの開花 2024_d0163696_21310748.jpg

次の日(3月11日)、別のスギの木の雄花を観た。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21311522.jpg
鱗片は完全に開いている。
この雄花では先端のところに花粉が残っているだけだ。

全体はこんな感じ。(↓)
スギの開花 2024_d0163696_21312493.jpg
すでにほとんどの花粉を飛ばした後のようで、開いた鱗片の中はほとんどからっぽだ。

3/10,11に観たスギはそれぞれ別の個体だが、どちらも身近な場所のものだった。
3/10に開花初めで、3/11にはほぼ終了だったのは、観察したのがたまたまそうだったというだけで、個体差や生育環境の違いによるものだろう。

いずれにしても3/10,11の前後が開花時期ということになる。
とすると、2月半ばころから花粉症が問題になるのは、やはりスギ以外の花粉に原因があるのではないだろうか。
疑問は深まるばかりである。


スギの雌花

雌花も観ておこう。
スギは雌雄同株だが、ふつう雄花と雌花は別の枝につく。
スギの開花 2024_d0163696_21313164.jpg
一見すると花にとは思えない。
下から見上げるとこんな感じ。
スギの開花 2024_d0163696_21313974.jpg
まったくそれらしくないのだが、これが雌花(雌球花)だ。

拡大して観よう。
スギの開花 2024_d0163696_21314506.jpg
多数の鱗片が見えるだけだが、下にまわって正面を観ると…
スギの開花 2024_d0163696_21315535.jpg
鱗片の付け根のほうに孔の開いたものが観える。
これが胚珠の先端で、孔からは受粉滴を出す。
受粉滴は花粉を受け取るためのもので、雌しべの柱頭のような役割とされる。
上の写真でも少しだけ受粉滴が確認できる。

スギの花は花被も雄しべも雌しべもないので開花を確認するのは難しい。
今回3/10,11に花粉を出すのと受粉滴が確認できたということは、まさしく開花期であるといえる。

スギの花については以前にも報告しているので、よろしければそちらもご覧いただきたい。

2024年3月13日、報告:自然観察大学 事務局 大野透

……………………………………………………
<自然観察大学より>
自然まるごと観察会
参加者募集中

第41回講習会レポート
① きのこ観察入門 -四季のきのこの観察-
② 鳥たちの狩り
……………………………………………………




# by sizenkansatu | 2024-03-13 21:42 | 植物 | Comments(6)

‘河津桜’とホトケノザ

2月20日、近くの公園で‘河津桜’が見ごろだった。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20032924.jpg
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20033936.jpg
この公園の‘河津桜’はなかなか立派で、大きな木が4株並んでいる。
もちろん、TVで観る本場の河津町には遠く及ばないが、これだけ立派な‘河津桜’を身近で見た記憶はない。
他の公園はどれも若木だが、ここの‘河津桜’はずいぶん早く導入されたのだと思う。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20035045.jpg
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20040350.jpg
公園の管理の方に聞いたところ、土日はほとんど咲いてなかったのが、前日の2月19日に一斉に開花したという。
手元のメモを見ると、2022年、2023年といずれも3月初旬に‘河津桜’の見ごろとなっていた。
今年はそれよりも10日以上早いということになる。
‘河津桜’とホトケノザ_d0163696_20041240.jpg



こちらはホトケノザ。
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耕起後の畑に、みごとな群落をつくっていた。
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‘河津桜’に引けを取らないと、個人的に思うのだが、どうだろうか。
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ホトケノザも大好きな花で、これまでに何度か観察記録を載せているので、よろしければご覧いただきたい。


本稿で‘河津桜’を漢字で表記した理由

ところで、植物(生物)種の和名は、基本的にカタカナで記すことにしている。
漢字をあてると、ふさわしくない当て字であったり、複数の説があったり、なにかとまずいことがあるためだ。
専門家の先生方はふつうカタカナで表記するので、私もそれにならっている。
ところが本項では‘河津桜’と表記している。その理由を記しておこう。
‘河津桜’は‘染井吉野’などと同様に栽培品種であり、生物種ではない。
その場合は ‘ ’(シングルコーテーションマーク)でくくり、漢字で表記するのが望ましいということをうかがった(カタカナでもよい)。
漢字でOKなのは、おそらく名前の由来がはっきりしているからであろう。
このルールはあまり浸透してないようだが、みなで合わせるように心がけたい。
公園で木に名札をつけてくれているのはたいへんありがたいが、面倒でもこのようにしていただけると、野生種なのか栽培品種かを知ることができる。
私の記憶では、新宿御苑の名札はこのルール通りになっていたと思う。

2024年2月21日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2024-02-21 20:11 | 植物 | Comments(4)

スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?

春は、花粉症の方にはつらい日々であろう。お見舞いを申し上げたい。
天気予報でも連日のように飛散量の予測が報じられるようになった。
しかし、いまほんとうにスギの花粉が飛んでいるのだろうか。


スギはまだつぼみ

いまのところ、今年はまだスギの開花を確認できていない。(2月14日)
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18310187.jpg
近所のスギはまだつぼみ。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18310976.jpg
こちらもまだつぼみ。
つっついてみても、花粉は出てこない。
拡大してみると、雄花は固く閉じているのがわかる。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18312980.jpg
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18313769.jpg
雄花は開花すると鱗片が開き、その隙間から花粉を飛ばす。
開花中の雄花は次でご覧いただける(開花しても見た目はあまり変わらないが…)

私の住む近くにはスギはあまりないのだが、それでも見つけるたびに未だつぼみであることを確認している。
開花していないのに花粉が飛んでいるというのはどういうことなのだろうか。

私の観ているのは目の高さの枝なのだが、樹上の高いところの雄花はすでに開花して花粉を散らしているのだろうか。あるいは、暖地(房総など)のスギはこちらより早く開花して、それが、飛ばされてきたということなのだろうか。
いずれにしても、この時期にスギの花粉が多量に飛散というのは、疑わしいものがある。


ハンノキの花

スギの開花はまだだが、ハンノキはすでに開花している。
ハンノキの花は毎年のように観ているが、また撮ってしまった。(2月10日に撮影)
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18314540.jpg
ハンノキは雄花と雌花があり、それぞれが花序となる。
各部にマーキングしてみよう。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18315342.jpg
白色枠:雄花序。枝の先端付近に数本を垂らす。
黄色枠:雌花序。雄花序よりもとの方に数個つく。
赤色枠:葉芽。同じ枝のさらにもとの方につく。


ハンノキの雄花

まず雄花序を観てみよう。
前掲の雄花序のまん中あたりの拡大。(↓)
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18320367.jpg
向かって左の花序は開花中で、右の花序はまだ花粉を出していない。いわゆるつぼみの状態だ。

つぼみをさらに拡大してみよう。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18321093.jpg
カニの甲羅のような部分があり、縁に舌のようなものがついて、そこから雄しべが出ている。
これはどのような構造なのだろうか。

『樹木生活史図鑑』(樹形研究会、北隆館)によると、雄花序では “赤紫色の花被片が目立つ” と記されている。
私の昨年の観察記録( ハンノキの花の観察 : 自然観察大学ブログ )では「雄花は花弁もがくもない」と記していたのだが、そうではないようだ。
しかし花被片(花弁とがく)があるということは、カニの甲羅と縁の舌が花被片なのだろうか? カニの甲羅状ががくで、舌が花弁か?


ハンノキの花粉症?

気になるのはハンノキの花粉だ。
スギやマツ類にくらべると花粉の量は少ないように思うが、一本の木にたくさんの花序をつけるのでそれなりに多いのだろう。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18321880.jpg

ネットで調べると、スギの花粉症とされているものの中には、ハンノキの花粉症が少なからずある、という記事がいくつかあった。
ほんとうのところはどうなのだろうか…

北海道ではスギ、ヒノキがないので、ハンノキや同じカバノキ科のシラカンバの花粉症が問題になっているという。


ハンノキの雌花

さて、雌花を観てよう。
まずは前掲の黄色枠の部分。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18322566.jpg
枝先の雄花序から少しもとの方に数個の雌花序がつく。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18323519.jpg
花といっても、鱗片の間から雌しべが出ているだけ。
この時期はちょうど開花が始まったところで、↑の雌花序は成長の早いもの。
遅いものはまだワックスに被われていた。(↓)
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18324271.jpg
ワックスで固められた状態で越冬し、雌花序が膨らむときにばりばりと剥がれ落ちる。
(音がするかどうかは定かではないが…)

こちらはさらにワックスの剥がれた状態。(↓)
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18325204.jpg
重なり合う鱗片のようすがよくわかる。
鱗片の下には雌しべらしきものもうかがえる。
これがさらに膨らんで開花し、前掲の雌花序のようになるわけだ。


ハンノキの葉芽

最後に赤枠の葉芽を観ておこう。
スギか、ハンノキか 花粉症の原因は?_d0163696_18434129.jpg
観るからに裸芽で、膨らんできた葉の形がわかる。
葉芽といっても葉だけが出てくるわけではなく、これがシュート(枝葉など)になる。


余談ですが…

ハンノキの雌花序は小さくて撮りにくいのだが、昨年から導入したOM-1&90mmマクロレンズで簡単に撮影できた。現地で樹上の新鮮なものを手持ちで撮れるのはたいへんにありがたい。
近々、より高性能のOM-1 MarkⅡが出るらしいが、はたしてこれ以上の性能が必要なのだろうか?
気になるところではある。
それにしても、オリンパスからOMシステムに会社が変わって心配していたが、変わらぬ志ですばらしいカメラを提供してくれているようだ。

2024年2月16日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2024-02-16 18:45 | 植物 | Comments(0)

ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編

前編( )からの続きで、もう少しお付き合いいただきたい。


冬芽から次の冬芽へ

まずは、前回のヤマボウシの冬芽の展開をもう一度観よう。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_18580440.jpg
中心部に花序があり、その両側の2個の腋芽からウサギの耳のようなシュートが伸びはじめている。(4月22日撮影)

それが秋にどうなるか…
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_18582427.jpg
花序は果実になって、2本の短いシュートが果柄のつけ根から出ている。(9月9日撮影)
上向きのシュートでは葉のつけ根に新しい腋芽ができているのがわかる。
下向きのシュートはちょっと隠れているが、落葉して腋芽が残っている。

話はそれるが、花序 → 果実への成長過程もおもしろい。
小さな花が多数集まった花序だったのが、果実ではそれが合着して、全体が一つの大きな果実になる。(集合果)
『樹木博士入門』(小幡和男ら,全農教) をお持ちの方は、p190をご覧いただきたい。

さて、話を戻して果実のあとはどうなるか…
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_18583626.jpg
まん中の果実が落ちて、二叉のシュートの先に冬芽がつく。(12月8日撮影)
上の写真は2個とも葉芽である。

こちらは花芽と葉芽。(↓)
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_18585269.jpg
花芽は丸っこくて大きめで、葉芽は円錐状で小さめ。
花芽のほうは外側の芽鱗が横に裂けることが多い。

花芽からは花序と2個のシュートが出て、翌年は二叉になって伸びる。
一方、葉芽からは1個のシュートが伸びる。
その繰り返しで樹形を作っていくものと考えられる。


ハナミズキも同じ伸び方
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_18590890.jpg
ハナミズキの果実は、小花がそのまま合着せず一つずつの果実になる。
枝の伸び方はヤマボウシと同じなのだろう。
上の写真の右側のシュートには花芽ができているのがわかる。
ハナミズキもヤマボウシと同じように樹形を形成していくものと思われる。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_19000483.jpg


ホンコンヤマボウシ

このところ街なかの新築の家の庭でよく見かける常緑のヤマボウシ。
学名が Cornus hongkongensis なのでホンコンヤマボウシなどと言われている。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_19001684.jpg
花はヤマボウシとそっくりだが、開花は1か月くらい遅い6月となる。
果実も日本のヤマボウシと同じ集合果になる。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_19004838.jpg
果実の右奥に見えるのが冬芽。(10月24日撮影)

少し近寄って観よう。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_19010082.jpg
ハナミズキのように花序が伸び出しているのだが、こちらは総苞片に包まれることなく、つぼみが裸出している。
上の写真では総苞片はごく小さいが、同じ日に観た別株ではすでに伸びはじめていた。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_19012587.jpg
ホンコンヤマボウシの原産地はおそらく名前のとおり香港なのだと思うが、四季のない暖地で育ってきたので、越冬とか冬眠といった概念がないのだろう。

冬の時期には、赤くなったホンコンヤマボウシも見かける。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 後編_d0163696_19014065.jpg
知らない土地に植えられ、未体験の寒さに遭遇して戸惑っていることだろう。

2024年2月8日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2024-02-08 19:14 | 植物 | Comments(0)

ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編

ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11060088.jpg
ヤマボウシの花は5月ごろから咲く。
漢字では山法師だそうだが、なるほど白い頭巾の裾を広げた、時代劇の僧兵のようでもある。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11061977.jpg
山野に自生するが、公園樹や街路樹などにもよく植栽されている。

白い花弁のよう見えるのは総苞片で、ヤマボウシの花では先端まできれいに広がるのがポイントだ。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11063624.jpg
中央に球状の花序があって、ほんとうの花は小さい。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11070180.jpg
この写真(↑)では半分ほどがつぼみだ。

ハナミズキの花(↓)はヤマボウシよりも早く、4月後半から咲きはじめる。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11071830.jpg
総苞片の先のほうが萎れたようにへこんで茶褐色になっている。
写真では総苞片は開いているが、中央の小花はまだつぼみである。
総苞片の先端は初めからへこんで茶褐色だということになる。

ヤマボウシもハナミズキも総苞片の色や形はさまざまだが、先端がピンと伸びているかへこんでいるかで両種を見分けることができる。
この総苞片の違いはどうして起こるのか。冬芽の観察から推測してみた。

めんどくさい話で申し訳ないが、お付き合いいただければありがたい。

なお、ヤマボウシのなかまについては八田洋章先生の講演のレポートをご覧いただきたい。
●ヤマボウシの自然誌とその自生地探訪/自然観察大学講習会レポート  
樹木に関して智の泉のような八田先生だが、ヤマボウシ類については格別な興味を持って観察しておられる。
この講演では、ヤマボウシのなかまの冬芽の違いについても系統だてて紹介いただいたが、このとき時間が押していたこともあって、消化不良気味であった。

私としては、『樹木博士入門』(小幡和男ら,全農教)の取材に際し、ヤマボウシとハナミズキのそれぞれの冬芽の展開を観てきたのだが、じつは、上記の講演をうかがって以来、注目して観察してきたのである。(一部の写真は『樹木博士入門』と共通して掲載)


冬芽をくらべる

はじめにクイズ。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11072805.jpg
上の二つの冬芽はそれぞれ何か、おわかりだろうか。
わかった方は、ふだんからよく観察しておられる方だと思う。

正解の前に、まずヤマボウシのなかまの冬芽(花芽)の基本的なつくりを模式図で観てみよう。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11074553.jpg
茶褐色の芽鱗の内側に総苞片があり、その中に花序のもとがある。
芽鱗と総苞片の間にはふつう2個の腋芽があり、これはシュート(枝葉など)になる。
ヤマボウシとハナミズキはどちらもミズキ科ミズキ属(Cornus属)で、ハナミズキにはアメリカヤマボウシという別名もある。両種の基本的な冬芽のつくりは同じだ。
なお、図は前述の講演での八田先生の図を改変したもので、冬芽の先端がとがってないのは作図の都合であり、ご容赦いただきたい。

それでは正解。
左がヤマボウシ、右はハナミズキ。
それぞれの各部位の名称を表記してみよう。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11075517.jpg
両種の冬芽は、もとは同じつくりなのだが、ハナミズキでは越冬前に芽鱗が開き、総苞片に包まれた花序が伸びている。それでヤマボウシとは違った姿になるのだ。
前述の八田先生の講演で、ハナミズキの冬芽は1/3当年に成長し、翌年残りの2/3成長して開花するとしておられた。


ハナミズキの冬芽の動き

ハナミズキの冬芽の動きを詳しく観てみよう。
これは7月半ばに撮影したハナミズキの冬芽。(↓)
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11085412.jpg
夏の間に、すでに芽鱗が開き、先端に見えるのは総苞片に包まれた花序だ。
これがさらに伸びて、前掲の冬越しの冬芽になる。

ちなみに、3月初めにハナミズキの冬芽を切ってみたのがこれ。(↓)
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11090427.jpg
中には小さなつぼみのもとがぎっしり詰まっている。

両種の冬芽(花芽)の違いを模式図でまとめてみよう。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11091521.jpg
ヤマボウシの冬芽は、できたときのままの、芽鱗に包まれた状態で越冬する。(図は前述の八田先生のものを改変)
ハナミズキのほうは夏の間に芽鱗が開いて、花序が伸び出した状態で越冬する。
なお、芽鱗と総苞片の間にあるのは腋芽で、のちに伸びてシュートになる。


ヤマボウシの冬芽の動き

ヤマボウシは4月後半から冬芽が動き出し、5月ごろに開花する。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11092695.jpg
※ 一つの冬芽を追いかけたものではなく、撮影倍率も適宜変更している。(“てきとう”ということです。すみません)

上の③と④を抜き出してみよう。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11093713.jpg
一つの冬芽から花序と総苞片、2個のシュートが出てきたことがわかる。
いっせいに出てくるが、シュートがやや先行して伸び、次に花序、最後は総苞片という順序のようだ。

これは⑤の拡大。(↓)
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11095485.jpg
ヤマボウシの総苞片が伸びはじめたところ。
芽鱗で守られた状態で越冬するので、先端まできれいに伸びるのだと思われる。


ハナミズキの冬芽の展開

ハナミズキでは、先に記したように夏の間に花序が伸び、総苞片が花序を包んだ状態で越冬する。
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11101056.jpg
そして翌春4月ころに総苞片が展開する。
と同時に、2個の腋芽(シュート)が伸びる。
総苞片の先端は、冬越しのときに褐色になったのがそのまま伸びたのであり、それが傷のようにへこんでいるものと思われる。

おまけで、ちょっとイレギュラーなハナミズキ。(↓)
ヤマボウシとハナミズキ 冬芽の違い 前編_d0163696_11102309.jpg
総苞片が丸まっている中で花が咲いている。総苞片が開くのに手間取ったようで、花のほうが待ちきれなかったというところだろうか。
なお、このように総苞片の赤色のものもふつうにある。


2024年2月6日、報告:自然観察大学 事務局 大野透




# by sizenkansatu | 2024-02-06 11:38 | 植物 | Comments(0)

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